…………。






:( ^ω^)は十回死ぬようです・最後の一日 途中
:開始



( ^ω^)「え、ちょ、ま、まだ猶予はあるはずだお!?」

(*゚ー゚)「無いわよそんなもの」

あっさり告げられた『残り時間』に、ブーンは狼狽した。

( ^ω^)「だって僕はまだえーっとトラックにひかれて一回、クーに突き落とされて一回、電車の脱線事故で巻き込まれて一回、自殺して一回、もっかいトラックにひかれて一回で……」

川 ゚ -゚)「どうした?」

黙り込んだブーンを見てクーが首をかしげる。

( ^ω^)「いや最初から整理して思い返すと僕すっげぇ酷い目にあってるお……」

今更です。


( ^ω^)「とりあえず! まだ五回! 五回しか死んでねーお!」

(*゚ー゚)「あら、本当にそうかしら」

( ^ω^)「お?」

(*゚ー゚)「最初と次以外のシーケンスで、クーも死んじゃったもの」

( ^ω^)「…………は?」

(*゚ー゚)「つまりぃ」

思いっきり溜めて、しぃは告げた。

(*゚ー゚)「クーが記憶を引き継いだ分、アナタの回数を使わせてもらいました」

(#^ω^)「ふざけんなあああああああああああああああああああああああああああ!」

心からの怒声は室内を通り越して、窓の外へと響き渡った。


( ^ω^)「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ」

息を荒げながらクーを見ると、彼女は珍しく目を背け。

川 ゚ -゚)「あー、うん、悪い、まさか私もこいつがこう来るとは思ってなかったもんで」

( ^ω^)「相対的に回数へってたら助けてもらってる意味ねえおおおおおおお!」

(*゚ー゚)「仕方ないのよ」

しぃは特に悪びれる様子もなく言う。

(*゚ー゚)「私の権限じゃ回数に限界があるもの」

川 ゚ -゚)「まあ落ち着きたまえ」

クーが紅茶を勧めるとブーンは一息で飲み干した。

( ^ω^)「あっぢぃいいいいいいい!」

川 ゚ -゚)「いいリアクションだな……」

(#^ω^)「漫才やってるんと違うおおおおお!」

本当にその通りなので、深呼吸して思考と心を落ち着かせる。



( ^ω^)「……あれ?」

川 ゚ -゚)「どうしたね?」

( ^ω^)「いや、仮にクーの死亡回数を僕が負担したとしてだお」

指折り数え

( ^ω^)「僕が五回死んでて、最初と次以外でクーが死んで……だから」

「まだ八回だお?」


( ^ω^)「……まあいいお、出来る事をするだけだお」

ブーンは呟く。

( ^ω^)「頼むお、親友、僕はまだやるべき事があるお」

まだ話は終わっていない――ブーンは再びクーに顔を向けた。

…………。


時間はちょろっとさかのぼる。

('A`)「畜生、見つかるとは思わなかった!」

リュックサックを背負い、全力疾走しているドクオ。

('A`)「つかまったら最後だぜ……!」

予定通り爆弾を、ラノベ(リリアとトレイズ)を参考に二つ作り、一つを実験の為に空き地で爆発させた。
爆発させたのはよかったのだが。

('A`)「火力高すぎたぜ畜生おおおおお!」

膨大な音と破壊で、元々螺子釘は入っていなかったもののあまりに目立ちすぎ、途中警官に捕まり声をかけられ、脊髄反射で逃げてしまったのだった。

('A`)「中身が見られたら終わる、俺の人生もあいつの人生も終わる!」


幸い職務質問をかけてきたのは少々ご年配の警官だったので、元引きこもりといえど現役高校生、加えて火事場の馬鹿力で逃げる事ができた。
制服からは着替えていたし、帽子を目深に被ってグラサン装備だったので顔も恐らくは見られていないだろう。
とにかく、今は駅近くの商店街、店と店の隙間の路地裏に入り、しりもちをついてぜぇぜぇと息を荒げる。

('A`)「まだ脅迫文を出してねぇぞ……畜生、畜生が口癖になってやがる……」

表通りから『何処に行ったァァァ』という渋い声が聞こえてくる。

('A`)「無線で連絡行ってるだろうから警官全部敵か……? ジョルジュさんには頼めねぇ、下手すると交通整理自体がなくなっちまう」

呼吸を整えながら、必死に考えをまとめる為、口に出して現状を把握しようとする。

('A`)「リュックの中の爆弾は処分しないと行けねぇ、でも下手に捨てたら見つかっちまう……俺の指紋べったりついてるし」

爆発させた方は念のため指紋を拭いて手袋をして作業をしたが、もう一個はまだだった。
予備のことなど考えなければ良かった、信管は通販で買ったものだが2個セットでさえなければ。



ザッ。

砂を踏む足音と渋い声が聞こえ、ドクオは身をすくめた。

('A`)「まずい、こっちに来る!」

あわてて身を起こし、路地から出ようとする。

ザッ。

しかし自分が向う先からも、足音が響き、聞こえてきた。

('A`)(かこまれた――!)

後ろには警官の、前からは正体不明の足音。
先にこちらに近づいてきたのは前からで、焦るドクオの心中とは裏腹にゆっくりと姿を見せた。


「やぁ」


(´・ω・`)「やらないか」

制服姿に見覚えはあったが、幸いか不幸か、そいつの顔自体にドクオは全く見覚えがなかった。


(´・ω・`)「落ち着いたかい?」

('A`)「ああ、すまねえな……」

ショボンが差し出してくれた缶コーヒーを飲んで一息ついたドクオは、続けて言う。

('A`)「でもなんでこんな状態で……」

(´・ω・`)「見つかるわけには行かないんだろう?」

二人は土管の中にいた。

土管。

配管工の髭親父のあれではなく、青タヌキロボットが登場する舞台の公園にある、三段重ねのあれである。
VIP市には作業の途中で放棄された開発地域がいくつかあり、なにに使われるのかはしらないがその土管の山が大量につんであった。
二人はその中で横になり、姿を隠しているのだった。

(´・ω・`)「密着……」

('A`)「!?」

表現しがたい恐怖が一瞬ドクオの背筋を凍らせた。


(´・ω・`)「しかし、危なかったね」

('A`)「あ、ああ、助かったぜ……」

焦りはまだ収まらないのか、ぐいっともう一度缶コーヒーをあおる。

('A`)「うげっふうぇっふ!」

当然横になりながらなので、飲みにくく、気管に入ってむせてしまう。

(´・ω・`)「大丈夫かい」

ドクオの手からコーヒーをとり、ハンカチを差し出す。
礼をいって口を拭くドクオを眺めながら、さりげなくショボンは缶に口をつけた。

(´・ω・`)「間接キス……」

('A`)「!?」

口に出しにくい恐怖が一瞬ドクオの背筋を凍らせた。


(´・ω・`)「まぁそれはおいといて」

リュックのなかから取り出した爆弾を持ち、かんかんと軽く手の甲で叩いた。

(´・ω・`)「これなんだけど――」

('A`)「取り扱いは慎重にいいいいいいいいい!」

こんな目の前で爆発されたらひとたまりもない。
死ななくても無事じゃすまないだろう。

('A`)「……あ、耳にきた耳に」

(´・ω・`)「狭いからね」

('A`)「とりあえずだ、助けてくれたのは礼を言うけどよ……」

(´・ω・`)「けど?」

('A`)「何で助けてくれたんだ?」

(´・ω・`)「…………」

ドクオは真面目な顔をして、問う。


('A`)「俺の爆弾を見て、警察に追われてるのをみてて、何で助けてくれたんだ? 普通、突き出すぜ」

実際もう終わりだと思った、彼が現れて何をしたかといえば、ドクオを路地の横にさらに引きずり込み、後ろから現れた警官に「向こうへ行きました」とごまかし、さらにこんな隠れ場所まで教えてくれた。

…………冷静に考えたら一緒に土管の中にいる意味がよくわからないのだが。

(´・ω・`)「……なんとなく、そうしないといけない気がしたんだ」

('A`)「?」

自分の胸元に手を当て、ショボンは言った。

(´・ω・`)「ここで君を助けないと、僕が助けてあげられるはずだった人を助けてあげられない、そんな気がしたんだよ」

君に死相は見えないけどね、と続けた。

('A`)「…………」


ドクオは黙り込み、そして考えた。
ブーンの荒唐無稽な作り話を、自分は何故信じたのか。

今のショボンの言葉と、全く同じことを考えたからだ。


『俺が! 絶対に! 死なせたりするもんかぁぁぁぁ!!』


それは誰の叫びだったのか。
間違いない、俺の叫びだ。

いつそれを感じたのかなんて覚えていない、いつそれがあったのかなんて記憶にない。
それでもその声は俺の中にあり、こんな馬鹿げた事を自分にさせているのだ。


きっと目の前のショボンは、俺と同じことを感じたんだ――
多分、彼も助けられなかったのだ。
自分の力が届かずに、彼を救えなかったのだ。

確信に近いその感情が、心にわいたその瞬間、ドクオの口は自然と開いていた。

('A`)「信じなくてもいいけど、多分アンタは信じてくれると思う」

十回の死に巻き込まれた、親友の話を。
まるで常識を語るように、自然と話し出していた。


(´・ω・`)「…………」

('A`)「…………」

概要を語るのは十分ですんだ、ショボンは黙ったままそれを聞いていて。

(´・ω・`)「成程ね」

納得したように頷いた。

(´・ω・`)「助けるためには電車を止める事が必要、ってことだね」

('A`)「……ああ」

信じてくれたのか、などと野暮な事は聞くまい。
妄言と受け止められたわけではないと、なぜか確信できた。


(´・ω・`)(初めてだよ、人の話に死相が見えたのは)

彼が語る一言一言が自分の胸をえぐっていく気がした。
何人もの死を眺めながら、助けることが出来なかった彼は、きっとどこかでまた誰かを助けられなかった。

(´・ω・`)(ここで彼と出会えたのは、きっとそういうことなんだろうな)

助けろ、と誰かが言っているのだ。
自分にそれを否定する理由は――特になかった。

(´・ω・`)「なら先ず僕らがやるべきは、現場になった踏み切りにいくことだね」

('A`)「あん?」

ショボンは土管の中で身体を動かし、ゆっくりと外に向って這っていく。

(´・ω・`)「だって時間をずらしただけで脱線事故が止まるとは限らないだろう?」

そう。

(´・ω・`)「脱線事故の原因が例えば断線だったなら、先に見つけて通報すれば止まるし、他の原因があるなら時間がある今のうちに調べればいい」


('A`)「…………」

(´・ω・`)「爆弾の予告で電車の運行をとめようっていったって、さっき君が捕まってたら問題なく電車は動いてたはずだし、爆弾の残骸は公園においてあるんだから時限式じゃないってのは予想がつくしね」

ショボンは続ける。

(´・ω・`)「それが使えるのは運行するちょっと前、しかも君がつかまらないって言う条件付だ」

だから。
身体を先に土管から出し、爆弾をひょいととりあげ。

(´・ω・`)「こうしよう」

手早く全体をハンカチでぬぐい、指紋をふき取ると爆弾をその場で解体してしまった。
それはそれは見事な手際で、あっという間に爆弾はただの瓶と粉と信管になる。

('A`)「アーッ!!」

(´・ω・`)「証拠を持ち歩いて現地に向うわけにもいかないよ」

('A`)「そりゃそうだけど……お、おおう……」

俺の苦労は一体、と呟くドクオ。


(´・ω・`)「現物がなくても爆弾が爆発したって言う事実はちゃんとある、最悪電車を止めて時間をずらすだけならそれで十分さ」

('A`)「……それもそうか」

ドクオも次いで這いずり出て。

('A`)「んじゃさっさと向こうに……」

(´・ω・`)「その前に」

ショボンはきっぱりとさえぎった。

(´・ω・`)「着替えていこう」


服装が同じだと警官に見つかる可能性があるので、まずショボンとドクオは服を交換した。
その上でドクオが自宅に戻り服を着替え、ショボンの元に戻る。
リュックは廃棄することも考えたが、ショボンは証拠を残していくのはまずいと言い張り、折りたたんで自分の鞄の中へと入れた。

('A`)「…………」

(´・ω・`)「……何か」

('A`)「いや、あの、そういえばアンタ学校は?」

ショボンの制服を渡しながら尋ねると、彼は堂々と答えた。

(´・ω・`)「うん、さぼったけど」

('A`)「……」

深くは聞くまい。

…………。


川 ゚ -゚)「さて」

優雅に足を組んで、紅茶をすすってからクーは告げる。

川 ゚ -゚)「本題に入ろうか」

ブーンも応じるように紅茶をすする。

川 ゚ -゚)「当然、君を殺そうとしている人物についてだ」

( ^ω^)「お」

そう。
それを知るために、今日自分はここに来たのだ。

川 ゚ -゚)「世界が計算式で成り立っている、と言う話はしたな?」

( ^ω^)「なんとなく覚えてるお」

川 ゚ -゚)「なんとなくじゃ微妙に困るんだがまあいいや」

いいらしい。


川 ゚ -゚)「どこか違う出来事が起これば、たとえ同じ、例えば君が経験してきた『今日』でもそれぞれ差異が生まれる」

( ^ω^)「わかってるお」

川 ゚ -゚)「だが言い換えれば『計算式の数値が同じなら全く同じ一日なる』と言うことに他ならない」

クーは指を、ブーンに向ける。

川 ゚ -゚)「さて、考えてみよう、君は何故、どうやって記憶を取り戻す?」

( ^ω^)「お?」

それは

( ^ω^)「前の一日と同じ事がおきたら……」

川 ゚ -゚)「もっと正確に突き詰めれば『前の一日と同じ出来事かつ自分の死に直結している事』かな?」

続ける。

川 ゚ -゚)「そして、君が記憶を取り戻さない限り世界が持つ計算式は基本的に極端には変動しない、つまり君が記憶を取り戻すというその現象こそが君の武器と言うわけだ」

記憶を取り戻した君は前の一日と同じ動きをとらないだろう? と続ける。

川 ゚ -゚)「だが思い出すといい、君の記憶の中で一人だけ」


「最初から行動を変えていたものがいないか?」




( ^ω^)「それは……」

川 ゚ -゚)「例えば朝食のおかずを君の分まで食べてしまってみたり」

クーはそれを見てきたかのように

川 ゚ -゚)「例えば母親を唆して君の分を食べさせてしまったり」

知っているのが当然のように


川 ゚ -゚)「本の渡し方を変えてみたり、な」


言い切った。



川 ゚ -゚)「全てのシークエンスを見直して『君の死に直結している行動を手段を変えながら行っている人物』は一人しか居ないのだよ」

ブーンは立ち上がった、立ち上がって、クーの胸倉をつかみあげていた。
だが彼女はそんな事に一切とらわれず、ただ真実のみを口にする。

川 ゚ -゚)「君を殺そうとし君を死地に追い込み君が死ぬ事を望んでいる人間、それは――」








「君の妹だ」







川 ゚ -゚)「認めたくないかね?」

胸倉をつかまれ、多少息苦しそうではあるものの、表情も態度も全く変えず、彼女は続ける。

川 ゚ -゚)「なら考えてみたまえ、一度目、君は本を受け取り、図書館へ返しにいった、そして死んだ。」

ぎりぎりと歯を食いしばる微かな音が聞こえる。

川 ゚ -゚)「二度目、同じように本を渡そうとして、君の記憶が戻った」

クーは構わず、核心へと言葉を走らせる。

川 ゚ -゚)「三度目、彼女は君が記憶を取り戻す事を知り、違う手段で本を忍ばせた」

( ^ω^)「ほ、本を見たら記憶を取り戻すお……わざわざ忍ばせておく必要なんてなかったお! 見せたら記憶を取り戻すんだから最初から見せなきゃいいお!」

川 ゚ -゚)「だが君は記憶を取り戻さなかった」

( ^ω^)「!」


川 ゚ -゚)「そして実際ショボンがいなければ、君はまた死んでいただろう、トラックに轢かれて」

( ^ω^)「そ、れは……」

川 ゚ -゚)「つまり君に本を渡す、と言う行為はそのまま図書館の前の交差点へ君を運び――殺す為だったとしたら?」

( ^ω^)「――――」

声にならない声が喉の奥から、微かに掠れて聞こえる。

川 ゚ -゚)「どっちにしろ本がなければ君は図書館の前に行かない、ならばあのトラックに轢かれることは無い。思い出すにしろださないにしろその行為は必然なのさ」

逆に言えば同じ方法で死ぬ事は『ほぼ』無い様なシステムにはなっているようだがね、とクーは付け加えた。

川 ゚ -゚)「そして君を殺す為の数値はまだ残っている――君はどうするね?」

( ^ω^)「そんなもん……」

まだ落ち着かない頭をこんがらがせながら、叫ぶ。

( ^ω^)「止めるに決まってるお!」

…………。


(  ゚Д゚) 「なんつーか、まぁ」

('A`)「…………」

(´・ω・`)「…………」

( ´_ゝ`)「…………」

(´<_` )「…………」

(  ゚Д゚) 「馬鹿やったなあ、お前等」

ギコと名乗った刑事ははぁ、とため息をついた。
よくわからん唐突な交通整理に人が借り出された所為で、刑事である彼が聴取をしていた。

(  ゚Д゚) 「置き石は立派な犯罪だぜ、これで電車が倒れて誰かが死んだらお前等死刑または無期懲役」

本当である。
その声にびくりと反応した兄者と弟者はべたりと机に頭を垂れた。

( ´_ゝ`)「すん」

(´<_` )「ませんっしたぁぁぁ!」

はぁ、ともう一度ため息をついて。

(  ゚Д゚) 「もうこんな悪戯すんじゃねーぞ」

…………。


時間はまたちょっとさかのぼる。

一駅の間の踏み切りだが、向こうの駅から歩いた方が結構近いので、二人は電車に乗って移動し、そして踏み切りの前まで来た。

('A`)「…………」

(´・ω・`)「…………」

('A`)「なんもねーな」

(´・ω・`)「何もないねぇ」

周囲の柱やレール、上にある電線などを注意深く観察してみたが、特に老朽化してたりする事もない。

('A`)「でも脱線事故なんてめったなことじゃおきねえよなぁ」

(´・ω・`)「うん、そらレールが丸々無いとかだと危ないけどね」

危険を承知で、踏み切りの中に入り前後のレールも探ってみたが、素人目では特に異常は見当たらなかった。


(´・ω・`)「よし、隠れよう」

('A`)「あん?」

(´・ω・`)「踏み切り自体に原因が無いなら人為的なものかもしれないからさ、遠くからチェックしよう」

幸い、この踏み切りを利用する人間は少ない。
駅が近い割りに道が駅に直結しておらず、踏み切りの拘束時間が長いというのが理由の一つだが。

(´・ω・`)「それ故に悪戯もしやすい、ってことさ」

('A`)「成程」

傍から見て一番怪しいのはどう考えてもこの二人だが気にしない。


そして二時間が経過した。

(´・ω・`)「…………」

('A`)「…………」

日が沈み始めた時刻で、段々眠くなってくる。

(´・ω・`)「ポテト食べる?」

('A`)「喰う」

監視から三十分経過した時点で購入に走ったマックの内容物をもそもそと食べながら、二人は踏みきりから死角となる『上』側の道の片隅に隠れていた。
いい具合に雑草が伸びたそこに座り込み、時折走ってくる電車にびびりながら時間が経過していく。

更に時間が経過して、一本の電車が通り過ぎる。
ショボンが腕時計をちらりと眺めると時間は六時五十分だった。

(´・ω・`)「……そろそろ潮時かな」

('A`)「ああ」


ドクオは携帯電話を取り出した。
ブーンの話では、電車が脱線するのは七時少し前と言うことだった。

つまり、次に来る電車と言うことになる。

脱線の原因がつかめない以上、爆弾を使った脅迫をするしかない。
そう思ってゆっくりと、記録してある番号を呼び出そうとしたその時。

( ´_ゝ`)「さすがだな」

(´<_` )「さすがだな」

ランドセルを背負って『下』側から少年二人が上がってきた。
顔が全く同じである。

('A`)「……双子か?」

(´・ω・`)「しっ」

二人は雑談をしながら踏み切りを渡ろうとし、ふと足を止めた。

(´<_` )「どうした兄者」

( ´_ゝ`)「何、ちょっとな」

レールの周りに敷き詰められた石を何とはなしに拾い上げ――

( ´_ゝ`)「ほい」

その上にからん、とおいた。


(´<_` )「兄者、何だそれは」

( ´_ゝ`)「なんとなくやってみたくなった、病み付きになりそうだ」

(´<_` )「どれ、ここは俺も一つ」

つられるようにもう一人の少年もレールの上に石を置き始める

('A`)「なあにやっとんじゃてめぇらあああああああああああああ!」

その光景を見てドクオが飛び出したのは無理ないことだっただろう。
というかアクションの無い時間ほど退屈なものは無いので怒髪天に来たのか、元引きこもりとは思えないほどの大声と俊敏さだった。

( ´_ゝ`)「な、何事だ弟者!」

(´<_` )「わからん兄者!」

当然の様に困惑した二人は即座に逃げようと振り返り。

(´・ω・`)「やあ」

そこにショボンを見た。


('A`)「あれ何時の間にそっち側に……」

(´・ω・`)「いいからいいから」

即座に首根っこを捕まえて踏切から引きずり出し(ついでに足で置かれた石を蹴り飛ばし、レールの上から排除した)、ドクオの元へと向ってくる。

( ´_ゝ`)「な、何事だ……」

(´<_` )「ひ、ひいい……」

怯える兄弟に、ドクオとショボンの視線が刺さる。
カン、カン、カン、カンと鳴り出す踏み切りの音。

遮断機が閉まり、『下』から一台のパトカーが向ってきて、止まる。

('A`)「頼む……!」

(´・ω・`)「これで――」

数十秒して、電車が向ってきて、すぐに通り過ぎる。
何事も無く、ただ当然の様に。



流石兄弟を拘束したまま二人は、遮断機が上がるのを確認し。

(;'A`)「ふっはあああああああああああああ!」

(;´・ω・`)「あせったあああああああああああ!」

同時に歓声を上げた。

(  ゚Д゚) 「ほう、何が焦ったって?」

そして真横にパトカーが止まっていた。
現状。

高校生二人が小学生をとっ捕まえて泣かせている図。

(  ゚Д゚) 「……署まで来てもらおうか?」

幸い警察署は下に向ってすぐ傍だったので。
二人に拒否権は無いようだった。

…………。


(  ゚Д゚) 「お前等もさぁ、何か許せなかったのはわかるが子供泣かすんじゃねえよ……」

('A`)「いや、ほんとすんません」

(´・ω・`)「正直反省している」

流石兄弟の親が二人を引き取り、部屋に三人だけになったところでギコは口を開いた。

(  ゚Д゚) 「別に間違ったことを言ってるわけじゃないけどな」

('A`)「焦ってたんす」

(´・ω・`)「いや本当にすまない」

口々に反省の言葉を述べるが、まさかあそこまで泣かれるとは思っていなかった。

(  ゚Д゚) 「まぁいいや、お前等もう帰っていいぞ、暗いから道中だけ気をつけとけ」

('A`)「お世話になりました」

(´・ω・`)「もう帰ってきませんから……!」

(  ゚Д゚) 「いやそういう芸はいらんから」



警察署から出て、数分歩く。
駅に向うのであの踏み切りは経由せず。

('A`)「いや、一時はどうなる事かと思ったな」

(´・ω・`)「そだね。ところでこれからどうする?」

('A`)「一回ブーンと連絡とって……ん?」

言った直後、携帯がバイブ音を奏でる。

('A`)「おっと、監視の時にマナーモードにしてたの忘れてたぜ……メールか」

それは見覚えのある、ブーンからのアドレスだった。

『タイトル:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:                』

(´・ω・`)「受信メールから直接返信してるな……」

('A`)「気にすんな!」

本文を見て――ドクオは息を呑んだ。


『ツンを探してくれお!』

('A`)「ツンちゃんを……?」

(´・ω・`)「誰だい?」

('A`)「いや、あいつの妹だけど……なんでだ?」

(´・ω・`)「少なくともこの状況に関係があることなんだろう」

('A`)「だな」

脱線はしなかった、という連絡と共に、今何処にいるかを尋ねるメールを送る。
自然と小走りになりだす足に、また身をゆだねていく。

…………。


川 ゚ -゚)「どうするかは君次第だ、どうにもならないかもしれないが――」

既に部屋を去ったブーンに対して、クーは語りかけるように呟く。

川 ゚ -゚)「私は私ですべき事を、しておくか」

普段は使わない自宅据え置きの電話の、親機をそっと手に取った。

…………。


ドクオとショボンが流石兄弟を捕縛した、ちょうど同時刻。

ξ゚听)ξ「あ、おかえりー」

ツンはごく普通に、そんな言葉を放った。
玄関に立ち尽くす兄の姿を見て、眉を寄せる。

ξ゚听)ξ「朝行き成り飛び出していったから何かあったのかと思ったじゃない、ねぇ私やっぱりサラミ――」

( ^ω^)「お前かお?」

ピザのチラシを片手に持っていたツンの動きが、ぴたりととまる。

ξ゚听)ξ「何の、話?」

(  ω )「お前なのかお、ツン」




ξ゚听)ξ「だから、何の話――」

(  ω )「お前が僕を殺そうとしてるのかおおおおおお!」

それは心からの叫びだった。
認めたくなかったから。
知りたくなかったから。

ξ゚听)ξ「……はぁ?」

顔をしかめて、ツンは呆れたように。

ξ゚听)ξ「何言ってるの? 本当に調子悪いの?」


そう、言って欲しかったから。

ξ゚听)ξ「…………」

だが現実のツンは。

目を伏せ。

そしてあげた。

ξ゚听)ξ「……何時気がついたの?」

認めたくない世界を、肯定する一言を。


(  ω )「そう、なのかお……」

ξ゚听)ξ「…………」

(  ω )「僕は……お前と、お前に……」

ξ゚听)ξ「ふん」

腕を組んで、何処までも澄み切った目で、ツンは言う。

ξ゚听)ξ「私は何もしてないわよ」

( ^ω^)「……!」

その台詞の意図は。

ξ゚听)ξ「兄貴が勝手に死んだだけ、そうでしょ?」



( ^ω^)「ツ……ン……」

呆然とするブーンに、告げる。

ξ゚听)ξ「あーあ、残念残念残念だわ」

そのまま歩いてくる、何かされるのかと身構える前に靴を履いて、ブーンの横を通り過ぎる。

ξ゚听)ξ「後何回だっけ?」

言葉が、胸をえぐった。
そのまま家を出て行く妹を、ブーンは追うことが出来ず。

(  ω )「――!」

膝を突いて、大声で、泣いた。
背後で扉が閉まった音に、体は反応しなかった。

…………。


('A`)「いねぇなぁ」

(´・ω・`)「いないねぇ」

ドクオの携帯のなかにあったツンの画像を頼りに、二人は駅の周辺を散策していた。
この時間帯はただでさえ人が多いわ暗いわなので、特徴のある巻き毛が目印とはいえ作業は難航していた。

('A`)「手がかり皆無だもんなぁ、一度ブーンに電話してみっか」

夜の人ごみで携帯電話を操作しながら歩くとどうなるか。

(´・ω・`)「あ」

その言葉と同時に、どむり、といい音がした。

('A`)「あ、すんませぶば」

最後のぶば、は単にいえなかった台詞が口の中で空転しただけであり。

( ・∀・)「テメェ何っかってんだオォ!?」

前方不注意でぶつかった相手に思い切り顔面を殴られた音だった。


('A`)「うっげ、げ!」

奇妙な声を出して、そのまま地面に尻餅をつくドクオ。

(´・ω・`)「止めるんだ!」

ショボンは追い討ちをかまそうとするDQNの腕につかみかかるが、彼も喧嘩に強いというわけではない。

( ・∀・)「テメっんのかっラァ!」

(´・ω・`)「日本語でおk」

無理やり動かされる腕に振り回され、狙ったようにドクオの横に倒れこむ。
周囲の通行人は若者同士の喧嘩に関わりたくないのか、見てみぬフリをするばかりだ。

('A`)「畜生、こんな事してる場合じゃねえんだよ!」

今までこんなことしたこともなかった。
起き上がってDQNにつかみかかったドクオの腹に、勢いづいた蹴りがぶち込まれる。


('A`)「うぎっ!」

( ・∀・)「上等じゃねえかっの野郎 あ?」

起き上がって何とか加勢しようとするショボンと
倒れこんでいたドクオはその時、その姿を見た。
さらに追い討ちを放とうとしたDQNは、残念ながらまだそれに気がつくことができなかった。

肩に手が置かれる。

('、`*川「ねぇ」

圧倒的存在感を携えて。

('、`*川「私の生徒に何してるの?」

…………。


( ・∀・)「はい、すんませんでした、反省してます」

('A`)「まじごめんなさい」

(´・ω・`)「何で僕まで……」

駅前の路上で横一列に正座させられた三人は、女性教諭による説教をかまされていた。

('、`*川「大体こんな時間に学生がうろついてるってだけでもあれなのに貴方達はもー!」

('A`)「先生すんませんマジ急いでるんです! ここら辺で勘弁してください!」

ドクオの必死の形相に何か感じるものがあったのか、すこし引きながらも熱弁を止めてペニサスは考えた。

('、`*川「んー……そうねぇ、人目も気になるしね」

(´・ω・`)「いや自覚あったんですか」

ショボンは二年生だが授業ではペニサスが現れる事もあるので知っていた。


('、`*川「はい、じゃあそこの君も。喧嘩はいいけどあんまり頻繁にやっていいものじゃないからね、男の喧嘩はここぞと言う時、自分の意思を貫く為だけにしなさい」

(´・ω・`)「女の喧嘩は?」

('、`*川「誰かを守る時だけよ」

かっけぇ。
この女かっけぇ。

大体DQN(モララーと言う名前だった)も同じ感想を抱いたのか、何かにうたれたかのようにその台詞を反芻した。
立ち上がり、頭を下げてからふらふらと夜の街へ消えていく男を見ながら、ドクオとショボンは息を吐く。

('A`)「案外いい奴なのかもしれないな……」

(´・ω・`)「いや先生が強すぎただけだと思う」

なにがあったかは深く語らないが、とりあえず近くの石垣に拳大の穴があいている理由はこの数学教師にある。




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