■( ^ω^)は十回死ぬようです・こっそり番外編 その2
■( ^ω^)と('A`)は友達になったようです





虐めと言う単語は、酷く簡単で、そして俺の心を抉るには十分な意味を秘めているものだった。
中学時代、単刀直入に言おう、俺は引きこもった。

何時から始めたのかは良く覚えていない、ただどうしても学校に行きたくなかった。

('A`)「……っ」

テレビに映っているのは格闘ゲームの画面だった。
俺の持ちキャラは思うように動いてくれない、ボタンの同時押しがうまくいかず、コンボが綺麗に入らない。

('A`)「――――っああああああああ!!!」

気がついたらコントローラーを引っこ抜いて壁に投げつけていた。
プロ仕様の格ゲー専用コントローラーはそれだけで数個の部品を巻き散らかした。

大きな音を立てたが、誰も反応しない。
父親も母親も、ここ数日家には戻ってきていないからだ。
結婚記念日の旅行らしい、二人で精々楽しんでいることだろう。

それを思うとまた腹が立ってきて、壊れたコントローラーに追撃をかまそうと立ち上がる。

('A`)「ああああああっ!」

足を振り上げてバー部分を折り曲げてやろうとした瞬間。


ぷー

インターホンの音がした。

('A`)「んだよ、勧誘かよ……」

無視していると、また同じ音が家の中に響く。


ぷー

ぷー

ぷー




('A`)「ああああ! うるせぇぇぇぇなぁぁぁぁぁぁああ!?」

ダッシュで部屋を出て、階段を下り、玄関の前まで突っ走る。

('A`)「はいはいはい何の御用ですかっ!?」

怒りとともに扉を開け放つ。
そこには、俺と同じ学校の制服を着た、男子が立っていた。

( ^ω^)「お、はじめましてだお」

そいつはカバンから、一枚の紙を取り出して、言った。

( ^ω^)「プリントを、届けに来ましたお」

俺は――――――


ぶちきれた。


('A`)「ポストに入れとけやぁぁぁあああああああ!!」

怒鳴り声とともに襲ってくる物がなんだったのか、あの頃のアイツには理解できなかったに違いない。
気がついたら顔面にひ弱な俺の拳が突き刺さっていた、それだけのことだ。

( ^ω()「げぇっ」

倒れこむそいつを見下ろしながら、俺は言う。

('A`)「二度とその面みせんじゃねえぞっ!」

ただ無性に、むかついたのだ。
俺は扉を閉めて、鍵をかけた。


実際のところ、俺の引きこもりと言うのは対人恐怖症と言うところまでは至っていなかったのだろう。
すべてが億劫になって、虐められてから引きこもっているなんてのはただのきっかけに過ぎなかった。
オタク趣味がバレた事だって、開き直ればすむだけの話なのに。
つまり俺は、逃げ道が欲しかっただけなのだ。

だから余計にあの存在が鬱陶しかった。


次の日。

ぷー


また音がした。
その時の俺はまさかそいつが来るだなんて思っていなかったので、俺は億劫に思いながらも、扉を開けた。

('A`)「あーい――」

( ^ω^)「こんにちわだお」

('A`)「…………」

俺は無言で扉を閉めた。
何度かインターホンが鳴ったので、電源からぶっちぬいた。


…………。


翌日。
同じ時間にインターホンが鳴る。

('A`)「…………」

俺は体を動かさない。
それから数分間、インターホンがなり続けたが、俺は反応しない。
やがて、音は消えた。

('A`)「……うぜぇ」


また翌日。
今度は昨日より数十分遅れた時間にインターホンがなった。

('A`)「…………」

漫画を読んでいたので、その音はずいぶんと勘に触った。

ぷー

無視だ、無視。

ぷー

聞こえない聞こえない、ああ、ちんぽっぽたん可愛い

ぷー、ぷー、ぷー、p

('A`)「あああああああ!!」

無理だった。

全速力で階下まで駆け下り、扉を開け放つ。


( ^ω^)「……びっくりしたお」

やはりこいつだった。

('A`)「……テメェ……、いい加減にしやが」

れ、まで言い切る事はできなかった。
目の前の馬鹿が一瞬で自分に詰め寄ってきて、両腕を掴んだからだ。

('A`)「!」

そして、ドクオが次の行動をとる前にブーンは言った。

( ^ω^)「こ、これは魔法少女☆まじかる☆ムーン☆ちんぽっぽの最新刊だお!」


('A`)「……あ?」

怒りのあまりに見ていた漫画をそのまま持ってきてしまっていたらしい。

('A`)「……お前、これ知ってんの?」

( ^ω^)「知ってるも何も大ファンだお、サイン会も言った事あるお」

('A`)「ファンねぇ……」

ドクオは腕を振り払いながら、品定めするような目でブーンを見る。

('A`)「愛ランド編25話、ちんぽっぽたんが敵になってしまった幼馴染を倒した時の呪文は?

( ^ω^)「エターナルフォースブリザード(即答)」

('A`)「……ダディクール編42話でちんぽっぽたんが始めて?ぎ取り☆モードになったときの変身台詞は?」

( ^ω^)「ちんぽちんぽちんぽるぽる(即答)」

('A`)「……引っかからなかったか……、アマチュアなら『ちんぽちんぽちんぽっぽる』と答えるはずなのに……」


( ^ω^)「はっ、駄作・黒歴史と罵られていた時代からひたすらファンだった僕だお、答えられない訳がないお」

('A`)「……お前、話せるじゃねーか」

ドクオは扉を開いて、顎で指し示す。

('A`)「あがってけよ、茶ぐらい出してやるぜ」

…………。


それから二人は、共通の趣味について語り合った。
部屋にあった『魔法少女☆まじかる☆ムーン☆ちんぽっぽ・コミックマーケット限定フィギュア』のカラーリングについて熱い討論を繰り広げ
設備だけは充実している格闘ゲームをやりあい歓喜激怒し

('A`)「…………なぁー」

( ^ω^)「おー?」

画面では二人の美少女が露出度高めの服を纏いながら跳び、跳ねていた。
二人とも手元を見ていないが物凄い高度な操作だ。

('A`)「……学校なんか行ってて楽しいか?」

こいつは俺と同類のはずなのに。

あっち側にいやがる。

……なんで。


( ^ω^)「楽しいか楽しくないかで言うなら、楽しくないのかも知れないお」

大技発動、黄金の剣が降り注ぎドクオのキャラに致命傷を与える。
さらにキャンセルをかけて空中コンボ、もう勝敗は決まった。

( ^ω^)「だけど嬉しい事は沢山あるお」

('A`)「……んだよ、お前だって俺にプリント届けにとか、やりたくてやった訳じゃねえだろ……」

コントローラーを投げ出し(アーケード仕様)、床にごろりと倒れこむドクオ。

( ^ω^)「僕がここに来たのは、確かに皆に押し付けられたからだお」

ブーンも同じ様に、床に倒れこむ。


( ^ω^)「だけどドクオと友達になれたお」

('A`)「!?」

友達?

俺が?

……お前と?

( ^ω^)「こんな嬉しいことがあるなら、虐められるのも悪くないお」

そう言って、笑った。

……こんな俺が

お前みたいな奴と友達なのかよ――――。


('A`)「――でてけ」

( ^ω^)「お?」

('A`)「……でてってくれ」

投槍に体を寝ころがし、ブーンから視線を外す。

( ^ω^)「……わかったお」

カバンを手に取り、部屋の扉を開けるブーン。

( ^ω^)「楽しかったお、ありがとう」

ばたん、と扉が閉まった。
ドクオは何も見ない。
ただベッドの上に駆け上がり、枕を顔に沈めて。

('A`)「………………ぅぅ」

…………。


「だれー、あれ」

「しらなーい」

教室から聞こえてくるそんな声に、ブーンは首をかしげた。

( ^ω^)「誰か来たのかお?」

扉を開けると、そこには今までにない光景があった。

('A`)「……よう」

( ^ω^)「ドクオ!?」

クラスメート達の視線がいっせいに突き刺さる。

だが、ブーンは気にしない。


( ^ω^)「何で学校に……」

('A`)「受験も近いだろうが、サボったまんまじゃいられねーよ」

けっ、と顔を背けて、ぼす、と拳を軽く相手の腹に当てる。


('A`)「俺が学校にいて問題あんのかよ、親友」




ブーンは一瞬あっけにとられたが、すぐに同じ様に、拳を相手の腹に当てた。




( ^ω^)「問題ないお、親友」


俺はお前に助けてもらった。
ぬるま湯からはいでるきっかけを与えてくれた。
だから今度は俺が助ける。

お前を必ず助けてみせる。

('A`)「わかった、絶対、絶対助けてやるから!」

炎の中で、俺は思う。

絶対に、お前を、助けてやる。

■( ^ω^)と('A`)は友達になったようです・fin


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