( ФωФ) ・・ん、浴び終えたか
もう少し待っていてくれクー、もうちょっとでスパゲッティが出来るである
川 -) ・・・・・・
温かいシャワーを浴び、温かい部屋に戻ります
温かいものに包まれてはいても、私の中に届くことはありません
でも、大分心は落ち着いていました
( ФωФ) そうそう、ハインなら大分楽になったようだぞ
流石吾輩じゃのー 吾輩の薬は世界一じゃのー ぬわっはっは
川 -) そう、ですか・・・・
( ФωФ) いよーっし出来たぞナポリタン! まずはご飯でも食べようか
腹が減っていてはネガティヴになってしまうからなぁ
ナポリタンを目の前にするも、当然ながら食欲はありませんでした
誰だってショックを受けていれば仕方がないことです
だけど、そこで一つ"恐ろしいこと"に気付いてしまいました
さっきの状況なんか洒落にならないほどの恐ろしいことです
川 ゚ -゚) ・・・・・・
川; -) ・・ッ!?
私はその時、お腹がいっぱいだった
:川; -): ・・! ・・・・・・ッ
ガタッ
( ФωФ) !
何も言わず、無我夢中でトイレへ駆け込む
そして自分の口に手を突っ込み、全てを吐きだそうとしたのです
そんなことをすれば"何を"見てしまうのかなんて考えすらせずに
涙目になりながら、苦しい思いをしながら全部吐きだしました
私の中に潜む真っ黒なものを吐きだすように、全部全部吐きだしました
川; -) お、おえ゙っ・・ え゙え゙えぇ・・ ゔえ゙っ・・ あ゙・・っ
川; -) !!
そして、吐瀉物に混じったモノを見てしまった
間違いなく私がとりこんで、私が半分消化したモノ
川 -) ・・う、う
:川 -): うっ・・ あう・・ うぅ・・っ う・・! えっ・・ えぅう・・っ
吐きだしたモノの上へ、ぽろぽろ、ぽろぽろと涙が零れ落ちました
「人間としての私」が、「本来の私」に深く深く傷つけられたのです
その日、御爺様は私の生い立ちを話してくれました
聞けば聞くほど思い出してくる、小さな頃の思い出
御爺様に捨てられそうになって、ハインに助けられて、今まで過ごしてきた全て
信じたくないけど、信じなきゃいけない事実
目の前に、長い長い暗夜行路が見えたような気がしました
出生が為にどこまでも続く、先の見えない黒々とした道
私は黒い存在ですが、この道を歩いていくには少し色が薄くなっておりました
ロマネスク御爺様やハインが、私をほんの少し薄めてしまったのです
この少しの薄まりが、私にとっては致命的ともいえる苦痛を与え続けるのです
その日から、2匹の蝶が私の周りをひらひら舞い続ける夢を見るようになります
幼い日の、あの時の蝶々が私に優しく笑いかけてくるのです
人としての心の芽生えを植え付けさせた小さな犠牲が微笑みかけてくるのです
その夢を見る度に、自分の持つモラルが虚偽のものなのではと胸が苦しくなったものでした
──それから数年後
御爺様がとうとう体を壊し、床に伏すようになりました
从;゚∀从 爺ちゃん、体どうだ?
( ФωФ) あー・・ これやっべーな これマジやっべー マジやっべー・・
チョベリバって奴じゃな・・ マジチョベリバー むしろ真剣10代しゃべり場ー・・
从;゚∀从 意味わかんねぇよ! ・・あっ! 俺が作った薬まだ飲んでねーじゃん!
何やってんだよ、ちゃんと飲まなきゃ駄目だろー! しっかり作ったんだから!
( ФωФ) だってこれ苦いし・・ 吾輩、甘い薬じゃなきゃ、飲まんタイプだし・・
从#゚∀从 このやろ! 無理矢理飲ませてやる! クー手伝え! 口を開けさせろ!
川 ゚ -゚) 了解しました
(; ФωФ) や、やめろー・・ 病気の爺さんは丁重に扱・・ あだだだだだ!
あええー! ああいういえ・・ げほっ、げほっ! 苦いいぃ・・
从;゚∀从 よーし飲んだか あとはぐっすり寝てろよな!
( ФωФ) 分かった、分かった・・ あ、そうだハインよ・・
街まで行って、食糧を買ってきてくれんかのー・・ あとなんか、うまいものとか・・
.从 ゚∀从 ! わかった、美味そうなもん一杯買ってくるから待っててくれ!
( ФωФ) うむ、うむ・・ 頼んだぞーう・・
・・・・ふぅ
ハインの前では陽気に振舞うも、居なくなった途端に苦しい表情を見せます
これ程弱々しい御爺様を見ることがあるなんて、とても奇妙です
川 ゚ -゚) 御爺様、あまり無理をなさらないで下さい
ハインの前でも、素でいて下さいな・・
( ФωФ) ・・うむ・・・・ そうじゃなぁ・・
( ФωФ) ・・・・・・
なぁ、クーよ ちょっとこっちへ、来て、くれないか・・ お前に話があるのだ・・
川 ゚ -゚) ・・? 話ですか?
( ФωФ) うむ・・ 吾輩が死んだ後の、お前についての話なのだ・・
重要な、話である・・ 心して、聞け・・
川 ゚ -゚) !
そう、私の命は御爺様の一蓮托生
やっとその時になって、いまだに私の為に魔法を使い続けているということに気付いた大馬鹿者でした
川;゚ -゚) 御爺様! 今すぐ魔法を使うことをおやめ下さい!
その体で瘴気を流し続けるのは無理があるのでは!?
( ФωФ) あー・・ 何、もう癖みたいなもんだ・・ お前が気にすることじゃ、ない・・
川;゚ -゚) しかし・・!
( ФωФ) まぁ、気にせず聞け・・ お前も気付いているように、吾輩が死ねばお前も死ぬ・・
これは避けねばならん・・ どうしても避けねばならんことだ・・
川 ゚ -゚) ・・いえ、いいのです 私がここでこうして生きていること自体が不自然なことなのですから・・
御爺様と一緒に生を終えたとしても、それでよいのです 私はもう充分です・・
( ФωФ) ならん・・っ 絶対にならん・・ お前がよくても、吾輩は、よくない・・っ
それにハインだって、悲しむ、であろうが・・ 二人一気に、死んでしまったら、ハインは耐えられんかも、しれん・・
川 ゚ -゚) ・・・・・・
( ФωФ) ・・そこでお前に、こいつをやる
川 ゚ -゚) ? 何ですかそれ?
( ФωФ) えーと・・ ホワイトブリムと、いったかの・・
メイドが頭に付ける、装飾品だ・・
川 ゚ -゚) ・・・・? 意味がよくわからないのですが・・
( ФωФ) 長い年月をかけて・・ それに、瘴気を・・ 込めておいた
微々たるものだが・・ 吾輩が死んでからも、二週間はもつであろう・・
川 ゚ -゚) !
( ФωФ) お前は、それを持って・・ 隣にある、小さな国・・ ブーンという王が統治する城へ行くのだ・・
そこでメイドとして雇ってもらえ 既に話はつけて、ある・・
川 ゚ -゚) ・・そこに、何かあるのですか?
( ФωФ) ああ・・ そこには、「厄」を持つ、姫がいるのだ・・ 不幸を招く姫が、いるのだよ・・
川 ゚ -゚) ・・「厄」ですか?
( ФωФ) 吾輩が死んでも、その姫様の近くにおれば・・ お前はいつも通り、過ごせるであろう・・
厄が瘴気の代替と、なるはずだ・・ お前はそこで暮らせ・・ そこで生きるのだ・・ よいな・・?
川 ゚ -゚) ・・わかりました
( ФωФ) ・・ただ、お願いがあるのだ
川 ゚ -゚) なんでしょう
( ФωФ) 吾輩が死んでも・・ 時間の許す限り、ハインのそばに、居ておくれ・・
ハインは、死というものに、とても敏感なのだ・・ きっと嘆き悲しむで、あろう・・
出来るだけ、ハインを慰めてやって、おくれ・・ お前にしか、頼めぬ・・
川 ゚ -゚) ・・もちろんです
( ФωФ) うむ・・ それなら、よい・・
川 ゚ -゚) ・・・・・・
川 ゚ -゚) ねぇ、御爺様
( ФωФ) ・・お?
川 ゚ -゚) 私が慰め役みたいになっていますが・・ 私だって慰められたいんですからね・・?
( ФωФ) ・・・・・・
( ФωФ) すまん、のう・・
私達が見守る中、静かに死んでいきました
簡単なお墓を作ってあげた後、ハインは部屋にひきこもって啜り泣くようになりました
私だって泣きたかったけれど、御爺様から言いつけられたのは「慰め役」
涙をこらえ、扉の外からハインへ言葉をかけ続けます
川 ゚ -゚) ハイン・・ そろそろ出てきて下さいな
ご飯も食べていないでしょう? 一緒に食べましょうよ・・
< ・・・・・・
川 ゚ -゚) ・・・・・・
いくら声をかけても出てきてくれません
こうして時間だけが過ぎていきます
だけど、こうして時間を浪費し続けるだけではいけません
私にはあまりにも時間が無かったのです
だけど、それをどうやって傷心のハインに伝えることが出来ましょうか
伝えれば絶対に彼女は私を引き止めるに違いありません
私は簡単な書き置きを残し、夜にこっそり家を出ました
暗い山道を一人で下山し、街へ出、孤独に歩いていきます
私の今後を暗示するような道を歩みながら、なんだか侘しい気持ちで──
──およそ一週間後
御爺様の指示した国へ辿り着くことが出来ました
国へ近づくごとに、私の中に力が漲るような気分になります
なるほど、これが厄なのかと一人納得
活気のない場所でしたが、私にとってはとても心地が良い空気でした
宿屋で体を綺麗にし、早速お城に従事です
御爺様の言った通りすんなりと雇ってもらえました
お城に仕えるものが激減していたので快く迎えられたほどです
(*゚ー゚) よろしくねクーさん! 私が先輩として、一からお仕事を教えてあげます!
実際の仕事は明日からだけど、一応今のうちに一通り覚えさせます!
川 ゚ -゚) よろしくお願いいたします すぐに覚えます
(*゚ー゚) ・・あ、そうそう 当然知ってると思うけど「厄姫様」には気をつけてね
それじゃ仕事のことだけど・・・・
川 ゚ -゚) ・・・・・・
そして勤め始めの最初の日
ベッドのシーツを取り換える為に入った部屋
そこであなたに出会いました
´‐ _‐ノv
初めて会ったあなたは、何故か見切れていました
厄を振り撒くというのですから、こう、グレムリン的な、ゴブリン的な御姫様かと思っておりました
しかし実際はとても可愛らしくて小さい、お花の様な女の子
この子が私を生かしてくれるのだなと思うと変な気持ちでした
´‐ _‐ノv ・・あれ? ・・いつもの人じゃないな
川 ゚ -゚) おはようございます 今日からここに勤めさせていただきます、クーと申します
至らない点もあるかと思いますが、以後お見知りおきを
´‐ _‐ノv そーか 私はシューだ ・・出来るだけ部屋から早く出てってね
川 ゚ -゚) あ、はい 今すぐシーツを取り換えますので少々お待ちを
´‐ _‐ノv
川 ゚ -゚) ・・? 何故隠れているのですか?
´‐ _‐ノv いいから早く帰れー 帰れー
川 ゚ -゚) も、申し訳ございません・・
すぐに追っ払われてしまいましたね
気難しい子なんだというのが第一印象でした
掃除に入った時はこんな感じでしたか
川 ゚ -゚) 失礼します お掃除に参りました
_‐ノv
川 ゚ -゚)
川 ゚ -゚) ・・あの、遊びの最中でしょうか? 見切れかたが酷くなっておりますが・・
_‐ノv む? ・・そうです 遊びの最中です 怖くないひとりかくれんぼです 気にしないで下さい
川 ゚ -゚) ほうほう、そうですか・・ あ、それじゃあ私も一緒に遊びたいですー
_‐ノv ・・いいから掃除をして帰れーっ お前となんか遊びたくねーっ あっちいけーっ
川 ゚ -゚) そ、そうですか すみません、今すぐに掃除致します・・
ご飯を運びに行った時なんてこうでしたね
川 ゚ -゚) 失礼しm・・
v
川 ゚ -゚) (・・!? ひ、姫様・・ ですよね・・?)
行けば行くほど、あなたは姿を見せなくなっていきました
vとの会話は相当不気味でしたよ
(*゚ー゚) クーさん、お仕事の方はもう慣れた?
川 ゚ -゚) おや、しぃさん・・ まぁ、大体は慣れたのですけども・・
(*゚ー゚) 何か気になることでも?
川 ゚ -゚) あぁ、いえ 実は姫様のことなのですが・・
なんだか私が行くと、いつもいつも姿を隠すんですよ 変な子ですね
(*゚ー゚) あー・・ 姫様、父親以外の人と関わりを持とうとしないのよ
自分自身のことがよく分かってるのね ・・それが良いことか悪いことか分からないけども
川 ゚ -゚) ! ・・そうなのですか
(*゚ー゚) ・・ちょっと前、姫様に同年代の友達が出来たのよ
けどその子、遊んでる最中に腕の骨を折ってしまって・・
それから姫様、ほとんど誰も寄せ付けなくなっちゃった
川 ゚ -゚) ・・・・・・
(*゚ー゚) 何とかしてあげたいけど、出来ないのが現実よねぇ〜
かまってあげたいけど、干渉しすぎれば何が起きるかわからないし・・
姫様の行動は私にとって大きな驚きを与えました
仕方がないこととはいえ、自ら愛されることを拒絶するという行為
私にとって考えられないことでした
私は悪魔という自分の境遇というものをとてつもなく嫌っています
ですがそれを知った後も、ハインや御爺様に愛され、愛することに喜びを感じていました
私は醜い心を持つ悪魔、でも人間的な「愛」というものを大変尊重していたのです
悪魔を悪魔たらしめるものが「残虐性」だとするならば
人間を人間たらしめるものは…
恥ずかしい話ですが、それは「愛」だと本気で思っておりました
自己嫌悪から私を支えていた大きな柱が「愛」だったのです だからこそ今までやってこれたのです
あなたはそれを拒絶するのです
他人の幸福の為に、あなたはそれを行動で否定してしまうのです
川 ゚ -゚) (あんなに小さい子なのに・・)
川 ゚ -゚)
川 ゚ -゚) (・・あっ)
大事なことに気付きました
あなたは私を生かしてくれる
でも、それだけじゃない 決して一方的な関係なんかじゃ終わらない
私なら、問題なくあなたの傍に居られる
悪魔の私だったら、厄を自分の力に変えてしまう私なら、あなたを愛せる
"厄を持ったあなたに唯一近づける存在"
こうしてはいられないと思いました
私の人間的な部分で、強く強くそう思いました
思い立ったらすぐ行動です
忙しい仕事の合間を見つけ、姫様に会いに行きました
川 ゚ -゚) 姫様、失礼いたします
v ・・ん? ああ、君か
サッ
川 ゚ -゚) 姫様、せめて顔ぐらいは出して下さいな・・
vと話すのはどうも・・
´‐ _‐ノv なに? 掃除しにきたの?
ヒョコ
川 ゚ -゚)つ[[[[] じゃーんっ ほら、トランプを持ってきましたー
姫様、いつも一人で御暇でしょう? 私とトランプで遊びましょうっ!
´‐ _‐ノv
´‐ _‐ノv ・・いや、いいです 帰って下さい
川 ゚ -゚) 帰りませーん
´‐ _‐ノv ・・あなたとは遊びませーん 帰って下さーい 姫様命令でーす
川 ゚ -゚) いやでーす 遊びまーす 命令拒否しまーす
´‐ _‐ノv ・・・・・・
川 ゚ -゚) ・・・・・・
´‐ _‐ノv ・・なんで遊びたいの?
川 ゚ -゚) 姫様と遊ぶのが楽しそうからですっ
よしそれじゃあ早速遊びましょう何しますかそうだババ抜きしましょうそうしましょう!
_‐ノv いや、いいです 早く帰っt・・ 人の話聞かん奴だな君は・・ 帰れよー
定番のババ抜きですら釣られず、それどころか益々引っこんでしまった姫様
このままではアルファベットに逆戻りです、それはいけません
ここは多少強引にいかねばと思い、強行手段に移ることに
川 ゚ -゚) ・・それじゃあーまずは鬼ごっこしましょうか
私が10秒数える間に逃げて下さいね いいですか?
_‐ノv だからやらないって言
川 ゚ -゚) 12345678910はい行きまーすっそおおおうれいっ捕まえたああぁーっ!
´;‐ _‐ノv !? ぬおおぉっ!?
ズルルッ
ベッドの陰に隠れる姫様を一瞬で無理矢理引きずりだしました
そしてそのまま胸でぎゅーっと押さえつけ、逃げないように抱きしめます
lw´;‐ _‐ノv ぬあああっ!? や、やめろー! はなせー! うわあああ!?
川 ゚ -゚) ふーっふふふふふふふ 逃がしませんよぉー
lw´;‐ _‐ノv ぐおー! はなしてー! さわるなー!
ジタバタ
川 ゚ -゚) 姫様が遊んでくれるまでは離さな・・ いたたっ
lw´;‐ _‐ノv !
暴れる姫様の手が頬にぺちんとヒット
痛くも無ければ痒くも無い、全く持って可愛いものです
だけどあなたの顔色が変わったのを見逃しませんでした
lw´;‐ _‐ノv ご、ごめん・・ ごめんなさい・・
川 ゚ -゚) ・・・・・・
川 ゚ -゚) 怪我なんてしませんよ? 安心して下さい
lw´;‐ _‐ノv う・・
川 ゚ -゚) ・・姫様、あまり人を避けたりしちゃ駄目ですよ
そんなことをしていたら、誰も姫様に関わらなくなっちゃいます
lw´;‐ _‐ノv ・・そっちの方がいい
川 ゚ -゚) 不幸にさせてしまうからですか?
lw´;‐ _‐ノv ・・うん
lw´;‐ _‐ノv ・・悪いことおきるから、君も近づいちゃ駄目・・ 離してー・・
川 ゚ -゚) だからこそ、あなたは自身は人を避けちゃ駄目なんですよ
ただでさえ姫様に近づこうとする人は少ないんですから・・
去るもの追わず、来るもの拒まずの精神でいきましょう ね?
lw´;‐ _‐ノv 去る前に怪我させちゃう・・ いいから、もういいからー・・
川 ゚ -゚) ・・怪我はいずれ治ります
中にはそんな不幸なんてお構いなしにあなたを愛してくれる人がいるかもですよ
ほら、あなたの御父様みたいに
lw´;‐ _‐ノv 避けようとすると、父さん悲しそうな顔をするから・・
でもやっぱり、あんまり近づくの駄目な気がする
川 ゚ -゚) あなたのことを愛しておられるのですよ ちゃんと受け取るのが礼儀というものです
lw´;‐ _‐ノv ・・でも、いつか私を嫌いになるかもしれないじゃないか・・
私が好きな人が私を嫌うのは・・ やだ
川 ゚ -゚) ・・・・・・
川 ゚ -゚) では、こうしましょう
lw´;‐ _‐ノv う?
川 ゚ -゚) 私を好きになって下さい
lw´‐ _‐ノv
川 ゚ -゚) 私はあなたの厄なんかで不幸にはなりません
私だったら絶対に傷つかないし、不幸になってあなたを悲しませることもありません 信じて下さい
lw´‐ _‐ノv ・・・・嘘だ
川 ゚ -゚) 私、嘘は絶対につかない主義なんですっ
・・嘘じゃない誓いとして、私のこの「大切」なトランプをあなたに差し上げます
私が大切な人から貰った、大切な大切なトランプです ・・誓いには充分でしょう?
lw´‐ _‐ノv ・・・・・・
川 ゚ -゚) さぁ、椅子に座って下さい それじゃ早速、ババ抜きでもして遊びましょうっ
これから暇が出来たら、必ず遊びに来ますからね
lw´‐ _‐ノv ・・そのトランプ・・・・ くれるのか
川 ゚ -゚) ええ、差し上げます
lw´‐ _‐ノv でも、大切なものなんて貰えないよ・・ 私が持ってたら、汚しちゃうかもしれない
川 ゚ -゚) ・・御安心ください
川 ゚ -゚) 昨日100円で買ったものですから
lw´‐ _‐ノv 嘘じゃねーかこのやろう
姫様との出会いは、私に光を投げかけてくれた
こんな自分でも、あなたの心を満たすことが出来るのです
私が傍に居れば、あなたの不幸を取り除くことが出来るのです
それはそれは素晴らしい日が続きます
こんな私でも誰かを立派に愛せるんだぞ、必要とされているんだぞ
こう思うだけで、胸の中がぽかぽかと温かくなるのです
私はあなたに、自身の存在意義を見出していたのでしょう
穢い自分でも、あなたの前では自分を肯定出来ることが嬉しかった
そして不幸ながらも健気に、無邪気に、そして気高く日々を過ごすあなたを本気で愛するようになりました
厄なんて関係なしに、あなたを本気で愛した
だけど、私の持つ色はそれすら飲みこんでいった
私がお城にきてから5年目のころ
私の「支え」を粉々にすることがおきました
川 ゚ -゚) それでは姫様、おやすみなさいませにょーる
lw´‐ _‐ノv うむ、おやすみんちぇすたー
川 ゚ -゚)
川 ゚ -゚) (・・・・ん?)
多忙に多忙を重ねた職務を全うし、床に就こうとした時のこと
なんだか嫌な違和感を感じました
川 ゚ -゚) (この感じ・・)
ベッドに入ってもその感覚が離れません
昔々、私が御爺様の家で感じたのと似た予感です
川 ゚ -゚) ・・・・・・
これはもしやと思い、急いで部屋を抜け出しました
姫様のお部屋の周囲を確認した後、音をたてずに外へ出ます
ひしひしと感じる不吉な予感
そして御城の中庭で捉えた「動く何か」
姫様の寝ている部屋へゆっくりと動いていく生き物
私が厄に対して感じていた一番恐ろしいこと、
それは厄そのものがもたらす不幸ではありません
私が心配していたのは、「単なる不幸」に対する「恨み」が全て姫様へと向かう点にあります
「厄」は全ての不幸のはけ口となってしまうのです
姫様がもたらしたわけでもない不幸への憤りすら、厄を通してあなたへと向かってしまう
そうなれば、いずれ姫様の暗殺を企てる輩が出るのではないかと思っていましたが、まさにそれでした
危険は完全に排除しなければ
私が姫様を守らなくては
迷いはありませんでした
(;;::::_ゝ::::) ・・・・・・
川 ゚ -゚) そこにいる方、こんなところで何をしていらっしゃるのですか?
(;;::::_ゝ::::) !!
川 ゚ -゚) ・・ばればれですよ
(;´・_ゝ・`) う・・!? ひ・・!
見たところ、みすぼらしい服を着た普通の平民でした
だけどその震える右手にはしっかりとナイフが握られております
川 ゚ -゚) ・・・・・・
(;´・_ゝ・`) ・・っ! ・・く、くるな! くるn
(;´ _ゝ `) ごがっ!?
この時、私は既に開き直っておりました
忌み嫌う悪魔としての残虐性も、考えようによってはあなたを守る力となる
人間としての自分を見失わなければ… 理性を保ち続ければ単なる能力の一つにすぎないと考えていたのです
心を興奮させないよう、出来得る限りの冷静さをもち、彼の汗ばんだ首を片手で掴んで持ち上げました
暴れてナイフを滅茶苦茶に振り回す彼のお腹に拳を入れ、動きを封じます
あとは首をへし折るだけの簡単な作業
私にとっては割り箸を割るのと大差のない労力
川 ゚ -゚) ・・すみません
あなたがここまでのことを行うのには、相当な理由があるのでしょうが・・
でも許しません 絶対に許しません・・ ・・ごめんなさい
(;´ _ゝ `) ・・が ガガ ぐ ご ォ う ・・!? 〜〜〜ッ! ぁ・・!
それはそれは苦しそうにもがきはじめます
だけど心を乱さないよう、感情を出来るだけ押し殺しました
決してあの時の様に自身を見失わないよう、とにかく落ち着いて
(;´ _ゝ `) ぁ a ・・・・ っ g
川 ゚ -゚)
川 ゚ -゚) ・・・・?
沸きあがる"不思議な"感情に、多少の戸惑いを感じました
もしも…
もしも私が快楽殺人者だったら、こんな時にどう思うのでしょうか?
恐らく「楽しい」や「興奮する」等と感じるのはないでしょうか
それぐらい覚悟してました
私は低俗な悪魔 人の肉だって食べてしまう醜い悪魔
そんな感情が沸くことぐらい覚悟していました
でも彼の首の骨を折るその瞬間
私の心を占めた感情は予想だにしないもの
ぼぎん
骨の折れる音
びくりと体が動いた後、だらんと垂れる彼の体
そこで気付くのです
私が彼に向けている"感情"に気付くのです
それは私が、今まで何度も経験してきた感情
川 ゚ -゚)
川;゚ -゚) ・・え?
私は先程、「悪魔を悪魔たらしめるものは残虐性」だと言いました
同様に「人間を人間たらしめるものは愛」だとも言いました
それが私を支えていた基盤
それが完全に崩れ去った
思えば、ロマネスク御爺様は残虐性と家庭性を併せを持つ御方でした
人間だって惨たらしいことをするように…
悪魔だって悪魔らしく、誰かを「愛し」たっておかしくはないのです
それが自然なのです
川; -) ・・・・あ ぁ・・?
ずるりと落ちる死体
"それ"向けている疑いようのない感情
例えば…
例えば御爺様に言葉を教えてもらっていた時
例えば御爺様に料理を教えてもらっていた時
例えばハインと一緒に野原をかけて遊んだ時
例えばハインと一緒に体をすり寄せて寝る時
例えば二人に料理を差し出し、「美味しい」と喜んでもらえた時
姫様とトランプで遊んでいる時
姫様の寝顔を見て佇んでいる時、姫様にジョークを飛ばして笑ってもらえた時
姫様とお風呂で騒いでいる時、姫様と休日に散歩に行った時、姫様の怪我を治療している時
姫様がお勉強しているのを見守っている時姫様を慰めている時姫様が私に話しかけてくれた時姫様が私を頼ってくれている時
姫様を私が起こす時姫様の髪の毛を優しく撫でている時姫様のお部屋を掃除している時姫様にお菓子を作ってあげている時
姫様ことを想いながら、やすらかに眠る時
同じだったのです
全く同じ感情だったのです
何ら嫌悪感の無い、温かいもの
「楽しい」とか「興奮する」なんて要素の孕まないもの
私がかけがえのないものとして尊重していたもの
自分が「愛」だと信じ続けていた感情
そうだ、私は最初の時もそうだった
私はあの時だって、楽しんで人を殺めた訳じゃなかった
ただ御爺様に恨みを持つ彼に、悪魔としての「愛」を向けていただけ
私はその時の感情を否定するしかありませんでした
こんなのが愛な訳が無い、こんな行為の元で生じるのが愛な訳がない
私の大切にしてきた概念を汚されてたまるか 綺麗だと信じ続けたものを汚されてたまるものか
だけどそれを否定することは、今まで姫様達に向けていた「愛」まで否定してしまうことになるのです
肯定してしまえば、私は血生臭くて陰惨な行為で「愛」を感じる存在だと認めてしまうのです
人間としてのモラル
悪魔としてのカルマ
本質も表現も全くの正反対だけど、生じるものは全く一緒
微かな光まで奪われてしまいました
lw´‐ _‐ノv ? どうしたクー、顔色が優れんな
川 ゚ -゚) あ、いえ・・ 昨日姫様のことを考え過ぎて眠れなくなっただけです
lw´‐ _‐ノv 考えんじゃねー寝ろ
川 ゚ -゚) ・・・・・・
証明がほしかった
普通に、ただただ「普通に愛せる」ことの証明がほしかった
愛に証明などいらないと申す方もいるでしょうが、私にとっては事情がまるで違うのです
自分の感情を全て信じることが出来ないのなら、あとは行動によって証明しなければいけなかったのです
あなたと触れ合っている時も、あの時の陰惨な光景が浮かんでくる
全く似つかわしくない光景を重ねてしまうことが苦しかった
下衆めいた殺人と同じ感情をあなたにも向けていたことが辛かった
いっそのこと死のうとすら考えましたが、姫様のことを考えればそれも出来ない
眠れない夜を何度も繰り返しました
必死で証明法を探し続けました
何日も何日も考え続けてました
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