感情に任せ、全力で走った
何かを振り切る様に、拒絶する様に走り続けた
目的なんかないのに、何がどうなるわけでもないのに
それでもあの家から離れたかった


lw´# _ ノv (くそっ くそっ・・ くそぉっ・・・・!)


走っても、別にこけるなんてことはない
人にぶつかったりすることもない
水に落っこちたり、物が飛んでくることだってなかった

何も起こらない
私自身に不幸なことはおこらない
服だって綺麗なまま、これから長い間着られるだろう



なのにどうしてこんなに苦しい



最終話

クーは最低だ
なにが「忘れて下さい」だ、馬鹿じゃないのか
なんだと思っているんだ 今までの数年間を何だと思っているんだ
簡単にあんなこという奴は馬鹿だ 最低だ 私を裏切った

認めたくない、感じたくない
こんなの私の思い描いていた未来じゃない


lw´;  _ ノv ・・! ハァ・・ ハァ・・ッ  ハァ・・

無論もやしっ子の私である すぐに息が切れる
地面にへたり込み、怒りよりも苦しさで心がいっぱいになる

< シュー様あああぁぁ!

lw´#‐ _‐ノv ! ・・・・・っ


聞こえてきたギコの声が、クーの顔を連想させる
あいつの泣いている顔が頭に浮かぶと、これ以上にないぐらいに腹が立つ
怒りだけじゃない 心が直接締め付けられるような苦しさも湧きだす
今まで感じたどの感情よりも重苦しくて辛い


lw´#‐ _‐ノv 誰が・・ あんな・・ッ 奴の・・ ところに・・ッ!

ギコに捕まるまいと、自分を奮い立たせてまた走る
もう是が非でも戻りたくない 嫌いな奴のいる所になんて居たくない
クーなんて嫌いだ 本当に嫌いだ 大嫌いだ 誰が一緒にいてやるものか


lw´; _ ノv ハァ・・ ハァ・・ッ ハァ・・! だれが・・ 誰が・・ッ!

思えば、酷いことをされたことは何度かあった
実の父親から殺されそうになったことなんてその最たる例だ
それでも私は父さんを許せた 尊敬だって出来た
「父」よりも「王」を取らざるを得ない状況だっただろうし、あの決断を間違っているとは思わない

初めて幽霊と会って死にかけた時ですら、私は許した
あんな理不尽な状況でも、あの霊を許せるよう最大の努力をした


でもクーだけは
クーだけは許せる気がしない
それほどまでにアイツは私を怒らせた

忘れるか
忘れられるものか
どうして勝手に忘れさせようとしているんだ

馬鹿、クーの馬鹿
誰よりもあいつは馬鹿だ
あんな奴嫌いだ クーなんて嫌いだ
クーなんて──


::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


「──ごめんね、ごめんね こんなお母さんでごめんね」


   ? おかーさん?


「憎い、とても憎いの 張り裂けそうなぐらい憎いわ」


   にくい?


「ロマネスクが憎いわ あの人を殺した悪魔共がとてもとても憎い・・
 もう、もうどうしても耐えられない・・ 私、耐えられない・・」


   ・・だいじょーぶっ わたし、とーさんのかたき、とるっ


「・・トソンは強いのね」


   うん だからもうなかないでおかーさん


「・・・・・・」


「ねぇ、トソン」


   なに?


「・・強くなってね 私みたいにじゃなくて、強く強くなるのよ」


   うん わたし、つよくなるよ


「そして絶対に許しちゃ駄目よ お父さんを殺した奴らのこと、許しちゃ駄目
 ロマネスクと悪魔どもを、絶対に許しちゃ駄目・・」


   ・・わかった ゆるさない


「あんな奴らなんかに負けないように強くなってね・・ 強く、強く・・ 強く・・」


   ・・おかーさん?


              ──おかーさん?──

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


(、 トソン ・・・・・・
ズルズル
  _
(; ゚∀゚) おい、落ち着いたか? ・・少しは自分の足で歩けよ、つま先擦り減るぞ

(、 トソン うん
  _
(; ゚∀゚) 今日はもう休め 俺から団長に言っとくからよ
      ほら、もうそろそろ家だぞ馬鹿

(、 トソン ・・ありがと
  _
(; ゚∀゚) (むう・・)

我ながらこれは困った どうしたものか
あのメイドの境遇にも相当驚いたが、トソンの反応にも吃驚だ
あんなぐしゃぐしゃに泣きじゃくるなんて思ってもみなかった

つーかあのメイド、話聞いた限りじゃ死んじまうんじゃねえか
どれくらい時間があるのか分からんが、それまでトソンを何とかしないと更に後味悪くなりそうだ
しっかしどうしたものか…

  _
(; ゚∀゚) (とりあえず今はトソンを休ませよう うん、そうしよう)


  _
( ゚∀゚) じゃあ俺もういくからな? ちゃんと休んどけよ、また来るかr

(、 トソン ・・ちょっと待ってて、ジョルジュ
  _
( ゚∀゚) へ?

俺を引き止め、一人家の中に入ってしまったトソン
中で微かだが物音がする
待てと言われたらそりゃ待たざるを得んが…


(、 トソン 
 ガチャ
  _
( ゚∀゚) あれ

私服に着替えなおしての再登場
脇に制服と剣を抱え込み、うなだれていた
小さなトソンが余計に小さく見える
  _
( ゚∀゚) な、なんだよ?

と(、 トソン ・・・・・・
ズイッ
  _
(; ゚∀゚) ・・ん?


と(、 トソン 
ズイッズイッズイッ
  _
(; ゚∀゚) な、なんだよ なんだなんだ? ・・せ、制服?

人肌残る服と冷たい剣を無理矢理に俺の胸へと押し付けてくる
やべぇ、あったかい 制服あったかい …いや何考えてんだ俺アホか
マジで何したいんだコイツ

  _
(; ゚∀゚) 何したいんだお前・・

(、 トソン 

(、 トソン 騎士、辞めるから・・ それ、返しといて

(、 トソン ・・じゃ、ばいばい

バタン

  _
( ゚∀゚) 
  _
( ゚∀゚) 


  _
(; ゚∀゚) はああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!?


  _
(# ゚∀゚) まままっま待て待て待て待て待て! おいトソン! 何!? お前何言ってんの!?
ドンドン!  聞き間違いか!? おい! 辞めるって何だ!? こら! 返事しろおおおおッ!!

やべぇ何だこれおい何だよ何が何なんだか訳わかんねぇよ何これマジ何!?
「辞める」とか言ったぞアイツ!? 正気か!? 正気な訳ねぇよ!
いやでもこれどうすりゃいいの!? やべぇ、わかんねぇどうしよう!

  _
(# ゚∀゚) お、おいってばこら! 開けろ! あーけーろーよおおおッ!! そこに居るんだろこら!
      ちょっと中に入れさせろボケ! 黙ってんじゃねぇッ!

ドアの前にはトソンの気配がある 間違いなくドアのすぐ目の前にいる
だがうんともすんとも言わん 必死にドアを叩きに叩きまくるが反応がねぇ
そろそろ人目気になってきた いやそんなこと気にしてる場合じゃない

  _
(# ゚∀゚) トソンってb

< ごめん

  _
( ゚∀゚) 
  _
(; ゚∀゚) ごめん、って・・ お前・・


トソンがそれ以上喋ることはなかった
俺も扉を叩く気になれなかった
聞こえてきたトソンの声がとてもか細くて、これ以上俺が触れちゃいけない気がした
  _
(; ゚∀゚) ・・・・・・
  _
(; ∀) (・・ええい、くそっ)


結局、何も出来やしない
そこから離れることすら出来ない
そのまま腰をおろし、途方に暮れるしかない
俺に何が出来るっつーんだよ糞、不器用な人間には無理があるっつんだよボケ

  _
(; ∀) (なーんでこんなめんどくせぇことに・・)
  _
(; ∀) ・・・・・・

徐々に、俺が受け取った制服から温もりが消えていく
さっきまでアイツの身を包み、トソンを「騎士」にしていたものから消える温かさ
俺らしくも無いが、その制服から持ち主が居なくなった様な、そんな感傷的な気分にさえなる


制服の胸ポケットからはみだして見える手帳
俺にはあまりにも綺麗すぎるようにも思えた

──どうすればいいんだろう
何も分からなくなっちゃった 何をしたらいいんだろう
凄く難しい 胸がもやもやする 全然わからない

でも、もう騎士を続けていくことは出来ない気がする
悪い奴を裁く、そんな自分にぴったりの職業だと思っていたのに
現実は全然違っていた


(、 トソン ・・・・・・

(、 トソン (一体・・ 何を・・)


僕は一体、何をしようとしていたんだろう


さっきジョルジュが止めていなかったら、何をしてしまったのだろう
剣を全部引き抜いて、クー君に近づいて、この手で殺してしまったのだろうか
それとも寸前で止めたのだろうか

あと、どうしてあの時あんなに泣いちゃったんだろう
何故あんなにやり場のない思いが胸の中に立ち込めたのだろうか
分からない 分からない 何も分からない 分からないことばっかりだ


分からないのは今に限ったことじゃない
シュー君達と初めて会って、みんなとゲームをした時だってそうだ

あの時、ポーカーでハインリッヒに勝っていたら
もし勝っていたら、僕は一体どんな命令をしたのかな
とても酷い命令をしていたのかな、なんてことない命令をしていたのかな
結局自分は、いつも肝心な所で何も自分じゃ判断してこなかった


(、 トソン (・・今まで、ずっと楽なことしてきたのかな)

騎士は自分にとって楽な職業だった
勿論体力的には物凄く厳しかったし、女の自分に当たる風も強かった
それでも気持ちはとても楽だった

犯罪をする悪い奴がいて、そいつを捕まえていればよかった
悪い奴は凄く大嫌いだし、自分はいつでも正義だと思っていた
「法を犯せばそいつは悪い奴」って決まってたから、何も迷わなくてよかった


でも今は違う
とても曖昧なものが混ざり合って、ハッキリとした境界が見えない
様々な色がぐちゃぐちゃに混ざったキャンバスみたいに、何がどの色なのかわからない


(、 トソン ・・・・・・

分からないことは一杯だけど、一番の問題は"今"だ
僕はクー君に対して、どんな行動をとればいいんだろう

クー君は悪魔だ
人だって殺している悪魔 僕のお父さんを殺したのと同じ、悪魔
間違いなく僕はクー君を憎んでいる

恨む筋合いなんてないのかもしれない
それでも、自分の中に渦巻く「何か」が彼女を憎み続ける
どうしても自分じゃ拭いきれる気がしない

ハインリッヒよりも一層強い想いが、次から次へと湧き出してくる
自分の判断を鈍らせる、気持ちの悪い感情が止まらない


(、 トソン (何で・・ 何でなんだろう・・)

:(、 トソン: (何で・・ こんな・・ こんな思いばっかり・・っ)

難しいな
馬鹿な自分にはとっても難しい
いくら剣の腕を挙げたところで、結局僕は弱いままだった


どうすればいいのかな──


(;゚Д゚) ──シュー様あああああぁぁっ!? どおおおこですかああああああぁぁぁッ!?

シュー様いねええええええええええくっそおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉ
どこだあああああああああああんもおおおおおおおおおおやっべえええええええ
落ち着け俺えええええええええうおおおおおおああああああああ!!!!1111111


(;゚Д゚) ああああああもう本当にどこ行った!?
     虚弱だから遠くには行ってないと思うが・・!

クーさんがあんな過去だったのは予想外だった
そしてシュー様があれほど怒るのも予想外
その後どっかにいなくなっちゃうことはもっと予想外
予想外の馬鹿! このやろう! あっちいけよ! もう!


(;゚Д゚) くっそいねぇ! 早く見つけんとクーさんが・・!

(; Д ) クーさんが・・・・

歯痒いが、俺にはクーさんを救うことは出来ん
恐らくきっと多分いや間違いなく絶対に確実に問題なくハインが助けてくれるだろうとは思うが…
そうだ、あいつはすげぇ魔術師だから難なく出来るに違いない
焦らしやがってあの野郎死ね! 代わりにハイン死ね! 鬼畜な焦らしだなもう!


だが万が一
万が一にでも無理だったら、クーさんがそのまま死んでしまうとしたら…
俺達が出来ることは、最後まで側に居てやって、そんで静かに看取ってやることだけなんじゃねえか


そしてシュー様は、絶対にそれを避けちゃいけない気がする


だからこそ万が一、むしろ億が一に備えて俺がシュー様を連れ戻さねば
もしもこのままあの二人が離れ離れのままだったら、それこそ最悪の展開だ
いやハインが何とかしてくれるけどね!!
ハインが絶対何とかしてくれるけどねええええええええええ!!


(;゚Д゚) ・・! そうだ、眼鏡! 眼鏡太郎なら魔法で探せんじゃねえか!?

つーかあの神父の野郎、どうして今まで何も言わなかったっつーんだ
あいつはクーさんがどうなるか分かってたはずだろうが
最悪の展開になったらぶん殴って縛ってじっくりことこと煮込んでスープにしてクレアおばさんに味見させてやるうううううう


(,,゚Д゚) とにかく教会に・・ お?
  _
(; ∀ ) うー ぐうーっ・・

(;゚Д゚) ! おおジョーズ! いい所に居たッ!
  _
(; ゚∀゚) ・・む?


  _
(; ゚∀゚) おお、ギコか・・!

(;゚Д゚) なぁ、こっちにシュー様来なかったか!?
     いきなり飛び出しちゃったから探してんだよ!
  _
( ゚∀゚) シュー? いや、別に見ちゃいないが・・

(;゚Д゚) そうか もし見つけたら家に連れ戻してくれ! そんじゃまた!
  _
(; ゚∀゚) ちょちょちょちょちょい待ち! 待て! ちょっとだけ待て!
     俺も困ってんだよ! すまんが力を貸してくれ!

(;゚Д゚) は? なんだよ
  _
(; ゚∀゚) いや、トソンのことなんだがよー・・ 俺もうどうすりゃいいのか・・

(,,゚Д゚) ! そういやトソンは?
  _
(; ゚∀゚) 家ん中に籠もっちまって、騎士辞めるとか言い出すんだ・・
     このまま放っておいたら後味悪いことなっちまうぜ・・ なんとかトソンを説得したいんだが手貸してくれねーか

(;゚Д゚) ぬっ・・!

なんてこったい、そういやトソンを忘れていた
シュー様以上に厄介な感情抱えてるから何とかせんと…


しかし…



(; Д ) ・・! ・・・・
  _
(; ゚∀゚) もう何をどうすりゃいいのか・・ お前なんかそういうの得意そうだろ てつだtt

(;゚Д゚) それは、お前の"役目"だッ! 男を見せろ眉毛! それじゃッ!
  _
(; ゚∀゚) !? ちょ、え!? 待t・・ !?

(;゚Д゚) すまんジョニィー! 後は任せたあッ!
  _
(; ゚∀゚) んなッ!?


後ろを振り向かず、教会へ足を思いっきり動かした
そりゃあ勿論何とかしてやりたいとは強く思う
いつもなら形振り構わず馬鹿っぽく全力で助けることだろう

だが… 心苦しいが、ここはジョルジュに任せるっきゃない
俺はシュー様に全力を向けなきゃならない
それが臣下としての俺の立場な気がする 馬鹿なりになんかそう思う

"選ぶ"っつーのは辛い


(;゚Д゚) (いや、大丈夫! 神父がきっとシュー様を見つけてくれるから・・!
     そしたらすぐにジョルジュに加勢を・・ッ!)


[教会]

ガラーン


(#゚Д゚) いっねええええええええええええええェェェェェェェェ!!
     神父いっねえええええええええええエェェェェ!! どこいったアイツうううううう!?

アイツマジ馬鹿じゃねえええええのおおおおおおおおお!?
どこ行ってんのおおおおお馬鹿じゃねええええええのおおおおお!?
空気嫁ええええええトマトケチャップにしてやろおおおおおかああああああああああああ


(#゚Д゚) 降り出しじゃねえかクソッ!
     ああああもう本当にどこ!? シュー様どこに・・ッ!

(; Д ) ・・・・ええい、もうっ!


まるでバラバラだ
シュー様は怒っちゃうし、ハインは行方知れずだし、トソンは混乱中だ
ジョルジュはうろうろ、空気読めてない神父とデレもどこへやら


一つにしなくちゃ
例えクーさんの未来がもう無いとしても、何とか一つになって見届けなきゃ
その為には、まずは俺が走らなきゃ…


──誰もいなくなってから、何時間経ったことでしょう
姫様も、ハインも、ギコさんも、トソンさんも、ジョルジュさんも、神父さんも、デレさんも、お爺さんも
もう私のそばには誰もいません 誰も戻ってきません

川 ゚ -゚) ・・・・・・

皆さんがいなくなってから急に力が抜けていきました
あの辛い告白で精根尽き果ててしまったかのよう
一人で起きあがるどころか、腕すら持ちあがる気がしません
こんなに毛布を重く感じるなんて今まで無かったことです


川 ゚ -゚) (・・少しだけ寂しい、かな)

今更になって気付いたのですが…
最後ぐらいは、みんなに囲まれて死にたいって思っていたみたいです
そんなこと考えちゃいけなかったのに、私は欲張りだったから…
やっぱり、一人は寂しい

でも、仕方がありません
私は今まで酷いことを沢山やってきたのですから
きっとそれの報いなのです


日もそろそろ落ちてくることでしょう
きっと明日、私は「おはようございます」を言うことが出来ません
出来ることなら、最後ぐらいは誰かに「おやすみなさい」を言いたいものです


それにしても、姫様のことが心配です
私のせいであんなに怒らせてしまいました
あんなに怒りだすなんて思ってもみませんでした


どうしてあの子は自分の幸せを一番に考えてくれないのでしょうか


昔っからそうです
私と初めて会った時も、人のことばかりを考えている女の子でした
姫様が怒ってしまったのも、きっと私のことを想ってのこと

私のことなんて気にせず、きれいさっぱり忘れてくれればいいのに
自分のことを、自身の人生を考えてくれるようになれば…
そうすれば、あの子は幸せになれるはずなのに…

あとは時間が解決してくれることを願うしかありません
時が過ぎて、記憶が風化してくれれば… その時きっと姫様は幸せになれる


姫様だけではありません
ハイン達もきっと悲しむけれど、いずれ時間が…


<ガチャリ


川 ゚ -゚) ・・!


从 ∀从 ・・・・・・

川 ゚ -゚) は、いん・・

入ってきたのは埃だらけのハイン
そんなハインが真っ赤に眼を充血させて、よたよたとこちらに歩いてくるのです
一歩こちらへ近づくごとに、胸が苦しくなる


从 ∀从 ごめん・・ クー、ごめん・・


あぁ、やめて 謝らないで


:从 ∀从: 俺・・ お前に、何もしてやれなくって・・ 頑張ったんだけど・・
       お前を・・ 助けらんない・・ ごめん・・ クー、ごめん・・


お願いだから、そんな声を出さないで


川 ゚ -゚) やめ、て くださ、い  そん、なこと 言うの・・
      わたしが、ぜんぶ・・ のぞん、だこと・・ です、から

:从 ∀从: ごめん・・ ごめんなぁ・・ 全然気付けなかったよ、俺ぇ・・

川 ゚ -゚) ・・・・・・


もうほとんど動かない私の手
それでも、まだ感触だけは感じられました
毛布の中へもぐりこんできたハインの手の温もりは、確かに伝わるのです

川 ゚ -゚) あった  かい・・

:从 ∀从: ・・つめてぇな、お前は

川 ゚ -゚) 手、つめたい、ひとは こころが、あったかい、んです  よぉ

:从 ∀从: 馬鹿なこと・・ 言ってんじゃねえぞ・・


あぁ、よかった
一人じゃなかった
そう思った途端、もう死んでもいいやって思えました
心残りといえば… トソンさんはきっとジョルジュさんが何とかしてくれるとして、あとは姫様


川 ゚ -゚) ・・そう、だ  ハイ、ン お願い、あるん、ですけ、ど・・
     ひめ、さまが いなく、なっちゃ、って  探して、ほしい、んです、が・・

:从 ∀从: 

:从 ∀从: お前は・・ シューのことばっかり、気にしやがって・・

川 ゚ -゚) ・・!


:从 ∀从: 絶対に、絶対に離れるもんか・・・・ 離れてやるもんか・・
       一秒でもお前から離れるもんか・・っ 最後までずっと手ぇ握り続けてやる・・

川 ゚ -゚) ・・・・・・

今までの付き合いから充分わかっていたつもりだったのに
この子は、私が思っていた以上に繊細だったのかもしれません
ぶっきらぼうで、さばさばしてる風なのに、どこまでもか弱くて…


川 ゚ -゚) ごめん、ね ハイン・・

:从 ∀从: ・・・・・・

川  -) あなた とは いちばん、仲よかった、から・・ はず、かしくって・・ 言えやしなかった、けど、も・・



:川  -): 大好き・・ ですよ・・ ハイン・・

:从 ∀从: 知ってんだよ馬鹿が・・ッ

私の手を握りしめて離そうとしないハインが愛おしくって
涙を流すまいとする彼女を見ていると、また自分の顔しょっぱくなっちゃって

本当にごめんねハイン
私、きっと幸せに死にますから… だから許してね…


  _
(; ∀) ──もう、マジで・・ どうすりゃいいのよ・・

何が役目じゃあの野郎
そんな役目、引き受けた覚えは無いっつーの
何もできないから困ってんだっつーの

  _
(; ゚∀゚) ってか俺、そもそも無関係だよなぁ・・ 何でこんなに深く関わっちゃってんだろ
      ・・死ぬとか、そういうのって卑怯だ すっげー卑怯な手口だ・・
  _
(; ∀ ) あー、死にてー なんかしらんが俺も死にてー・・ はぁ・・


< ・・おやおや そこの凛々しい眉毛の御方 お困りの様ですね

  _
( ゚∀゚) ・・あ?

いつの間にやら、俯いた俺の真正面には人影
片手には綺麗な目と髪の人形を抱えている
どことなく落ち着いているこの声の持ち主は…



( ・∀・) やぁ、ジョルジュ君 お元気?

ζ(゚ー゚*ζ 


  _
( ゚∀゚) ・・サザビー

( ・∀・) アサピーです 素で間違えやがったな
  _
( ゚∀゚) ・・なんだよ 何しに来た

( ・∀・) トソン君の様子を見に来たんだけども
       ・・やっぱり深刻なことになってそうですね
  _
( ゚∀゚) ・・・・・・

どうやらクーに深く関わっていたであろう男
てかこいつに会ったのもつい最近なんだよなあ…
よく分からん なーんか胡散臭いんだよなコイツ

  _
( ゚∀゚) ・・お前、あのメイドのことについて知ってたんだよな

( ・∀・) えぇ、まぁ 知ってました
  _
(; ∀ ) なーんで黙ってたんだよお前・・ もう滅茶苦茶じゃねえか・・
      メイドもそうだし、トソンまで滅茶苦茶じゃん・・ 何してくれてんだよ・・

( ・∀・) ・・うん そうだね 滅茶苦茶みたいだ
  _
(; ∀) 他人事っぽく言うんじゃねぇよ・・ そうやって傍観決め込んでる所が気にくわねぇ・・
     なんかしようとは思わねえのかよ、お前さあ


( ・∀・) ・・・・・・

( ・∀・) 傍観もこれっきりさ
  _
( ゚∀゚) ・・え?

( ・∀・) 私には・・ いや、もう誰にも「クーちゃんの死」という大きな流れを変えることは出来ないでしょう
       でも、その支流だけならば変えられる 私にも、君にも変えられる
       だからこそここに来たのです
  _
(; ゚∀゚) ? トソンを何とかしてくれんのか?

( ・∀・) 私だけじゃないさ
       ジャン・ピエール・ペロペロップ君・・ 君も一緒に救済するんだよ
  _
( ゚∀゚) お前の間違い方には悪意を感じる

( ・∀・) こういう時こそお茶目にいこうと思って・・
  _
(# ゚∀゚) んな気遣いいらねえから解決策教えろや!

( ・∀・) うむ、うむ
      ・・これは私の仮説なんですが、トソン君の感情はある意味「呪い」に近いもので縛られている気がします
      あの子の気持ちの揺れ動きは妙に不自然です
  _
(; ゚∀゚) の、呪い?

( ・∀・) 「呪い」といっても、何も魔法染みたことを言っているのではありません
       例えば・・トラウマや催眠などといった「人を縛るもの」は、押し並べて呪いといえますな
       そういった外的な要因が絡み、トソン君の感情を縛ってしまっているのかもしれません

( ・∀・) その場合なら私に一つの解決策があるのですが・・ しかしあくまで私の推測にすぎない
       トソン君自身の内的な感情が問題ならば、それは私の出る幕じゃない
       彼女が何を悩んでいるのかを聞き、アドバイスをしてあげることが必要です

( ・∀・) つまり
  _
( ゚∀゚) つ、つまr ・・ん?

耳を傾けるのに集中しすぎて気付かなかったが、足元に白い模様みたいなのが広がっている
あ、もしかして魔法陣ってやつ…


( ・∀・) 
  _
(; ゚∀゚) 

(# ・∀・) まずは話を聞いて原因を探って来るのですッ! あわよくば解決してきなさいッ!
  _
i!i; ∀i!i! !? ちょ!? それ単純に説得するだk
 シュバッ

( ・∀・) んむ 半ば無理矢理だが、何とか前進したね
      くっさい台詞の一つや二つ、吐いてほしいもんですが・・

ζ(゚ー゚*ζ ・・・・・・


  _
(; ∀) へぶッ!?
 ゴツッ
  _
(# ゚∀゚) あ、顎ぶつけた・・ッ! あ、あの糞野郎! 一体何考えt・・
  _
(; ゚∀゚) ・・・・あ


(゚、゚;トソン 


顔を挙げるとそこには勿論トソン
え、どうすんの ちょっと、どうすんのよこれ、ちょっと… ちょっと…


(゚、゚;トソン ジョルジュ・・? な、なんで・・ どこから・・
  _
(; ゚∀゚) ! あ、いや・・! その・・ よ、よお トソン
     あー・・ ・・ま、その ・・あ、制服と剣返すわ ほら、これ ははははは・・

(゚、゚;トソン ! ・・・・・・

(、 ;トソン い、いらない よ
  _
(; ゚∀゚) 「いらない」じゃなくてよ・・ ・・これ、お前んだろ ほら、受け取れよ


(、 ;トソン いい 必要無い・・ もういらないよ・・
  _
(; ゚∀゚) そ、そうか 必要無いか 分かった うん 分かった
     騎士のことはまあ、この際置いておくとして・・

(、 トソン ・・・・・・
  _
(; ゚∀゚) 
  _
(; ゚∀゚) お前、あのメイドに対してさ どう向き合うつもりだ?

(、 ;トソン 
  _
(; ゚∀゚) このままって訳じゃあねえよな? ・・お前、まだ悪魔とかに拘ってんの?

(、 ;トソン ・・ジョルジュには、関係ない
  _
(; ゚∀゚) それこそお前に言ってやりてえ台詞だよ
     あいつが悪魔だってこと、お前に直接関係無いだろ
     別にアイツがお前の親父を殺した訳でもないし・・ 何をそこまで嫌ってんだ 正に無関係じゃん・・

(゚、゚;トソン で、でもっ クー君は! クー君は・・っ  ひ、人を殺してる・・っ
  _
(; ゚∀゚) あー そりゃ悪いことだが・・
     でも不可抗力っつーか、そうしなかったら逆にハインリッヒやらあの姫が危なかったわけだしよ
     それにお前、その点であいつを憎んでるわけじゃない・・ よな?

(、 ;トソン ・・・・・・

言葉に詰まりそっぽを向くトソン
正義感の強いコイツなら、そういうのを見過ごすのは耐えられないんだろう
だからこそ、見過ごしてしまった自分が嫌で騎士もやめたくなった… って解釈か? 教えてくれおい

まぁ、それはいい
それはそれでいいが、こいつの問題はそこじゃないはずだ
もっともっと深い所にある… んだよな? もうわからん わからんわコノヤロウ

  _
( ゚∀゚) とにかくよ ハインリッヒの家に行こうぜ
     ほら ・・見守ってやろうぜ、最後ぐらいよぉ

(、 ;トソン ! だ、駄目だ・・ッ ま、まだ・・ まだ・・ッ 気持ちが・・
  _
(; ゚∀゚) 何でだよ! 何がそんなに嫌なんだよ
      意味がわからんぜ・・

(、 ;トソン 

:(、 ;トソン: ・・なんで
  _
( ゚∀゚) ん?

:(、 ;トソン: 何で・・ お前は僕に構うんだ・・? いつもいつも・・
       頼んでもいないのに・・ッ 絡んでくるんだ・・?
  _
(; ゚∀゚) ・・え?


:(、 #トソン: お前には僕の苦しさなんてわからないだろッ!? どれだけ辛いかだってわからない癖に・・ッ!
      僕はもう騎士やめるんだから・・ 僕と関わる必要無いだろうッ!! 放っておいてよ・・!
      いつも、いつも、面白半分に・・!
  _
(; ゚∀゚) (!? お、怒っ・・!? 何で!? 俺いい線いってなかった!?)

:(、 #トソン: 帰ってくれ・・ 今すぐ、帰れ・・ッ!
       これは、僕の問題だ・・ お前は・・ 入ってくるな・・ッ! いい加減にしてくれよ・・
       なんで昔から僕に関与してくるんだよ・・ッ!? どうしてだよ・・ッ!
  _
( ゚∀゚) 


どうして、って…

  _
(  ∀ ) ・・だって


そんなの、そりゃ… お前… 勿論…

  _
(  ∀ ) だって、俺  俺・・

:(、 #トソン: ・・!?
  _
(; ゚∀゚) ・・俺ッ! 前から! ずっと、お前のこと──ッ!



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