…………。

始めまして。

……誰?

私はあなたを消しに来たの。

……なんで?

あなたがとても、邪魔だから。

…………。








■( ^ω^)は十回死ぬようです。
■四日目の朝・開始。



( ^ω^)「……お、朝かお」

目が覚めると、そこは普段から変わらぬ自分の部屋だった。
ヲタグッズ、ポスター、フィギュア、抱き枕に腐女子御用達のBLノベルまである。

( ^ω^)「……なんか体が重いお」

なんだか深い倦怠感がある、溶かした鉛が体の先端に溜まっているようだ。
のろのろと荷物をまとめ(学校で読むラノベと漫画)、制服に着替え(しわだらけ)、朝食を食べる為に1階へと降りる。

( ^ω^)「…………」

ξ゚听)ξ「な、なによ、人の顔見たら挨拶ぐらいしなさいよ……」

( ^ω^)「おはようだお……」

ξ゚听)ξ「暗いわね……、死人みたいな顔してるじゃない」

今日は鏡を見ていないが、物事をはっきり言うタイプのツンがそう言っているなら(特に彼女は、ブーンには容赦が無い)そうなのだろう。
夏休みが終わり、宿題が終わっていない時のような倦怠感は身体を犯している、

J( 'ー`)し「おはよう、ご飯できてるからちゃっちゃと喰ってとっとと行ってきなさい」

( ^ω^)「…………」

バターの塗られたトーストがぽつんと皿にのっていた。



……何か違和感がある。

ξ゚听)ξ「ん、どしたの?」

ブーンはツンがもくもくと食べている目玉焼きを眺めながら言った。
ツンの皿は二枚あり、一枚にはトーストが乗っていたことが伺えるパンくずが残っていて、もう一枚には黄身が少し残っていた。

( ^ω^)「いや、僕の目玉焼きは?」

ξ゚听)ξ「ごちそうさまでした」

( ^ω^)「貴様」

喰いやがったな。


J( 'ー`)し「まあいいじゃない、カーチャン今日はタッキーのコンサート行かなきゃいけないから夕食はピザでもとって食べてなさいな」

( ^ω^)「ピザ! トッピングにベーコンは大丈夫かお!」

ξ゚听)ξ「いや待ちなさい、サラミは譲れないわ」

基本的にブーンの家で頼むピザは「マルガリータ」という、トマトとチーズのみのシンプルなものだが(安上がりの為)、二人は何時も追加トッピングについて激しく語り合っていた。

( ^ω^)「ええい、僕の目玉焼きを食べたお前に何か言う権利などないお!」

ξ゚听)ξ「それとこれとは無関係じゃない! ていうかいきなり元気になってんじゃないわよ!」

J( 'ー`)し「トッピングの余裕はないから素で頼むわね」


( ^ω^)「…………」

ξ゚听)ξ「…………」

二人は顔を見合わせて

( ^ω^)「いただきます」

ξ゚听)ξ「いってきます」

それぞれの行動をとった。


ξ゚听)ξ「あ、そうだこれ」

ツンがカバンを持って、早々それを投げ渡してきた。

( ^ω^)「はい?」

それは一冊の本。
カバーがコーティングされているので、直に図書館のものだとわかった。

ξ゚听)ξ「それ返しておいてー」

( ^ω^)「お前そんな断るに断れないタイミングで」

表紙は美男子とショタがほぼ半裸で抱き合っているイラストがしっかりと載っていた。

( ^ω^)「そう、そのまま飲み込んで……、僕のエクスカリバー……」

ξ゚听)ξ「読むな」

( ^ω^)「スマンカッタ」

そんな、普段と変わらないはずの、四度目が始まった。


…………。


('A`)「よぅ」

( ^ω^)「おいすー」

何時もの交差点で何時ものように、二人は合流した。
特に何をするでもなく二人は歩き出す。

('A`)「俺今日すげぇいい夢みたんだけどよ」

( ^ω^)「僕も美人さんの出てくる夢を見たお」

('A`)「当然グングニルを貪る様にほお張られる夢だよな」

( ^ω^)「さすがに無いわ」

('A`)「いやお前、これがなかなか奥が深くてな」

( ^ω^)「この流れで奥が深いとか……、いやらしい子ね!」

('A`)「いやいやいやいやいや!?」

そんな他愛ない会話が続いていく。


('A`)「そういえばお前今日暇? 久々にゲーセンでギルティとかどうよ」

ドクオの提案に、速攻で賛成と言おうとしたブーンだが、すぐに思いとどまる。

( ^ω^)「いや、今日はちと用事があるお」

('A`)「え? 何よ」

( ^ω^)「ツンに本返して来いとか言われたお」

('A`)「あー、図書館か、ゲーセンからだと遠いなぁ」

学校から図書館まで行き、そこからゲーセンまで移動すると軽く二十分はロスできる。
ドクオは少し悩んだ仕草をしたが、あっけらかんと言った。



('A`)「んじゃ俺も付き合うわ」

( ^ω^)「お前……そこまでして僕と熱い死合を……」

('A`)「当たり前じゃねぇか……相棒」

二人のテンションが上がったところで。

( ^ω^)「所で時間は?」

('A`)「超ピンチ」

話し込んでいる間、歩行ペースが下がっている事は言うまでも無いのであった。

…………。


('A`)「ぁー、満腹だぜ畜生」

( ^ω^)「カツカレーとは贅沢な奴だお」

('A`)「今日は死合が控えてるからな……」

( ^ω^)「素うどんだった僕はどうすれば」

('A`)「敗北フラグだろ」

( ^ω^)「ちょwww」

昼休み、学食で食事を終えた二人は廊下をてくてくと歩いていた。
腹ごなしと言うわけでも無いが、学食前の廊下は、割と人が少ない。
大概が昼休みが終わるまで駄弁っているし、来ないやつらは大概弁当だからだ。
なので、ドクオとブーンはその周囲を適当にうろついたり留まったりして会話をしていた。

('、`*川「おーい、そこの二人」

( ^ω^)「お?」

('A`)「げ」

その空気を破壊する、かけられたあまりに聞き覚えのあるその声に、二人は振り向く。


('、`*川「ちょっち手伝ってー」

そこにいたのは平均より割かしちっこい二人の担任、ペニサス伊藤その人であり、両手で大量のプリントを抱えていた。

('、`*川「何の因果か三クラス分全部纏めて刷っちゃったのよね」

総計で百枚近くの用紙を二つに分けて、ぐらぐらと体をよろめかせながらペニサスは二人に近づいてきた。

( ^ω^)「……わかりましたお」

('A`)「しゃーねぇなあ」

しぶしぶというか、断ったら肉体的ダメージや精神的苦痛が後で降り注ぐ事は間違いないので、保身の為に二人は従う。
……いい先生なんだよ?


('、`*川「助かるわー」

ブーンが分けられた半分を彼女の腕から取り、残り半分をドクオが手渡される。

('、`*川「じゃあ職員室まで行くわよ」

そして二人を残して悠々と歩き出した。

( ^ω^)「あれ?」

('A`)「普通三分割だろ、常識的に考えて……」

('、`*川「がんばれ日本男児」

そんな教師の後をえっちらおっちらとついていく二人。
周囲の生徒達は教師がいる事を認識し、多少意識するもののすぐに興味をなくし自分達の世界へ戻る。
その反応は至極辺り前のものなので、三人とも気にしては居なかった。

(´・ω・`)「……あれは」

一人の生徒の視線に、気がつくこともなかった。


…………。


('、`*川「ありがとね二人とも」

職員室に到着し、プリントを各教室の配布箱へと入れ終えて、ようやく一息ついた。

(;^ω^)「あの……先生……」

(;'A`)「ちっといいっすか……」

('、`*川「な、なによぅ」

( ^ω^)「何であの位置から一階上にあるだけの職員室に辿り着くのに階段を八回昇り降りする必要があったんだお……」

('、`*川「だって、ほら、何所にプリント届けるか忘れちゃったから……」

('A`)「俺らが何回も『配布箱』いれときゃいいんじゃね!? って叫び続けてましたよねぇ!?」


('、`*川「き、教師の言う事に間違いは無いのよ!」

負け惜しみのように言うペニサスだが、成人女性がそれを言っても二人の心には響かない。

( ^ω^)「ていうか何で最初から間逆方向に歩きだすんだお数学教師!」

('A`)「赴任二年目なんだから校内の構造ぐらい把握しておけよ怠惰教師!」

('、`*川「う……」

一歩後ずさるペニサス、そしてブーンとドクオの二人はこれをまたとない攻撃の機会だと捉えた。
二人の視線が横目で交わるのはほんの一瞬。

そして攻撃が始まった。


( ^ω^)「そもそもプリント二十三枚あまるってどう言う事だお数学教師!」

('、`*川「なんでわかるの!?」

('A`)「大体一人で先走るから走って追いかけなきゃいけなかったじゃねぇか怠惰教師!」

('、`*川「だってアナタ達遅いから……」

( ^ω^)「荷物あるんだから遅いのは当たり前だお数学教師!」

('A`)「枚数チェックぐらいちゃんとやっておけよ怠惰教師!」

('、`*川「い、いいじゃないそれぐらいあまったって!」

ふ、とダンディズムに富んだ(気がしないでもない)ドクオの笑みを見てペニサスがさらに後ずさる。
甘いねぇ、と言いたげなあまりの余裕っぷりに、ペニサスは目の前の生徒に圧倒的な可能性を見た。

('、`*川「(……来るっ!)」


('A`)「いいや違うね! 二十三枚即ち二人で分割したところで十一枚ずつ(一枚あまり)!
運ぶ量が減れば数秒ではあるが俺たちの行動速度も増したし疲労も少なくなるはずだ! 
そしてその積み重なった疲労が結果次の小テストの予習さらには本番での思考力を奪い俺たちの成績を下げる! 
先生のその気軽なアクションのおかげで自分のクラスの全体学力が低下するんだ!」

( ^ω^)「な、なんだってー!」

('、`*川「何でアナタはこういうときだけ屁理屈ごねる思考力と言語の回転速度が上がるのかしら!? ていうか長い、長いわ!」

気のせいだったらしい。


調子に乗ったドクオとブーンはさらに追撃を続けた。
それが最大の命取りであると気がつく余裕が、色んな意味でなかった。

('A`)「しかも目元の小じわが隠しきれて無いぜ!」

( ^ω^)「まぁ、なんて致命的なのかしらマイケル!」

('A`)「そうだろステファニー、二十代前半でこれは辛い」

何故か深夜の外人通販のノリになってきた二人は、ペニサスの表情の変化に気がつかない。
ちなみに、回りには誰も居なかった。
この学校内に置いて

( ^ω^)「これはもう解決できないのかしら!」

('A`)「大丈夫さステファニー、こんな時の為にDHA! ドコサヘキサエン酸があるんだからね!」

( ^ω^)「それをいうならDHCだお!」

('A`)「あーっはっはっはっはっは……は、は」

ペニサス伊藤と言う数学教師に対し。

('、`*川「…………」

禁句を発する生徒は命知らずの極わずかな連中のみである。


('、`*川「……チャイムがなるまで、後何分あるかしら」

あまりに底冷えしたその声に、二人は沈黙する。

('、`*川「ああ、五分もないのね、早めに済ませないと」

答えを待つまでも無く、自らの腕時計を確認する。

(;^ω^)「ねぇマイケル」

(;'A`)「なんだいステファニー」

その圧倒的な気迫に押される二人は、思わずコントを続けてしまった。

(;^ω^)「私達、生きて帰れるかしら」

(;'A`)「ステファニー、それはね」

目の前の存在が移動を開始した。
それは瞬きの時間も要さない瞬殺。

(;'A`)「運命だけが知っているんだぜぇぇぇぇ!!」

数学教師の拳がうなるのと二人が振り返り逃走を始めたのは偶然にもぴったり同じ刹那だった。

…………。



('、`*川「……酷い顔ね」

( )ω()「誰の所為だかわかってますかお」

放課後、結局二秒で捉えられて一秒で死刑を執行され、小テストも満足に受けられぬまでにHPゲージを減らされた二人は、例によって職員室に呼び出されていた。

('、`*川「まぁ今回は色々あったから大目に見てあげましょう、今度からは気をつけなさい」

()A()「何にっすか」

('、`*川「言動よ」

きっぱりといわれて黙る二人。


('、`*川「再テストはまた別として、内藤君、これ」

ペニサスが机の上から取り出したのは、二人が運んだプリントだった。

('、`*川「例によって例の如く、わかるわね?」

( ^ω^)「クーに届けるんですかお?」

('、`*川「さっすが私の教え子、事情把握が早い」

手渡されたそれを受け取る。

('、`*川「じゃあ、よろしくー」


ひらひらと手を振る、とりあえず用事が済んだので出て行けというモーションである事は疑いようがなかった。

( ^ω^)「なんや色々ありすぎたけどお疲れ様ですおー」

('A`)「さよならっす」

これ以上痛い目を合う前に二人はそそくさとその場を立ち去った。

('、`*川「さて、ちゃっちゃと終わらせますか」

残りの書類仕事を片付ける為に、ペニサスは机へと向き直る。


…………。


('A`)「さて、どうすっぺか」

( ^ω^)「お?」

職員室から出て、昇降口へ歩く二人。
ドクオがわかってねぇなぁ、と溜息をついた。

('A`)「だってあいつん家と図書館反対方向だろ、どうすんだよ」

( ^ω^)「あー」

二箇所を回っていたらずいぶんな時間をロスしてしまう。
ただでさえ学生達の多い時間帯なのに、このままだと筐体を使えるかどうかすらわからない。

( ^ω^)「じゃあ今日は中止と言う事で……」

('A`)「超却下」

超っすか。



( ^ω^)「じゃあどうするお?」

('A`)「任せろ、俺になぁいすな考えがある」

下駄箱に辿り着き、靴を履き替えながらドクオは言う。

('A`)「俺が本を図書館に返す、お前はプリントを届ける、中間地点で合流してダッシュでゲーセン、これしかない!」

( ^ω^)「さすがドクオ! 遊びに関わる発想だけは僕を軽々上回るお! そこに(ry」

('A`)「てことで本貸してくれ」

( ^ω^)「わかった――――」







待て。

渡すな。

不味い予感が――――。






それは一瞬だった。
一瞬、頭を何かがよぎった。

( ^ω^)「(……あれ?)」

そのもやもやは間違いなく危険信号だったが、今の彼がそれを具体的な形として把握する事は。

('A`)「……どした?」

( ^ω^)「いや、なんでもないお」

無かった。


ブーンはカバンをあけるとツンから預かった本をドクオに手渡し、正門まで歩く。

('A`)「じゃあ何時もの場所であおうぜ戦友」

( ^ω^)「把握した」

逆方向へ歩き出す二人。
この、たったこれだけの違いが、もっとも最悪な結末に繋がっているということを。

ブーンはまだ知らなかった。

…………。


( ^ω^)「そういえば最近クーと会ってなかったお」

クー、引きこもりのクラスメイトにしてブーンの友達の事を考えながら小走りしていた。
学校から彼女の家へは割かし時間がかかるので、少しでも時間を短縮する為に彼は走っていたのだった。
ドクオとの約束が無ければ、彼女に会いに行っていたかもしれないが、今日はパスだ。

( ^ω^)「クーは話長いしお」

見た目は幼い割りに、知的な笑みと怪しげな雰囲気を持つ彼女は、どうにも物事を理屈で説明するのが好きだった。


川 ゚ -゚)「つまりだな、異端や、異質であると言う事は、全ての物事に置いて発生するんだ」

( ^ω^)「どういう意味だお?」

数週間前に彼女の家で、お茶とクッキーを食べながらした会話を思い出す。

川 ゚ -゚)「例えば製品ならば、百万あれば一つぐらいは不良品があり、そして人間ならば極度に突出した天才や、すべてに置いて優れない不遇な者もいる」

( ^ω^)「僕のことかお」

川 ゚ -゚)「君は異端というよりは異常だな」

( ^ω^)「言い切ったー!?」

爽やかに無視して、硝子の割れるような澄んだ声で、続きの言語を紡ぐ。


川 ゚ -゚)「そして世界という物は、どちらであれ常々異端を排除したがる者だ」

( ^ω^)「排除?」

川 ゚ -゚)「ああ、無能で愚鈍な者の前には社会という壁が立ちふさがり、優秀で有能な者の前には嫉妬という壁が立ちふさがる。 生まれや地位もそうだ」

音も無く紅茶をすすり、クーは続ける。

川 ゚ -゚)「人は自らに、他人と違う何かを求める。しかし周囲と外れ、異端となる事を、本能として恐れる。
世界というものがそれを排除する事を無意識下で察するからだ、だからそれを縛るルールを作り、安定を求める」

ことり、と乾いた陶器が少しだけ鳴った。

川 ゚ -゚)「それをいかにして解き、そして進んでいくかが、異端を備えた者の人生なのだろうな」

まあ、普通の人間には時としてそれ以上の壁が立ちふさがるがね、と最後に彼女は付け加えた。



( ^ω^)「到着ー」

角を曲がると、クーのマンションが見える。

その位置に、彼はいた。

(´・ω・`)「……やあ」

上級生の証、蒼いネクタイをした、彼が。



今度は、一撃だった。

ドクオに本を渡した時のような曖昧な違和感ではない。

経験した『それ』そのものがブーンに溢れてくる。


( ^ω^)「――――っ!」

(´・ω・`)「どうした!」

その場でいきなり屈み込み、頭を抑えるブーンの姿を見て、血相を変えて近づいてくるショボン。



だが、ブーンの中にはそれ以上に。


( ^ω^)「……っ!」

そう、彼は。


思い出した。


全てを把握したブーンは、何故此処にショボンが居るのかという一切の疑問を放棄し、

そしてすぐに、自分が最も多く、そして激烈に経験している死の記憶を手繰り寄せ、気がつけば振り返り走っていた。

⊂二二二( ^ω^)二⊃ 「あ、ああああ!!」

(´・ω・`)「ちょっと……っ!」

それは尋常では無い速度だった。
少なくとも普段のブーンではありえない、圧倒的な速さ。

(´・ω・`)「……ええいっ!」

既に距離は開いていて、そもそも角を速攻で曲がったブーンの姿は既に視認できなかったが、ショボンも後に続いた。


⊂二二二(  ω )二⊃「急げ急げ急げ急げ――」

不味い、このままでは。

このままでは。

そう、ルールにのっとるならば。

今までの経験と出来事を総合するならば。

間違いなくあの場で交通事故は起こる。

そして今までと同じタイミングで校舎を出て同タイミングで図書館へ向かった彼は、間違いなくその時刻にあの場所にいることになってしまう。

そこから、何を考えていたのかもわからない。

ただ走り、走り、走り、走り、図書館への道を失踪する。


⊂二二二(  ω )二⊃ 「ドクオオオオオオオオオオオオオオオっ――――――!!」

それは奇跡だった。

クーの家の前から、図書館を目で見れる場所で、彼を目視できる場所まで移動できた事は奇跡だった。


('A`)「……あん?」

彼はそこにいた。

信号が点滅していて、赤に変わろうとするところだった。

(  ω )「そこから離れろー! ドクオオオオオオオオ!!」

その声に、ドクオは首を傾げるだけだった。

表情はよく見えないが、ただ『何でお前がここに?』という、その雰囲気だけは読み取れた。


なにやってんだよ。
何時も信号なんか無視するくせに。
まだ点滅してるんだよ。
何で律儀に待ってるんだよ。
お前は――――!


そしてそのドクオの横を一人の学生が通り過ぎる。


ブーンは走った。
一度はショボンを助けられた、今度だって。

出来る――!


メギィ。

そして気がついたときには顔面を地面に打ち付けていた。
勢いよく鼻と地面がキスをして、顔が擦れて皮が剥ける。


(  ω )「がっ……」

転んだのだと認識する時間すらなかった。
ただ前へ、前へ進もうとする。

そのブーンの姿を見て表情を変えたドクオは、次の瞬間。

('A`)「え?」

今まさに学生をよけて歩道につっこんで来たトラックに、勢いよく弾き飛ばされ、地面に打ち据えられた。
同時に響いた轟音に、周囲にいた全ての視線が、そこへと突き刺さる。


:( ^ω^)は十回死ぬようです・続く。



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