('A`)は野球選手のようです 5-3.ニュー速ヴィッパーズVS東京ビックバンズ



そして8回表。
バッターは8番の和手枡から。
ピッチャーは未だ疲れの見えない流石だ。


( <●><●>)(恐らく……内藤さんには代打が出される……)


自分の次はピッチャーの内藤だ。
5点のビハインドだが、球数的にも内藤は降板するだろう。


( <●><●>)(……そして、恐らく自分も)


自分はまだ3年目のキャッチャーだ。
年が近い内藤とはコンビを組んでいるが、まだまだ先輩をリードする力量はない。


和手枡はここまで2三振。
流石にまったくタイミングが合っていなかった。


( ´_ゝ`)(あー、速く終わらせて澪ちゃんで抜きてえ)

(´・_ゝ・`) (死ね)

( <●><●>)(……)


流石の表情からも、自分を侮っているのがありありとわかる。
このまま負けっぱなしではいられない。


( <●><●>)(初球!)


決め球は決まった。
ここまでの打席、初球はすべてストレート。
恐らく、この打席もストレートから入る。
そこを叩く。


1球目。
予想通りのストレート。
しかも甘いコースに入ってきた。


( <●><●>)(食らえ!)


バットを振り抜く。
基本に忠実なスイングでボールを捉える。
ボールは、レフトスタンドに向かい突き進む。


(;´_ゝ`)(……)


( ><)『和手枡いい当たり! レフトスタンドへ飛んでいく!!』


( <●><●>)「いけぇっ!!」

(;´_ゝ`)(芯は外した筈だが……)


流石が投じたのはシュート。
和手枡がストレート狙いなのは読んでいた。
だから少し動いて芯を外すシュートを投げた。
しかし、やはり疲れからか思ったより動かなかった。


( ><)『入るか!? 入るか――!?』


( ><)『少し届かない! ボールはレフトフェンスを直撃! ランナーは悠々2塁へ!』


(;´_ゝ`)(くっ……)

(´・_ゝ・`) (兄者……)

( ´_ゝ`)(すまん、今ので目が覚めた。全力で行くぞ)

( <●><●>)(……よし)


これでいい。
この試合、8回にして初めて長打が出た。
得点圏にランナーが出たのも初めてだ。
しかも自分は8番。流石にプレッシャーを与える効果も期待できる。


『ヴィッパーズ、選手の交代をお知らせします。
バッター、内藤に代わりまして、擬古。背番号26』


(,,゚Д゚)(……)


左打席に入り地面をならす。
擬古。普段はセンターを守る選手だ。
しかし首に違和感を感じ、ここ3試合レギュラーから外れている。


(,,゚Д゚)(ここらで打たないと……首筋が寒いぜゴルァ)


不動のレギュラーであった擬古。
しかし怪我の自分の代役となった山本が大車輪の活躍。
もはや自分のレギュラーは確約されていない。


( ´_ゝ`)


マウンドの流石を見る。
和手枡に打たれたのは油断からだ。
その油断はもう感じられない。


(,,゚Д゚)(ビックバンズのエースからホームランを打てば……レギュラー復活だ)

( ´_ゝ`)(簡単に俺からホームランが打てるとでも? 調子に乗るな)


昨年の兄者の被本塁打は4。
狭い投手不利の球場をホームに置いているにも関わらずこの数字。
兄者のピッチャーとしてのレベルの高さを表している。


完全に野球モードに入った兄者はコーナーを突く丁寧なピッチングを見せる。
カウント2‐2。投手若干有利のカウントだ。


( ´_ゝ`)(……)

(,,゚Д゚)(……ゴルァ)


レギュラーを掴む。
そのためには結果を出さなければ。


カウント2‐2からの6球目。


( ´_ゝ`)(これで終わりだ)


兄者の右腕から放たれるストレート。
それはまっすぐ擬古の胸元へ。インハイへの見せ球だ。


(;,゚Д゚)(ゴルァ!)


その球威に思わず手を出しかける。
その動きを押し留めようとする。しかし。


(;,゚Д゚)(ぐっ……振っちまった……)


ハーフスイング。自分が一番わかる。
微妙だが、確かに自分はバットを振った。


( ´_ゝ`)(よし)

(´・_ゝ・`) (まずはワンアウトか……)


盛岡はハーフスイングの判定を三塁審に求める。
それを見た塁審は少し考えた後、手を横に出した。


(;´_ゝ`)(なっ……)

(;´・_ゝ・`) (おいおいおいおいおいおいおいおい)


そのジェスチャーが意味するもの。
ノースイング。三振が一転フルカウントに。


(,,゚Д゚)(……ラッキーだゴルァ)

( ´_ゝ`)(チッ……ヘボ審判が……)


結局カリカリした兄者は擬古を歩かせる。
ノーアウトランナー一塁二塁。
兄者は試合始まって初めてピンチらしいピンチを迎えた。


( ´_ゝ`)(……あーあ)

(´・_ゝ・`) (上位打線か……勢い付かせると逆転もあるぞ……)


『一番、ショート、茂等』


( ・∀・)(……)


('A`)(茂等さん……)


茂等は現在12打席ノーヒット。
およそ3試合ヒットを打っていない。
責任感の強い茂等さんが、一番に座りながらヒットを打てていない現状をよしとする筈がない。
きっと、ここで打つ。


( ・∀・)(……)


茂等が右打席に入る。
しかしその背中から覇気は感じられない。


( ´_ゝ`)(茂等か……安パイか……?)

(´・_ゝ・`) (油断するな。インコースに行くぞ)

( ´_ゝ`)(うぃ)


1球目を投げる。
インローへのシュート。
しかし少し制球が乱れ、さらに茂等の体近くに入る。


( ´_ゝ`)(あ)


体に近い場面ではあるが避ければなんということのない球だ。
しかし。
茂等は避けることをしなかった。
それどころか自ら足を少し出し、ボールに当たりにきたのだ。


『ボールデッド!』


審判の声が響く。
兄者は不服そうな顔をする。
ベンチからトレーナーが出てこようとするが茂等はそれを制止した。


( ・∀・)「大丈夫だ」


そう言って茂等は1塁へ向かう。


('A`)(……避けなかったのか)


( ・∀・)(……今の俺は汚かろうが塁に出る手段はこれしかないからな)


1塁から兄者を見つめる。
すると一塁手のマークが話しかけてきた。


[ヽ゚∀゚] 「You are dirty」

( ・∀・)「……承知の上さ」


『2番、セカンド、毒田』


( ´_ゝ`)(あー、イライラする。なんだこの展開)


ロージンバッグをポンポンとつけた後、思い切り地面に叩きつける。
ノーアウト満塁。これ以上ないピンチ。ちょうど1回裏の内藤と同じだ。


('A`)(茂等さんが広げたチャンス……決める)


兄者は見るからにイライラしている。
崩すには最適な状況だ。
逆に最悪なのがゲッツー。内野は前進守備。ゴロなど打とうもんならホームゲッツーだ。


('A`)(落ちる系統の球はまずない……ワイルドピッチが怖いからな)


まずフォークは消える。


('A`)(次にシュートもなさげだな)


茂等さんに当てたシュートもなかなか使いづらいだろう。


('A`)(となれば大体の割合からいうと……ストレート、もしくはスライダーだ)


どちらに絞るか。
二兎を追って捕まえられる相手ではない。


('A`)(……スライダーだ)


第一打席、俺はストレートを痛打した。
松井さんのプレーに阻まれはしたがあれは普通は抜けている。
となれば、あとはスライダーだ。


( ´_ゝ`)(……)

('A`)(長かったぜ、ここまで追い込むのは……)


兄者がセットポジションに入る。
そして、1球目が投げられた。


('A`)(決める!)


投じられたのは速いボール。
スライダーの球速ではない。


('A`)(ストレート?)


低めに決まるストレート。


('A`)(!)


しかし、自分の少し前で急激に落ちる。
フォークボールだ。


( ´_ゝ`)(ワイルドピッチが怖くてピッチャーできるかよ)

('A`)(1点覚悟か……おもしれえ)

(;´・_ゝ・`) (無茶しやがる……)


フォークを惜しげもなく使ってくる。
それならシュートやストレートも使うだろうか。
絞り球を変えるべきか。


('A`)(変えねえ)


自分の野球勘が囁いている。
ここは、スライダー狙い一本だ。


( ´_ゝ`)(……)


2球目、チェンジアップ・ストライク。
3球目、シュート・ボール
4球目、フォーク・ボール。


(´・_ゝ・`) (1球も振ってこない……何が狙いだ?)

( ´_ゝ`)(関係ねえよ、ねじ伏せる)


(´・_ゝ・`) (いずれにせよ1‐3だ……フォークはもう使えない)

( ´_ゝ`)(ストレートでカウントを稼ぐか)

(´・_ゝ・`) (ストレート待ちかもしれん)

( ´_ゝ`)(関係ねえよ、ねじ伏せる)


('A`)(……)


第5球目、ストレート。
俺はピクリとも動かない。


(´・_ゝ・`) (……ストレートでも、ないのか)


( ´_ゝ`)(……チェンジアップには反応しなかった。甘かったにもかかわらず、だ)

(´・_ゝ・`) (よし、それだ)

( ´_ゝ`)(ちょうどストレートを見せれた。あいつは扇風機みたいにクルクル回るぜ)


第6球。
チェンジアップが投じられる。


('A`)(スライダーじゃない……でも!)


俺はバットを振る。
打球が上がる。歓声も、上がる。


「ファール! ファール!」


打球は高く舞い上がって一塁スタンドに入る。
スライダーが来ないなら、来るまで追い込めばいい。


( ´_ゝ`)(……)


7球目、ストレートをバックネットに。


(´・_ゝ・`) (……)


8球目、シュートを三塁線ギリギリのファールに。


('A`)(……)


9球目、再びチェンジアップを一塁スタンドに。
我慢比べだ。


( ´_ゝ`)(……らちがあかないな)

(´・_ゝ・`) (……)

( ´_ゝ`)(ナックルだ)

(´・_ゝ・`) (!? ナックルは……)

( ´_ゝ`)(ああ、未完成だ。しかしここ一番の場面1回こっきりだけは使える)

(´・_ゝ・`) (……)

( ´_ゝ`)(使うぞ、盛岡)

(´・_ゝ・`) (……ええい、ままよ!ナックルだろうがなんだろうが止めてやるよ!)

( ´_ゝ`)(頼りにしてるぜー)


そして第10球。


('A`)(!?)


ゆらゆらと揺れる球。
見たことのない球だ。


('A`)(魔球か?)


そんなバカなことを考えさせられる球だ。
遅いふらふらとした球は恐らくストライクゾーンに入る。
カットしなければならない。


(#'A`)「らあっ!」


なんとかナックルボールを捉える。
しかしボールは高く上がり、しかも一塁スタンドには入りそうもない。
一塁手のマークが捕球体勢に入る。


(;'A`)(くっ……!)


[ヽ゚∀゚] 「オーライ」


一塁手のマーク。
難なく落下点に入る。
メジャーの舞台も踏んだマーク。こんな球は何回も処理してきた。


[ヽ゚∀゚] (ボールが上がって……そう……そう……)


ボールを目で追う。
その時、照明とボールが重なった。


[;ヽ-∀-] (ウッ!)


思わず目を瞑る。
もちろんボールからは目が離れる。
そのボールは、グラブのへりに当たり下へと落ちる。


[ヽ゚∀゚] (NO!)


慌てて素手でボールを掴みにいく。
しかし、その手は虚しく虚空を掴んだ。


「ファール!」


マークがフライを落球。
ライトスタンドからはため息、レフトスタンドからは歓声が上がる。


('A`)(……追い詰めた)


次で11球目。
バッターはピッチャーに10球投げさせれば成功と言われる。
しかしこの場においてはそうではない。
打たなければ、成功ではない。


( ´_ゝ`)(……)

(´・_ゝ・`) (……決めよう。スライダーだ)

( ´_ゝ`)(……ああ)


そして、第11球目。


('A`)(スライダー!!)


ついに、待ち望んだスライダー。
バットを出す。完璧にスライダーを読み切ったスイング。
ボールは吸い込まれるようにバットの芯へ。


( ><)『打った――!! 強烈なライナー!!』


(;´_ゝ`)(ぐううっ!!)

('A`)(5点差でグランドスラムなんていらない。いるのは、次に繋がるバッティング!)


ライナーは左中間に。
1回の松井のファインプレーが思い出されるが、それが再現されることはない。
フェンスに直撃するほど強烈な当たりだったからだ。


( ><)『和手桝ホームイン! 続いて2塁ランナーの擬古も生還!』


( ・∀・)(よくやった、ドクオ!)


茂等は1塁から本塁を目指す。
しかしセンターの松井は強肩だ。


にしこり「うらぁ!!」


ボールは糸を引くように本塁へ。
最高の返球だった。
しかし、盗塁王を獲得した黄金の脚には通じない。


( ><)『セーフ! 松井好返球をしましたが茂等の方が速い! 

      この間に毒田は三塁へ! 3点タイムリーツーベース!』


('∀`)(よし!)


毒田は三塁ベース上で右手を掲げる。
遥か遠くのビックバンズの背中が見えた。

V 3‐5 TB


『3番、レフト、魔将』

流石が魔将に放った第3球。
場内は静まり返る。
ライトも、レフトも。


( ><)『……は』


( ><)『入った――! 魔将第6号ツーランホームラン!!』


一拍置いてレフトスタンドが沸く。
魔将は悠々とダイヤモンドを回る。


('∀`)「アーロン――!」


ホームベース上で毒田が笑いながら手を振る。
魔将も笑いながら毒田に近づく。


J( ゚_ゝ゚)し「どーん!」

('A`)「ひでぶっ」


( ><)『あー、魔将の名物「毒田ラリアット」が決まりました』

( ゚∋゚)『ユニークですね』


V 5‐5 TB


内野陣がマウンドに集まる。
投手コーチもマウンドに行く。
監督は主審に選手交代を伝える。


( ´_ゝ`)「え、なに、俺打たれたの?」


『東京ビックバンズ、選手の交代をお知らせします。

ピッチャー、流石に代わりまして、ブーム。背番号48』


( ´_ゝ`)「え、俺降板? え?」


|  ^o^ |「わたしです」


マウンドに上がったブームが投球練習を行う。
ノビのあるストレートが武器のピッチャーだ。
宝はベンチをふと見る。


(A'`)「おいアーロン!! いつもいつもラリアット強いんだよ!!

   顔がいがむかと思ったじゃねーか!!」

J( ゚_ゝ゚)し「ユニーク」

(K‘ー`)(wwwwwwwwwwwwwwww)


(;^Д^) (試合中とは思えんな……)


( ^Д^) (……でも)


毒田が加入してからチームの雰囲気は目に見えて良くなった。
去年まではビックバンズ相手に5点差なら意気消沈していただろう。
それが今はスコアボードに「5」が刻まれている。


( ^Д^) (それを「6」にするのが、俺の仕事だ)


今までの打席を思い出す。
最強の4番、「諸本信彦」を追いかけた86打席。


( ^Д^) (バカだなあ……俺は)


諸本は左打者。宝は右打者。
諸本は大卒。宝は高卒。
諸本と自分。違う人間だ。


( ^Д^) (俺は、諸本さんとはまた違う4番になる)


手に持った漆黒のバットを見つめる。
今年のキャンプから折れることなくここまでついてきてくれたバット。
偉人の猿真似は、このバットに失礼だ。


右打席に入る。
ゆったりとした動作で、マウンド上のブームを見る。


(´・_ゝ・`) (……? なんだか、雰囲気が違うような……)

|  ^o^ |(はやく かえって しょうゆ のみたいです)

( ^Д^) (……)


諸本ならこの場面、何を狙うだろう。


( ^Д^) (ヒット、だろうなあ)


諸本はパワーだけでなく、変化球を前で捌く技術も持ち合わせている。
その諸本なら、この場面は塁に出ることを考えるだろう。


|  ^o^ |(しょうゆ びーむ)


ブームが第1球を投げる。
肩がまだ出来てないのだろうか、中途半端な半速球だ。


(;´゚_ゝ゚`)

|  ^o^ |(あ)

( ^Д^)


なんだか、清々しい気持ちだ。
苦楽を共にした漆黒の刀を振るう。


( ><)『入った――!! 二者連続ホームラン――!!』


スタジアムが、地響きのような歓声を放った。


V 6‐5 TB


ダイヤモンドを回る。
スタンドからは宝コールが聞こえる。


( ^Д^) (……よっしゃ)


小さく拳を握る。
諸本のプレッシャーを押しのける手助けをしてくれたのは――


('∀`)ノシ「宝さーん!!」


こいつだ。


ホームベースを踏み、ベンチから飛び出したチームメイト等とハイタッチする。


( ´∀`)

監督。

( ・∀・)

茂等さん。

( ^ω^)

内藤。

('∀`)

……


( ^Д^) 「どーん」

('A`)「メメタァ」グシュ


<でたー、毒田ラリアットだー


スタンドから子供の声が聞こえた。
俺は、マスコットに渡された人形をそこに向かって思いきり投げた。


そして、9回裏。


(・∀ ・)「ざっつ火の玉ストレート!」

にしこり「ぐうっ!!」

( ><)『三振――! 試合終了! ヴィッパーズ1点を守りきりました!!』


試合は宝さんの一発を守りきり勝利。
ビックバンズとの通算連敗を6で止めた。


試合結果

             RH
V  000000060 69
TB 400010000 510


V  内藤・杉浦・斉藤‐和手枡・比木
TB 流石・ブーム・豊田‐盛岡

本塁打 松井 12 亀井 4 魔将 6 宝 7

勝 内藤 1勝1敗
S 斉藤 6S
負 流石 3勝1敗



('∀`)「それじゃー内藤のプロ初先発勝利を祝いまして! かんぱーい!」

( ・∀・)( <●><●>)「「「かんぱーい!」」」
( ^Д^) J( ゚_ゝ゚)し(K‘ー`)

( ^ω^)「ありがとうございますお!」


場所はニュー速寮ロビー。
内藤のプロ初先発勝利を祝した宴会が開かれた。


普段は自宅を持っている先輩方も今日は寮に集まっている。
二軍暮らしが長い奴らも一軍の最前線で戦う先輩らにあやかろうとたくさん出席している。


( ФωФ)「酒買ってきたぞーい!!」

( ・∀・)「でかした杉浦!! さっさともってこい!!」

(;´∀`)「ひいひい」

(;<●><●>)「か、監督……やっぱり僕が買い出し行けばよかった……」

(;´∀`)「いえいえ、買い出しじゃんけんに負けたのは私ですから……」


普段は静かなロビーもてんやわんやの大騒ぎだ。
寮長も監督がいるので手出しできないでいる。
というか一緒に騒いでいる。


(;^ω^)「こんなに集まるとは……」

(;'A`)「予想外です」

( ´∀`)「長いシーズンですからね。たまの息抜きは必要ですよ」

('A`)「監督……」

( ´∀`)「明日に残る飲み方は論外ですがね」

('A`)「はは……もちろんです」


('A`)「……」


喪名監督の言葉を反芻する。
明日に酒を残すな。ではあの3人はどうなのか。


(*・∀・)「尻からウォッカのみまーす!」

J(*゚_ゝ゚)し「メチルアルコール一気しまーす!」

<*ヽ`∀´>「マッコリマッコリマッコリマッコリマッコリマッコリマッコリ」


('A`)「……あの人らはいいんか」

( ФωФ)「まあ、あいつらは酒は強いし大丈夫だろ」


話しかけてきたのは杉浦さん。
高岡さんとともに投手陣のまとめ役を務めている。
もちろん実力も一流。今日も中継ぎ登板してHPを上げた。


('A`)「杉浦さんは飲まないんですか?」


見ると杉浦さんのコップには烏龍茶が入っている。


( ФωФ)「ん? ああ、俺は下戸だからな」

('A`)(素手で熊を倒しそうな強面なのに下戸か……)


( ´∀`)「君には期待していましたよ。大体君には余りある素質を今まで生かせずにうんたらかんたら」

(;^ω^)「はい、はい、ありがとうございますお」


こちらを見ると主役の内藤は監督に捕まっている。
あちらを見ると。


(*・∀・)「たまwwんwwねえww直腸から直接補給ww」

(;<●><●>)「もらさん! それは人として! 人として!」

<*ヽ`∀´>「マッコリマッコリマッコリマッコリマッコリマッコリマッコリマッコリ
マッコリマッコリマッコリマッコリマッコリマッコリマッコリ」

J( ゚_ゝ゚)し(しかばねのようだ)

(;K‘ー`)「ガイエル! ガイエルー!」


地獄絵図が広がっていた。


(;'A`)「未来ある野球少年には見せられないな……」


そんなとき、ポケットに入れていた携帯がブルブル震えた。
なんだろうか。『けいおんエロ画像メールマガジン』は今日の分は届いた筈だが。


――――――――――
to:毒田剛
from:伊藤紅
title:すいません!

本文
すいません!
あの週プロに書いてあった連絡先は前の携帯でした……( ̄口 ̄)
連絡無かったから嫌われたかと思っちゃった……(T_T)
本当にごめんなさい!また連絡してくださいね!o(_ _*)o
――――――――――

('A`)「……」

(゚A゚)


(゚A゚)「うわ―――――――――――――――――――!!!!!!!!」


(*・∀・) ( <●><●>)

( ^ω^) ( ´∀`)

( ^Д^)  ( ФωФ)

<*ヽ`∀´> (K‘ー`)

(・∀ ・) J( ゚_ゝ゚)し(しかばねのようだ)


俺の大声にロビーが静まる。


(゚A゚)「い、いや、すいません。なんでもないです」

(*・∀・)「……その携帯、見せろ」

(゚A゚)「だ、断固拒否します!」

<*ヽ`∀´>「マッコリマッコリマッコリマッコリマッコリマッコリ
マッコリマッコリマッコリマッコリマッコリマッコリ」

(゚A゚)「あっ、だめ! ぱくさんとったらあかんて!」

(K‘ー`)「うわぁ……」


川島が俺の待ち受けの『澪ちゃんイマラチオ画像』(今日のメルマガに添付)に心底引いている。
いや、そんなのはどうでもいい。
悪魔の手に、俺のユートピアのチケットが……!


(*・∀・)「そうしん」

(゚A゚)「えっ!?」

(*・∀・)「じゃあおやすみ」

(゚A゚)「えっ!? えっ!?」


(゚A゚)「なに!? なにを送信したの!?」


――――――――――
to:伊藤紅
from:毒田剛
title:無題

本文
伊藤さんのおまんこペロペロしたいお(ノ_・。)

――――――――――


(゚A゚)


( ^ω^)「wwwwwwwwww」
( ´∀`)「wwwwwwwwwwww」
(K‘ー`)「ぐへえwwwwwwww」
( ^Д^) 「wwwwwwwwww」
( ・∀・)「ぐーぐー」
J( ゚_ゝ゚)し(しかばねのようだ)


(゚A゚)

( ФωФ)「…………ぶぶっww」

<*ヽ`∀´>「うぃーマッコリマッコリ」

朴が再び毒田の携帯を取る。

<*ヽ`∀´>「ソウルタワーパシャパシャー」

(・∀ ・)(ちいせえwwww)

<*ヽ`∀´>「送信」


――――――――――
to:伊藤紅
from:毒田剛
title:無題

本文
なし

添付
ソウルタワー.jpg(9KB)
――――――――――


(゚A゚)


(゚A゚)


ピロピロピローン


(゚A゚)「ひっ」


( ^ω^)(さあ、どんな返信がくるか……)


(゚A゚)

('A`)

('∀`)


( ^ω^)(笑顔……だと……)

( ´∀`)(伊藤さんとやら……できますね……)

(K‘ー`)(伊藤さん……やはりゲテモノ趣味が……)


('∀`)「メーラー……ダエモン……!!!」


茂等さんは間違えてアドレス帳から伊藤さんにメールを送ったらしい。
これ幸いと俺は伊藤さんにちゃんとしたメールを送った。
※女性に送るメールを紹介したサイトを見て不快感を与えないメールです


('∀`)


感触は概ね良好。
俺はその日ロビーで寝ていた茂等さんと朴さんを踏んづけて部屋に帰った。


('∀`)「ひょーい!!」


俺たちの恋路は、まだ始まったばかりだ!


―――終わり―――

前のページへ] 戻る [オマケへ] [6話へ