:( ^ω^)は十回死ぬようです・最後の一日
:後編開始

('A`)「つーか先生は何でここに……」

('、`*川「んー……」

少々いいにくそうな表情をし。

('、`*川「クーさんから電話があったのよ」

('A`)「へ?」

('、`*川「多分そっちで困ってる生徒がいるから、助けてやってくれって」

クー、といえばすぐに出てくる。
素直クール、ブーンがプリントを届けている引きこもり。

('、`*川「で、貴方達は何してるの?」

君達、友達だったんだ、という台詞は飲み込んでペニサスは尋ねた。


('A`)「そうだ、ブーンの妹を探してるんです!」

(´・ω・`)「見かけませんでしたか?」

('、`*川「う、うーん、彼に妹さんがいるのは知ってるけど……顔は見たこと無いわよ」

('A`)「そっすよね……」

多少考え込んで、台詞を続けた。

('、`*川「まぁ事情はわからないけど手伝ってあげましょうか? 写真とかあるかしら」

('A`)「あ、これっす」

携帯電話を開いて写真を表示しようとした瞬間。
ブゥゥゥゥン、と振動音が鳴り出した。

(´・ω・`)「あ」

それと同時に、ショボンが指差した先――巻き毛の少女が一瞬見えて、人ごみに消えていった。

…………。


(  ω )「…………」

泣くだけ泣いたらそれ以上は声も出なくなった。
そのままばたりと玄関に倒れこみ、気力をなくす。

(  ω )「僕は……」

口からこぼれるのは、今までの自分への否定。

(  ω )「何を、していたんだお……」

実の妹と。

(  ω )「僕は……!」

殺しあっていただなんて。
――その時、自分のポケットに入っていた携帯電話が鳴り出した。

(  ω )「――――」

無視していたが、数分間待っていてもずっと着信音が響いているので、億劫なしぐさで電話を取り出し、相手も見ずに通話ボタンを押した。

『よぉ』

その声は

( ゚∀゚)『元気そうだな兄弟』

刑事のものだった。


( ゚∀゚)『交通整理は一端解いた、流石にもー必要ねえだろ』

ジョルジュは軽い口調で続ける。

( ゚∀゚)『それと朗報、ドクオの野郎が踏み切りで置石してた小僧二人を捕まえた、電車は無事に通過したぜ』

お前の話が本当なら、と前置いてから。

( ゚∀゚)『お前の母さんも無事だろうぜ』

その言葉に、はっと顔を上げた。
そうだ。
僕は何をしている。

( ^ω^)「――ジョルジュさん」

( ゚∀゚)『あ?』

( ^ω^)「ありがとう、ございましたお」

( ゚∀゚)『ああ、まぁいいってことよ』


んでよぉ、と言葉を区切ってから。

( ゚∀゚)『ここまでやらせといて ございました はねーだろ。ほら次は何すんだ大将』

( ^ω^)「……本当にありがとうございますお」

ブーンは感謝した。
ここまで人を巻き込んでおいて。
友人の将来を犠牲に仕掛けてまで。
戦ったのだ。

弱音を吐こうものなら、この男に殴り飛ばされる。
だから前へ進むために、ブーンは決意を固め、告げた。

…………。


そして、

('A`)「今おっかけてる!」

通話を続けながらペニサス、ショボン、ドクオの順で走っていた。

( ^ω^)『頼むお! お前だけが頼りだお!』

電話の向こうからも荒い息遣いが聞こえることを察するに、ブーンもまた走っているのだろう。

('A`)「詳しい事は後で聞く、今は任せとけ!」

電源ボタンを押して手早く通話を終わらせ、加速しショボンと並ぶ。

(´・ω・`)「今のがブーン君かい?」

('A`)「ああ、すっげーおもしれぇ奴だよ」

(´・ω・`)「そうか、僕はまだあったこともないんだね、彼に」

だけど不思議だなぁと。

(´・ω・`)「気心しれた親友だった気が、するんだよね」

('A`)「多分すぐにそーなるっすよ」

ドクオは深く追求せず。


(;'A`)「つーかはえーよせんせええええええい!」

人ごみを避けながらの追走なので、どうしても速度は遅くなる。
というか既にツンの姿が見えないので大雑把な方向に向って走っている行為でしかない。

('、`*川「人ごみは避けろ! 今週のサンデー読んでないの!?」

(;'A`)「梁山泊の弟子になった覚えはねーよ!」

(;´・ω・`)「むちゃくちゃだなあの教師!」

しかし十分近く走り続けても、ツンの姿は見えず。

(;'A`)「ぜぇっ」

(;´・ω・`)「はぁっ」

二人はほぼ同時に体力の限界を感じ、その場で膝をついた。


('A`)「ま、マジでどこいったんだあああ!」

(´・ω・`)「あ、足が……」

('、`*川「貴方達体力無いわね……」

('A`)「いやあんたの規格と一緒にされても困るんだけど!」

あそこまで大見得きっといてどうしよう……と頭を抱えたその時。

(´・ω・`)「あ」

ショボンが再び声を上げた。

('A`)「あ?」

彼が指差すその先には。

ζ(゚ー゚*ζ「〜♪」


('、`*川「…………」

('A`)「…………」

(´・ω・`)「…………」

('、`*川「巻き毛ね」

('A`)「縦ロールだな」

(´・ω・`)「……ごめん、後姿じゃよくわからなかった」

時刻は八時を回ろうとしていた。

…………。


ブーンは走っていた。

まだ間に合うはずだ。

その場所へ――!

( ^ω^)「やっぱり、お」

彼が走る先、目の前には

(*゚ー゚)「…………」

彼女の姿があった。
現れては消え、まるで誘導するように。

( ^ω^)「いい度胸だお……!」


挑むように、走り続ける。
彼女の姿は自分にしか見えていない、だからこそ失速しない。

途中の道を見るだけで、完全にその姿が消える場所は察しがついていたけれど。

( ^ω^)「そう」

たどり着いた場所は。

( ^ω^)「僕は一回、ここで死んだんだからお」

クーのすむ、マンションだった。

…………。


適当にぶらぶらと歩いていた。
何か目的があった訳ではない、勢いで出てきてしまったから。

どうしようか、とぼんやり考えていると『彼女』が見えた。
ゆっくりと手招きをして、自分を導こうとしている。

それに逆らうだけの理由は特になく、招かれるままにその建物にはいった。
オートロックのガラス戸は自動で開いた、まるでそれが当然の様に。

エレベーターにのると自動で九階のランプがついた。

数十秒で到着し、扉が開く。

そのまま右を向いて――

「おっと」

声が届いた。


( ゚∀゚)「残念ながら通行止めらしいぜ、お嬢ちゃん」

ξ゚听)ξ「――――!」

それが自分の敵だということに、ツンはすぐに気がついた。

…………。


( ゚∀゚)「上だ! 走れ!」

一拍遅れて、階段側から上がってきたブーンに、ジョルジュは叫んだ。
なぜか尻餅をついている、ジョルジュは腕を回しながら。

( ゚∀゚)「屋上だ屋上! 走れ走れもっと走れ!」

手を振り導く。

( ゚∀゚)「あとはテメェの仕事だろうが!」



( ^ω^)「本当に……」


だん、と力強く上がってきて。


( ^ω^)「ありがとう……」


そのままわき目も振らず、屋上へ続く階段へと足をかけ。


( ^ω^)「ございますお!」




走る。
すぐ後ろにジョルジュの気配を感じる。

やはりというかなんと言うべきか、屋上へ続く、普段は封鎖されているはずの扉は、当然の様に開いていた。

開いたその先には、フェンス際の金網に触れ、風に吹かれながら、苦笑しているツンと。

(*゚ー゚)「……」

その背後、地面の無い空中に浮かぶしぃの姿。

( ^ω^)「……ツン」

ブーンは一歩前に踏み出す。

( ^ω^)「僕はきめたんだお、誰も死なせずに終わらせるって」

それは。

(*゚ー゚)「無理よ――」

( ^ω^)「無理じゃないお!」

声を張り上げる。


( ^ω^)「助けてくれたお! ドクオも! ジョルジュさんも! 僕の顔をまだ見たこと無いショボンも! あんなたわごとを信じて助けてくれたんだお!」

後ろから追いかけてきたジョルジュは、腕を組んで『へっ』と息を漏らした。

( ^ω^)「だから僕が諦めるわけにはいかねーんだお! 相手がツンでも! 誰でも! 絶対に!」

その言葉が響いてから、どれほど時間がたっただろう。
数秒が数時間に感じても、過ぎた時間の価値は等価。
ツンは静に口を開いて、呟いた。

ξ゚听)ξ「だったら、始める?」

( ^ω^)「何をだお」

ξ゚听)ξ「決まってるじゃない」

ツンは微笑んだ。
涙を流しそうな、壊れそうな笑みで。

ξ゚听)ξ「答えあわせ、よ」

…………。


ξ゚听)ξ「私がしぃとであったのは六日前……いえ、違うわね、まだずっと『今日』だもんね」

( ^ω^)「…………」

ξ゚听)ξ「だから、『今日』が始まる前の昨日の朝だった」

ツンは言う。

ξ゚听)ξ「部屋の隅に彼女はいたわ。そして言ったの。『私かお兄ちゃん、どっちかが消えなきゃ行けない』って」

しぃはただ、希薄な存在の様に浮いていた。

ξ゚听)ξ「そんなの信じられるわけなかった……だけど、消えちゃったんだもん」

( ^ω^)「なにがだお」

ξ゚听)ξ「友達よ」

その言葉が何を意味するのか。


ξ゚听)ξ「私しか覚えてなかったの、ずっと仲良くてうちにも何度も遊びに来てた子なの、学校でもずっと一緒だった子なの」

叫ぶように言う。

ξ゚听)ξ「でも誰も覚えてなかった、友達だけじゃない、お母さんも兄貴も誰も、そのこの存在自体最初からなかったみたいに!」

それが計算式に修正を加える行為。
しぃが行うべき、仕事。

ξ゚听)ξ「怖かったよ、怖かったの、私だってああやって消されちゃうんだって、それで言うのよ。『アナタはどっちがいい?』って」

( ^ω^)「……ツン」

ξ゚听)ξ「私、消えたくなかった」

一筋だけ、涙がこぼれた。

ξ゚听)ξ「ただ死ぬだけじゃない、消えた後の世界では私の事は誰も覚えてない、存在してなかった事になる、私の生きてた証なんて何処にもなくなっちゃうんだって!」

後はただの、絶叫だった。

ξ゚听)ξ「私そんなの絶対嫌だもん!」






「ふざけんなああああああああああああ!」





その台詞は、ブーンでもジョルジュでもない。

('A`)「消えたく、ねぇだと!」

ドクオの声だった。

('A`)「だったらお前はテメェの兄貴が消えるのを許容できんのかよ! 消えちまうんだぞ! お前に兄貴がいたってすら事実すら!」

叫ぶ。

('A`)「俺から俺の親友を奪うんじゃねえよ! 俺は嫌だ! 俺が嫌だ! 俺からブーンの全部が無くなるなんて絶対に嫌だぜ!」

拳を突き上げ――その指をツンに向けた。

('A`)「だから俺はお前の敵だ、何度でも何回でも殺してみろよ!」

そう、誓ったのだから。

('A`)「俺は絶対、こいつを助けてやるってな!」


現れたその姿に驚愕したのは、ツンだけではなかった。

( ^ω^)「ドクオ……!」

('A`)「……いよぅ、手間取ったぜ」

扉から現れたのは彼だけではなく。

(´・ω・`)「やぁ、始めまして」

( ^ω^)「ショボン先輩……!」

さらに背後から。

('、`*川「本当に……」

(  ゚Д゚) 「しぃなのか……?」

ペニサスとギコが現れ。


「だからそう言ったではないか」


川 ゚ -゚)「そこにいる、とね」

最後にクーが、そこにいるのが当然とばかりに、歩みを進め、静かにツンの元へと向かっていった。


その空間で最初に口を開いたのは、ペニサスだった。

('、`*川「――しぃ、なの?」

空中に浮かぶ少女に、問いかける。
たいして、しぃは首をかしげて。

(*゚ー゚)「あら、私が人間だった頃に関係のあった人なのかしら」

(  ゚Д゚) 「……まぁ浮いてる時点で幽霊っぽいけどな、お前」

はぁ、とギコがため息を漏らす。

( ^ω^)「なんで皆、ここに……」

( ゚∀゚)「俺が連絡した」

片手を挙げて、ジョルジュが言う。

( ゚∀゚)「人手は多い方がいいと思ったんでな……まさかビンゴだとは思わなかったけどよ」

(  ゚Д゚) 「はっ、お前はいつもそうじゃねえか」

相方の変わらぬ態度に、ギコは呆れた様に。


(  ゚Д゚) 「適当にやってても最終的には最高の結果になってんだぜ、こいつ」

('A`)「まさか先生とこの刑事さんが知り合いだとは思わなかったけどな」

目標を見失った三人が行った事は、ペニサスの「頼りになる知り合い」に相談する事だった。

(  ゚Д゚) 「頼られて何よりだぜってこったぁな」

( ^ω^)「皆……」

ツンの少し手前に止まり、振り返ったクーは言う。

川 ゚ -゚)「さて、これほどの人間が集まったわけだが……しぃ、どうするね?」

彼女の問いに、少女は呟く。

(*゚ー゚)「なあにも変わらないわ」

…………。


(*゚ー゚)「だって貴方達が何をしても、私に触れる事はできないもの。元凶たる私には」

('、`*川「しぃ!」

(*゚ー゚)「アナタ、だあれ?」

('、`*川「――ッ」

その言葉に、雷に打たれたように座り込むペニサス。

(*゚ー゚)「それよりツン、続けたら?」

ξ゚听)ξ「……え?」

呆然としていたツンに、しぃが促す。

(*゚ー゚)「アナタは問われたじゃない、『兄貴が消える事を許容できるのか』って」

ξ゚听)ξ「……あ」

それは。

(*゚ー゚)「ちゃんと答えなきゃ。 だってここはクライマックスシーンだものね?」


くすくすと笑うその様は、まるで誰かをいじめて喜ぶ子供のものだった。

( ^ω^)「…………」

ξ゚听)ξ「だ、だって……そんなの……だって」

ツンは、言った。
ぼろぼろと出てくる涙に、喉がつかえているようだった。

ξ゚听)ξ「兄貴が消え、ちゃえ、ば……」

しぃの笑みが、より一層濃くなって。

ξ゚听)ξ「私からも記憶がきえ、て、罪の意識なんて残らな、い、って……」

( ^ω^)「……そうかお」

ブーンはただ、それだけをいった。


(´・ω・`)「それは――」

ショボンは思わず、一歩を踏み出していた。
普段は冷静になれと言い聞かせている自分に、過去の全てが否定をした。
死を、それこそ飽きるように見てきた自分だからこそ、その言葉は許せなかった。

(´・ω・`)「身勝手すぎるだろう――!」

その肩をギコが押さえて、止める。

(  ゚Д゚) 「待て!」

(´・ω・`)「でも!」

(  ゚Д゚) 「これはあの二人の問題だろうが!」

そういわれて、踏みとどまる。
ツンを見ると、膝を突いて、泣いていた。
叫びの様に言葉を吐き出す、決壊が始まっていた。


ξ;凵G)ξ「だって死にたくないもん! 私だってこんな事したくなかった! 知りたくなんて無かったわよ!」

でも。

ξ;凵G)ξ「兄貴のことだって好きよ、大好きよ、だけど――」

顔を手で覆い。

ξ;凵G)ξ「こんな力いらない! 誰かを否定し続ける才能なんていらない! でも! それでもぉ!」

静止した世界のなかで、今、この現状では。





ξ;凵G)ξ「それでも私は死にたくないよ、生きてたいよ!」





それが、全てだった。


( ゚∀゚)「……成程な」

('A`)「成程……って」

ジョルジュの呟きに、ドクオがにらむ。

( ゚∀゚)「別におかしいことじゃねえっつってんだよ」

煙草を取り出し、火をつける。
そのしぐさはこのシーンで、嫌になる程、様になっていた。

( ゚∀゚)「むしろ自然だろ。死にたくねぇなんてそんなもん、全生物全生命が共通して持ってる唯一のモンだろ。第一」

煙を吐き出し。

( ゚∀゚)「こいつもそうやって動いてたんじゃねえのかよ」

('A`)「……」

だからブーンは、ツンに一歩近づいた。

( ^ω^)「大丈夫だお」


ξ;凵G)ξ「……え?」

( ^ω^)「僕は誰も死なせないときめたお、それはもう覆らないことだお」

さらに数歩踏み込んで、そこで止まる。

( ^ω^)「その中にはツン、お前も入ってるお」

ξ;凵G)ξ「――――――!」

右手をさしだして、微笑みかけた。
怯える妹を、安心させるように。

( ^ω^)「大丈夫だお、信用しろお。僕を誰だと思ってるお」

ツンが手を伸ばせば届く距離で、ブーンは言う。


( ^ω^)「僕はお前の兄貴だお。妹一人助けるぐらい、どうってことないお」

ξ;凵G)ξ「おに、ぃ、ちゃ……」

ツンもまた、呼応するように右手を伸ばした。



( ^ω^)「だから安心するお、お前は死なせない、誰も死なせない、お前は僕が守るお」



ξ;凵G)ξ「う、ぇ、あ、ぁ、あああああああああああああん!」

胸に泣き叫ぶ妹を抱きしめ、ブーンはにらみつける。
宙に浮く彼女は、それでもまだ微笑を携えたままで。

(*゚ー゚)「八時、十四分、よ」

タイムリミットを口にする。


(*゚ー゚)「後一分で誰かが死ぬわ……ここから飛び降りて、ね」

( ゚∀゚)「――ギコ!」

(  ゚Д゚) 「応!」

二人の行動は迅速だった。
振り返り、即座に九階へと続く階段まで下りる。

自殺が起こったのは九階だった。
誰かが飛び降りる前に抑えれば――

(*゚ー゚)「無駄よ、無駄ね」

だがしぃはそれをあざ笑うかのように、指を鳴らす。

ぱちんと可愛い音が響いた瞬時、先ほどまでツンの背にあった金網が裂けた。

(*゚ー゚)「誰か一人が死んだら――あなたの負けなんでしょう?」

挑戦的な言葉に、ブーンは「そうだお」と返した。

( ^ω^)「だから、誰も死なせないって言ったお」

ツンをそっと体からはなし、しぃに向って進む。

ドクオも、ショボンも、ペニサスも、クーも、その様子をじっと見ていた。


川 ゚ -゚)「――いいのかね?」

クーとすれ違う際、そう問われ。

( ^ω^)「何の問題もないお」

ブーンは笑んで、それに返した。

川 ゚ -゚)「はははは、ははは、はーっはっはっは!」

そしてそれ以上高らかに笑う、クーはにやりと口元をゆがめた。

川 ゚ ー゚)「やっぱり君は面白い、内藤ホライゾン!」

だから私は――

川 ゚ ー゚)「『こっち側』だ」

数歩、自らも進む。
ブーンとは反対の方向へと。

ツンの横に立ち、その肩に手を置いて。

川 ゚ ー゚)「今日ばかりは私もお前の敵らしいな、しぃ!」

(*゚-゚)「――――」

しぃの表情から、初めて余裕を持った笑みが消えた。


ブーンはしぃの前で止まった。
破れて人が通れるスペースの開いた、金網の前で。

……笑みを戻した、しぃが問う。

(*゚ー゚)「――何を、するつもり?」

( ^ω^)「決まってるお」

彼はそのまま、さらに踏み出す。

('A`)「……って、おい!」

(´・ω・`)「ちょっと待て!」

静止の言葉に対して、ブーンは振り向いた。

( ^ω^)「ドクオ! ショボン先輩! 先生! クー! ありがとうお!」

その顔に張り付いているのは。

( ^ω^)「ツン!」

満面の笑みで。






( ^ω^)「僕の変わりにずっとずっと、強く生きろお!」





この結末に不満などないとでも言いたげな、最高のものだった。

ξ;凵G)ξ「……え」

('A`)「馬鹿――」

(´・ω・`)「野郎――!」

('、`*川「……!」

三人が同時に走り出していて、クーは腕を組んだままそれを見守っていた。


( ^ω^)「勘違いしてるようだから教えてやるお、しぃ」

(*゚ー゚)「――!」

( ^ω^)「僕が助けたかったのは『僕以外の全ての人間』だお。僕も助かれればそれが一番だったけど、ツンの命には変えられないお」

(*゚ー゚)「彼女はアナタを殺そうと――」

( ^ω^)「殺そうとしたんじゃない、殺さないといけなくしたのはお前だお」

(*゚ー゚)「…………」

( ^ω^)「僕はいいお、僕の問題だお、そう、死ぬのは僕かツンのどちらかだけでいいはずだお」

他の人間が死ぬ事など。

( ^ω^)「許容できるわけないお!」


ドクオの手が
ショボンの手が
ペニサスの手が

ブーンの身体をつかむその前に。


( ^ω^)「だから、僕は皆を守るんだお!」


九階より遥か高い、屋上から身を投げ出して。
数瞬後に、ぐしゃりという何かがつぶれる音が、その場にいた全員に。落下していくブーンを見た、九階にいたギコとジョルジュの二人にも。

聞こえた。

 

 

 


…………。

ジョルジュは煙草をふかそうとして、この場が禁煙になっている事に気がつき、ライターを胸に仕舞う。
ギコは無言で缶コーヒーを飲んでいた。

( ゚∀゚)「嫌な結末だったな……」

(  ゚Д゚) 「ああ」

ジョルジュは遠い目をしながら言った。

( ゚∀゚)「馬鹿野郎、死んじまったらどうにもなんねーっつのに」


('A`)「いや、あの、殺さないでもらえます?」

その台詞にけちをつけたのは右手に包帯を巻いたドクオだった。

(  ゚Д゚) 「いやエロ本買った帰りにテンション上がりすぎて信号無視で車にぶつかるとかいっそ死ねよ」

('A`)「お、男の純情ぉぉぉぉ!」

左手に持っているビニール袋には、しっかりとその戦利品を携えていたのだが。

('A`)「んで二人は見舞いおわったんすか?」

(  ゚Д゚) 「ああ、もう帰る」

( ゚∀゚)「仕事もあるしな」

刑事二人は、背を向けながら声を揃えて言った。

『あの馬鹿に宜しく』


病室の扉をくぐると、そこは未知の世界でした。

( ^ω^)「アホだおwwwwマジでアホだおwww」

(´・ω・`)「だよねwwww」

('A`)「……お前等テンション高いな」

( ^ω^)「お前の話題で盛り上がってたんだお」

(´・ω・`)「お見舞いにエロ本ってどーよ」

('A`)「お前等まで苛めんの!?」

既にパイプ椅子に座っていたショボンが振りかえり、ベッドに寝て包帯まみれのブーンがそれを迎えた。

(´・ω・`)「見舞いに来て治療受けるとか狙ったよね、ね?」

('A`)「うるへー畜生おおおお!」


それから三人は他愛もない雑談で大いに盛り上がった。
個室でなければこんな大騒ぎは許されないだろう、ついでにエロ本を広げ

( ^ω^)「ふ、っふほ、た、たっまんねぇお……!」

('A`)「まじこれケツのラインやばいってケツ」

(´・ω・`)「超兄貴どこ超兄貴」

( ^ω^)「いやそれはないわ」

そんな会話がしばらく続いた。

('A`)「……と、こんな時間か」

(´・ω・`)「そだね、そろそろお暇しようか」


( ^ω^)「お、ありがとおー」

席を立ち、椅子を片付けて二人は病室を出る。

('A`)「また明日くるぜー」

(´・ω・`)「うん、また明日」

手を振って見送り、ブーンは一息ついた。

( ^ω^)「…………」

あれから、もう六日がたっていた。
真剣な面持ちで、ふと空を見上げる。
夏に入る前のそれは、まだ太陽の沈んでいない時間帯で。

( ^ω^)「腹へったお」

ξ゚听)ξ「真面目な顔して何言ってんのよ……」


( ^ω^)「おお!? いつから居たお!?」

ξ゚听)ξ「ノックしても反応ないから勝手に入ったのよ。さっきドクオさんとショボンさんともすれ違ったわよ」

ツンは腕を組んでベッドに寝込んでいる兄を見下ろし。

ξ゚听)ξ「まったく、世話焼かせないでよね! これ以上怪我が悪化したら私が大変なんだから!」

( ^ω^)「すまねーお」

ところで、とブーンは首をかしげた。

( ^ω^)「朝見舞いに来てくれたのになんでまた来たお?」

ξ゚听)ξ「ああ、それはね」

ここは『べ、別に心配だったわけじゃないんだから!』と言うところじゃないのだろうか。

川 ゚ -゚)「私が頼んだのだ」

扉の前にもう一人居る事に、ブーンは気がつかなかった。

川 ゚ -゚)「六日ぶりだな、ブーン」

( ^ω^)「クー」


ξ゚听)ξ「じゃ、後はよろしくお願いします、クーさん」

川 ゚ -゚)「うむ」

入れ替わるように病室を出て行くツンを横目に、ブーンは尋ねた

( ^ω^)「何でツンに?」

川 ゚ -゚)「ああ」

こともなげに言ってみせる。

川 ゚ -゚)「病院までの道がわからなかったのだ」

……ああ。
こいつもそういえばひきこもりだった。

( ^ω^)「見舞いに来てくれないかと思ったお」

川 ゚ -゚)「私も行こうとは思っていたのだがね、しかしある程度落ち着いてからのほうがよいと思ったのだよ」

( ^ω^)「なにがだお?」

川 ゚ -゚)「決まってるだろう」






「答えあわせだよ」





川 ゚ -゚)「君に疑問が無いのなら私はそれでいいがね。しかし私は喋るのが好きで説明が大好きだ。君はどうだい?」

( ^ω^)「……疑問はあるお」

そう。

( ^ω^)「何で僕は生きてるんだお?」

それに。

( ^ω^)「ツンは記憶を綺麗さっぱり無くしてるお。僕は階段からすっころんで大怪我した事になってるし」

川 ゚ -゚)「あの場に居た妹さん以外の全員はしっかり記憶を持っている、別に君の妄想だったというわけでは無いさ」

クーはいつの間にか手にしていた缶の紅茶に口をつけた。


川 ゚ -゚)「君が生きている理由については、これはもう語る必要は無いと思っていたんだがね」

( ^ω^)「お?」

川 ゚ -゚)「単に君に死ぬ理由がなかっただけさ」

( ^ω^)「え、ちょま、それはおかしくないかお」

川 ゚ -゚)「なにがだね」

焦るようにブーンは言う。

( ^ω^)「だったらそもそもこんな事には……」

川 ゚ -゚)「違うね、理由がなくなったのはあの場面での事だ」

クーはブーンの言葉をさえぎった。

川 ゚ -゚)「妹さんは言ったな。『こんな力はいらない』と」

そして





川 ゚ -゚)「君の力は『誰かの願いをかなえる』力だろう?」





( ^ω^)「つまり……」

川 ゚ -゚)「二人の能力が同時に存在していたからこそ、君達のどちらかが消える必要があった。能力そのものを消す事はしぃには出来ない、それができたのは君だけだという事さ」

( ^ω^)「それじゃツンの記憶が無いのは……」

川 ゚ -゚)「しぃが『ツンが力を得てから消えるまでの間の計算式』を調整したのさ」

その程度の作業なら、苦労ではあるがすぐに終わる。

川 ゚ -゚)「それでも私達にその記憶があるのは、君のおかげでもあるがね」

( ^ω^)「お?」

川 ゚ -゚)「私は忘れたくなかったからだよ、君がそれをかなえてくれたのだと信じるね」

優しげにいうその声が、耳に響く。


( ^ω^)「……で、でも屋上から飛び降りて、この程度の怪我で済んだのは何でだお」

右腕と左足骨折、肋骨三本に皹が入り背中には大きな傷も残ったが。
生きている。

川 ゚ -゚)「それは愚問だろう」

( ^ω^)「お?」

川 ゚ -゚)「君が経験してきた『六日前』、君が最後に終わらせた『六日前』」

一体。
どれだけの人間が。


川 ゚ -゚)「君に助かって欲しいと、助けたいと願っただろうか」


( ^ω^)「……」

川 ゚ -゚)「当然私もその一人だね」


喉を湿らすためなのか、紅茶をくい、と煽る。
そのしぐさはやけに格好良かった。

川 ゚ -゚)「だから君の落下した先に、あのジョルジュ刑事の車があったことも偶然ではないだろう」

おかげでその後ジョルジュに殺されかけたのだが。

川 ゚ -゚)「君の生存を妨害する妹さんの力は消えたのだから、みんなの望みである『君が生きる事』が適う事を阻害するものはないよ」

答え合わせはまだ続く。

川 ゚ -゚)「だから皆が協力してくれたのも納得がいくだろう? 過去、君を救えなかったシークエンスで彼らは望んだはずだ。『君を助けたい』と」

( ^ω^)「……だから」

川 ゚ -゚)「そう、皆が手伝ってくれた、荒唐無稽な夢想話だと思わず、自らを賭けて」

それが答えだ、とクーは締めくくった。
過去の彼らもまた、ブーンを救ったのだ。

川 ゚ -゚)「まぁ二人きりの時に冷たい言葉を吐いて皆がいる前で泣いてすがるというのは逆ツンデレだよな」

何を言い出すんだこいつは。




( ^ω^)「僕は」

ブーンは。

( ^ω^)「いい友達を持ってるお」

笑った。

川 ゚ -゚)「誇るといい、それが今まで君が歩んできた人生の価値だよ」

クーもつられて、笑う。

川 ゚ ー゚)「君が消える事は、それら全ての否定になる。 本当に良かった」

立ち上がる。
話は終わった、と言うように。


川 ゚ -゚)「それでは大事にしたまえ、君が来ないと私は暇だ、ペニサス先生が尋ねてくると説教を喰らう」

紅茶の缶を片手に、ゆっくりと扉へ向っていくクー。
がちゃりと音がして、開いたところで、ブーンは最後の質問を投げかけた。

( ^ω^)「まってくれお!」

その言葉に、クーは止まる。

( ^ω^)「まだ聞いてない事があったお……」

そう。


「なんでクーはしぃと一緒にいたんだお?」





クーは。

その質問をしてほしかったといわんばかりに。

振り向いて。



川 ゚ -゚)「そんなもの――決まっている」



にやり、と笑った。






「私も――」



人差し指で、自らを指し





「君と――」


そして、ブーンを指し





「同じだよ」




そして、扉が閉まる。

( ^ω^)「…………」

今度こそ、ブーンはため息をついた。
心の使えが取れた気分で、ベッドに寝転がる。

( ^ω^)「さ、さっさと怪我を治すお」

ドクオがくれたエロ本には漫画も掲載されていた、枕の下に隠しておいたそれを取り出し、広げる。

( ^ω^)「夏休みまでに直さないとコミケにもいけないし、別荘にも遊びにいけないお」

だから。

( ^ω^)「とりあえず何か食べたいお。」

これから何処までも続く未来に思いをはせて。
とりあえず目の前の食事の時間を待って、彼は笑った。


:一回目の生存・完了 
:実行犯・◆E9cmLlSr.Y改め ◆wS/59jRQ4.
:スペシャルサンクス・作品を愛してくれたVIPPER全員
:( ^ω^)は十回死ぬようです・END



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