───俺はクーの後に続いて長く暗い廊下を歩く
小国といえども流石は城、何だか素敵な感じのする絵とかが沢山飾ってある
うん、素敵だ あんまり良くわからんけど 何だか素敵な気がしないでもない
ごめんやっぱり良くわからん


从;゚∀从 おーいクー、本当にやるのぉ?

川 ゚ -゚) えぇ やりますとも

从;゚∀从 辞めようぜー 危なっかしいってば

川 ゚ -゚) 前言撤回はありませんよ

从;゚∀从 ・・忍び込んで"直談判"なんて・・
       完全に打ち首もんだぞー?

川 ゚ -゚) 安心して下さいハイン 多分死ぬのは不審者のアナタだけです
      私は追放ぐらいで済むはずです ざまぁ〜みろぉ〜

从 ゚∀从 おいまてコラ




  第四話:厄姫さんと金色大王さん



全くコイツは
少し見ない間に俺に対して随分毒舌になった気がする
もう何て言うか毒メイドだ、毒メイド ポイズンだよ


从 ゚∀从 で、ポイズンメイドよ 聞きたい事があるんだが

川 ゚ -゚) 何ですかいきなりポイズンメイドって
     いつだって心はエンジェルですよ

从 ゚∀从 ・・あのさ、王と何を話す気なんだ?
      それぐらい教えてくれたって良いんじゃねぇの?
      心が狭いぜポイズンメイド 略してポイド

川 ゚ -゚) それは勿論、姫様の今後についてですよ
     ・・いやだから何ですかポイドって

ううむ やはり姫絡みであったか
どこまでも尽くす奴め
まぁそんな所が取り柄の奴だがな ポイズンだけど
川 ゚ -゚) 先に言っておきますが、王の寝室へ入ったら騒いじゃ駄目ですよ
     王を刺激して護衛の者を呼ばれたら失敗ですからね

从 ゚∀从 それぐらいは理解してるさ 俺だって常識はあるっつーの

川 ゚ -゚) ではそろそろ瞬間移動しちゃいましょうハイン
      ここなら誰も来ないでしょう

从 ゚∀从 うーむ それもそうだなぁ ここら辺でいっちょ・・

从 ゚∀从 移動・・ s・・

从 ゚∀从 ・・ちょっと待っててくんない?

川 ゚ -゚) ? どうかしたのですか?

;;;::::∀从 すぐ戻るよーん


ふふふ この時期に姫絡みの話とは
大体事情は飲み込めたぞポイズンよ まだまだ甘い奴め
ならばこちらとしてもやっておくべき事がある
裏工作はお手の物だぜ

これでも頭は良い方なのだよワトソン君

[10分後]

;;;::::∀从 た・・だいま・・っ

川 ゚ -゚) 遅いですよハイン 何をしていたんですか?

从;゚∀从 ゼェーッハァーッ何でも・・ゼェーッハァーッ無い・・ゼェーッハァー・・
      気にすゼェーッゼェーッんな・・ハァーッ・・ハァーッ・・!

川 ゚ -゚) そうですか ならば気にしない事にしましょう
      さぁ、とっとと行きましょう 王の元へ

从; ∀从 もうちょっと・・ 気遣って・・ くれても・・ ハァ・・ハァ・・

川 ゚ -゚) しょうがないですね・・ 3分間だけ待ってあげましょう
     3分を過ぎたら耳を撃ち抜きますよ

从; ∀从 お前はラピュタ王か・・グェ・・


ついでに俺ことハインが好きなジブリ作品はもののけ姫だ
うむ、まさかの3話引っ張り


从 ゚∀从 よし、んじゃ行くか 王の元へ

川 ゚ -゚) サクッと行きましょう サクッと

从 ゚∀从 うむ・・ じゃ、サクッとあと5分ぐらい待っててくれ
      魔法陣作るから

川 ゚ -゚) おや? 魔法陣なんて欲しいんですか?
     ただ移動するだけじゃないですか

从 ゚∀从 どんな魔法でも、あらかじめ魔法陣を作るのが基本なんだよ
 カリカリ  これ作らないと魔法の効果半減の上、疲れるのなんのって
      移動の時は一々面倒臭いから作ってないだけでね

川 ゚ -゚) なるほど 何かちょっと格好いいですね、魔法陣作ってるところ

从 ゚∀从 ぐるぐる作るぜ
 カリカリ
 
从 ゚∀从 よっし、出来た こんなモンだろ
デキタァーン

小型の杖で俺がカリカリぐるぐる作り上げた幾何学的模様が広がる
うっすら緑色に光る模様は、火垂るの墓を彷彿とさせる程やんわりしている
くそぅ、泣けてきた


川 ゚ -゚) この上に乗れば宜しいのですか? 初めてなものでわくわくします

从 ゚∀从 おーう 気楽にしていてくれ

川 ゚ -゚) 何だか綺麗・・ わっ、光が強くなりましたよハイン!

从 ゚∀从 お前に反応してるだけだよ

川 ゚ -゚) 姫様にも見せたかったです、これ
      本当に神秘的ですね

从 ゚∀从 ふふふ・・ それじゃ魔法発動といきますか!

魔法陣に宿った魔力を開放させ、俺達は王の元へと飛んでゆく
それはもう、是非とも一度は体験してもらいたい程の爽快感の中で────

从 ゚∀从 

川 ゚ -゚) 

从 ゚∀从 

川 ゚ -゚) 

从 ゚∀从 ・・あれ?

川 ゚ -゚) 飛んでませんよ、ハイン

从 ゚∀从 

川 ゚ -゚) 


飛んでねぇ
何だよさっきの俺の地の文
爽快感なんてねぇよ
虚無感しかねぇよ

从;゚∀从 あ・・あっれぇ〜?
       おかしいなぁ・・ 魔法陣も合ってるはずなんだが・・

川 ゚ -゚) 綺麗なだけでしたねぇ 今度は花火でも打ち上げるんですかハイン?

从;゚∀从 いや待て待て待て 絶対合ってる 何かおかしいぞ・・?

川 ゚ -゚) 試しに魔法陣無しで移動してみてはどうですか?
     それなら大丈夫なのでは

从;゚∀从 ふ、二人分の移動を素でやれと・・?
       お前を背負って全力疾走しろと言うようなもんだぞ・・

川 ゚ -゚) だってしょうがないじゃありませんか このままだったら許しませんよ

从;゚∀从 うぐぐぐ・・ しょうがない、ちゃんと休憩時間くれよな・・
       こんなの初めてだ・・

改めて、今度は自分とクーの周りに魔力を集中する
光が魔法陣の様に足下に広がるが、放つ光は微弱で色も薄い
やはり自分であらかじめ作らなければ魔法の効果はフルに発揮されん

滅茶苦茶疲れるが、これも仕事のうちだ
俺はクーと一緒に王の元へと飛んだ
壮絶な疲労感と共に────

从 ゚∀从 

川 ゚ -゚) 

从 ゚∀从 

川 ゚ -゚) 

从 ゚∀从 ・・飛んだ?

川 ゚ -゚) 頭ぶっ飛ばしますよ、ハイン

从 ゚∀从 ・・・・うん・・・

川 ゚ -゚) ・・・・・


何だよこのグダグダ感
最早徒労感しかねぇよ

从 ゚∀从 いや待て待て待て待て待て待て待て待て待て
      これはおかしいぞ 絶対おかしい

川 ゚ -゚) はぁ・・ 何かもう・・ ハイン・・ はぁ・・

从;゚∀从 溜息辞めろ! 何か傷つく!
       俺はおかしくないから大丈夫だ!

川 ゚ -゚) ならば何故いざという時になって魔法が使えないんですか?

从;゚∀从 うーむ・・ 何故だr

从 ゚∀从 

从 ゚∀从 あ

川 ゚ -゚) ん

从 ゚∀从 上階が抵抗領域なんだ

川 ゚ -゚) てーこーりょーいき?

从 ゚∀从 簡単に言うとだな、魔法が使えない領域だよ

川 ゚ -゚) わぁ、本当に簡単 名前も何だか適当っ

从 ゚∀从 成程な・・ この城、お偉いさんがいる場所は抵抗領域になってるのか
      だから俺が城の中を出歩いてもお咎め無しだったって訳か
      やってくれるぜ

川 ゚ -゚) ・・飛べない豚はただの豚ですよ、ハイン?

从#゚∀从 


あろうことか豚だと畜生 この可憐な俺に向かって
しかしクーの言う事もあながち間違いでは無いのかもしれない
魔法の使えない俺は、いわば野球の出来ない新庄剛志なのだから


あれ? 結構何でも出来そうだぞ俺
自信出てきた

从 ゚∀从 しかしこの領域が広がっているとは・・
      魔法使える奴なんて珍しい存在なのにご苦労なこった

川 ゚ -゚) 現在、この城に魔法を使える人間は居ないハズですが
      3年ほど前までは"占い師"なる人が居たそうですが

从 ゚∀从 じゃあその占い師が過去に造り上げたんだろうな
      なかなか高等ですぜこの魔法

川 ゚ -゚) ・・ところでこの状況、裏を返せば・・



川 ゚ -゚) 私たちのいる所は危険だったという事ですよね
     そのような場所で姫様は生活していた、と

从 ゚∀从 ・・賢いじゃないか


何だか雲行きが怪しくなってきたぞ
なかなか重い厄をお持ちのようだな姫様
手応えありまくりだぜ

从 ゚∀从 で、どうしますかねクーさんよ
      任務続行?

川 ゚ -゚) 当たり前です 私たちに"妥協"の二文字は無いのですよハイン
     あなたと私の連携でしたら、何だって可能です

从 ゚∀从 よく言った!
      しかしどうする? 王の元に行くのにもう俺の力は使えんぞ

川 ゚ -゚) ふふ 勿論・・  強行突破!

从 ゚∀从 おおッ!

川 ゚ -゚) ・・といきたい所ですが、妥協してルパンの様に侵入する事にしましょう
     上階に行くには見張りが邪魔ですから

从 ゚∀从 ・・・・・・

───俺はクーの後に続いて長く険しい城壁を登る
小国といえども流石は城、何だか素敵な感じのする壁とかで覆われている
うん、素敵だ あんまり良くわからんけど 何だか素敵な気がしないでもない
いや、素敵じゃねーよ 何だよこれ 壁だらけだよ


从#゚∀从 登 れ る か ァ ッ ! !

そう 登れる訳が無い


川 ゚ -゚) ハイン、コツはかぎ爪を小さな隙間に引っかけ、バランスを保ちながら登る事ですよ

从#゚∀从 何でお前そんな事出来んだよ! 何者なんだよお前は!
       昔っから微妙な所で超人的過ぎんだよ!
       ていうか何でかぎ爪持ってんの!?

川 ゚ -゚) 何でも出来なければメイドは勤まりませんよ
     とりあえず私が最初に侵入してロープを垂らすので、それで登ってきて下さい

从#゚∀从 くそぅ 何だか負けた気分だ・・

川 ゚ -゚) 安心して下さい あなたは全てにおいて私に負けていますから

从#゚∀从 うっせェッ!

クーが小さな窓から華麗に城の中へ侵入する
俺も何とかロープをよじ登り侵入
城の上層といえども、装飾はあまり変わらない様だ

从;゚∀从 ふぅー・・ 疲れた疲れた ロープ登んのも結構体力使うなぁ

川 ゚ -゚) 私を見習いなさいな 汗一つかいていませんよ

从;゚∀从 俺はインドア派なんだよ
       何故ならインテリだから 賢者だから 可憐だから

川 ゚ -゚) さて、これからどうしましょうかねぇ

从 ゚∀从 無視しないで欲しかった・・
      まぁこれからの事だったら俺に考えがある
      まずはこのうざったい領域をぶっ壊そう

川 ゚ -゚) おや、壊せるんですか?

从 ゚∀从 抵抗領域っつっても魔法で創った空間だからな
      何だか矛盾してるだろう? ここに弱点があるのだ

川 ゚ -゚) ・・なるほど、「中心部には効果が及ばない」という訳ですね

从 ゚∀从 その通りだ明智君 君は本当に聡明だな

川 ゚ -゚) で、どこにその中心部があるのでしょうか

从 ゚∀从 うーん その宮廷占い師が過去に寝床にしてた場所だと思うんだが・・
      何か知ってるかねアンダーソン君? 中心に近づけば正解か不正解かは分かるぜい

川 ゚ -゚) ああ、それでしたら図書館で寝てる変わり者だったという話を伺った事があります
     こちらですよ、案内しましょう すぐ近くです

ふむ、図書館に済んでいる占い師とは、なかなか風流がある
俺も図書館に住もうかなぁ 何だか格好いいぜ
この際漫画喫茶でもいいや


从 ゚∀从 しかし城の図書館っていうのは興味あるなぁ
      しらん本とかも結構ありs

川 ゚ -゚) (・・ハイン、静かにっ)

从 ゚∀从 (・・ん?)

クーが話を遮る
そこには人の気配がむんむんしていた

( `ー´) ・・いや、やっぱりさぁ、夜型生活はいけねーんじゃネーノ?

( ノAヽ) だからと言って寝たら許さないノーネ!



从 ゚∀从 (図書館の見張りの様だな 座ってダラダラしてやがる)
 ヒソヒソ

川 ゚ -゚) (もうここで正解ですね 中心部だから守っているのでしょう)
ゴニョゴニョ

从 ゚∀从 (この二人を静かに突破か・・ クー出来る?)
ヒッソォーヒソォー

川 ゚ -゚)  (顔をよく御覧なさい あんな一昔前の顔、やられ役に決まってるじゃないですか
ゴニョリータ  私が片づけましょう 大船に乗った気で居て下さい)

从 ゚∀从 (うむ ポチョムキン号に乗った気でいよう)
ヒソントソン

川 ゚ -゚) (・・では、反乱を起こして参りますかね 必殺技をお見舞いします)
ゴニョンミョン


よし、いまのうちに合掌しておこう
神よ、善良な彼らに祝福を
そして俺にもっと幸福を───

( `ー´) ・・そもそもこんな場所を守る必要性が理解出来ないんじゃネーノ?

( ノAヽ) 僕だって分からないノーネ! でも仕事だからしょうがないノーネ!
       手を抜いたら許さないノーネ!

( `ー´) いや、手を抜くも何も抜きようが無いんじゃネーノ?
      現に座ってるだけじゃネーノ

( ノAヽ) つべこべ言わないノーネ!
       とにかく不審者には細心の注意を払うノーネ!!

( `ー´) 下の階にもちゃんと護衛がいるから大丈夫じゃネーノ

( ノAヽ) 気を抜くと何が起こるか分からないノーネ!
       例えば窓から侵入してくるかもしれないノーネ!

( `ー´) そんなルパンみたいな事、する奴いないんじゃネーノ?



(i! 。∀。) ,.ドキィ!!! 

(i!`д´) ゴ・・ェ・・

(i! ノAヽ) ・・カッ・・

从;゚∀从 


川 ゚ -゚) どうですかハイン、私が考案した必殺技
     名付けて、「クーちゃん極楽カタルシス」
     腕の振り上げがミソです

从;゚∀从 何だそのネーミングセンス・・

川 ゚ -゚) 格好いいでしょう? お掃除中に考案しました

从;゚∀从 ・・俺には「地獄へのカタストロフ」にしか見えなかったんだが・・

川 ゚ -゚) 細かいことは気にせずいきましょう
     さぁ、見張りが目を覚ます前に早く図書館へ

从;゚∀从 う、む・・


俺は時に思う
本当にこいつは何者なんだろうか、と
コイツを捨てた親の気持ちが分からなくもない

図書館の中には古書を中心とする大量の本、本、本
歴史、医学、哲学、魔法、神話、伝記、呪術、何でもござれ
我ながらこの荘厳たる蔵書量には面食らった


从 ゚∀从 さっすが城・・ 何冊か盗んでいくかね ばれんだろ

川 ゚ -゚) あなたはどこぞの黒い魔法使いですか
     さっさと領域を壊しちゃいましょう 弾が飛んでくるかもしれませんよ

从 ゚∀从 うむ 盗むのは後にしよう
      早速解除しますかね

先ほど使用した小型の杖をまた取り出し、今度は図書館の壁一面に模様を書き上げていく
面倒臭い事このうえない


川 ゚ -゚) 今度は凄い量ですね 灯が無くても周りがはっきり見えますよ
     本当に綺麗です

从 ゚∀从 この光の美しさだけが俺を突き動かすのさ・・
カリカリカリ

費やすこと十数分
何とか解除呪文を書き上げられた
解除にこれほど時間を費やさせるとは
占い師、空気読めマジで


从 ゚∀从 複雑な事しやがって全く・・
      解除する人間の事も考慮しやがれってんだ

川 ゚ -゚) さぁ、無駄話はもう終わりですよハイン

从 ゚∀从 ・・あぁ、今度こそだな


川 ゚ -゚) 行きましょうハイン そしてあなたは事が終わったら逝って下さい

从 ゚∀从 いざ行くぜ! そしてお前は事が終わったら俺に千回謝れ


いざ魔法陣を発動
深緑の仄かな光に包まれた図書館から、我々は徐々に姿を消していく
やった、今度こそ成功s

…あれ



俺、移動用魔法陣作ってなかったな────


3話へ] 戻る [4話−2へ