蛇足が必要でしたら、どうぞご覧ください。

不必要でしたら、そのまま今暫くお待ちください。

ハッピーエンドもバッドエンドも。

決めるのはあなたです。

…………。







■( ^ω^)は十回死ぬようです。
■五日目の放課後・開始


川 ゚ -゚)「……ふむ」

クーの目から見える光景は、今まで見たものと同様だった。

即ち、図書館前の横断歩道での交通事故。

川 ゚ -゚)「この調子だと……無理そうだな」

部屋に戻り、ピシャリと戸を閉じる。
椅子に座りなおすと、彼女は何時もと変わらず紅茶を含み、本に目を通す。


……ねぇ。


声が聞こえた。



部屋には彼女しか居ないはずだが、しかしクーはそれが日常通りであるかのように反応した。

川 ゚ -゚)「何だ?」

……いい事を、教えてあげましょうか

川 ゚ -゚)「ゲームの最中は、何もヒントを与えないのではなかったのか」


気が変わったの、というか、もうそろそろおしまいだもの。


川 ゚ -゚)「……おしまい?」

ええ、だってね――――

…………。


「おい! 危ないぞ!」

「大丈夫か!」

それは、ブーンとドクオが救急車に乗ってこの場を去ってから、数十分後の出来事だった。
燃え上がった炎を消す為の消防車も、放水を終えて、現在多数の警官が野次馬の処理に動いていた。

そして。

( ゚∀゚)「……ひでぇな」

人事のように言いながらそこに立ち、燃え上がったトラックの中から運び出される、黒こげの死体を見下ろすのは、サラリーマン調の服に身を包んだ一人の男。
VIP市の警察署所属の刑事、ジョルジュだった。




「お疲れ様です!」

先に現場に駆けつけていた警察官が、自分より階級が上の男に向かい現状説明を開始する。

「被害者は高校一年生の少年、現在救急車で病院に運ばれました、重症です」

( ゚∀゚)「んで、こっちが」

「はい、目撃証言によると、横断歩道を渡ろうとした学生を避けたところに、ガイシャがいたらしいです」

( ゚∀゚)「両方とも信号無視か、救いようがねぇなぁ」

それからジョルジュは、す、と目を細める。

( ゚∀゚)「んで、飛び出したガキは捕まったのか」

「いえ、この近辺の高校生徒である事は間違いないのですが……」

( ゚∀゚)「探し出せ」

「はっ」

悪の組織のような会話だが、れっきとした警官同士のものである。


( ゚∀゚)「さて、俺も探すとするかねぇ……」

本当は、被害者と一緒に居たと言う少年にも話を聞きたいのだが、今は酷だろうと判断したジョルジュは、それを行わなかった。

( ゚∀゚)「……ふざけやがって、こんなに毎回毎回……」

無意識に出た呟きは、本人すらも意図できないほど、極自然にもれ出た物だった。


…………。


川 ゚ -゚)「……ん、だと?」


あら、意外だったかしら。


川 ゚ -゚)「……そうか、そうだな、その可能性も、あったな」

クーは珍しく。本当に珍しく頭を抱え、言った。

川 ゚ -゚)「結果的に、私が彼の命を削減していた訳か」


そうなるわ。


声は何の感慨も見せずに、淡々と言う。



川 ゚ -゚)「……だが、やらない訳にもいかない、か」

クーは何時もどおりに、ゆっくりと立ち上がり、歩みを進める。

川 ゚ -゚)「すまない、ブーン、後はお前の力だけ、だ」


……意地悪だったかしら?


川 ゚ -゚)「相当にな」

ベランダの戸を開ける。
風とともに、焼けた臭いが漂ってきた。
だいぶ小さくはなってきているが、炎はまだ燃えていた。


川 ゚ -゚)「ああ、空しい」

この世界が。

川 ゚ -゚)「ああ、悲しい」

今の私が。

川 ゚ -゚)「……『次』は会いたいな、内藤ホライズン」

ブーンが普段滅多に呼ばれる事の無いフルネームをつげて、直後、少女の体は宙を舞う。

話したいことが、沢山ある。

…………。


(  ゚Д゚) 「…………」

「どうしました」

(  ゚Д゚) 「いや、なんでもねぇ……」

ギコ、ジョルジュと同じく刑事であり、そして同日に起きた別の事件を担当している。
彼は今、一つの死体を見下ろしていた。

若い娘だ、ぱっと見では中学生程度に見えるが、資料では高校一年生であるらしい。

九階と言う高さから落下したにしては、死体は綺麗なものだった。

まだゆるゆると口元から流れる血は、彼女が生きていた証。


(  ゚Д゚) 「何でだろうなぁ……、こんな辛そうな顔して死ぬんじゃねえよ……」

「家族とは連絡がつきませんし、やはり家庭の事情でしょうか」

(  ゚Д゚) 「なんっか、ひっかかるなぁ」

「へ?」

隣でギコに報告をしていた捜査官が、間抜けな声を漏らした。

「他殺の可能性もあり、と?」

(  ゚Д゚) 「いや、そうじゃねぇ」


多少イライラしだした様子のギコの顔を見て、捜査官は間を取るように言う。

「し、しかし、綺麗な子ですよね、何で自殺なんか……」

(  ゚Д゚) 「それをこれから調べんだよ、部屋からなんか出てきたか」

「いえ、これといったものは……」

ちっ、と舌打ちをしてから、もう一度死体を見る。
現場保存の意もあり、流れる血を拭き取ることも出来ない自分に、腹が立った。


…………。


( ゚∀゚)「おい、そこの」

聞き込みを続けていたジョルジュは、ターゲットを学生服の少年に絞っていた。
故に、近くを歩いている学生に声をかける事は、至極当然の行動だ。

「……はい?」

そして声をかけられた学生が、振り向き対応する事も、また必然であった。

( ゚∀゚)「警察だ、話を聞きたい」

途方も無い作業の一欠けらであるはずの遭遇。

( ゚∀゚)「拒否権は無しだ、ちと付き合ってもらおうか」

その少年は、ジョルジュの顔を見るとはっ、としたような顔になった。
そして、暫くそのスーツ姿を、下から上まで眺めていた。


( ゚∀゚)「……あぁ、んだよ」

「……あ、いや、なんでもありませんが、一ついいですか」

少年は首をかしげて、尋ねてくる。

(´・ω・`)「ヤクザ屋さん?」

( ゚∀゚)「…………」

ジョルジュは思い切り息を吸い込み、怒鳴る。

(#゚∀゚)「 警 察 だ ! 」

…………。


('、`*川「……内藤君が、事故? クーさんが自殺……っ」

十数分の差で起きた、二つの事件は、既に学校へと連絡が回っていた。

('、`*川「……当たったわね、嫌な予感……」

ぐ、と拳を握りしめて、ペニサスは立ち上がる。

「ぺ、ぺニサス先生、とりあえず内藤君のほうへ向かってくれますカナ?」

頭の薄い校長が、どたどたとペニサスの方へと向かってくる。


「い、一応クーさんのほうには私が向かいますカナ! 内藤君の容態が確認できたらこっちにきてくれますカナ?」

('、`*川「ええ、お願いします」

それだけ言うと、ペニサスは駆け出した。

('、`*川「……っ」

職員室の扉を出て、そのまま直線へと進む。
窓を開けると、彼女はそのまま。

('、`*川「はっ」

飛び降りた。
飛び降りて、地面に着地し、そのまま自らの車へと走る。
病院は『下』にあるので、二十分程度か。

('、`*川「私は何も守れないの……っ」

呟きとともに車は発進し、かくして主役を欠いた世界で、糸は静かにねじれ、繋がり始める。


…………。



( ゚∀゚)「――――っつーことでだな、何か知ってたら答えろ」

人にものを尋ねるにはあまりに高圧的な態度だが、少年、ショボンは特に臆した様子も無く淡々と答える。

(´・ω・`)「いえ、知りません」

( ゚∀゚)「即答だな、おい」

ジョルジュはショボンの顔をじっとのぞきこみ、様子をうかがっていた。

( ゚∀゚)(嘘は……ついてねぇな)

ジョルジュと言う性格破綻者にして、人外なスペックを持つ男が、何故刑事と言う役職にいられるのか。
それは偏に『人の嘘を見抜く才能に長けている』からに他ならない。


(´・ω・`)「……やらないか?」

( ゚∀゚)「殺すぞテメェ」

ショボンの瞳に本気の色を見た彼は思わず拳を握り締める。

( ゚∀゚)「ぁー、時間とらせて悪かったな、さんきゅ」

とりあえず、知りたい情報は持っていないようなので、ジョルジュは会話を切り上げて『次』へ向かおうとした、その時。

ちゃーちゃーちゃーちゃちゃー。

ジョルジュの胸ポケットから、音が鳴り出した。

(´・ω・`)「……天国と地獄?」

( ゚∀゚)「うるせぇ趣味だ」

言いながら素早く、振動する携帯電話を取り出し、着信ボタンを押す。


( ゚∀゚)「どうした」

『そっちの調子はどうだ』

お互いの名を確認する間でもない、応答するなりすぐさま本題へと切り込む。

( ゚∀゚)「人手が足らん、事情聴取するにはまだ時間が早い」

数秒間の空白があった。
傍目から見ても、それがお互い無言の状態であると言う事が認識できる。

『……一度落ち合うか、余裕はあるか?』

( ゚∀゚)「所轄の連中にゃ心苦しいが、あるっちゃあるぜ」

『なら、駅前にファミレスがあったな、一時間後にあそこでいいか?』

( ゚∀゚)「わかった、一時間後に駅前のファミレスだな」

ぷ、と電話を切る。


( ゚∀゚)「……お前、まだいたのか」

(´・ω・`)「立ち去りにくい雰囲気だったので」

( ゚∀゚)「ああ、もういい、ありがとよ。 じゃあな」

ジョルジュはかっ、とかかとを鳴らして振り返り、歩き出す。



( ゚∀゚)「…………」

(´・ω・`)「…………」

( ゚∀゚)「…………」

(´・ω・`)「…………」

( ゚∀゚)「……なんでついてくんだよ」

(´・ω・`)「僕もファミレスに行こうと思ってたので」

いけしゃあしゃあと抜かすショボン。

( ゚∀゚)「……一時間後だぜ?」

(´・ω・`)「……僕も一時間後に行こうと思ってました」

沈黙。
数十秒にらみ合い、そしてジョルジュは諦めたように言った。

( ゚∀゚)「勝手にしろ」

…………。


('A`)「……先生?」

('、`*川「ドクオ君っ!」

ペニサスが病院に到着した時、そこにいたのはドクオと、ツンと、カーチャンだった。
ツンは俯いたまま顔を上げず、カーチャンは涙を流しながら、やはり俯いている。

J( 'ー`)し「あ……先生」

入学後、保護者会や三者面談などで数度顔を合わせているだけだが、教師の顔は覚えていたらしい。
軽く会釈して、ペニサスはドクオに向き直る。

('、`*川「何があったの……?」

('A`)「わかんねぇっす……、ただ、アイツは俺を庇おうとして……、それで」

が、と地面に膝を突いた。
額を地面に擦り付けて、その場にいる全員に対して土下座した。



('A`)「俺の所為っす! 俺を助けてくれたからアイツは! アイツは――ッ!」

J( 'ー`)し「違うわドクオ君、あの子は――」

('A`)「違わない、俺が無理してでも、朝に早退させてやりゃ良かったんだ! そうすればこんな事にはならなかった!」

('、`*川「…………」

頭を下げたまま、ドクオは叫ぶ。

('A`)「俺がっ、俺がっ、俺が!」

('、`*川「いい加減になさいっ!」


叱咤。

普段ドクオが悪ふざけをして怒鳴られるより尚強い声が、緊急手術室前の廊下に響いた。

('、`*川「あなたが今すべき事は土下座して謝る事でもない、後悔することでもない、私達が出来る事は彼の無事を祈り願うだけ」

顔を上げたドクオの襟を掴み、自らの顔の位置まで引き上げる。

('、`*川「泣き喚くな! 内藤君は二度あなたを救ってくれたんでしょう! ――そのお前がこの様で、どうするんだっ!」

猛々しい声だった。
その圧倒的な威圧と存在に、ドクオは黙り、そして。

('A`)「……は、い」

涙を流し、呟いた。

('A`)「……俺は、俺は」


('、`*川「……信じなさい、彼の無事を。 あなたは内藤君の親友なのだから」

('A`)「……」

ドクオを解放すると、ペニサスはカーチャンに一礼した。

('、`*川「……私も、彼も、同じ気持ちです。 申し訳ありませんでした」

J( 'ー`)し「いえ……」

そして、ペニサスは彼等に背を向ける。

('A`)「先生?」

('、`*川「……ドクオ君、こっちに来て」

頭に疑問符を浮かべたまま、ドクオはペニサスへと近寄ってきた。

('A`)「なんすか」

('、`*川「クーさんが、自殺したわ」

彼にしか聞こえないよう、声を抑えて、言った。


('A`)「――ッ」

('、`*川「内藤君は事故で、クーさんは自殺。だけど私は」


『この二つが無関係だなんて思えない』


('、`*川「だから、行って来るわ。 ……お願いね」

何をお願いするのか。
聞くまでも無い。

('A`)「……任せてください」

('、`*川「ありがとう」

私の生徒。

…………。


ファミリーレストランの一角。

サラリーマン調のスーツを着た男に、コートを着た男。

そして学生服を着た、一回り小さい少年。

ぱっと見、かなり妙な光景だった。

(  ゚Д゚) 「……何一般人連れてきてんだよ」

( ゚∀゚)「いいじゃねえか、事故や自殺のガイシャと同じ学校の生徒だ、何か知ってるかもしんねーぜ」

(  ゚Д゚) 「まぁ、お前が連れてきたんだったら、それでいいけどよ」

(´・ω・`)「……」

三人がこの場に集って、交わされた会話はお互いの事件の事。


( ゚∀゚)「まぁ、こっちは実行犯が死んじまってるし、被害者は病院だ。 一緒にいた学生には明日辺り話しが聞けるだろうよ」

(  ゚Д゚) 「俺の方も、自殺で決まりだと思う。 他の人間がいた形跡がまったく無いしな」

(´・ω・`)「決定なんじゃないですか」

(  ゚Д゚) 「……そうなんだよなぁ」

ギコはコーヒーを啜りながら、どこか遠い目をしていた。

(  ゚Д゚) 「……なぁ、ジョルジュ」

( ゚∀゚)「んだよ」

(  ゚Д゚) 「昔お前にさ、妹が二人いた話しただろ?」

それは、二人がコンビを組んでから数ヶ月後に、とあるタイミングでなされた会話のことだった。



( ゚∀゚)「あぁ、聞いたな」

(  ゚Д゚) 「片方の妹が死んだっつー話も、したよな」

( ゚∀゚)「あぁ、聞いたな」

(´・ω・`)「いや、あの、そんな滅茶苦茶濃厚な話を僕が聞いてもよいのでしょうか」

( ゚∀゚)「テメーが勝手についてきたんだろうが」

そういわれると黙るしかないので、ショボンは口を噤んだ。

(  ゚Д゚) 「……俺の妹さ、上の方な。結局なんで死んだのかわかんなかったんだよ」

( ゚∀゚)「部屋の隅で、突然、だったんだろ?」



(  ゚Д゚) 「ああ、心臓麻痺が一番近い表現なんだろうけどよ、異物が発見された訳でもない、誰かと一緒にいた訳でもない、外傷も無い、本当にただ死んでるっつー、それだけでさ」

悲しむというわけでもなく、ただ思い出して淡々と語るように言葉を繰り出していく。

(  ゚Д゚) 「ただその顔が、滅茶苦茶納得したような顔だったんだよ」

(´・ω・`)「納得?」

(  ゚Д゚) 「ああ、凄い満足そうな顔しててな、顔真っ白なのによ。ガキん時の話だけど、今でも覚えてるよ」

こと、とコーヒーカップが置かれる。
静かに目を閉じて、述懐するように。

(  ゚Д゚) 「自殺した奴ってのはさ、何らかの未練っつーか、悔しい事が必ずこっち側にあるんだよ」

( ゚∀゚)「……」

(  ゚Д゚) 「俺が今まで見てきた奴等、数人だけどな。 そいつら皆、そんな顔してた」

(´・ω・`)「……それが、妹さんと何の関係が?」

(  ゚Д゚) 「今日の娘はさ、滅茶苦茶悔しそうだった、自分のした事が全部失敗だった、みたいな顔してた」


ギコは思い出す。
死体は、感情を示さない。
だが、意志を表す事はある。

(  ゚Д゚) 「その時なぁ、何か違うと思ったんだ。 あれは自殺した人間のする顔じゃねぇ」


『負けた奴がする顔だ』


(  ゚Д゚) 「状況証拠もしっかり自殺で間違いないし、実際そうしたんだろうけどよ。あの娘はそういう次元じゃない、もっと深いところに何かがあったんだ」

だから俺はそれを。

突き止めたい。


( ゚∀゚)「……お前ってさ、ほんっと時々、訳わからん事言うよな」

(  ゚Д゚) 「ゴルァ」

( ゚∀゚)「ぶっちゃけお前が何言ってるのか一割も理解できんかった」

(´・ω・`)「同じく」

こいつら……。


( ゚∀゚)「だが、お前が何をしたいのかは、よくわかったぜ」

ジョルジュは足を組みなおし、今だ手をつけていない自分のカップを揺らしてもてあそぶ。

( ゚∀゚)「納得いってねーのはお前だろうが、馬鹿」

(  ゚Д゚) 「……言うじゃねえか」

( ゚∀゚)「……行くぞ、お前等」

立ち上がり、伝票を手にとる。

( ゚∀゚)「とりあえず教師と話をしてみるか、どうせ連絡行ってるだろうからな」

(  ゚Д゚) 「……ああ」

ギコもまた立ち上がり、ショボンもそれにつられる。


(´・ω・`)「その自殺した女の子のクラスはどこなんですか?」

(  ゚Д゚) 「確か一年I組だったはずだぜ、学校には殆ど顔出してなかったらしいが」

(´・ω・`)「I組か……」

( ゚∀゚)「おいこら、おいてくぞ」

既に会計を済ませ、扉を開けて待っているジョルジュの声が響いた。

(  ゚Д゚) 「わりぃ」

(´・ω・`)「あ、刑事さん」

(  ゚Д゚) 「あん?」

小走りになるギコを追いかけながら、ショボンは尋ねた。


(´・ω・`)「その妹さんの名前は、なんていうんですか?」

(  ゚Д゚) 「んな事聞いてどうすんだよ、まあいいか」

扉をくぐり、外へ出る。
それと同時に、ギコの声が耳に入ってきた。

(  ゚Д゚) 「しぃ、だ」

…………。


「おー、おー、ペニサス君、来てくれたのカナ」

('、`*川「……ええ」

「担任の方ですか?」

('、`*川「はい、ペニサス伊藤と申します」

クーが自殺した現場に到着したペニサスは、早速警察官から話を聞かれていた。

「クーさんは不登校と聞いていますが……」

('、`*川「ええ、入学式以来、私も顔を見てません」

「ではその間――――」

テンプレート通りの会話がなされていく中で、警察官の携帯電話が鳴った。


「あ、すいません」

断りを入れてから、警察官は携帯電話を取る。

「え、ジョルジュさんですか? 担任の教師? はい、現場に来てもらってますが――」

数秒の間をおいて。

「署までつれて来い? 任意同行で? へ、あ、はい、わかりました」

こちらの声が向こうに伝わらないように、電話の下スピーカーを押さえながら、警官は尋ねた。

「えーっと、申し訳ありません、署までご同行願ってもよろしいでしょうか」

これに、ペニサスはそう来ると思っていたといわんばかりに頷く。

「あ、はい、わかりました、そちらへ向かいます」

('、`*川「……やれやれ、ね」

警官に促されるまま、パトカーに乗る。

そして、螺旋はゆっくりとまとまり、解け始める。

…………。


( ゚∀゚)「つーかさ」

(´・ω・`)「はい?」

三人は取調室――と言っても容疑者用ではなく、単に話を聞くためだけの部屋なので、ソファやガスコンロなどが設置されている――で、待機していた。

( ゚∀゚)「お前何時まで此処にいんの?」

(´・ω・`)「いや、何か成り行きで……」

何の用件も無い少年が、いていい場所では本来無い。

(  ゚Д゚) 「お前が手がかりになるかもみたいな事言ってたんだろうが……」

( ゚∀゚)「いや、だってお前、よく考えたら、なぁ」

(´・ω・`)「実はアンタら物凄い適当な性格してませんか」

二人はぎくっ、と肩を震わせたが、しかし二秒後には何事もなかったかのように表情を平静に戻す。


( ゚∀゚)「遅いな、教師」

(  ゚Д゚) 「遅いな、担任」

(´・ω・`)「…………」

公務員ってこんなのばっかなのだろうか。

その時。

「失礼します」

若い警官の声とともに、扉が開かれた。

「こちらです」

案内に従い、一歩前に出て、警官よりふた回り以上小さい、小柄な女性が前に出てきた。

('、`*川「VIP高校一年I組担任、ペニサス伊藤です」

(´・ω・`)「っ」

一瞬、彼女の姿を見たショボンは体を震わせたが、しかし誰かがそれに気がつく前に、それ以上の現象がその場に巻き起こる。


(  ゚Д゚) 「…………おま」

('、`*川「……あら、居たの?」

ギコが、驚いたように目を見張っていた。

( ゚∀゚)「何だ、知り合いか?」

('、`*川「そういえば刑事をやってるって言ってたわね、兄さん」

(´・ω・`)「兄っ!?」

( ゚∀゚)「さんっ!?」

妹が二人いて。
一人が死んでて。

もう一人?


(  ゚Д゚) 「……上の妹が死んだ後、両親が離婚して、それっきりだ。 時々顔を合わせることはあったけど、ここ数年はあってなかった」

(´・ω・`)「なんと……」

( ゚∀゚)「……ま、まあそれは置いといてだな。 あなたに聞きたい事があるんだが――」

そのジョルジュの言葉を遮るように、ペニサスが言った。

('、`*川「……私のクラスの生徒が、自殺をしたとうかがいました」

( ゚∀゚)「あ、ああ、事実だが……」

('、`*川「そして、その生徒と仲が良かった子が、今日、交通事故に巻き込まれました」

( ゚∀゚)「!」

空気が変わった。
おちゃらけた物が介在する余地など一切無い、そこは。



('、`*川「私にはこの二つの出来事が偶然なんて思えません」

彼女の声は、力強い。

('、`*川「私にわかる事なら何でもお話いたします、お力添えを願えませんか」

(  ゚Д゚) 「……ペニサス」

('、`*川「わかってるわ、でもお願い、どうしても納得できないの」

事故はまだわかる。

だが。

('、`*川「時々内藤君、事故に巻き込まれた生徒が話してくれる彼女は、自殺なんてイメージとは直結しない子でした」

( ゚∀゚)「……決まりだな」

(  ゚Д゚) 「ああ」

刑事二人は顔を見合わせて、頷いた。
二人の視線はペニサスへと向かう。
そして、同時に言った。

『この事件、俺たちが解決する』

…………。


外はすっかり暗くなっていた。
四人は車に乗り込み、クーのマンションへと移動を開始していた。
もう一度現場検証をし、予定を繰り上げて一緒にいた生徒により詳しい事情を聞く為――だ。

(´・ω・`)「……あの、刑事さん、先生」

( ゚∀゚)「ぁ?」

('、`*川「どうしたの?」

ジョルジュが運転席、ギコが助手席、後ろにペニサス、ショボンの形で座っていた。

(´・ω・`)「二人とも、体調が悪かったりとかしませんか」

( ゚∀゚)「いや、まったく」

('、`*川「まぁ、いい気分では無いけれど。 それがどうかしたの?」

(´・ω・`)「いえ、なんでもないです」

勘違いに越した事は無い、とショボンは静かに付け加えた。


(  ゚Д゚) 「とりあえず整理しておくか。 今日、事故が起こった。 その事故で、VIP高校一年生、内藤ホライゾンが意識不明の重態」

( ゚∀゚)「同日、同学校同級生、クーが飛び降り自殺」

(´・ω・`)「この二人は友人関係であり、またクーの自殺は不審な部分がある」

('、`*川「……だけど付け入る隙は、無いのよね」

ペニサスの一言に、車内の空気は重くなる。

( ゚∀゚)「そもそも本当に、クーって娘に自殺の要因はないんだよな?」

(  ゚Д゚) 「強いてあげるとするならそれこそ友人の死、だが、その娘がそれを知るのは無理だったはずだろう」

彼等の言葉は空想をもてあそぶような、途方も無い物だった。
根本となるルールが、条件下に組み込まれていない議論に、答えが導き出せる訳も無い。

だが。


('、`*川「……私は、駄目な教師ね」

(  ゚Д゚) 「…………」

('、`*川「二人も……、死なせて……」

(´・ω・`)「それは先生のせいじゃ……」

ショボンがフォローに入ろうとしたが、ギコがそれを遮る。

(  ゚Д゚) 「お前、まだしぃの事、背負ってるのか」

('、`*川「っ」

(  ゚Д゚) 「あれはお前の所為じゃねぇし、誰もお前を責めたりなんかしねぇよ」

('、`*川「……わかってるわ」

小さな体を震わせて、ペニサスは呟いた。

('、`*川「でも、助けて、あげたかった」


( ゚∀゚)「…………」

('、`*川「助けて、あげたかった――っ」

彼女の目から、涙が流れた。

(  ゚Д゚) 「……俺もだよ」

カン、カン、カン、カン、と踏み切りの音がした。
気がつけば、線路が目の前にあり、遮断機が下りていた。


その瞬間。

(´・ω・`)「――っ!」

彼の目に映る全ての世界が入れ替わった。

自分の体を見下ろし。

そして車内にいる全員を見渡す。

彼等の体には例外なく。

黒い靄が掛かっていた――――


(´・ω・`)「ま、ずい!」

( ゚∀゚)「お、おい!」

ショボンは身を乗り出し、ジョルジュの肩を揺さぶる。

( ゚∀゚)「なにすんだこら!」

(´・ω・`)「早く此処から離れるんだ!」

(  ゚Д゚) 「な、なんだよ」

(´・ω・`)「いいからはやく――!」

電車が向かってくるのが見える。

そして、線路に何か置いてあるのも、よく見えた。


('、`*川「危ないっ!」

次の瞬間。

語るまでもなく。

電車と言う名の凶器の塊が本来あるべき道からはずれ、全てを踏み潰した。


…………。


('A`)「……外が騒がしいな」

カーテンを開けて外を見てみると、真っ暗だった。
幾台もの救急車がひっきりなしに出入りしている。

('A`)「……なんかあったのか」

見れば、ツンとカーチャンは瞳を閉じていた。
泣き疲れた、のだろう。

('A`)「ブーン、俺は……お前を……」


これ以上、語ることは無い。
蛇足を続けるのは、やめよう。
主要な人物達は、結局のところ出揃った。

この後、ジョルジュと言う名の刑事と、ペニサスと言う教師が死亡し。

ショボンと言う名の少年と、ギコと言う名の刑事が重症を負った事など、小さな事だ。


世界は次で一度、途切れる事になる。

終焉を。

勝利は果たして。

誰の手に。

■( ^ω^)は十回死ぬようです・続く




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