('A`)は野球選手のようです 5-2.ニュー速ヴィッパーズVS東京ビックバンズ



( ><)『さあ、時刻は午後6時10分前、東京ビッグバンドームからお伝えします』

( ゚∋゚)『こんばんは』

( ><)『はい、解説は鳥谷敬さん、実況は私稚内弘人でヴィッパーズ対ビッグバンズ第4回戦をお送りします』

( ゚∋゚)『よろしくお願いします』

( ><)『はい、よろしくお願いします。鳥谷さん、今日の試合の見どころをお願いします』


( ゚∋゚)『そうですね、やはり両投手の投げ合いでしょうか』

( ><)『ヴィッパーズは内藤、ビッグバンズはエースの流石です』

( ゚∋゚)『流石は崩れないでしょうし、どこまで内藤が踏ん張れるかでしょう』

( ><)『内藤はピンチに弱いと言われていましたが、

      ここまでの登板3試合はそれを克服したように見えます』

( ゚∋゚)『どうでしょうね。強力打線のビッグバンズにどれだけ対応できますかね』


( ´_ゝ`)「お嬢ちゃんいい球投げるね……」


マウンド上の流石は始球式を終えた少女に声をかける。
その表情はプロ野球選手のそれではなく、どちらかと言えば変質者に近い。


「うん! この日のためにいっぱい練習したの!」

( ´_ゝ`)「そうかそうか、そんなお嬢ちゃんに個別で教えてやろうか」


息を荒げながら少女を夜の個別授業に誘う流石。
その目は獲物を狙うそれだ。


「ホントに!?」


しかし純真無垢な少女のこと、プロ野球選手の誘いは甘美なものである。
流石はそれにつけこむ。


( ´_ゝ`)「マジマジ。ヴィッパーズをちゃっちゃと片付けるからそれから手取り足取り……」


そこで2つの視線に気づく。
1つはキャッチャーボックスの盛岡から。
もう1つはヴィッパーズベンチの弟からである。


( ´_ゝ`)「……んん。ごめんだけど今日はひょっとしたら時間かかるかもな。また今度ね」

「ええー!!」

( ´_ゝ`)「ごめんね。また今度ね」


キャッチャーボックスから盛岡が流石の所に駆け寄る。
その顔は笑顔だ。


(´^_ゝ^`) 「殺すぞ?」

( ´_ゝ`)「ごめんごめんマジごめん」

(´・_ゝ・`) 「……はあ、いいや。ちゃんとやれよ」

( ´_ゝ`)「うぃっすー」


( ><)『さあ始球式が終わっていよいよプレイボールです』


( ><)『ここで選手の紹介をいたしましょう』

( ><)『ピッチャー流石、昨年はリーグ2位の17勝をあげました』

( ><)『武器はあらゆる方向に曲がる変化球。その数は10以上にのぼると言われています』


( ><)『何故そんなに変化球を覚えたのかという質問に対しては』


( ´_ゝ`)「パワプロとかで全方向に変化球があればかっこいいでしょう?だから」


( ><)『ということです』

( ゚∋゚)『アホですね』


( ゚∋゚)『しかしどの変化球も一級品ですからね』

( ><)『はい、150キロを超える速球を軸にシュート、スライダー、フォーク、シンカーを使い分けます』

( ゚∋゚)『その他にチェンジアップ、カットボール、パーム、ナックル……アホですね』


( ><)『対するヴィッパーズ先発内藤はこれも150キロの速球で押していくピッチャーです』

( ゚∋゚)『ピンチに弱いメンタルは克服できましたかね』

( ><)『さあ、どうでしょうか……さあ、右打席にヴィッパーズ1番茂等が入って試合開始です!』


『先攻、ニュー速ヴィッパーズの攻撃は、1番、ショート、茂等』


( ・∀・)(さて、今日の流石はどんなもんか)


ウグイス嬢が自分の名を呼ぶ。
ビジターゲームながらファンは足を運んでくれている。
ヴィッパーズはビッグバンズに対して3連敗。
昨年まで遡ると6連敗だ。これ以上負けるわけにはいかない。


(´・_ゝ・`) (兄者は茂等に強い……初球ストライクで大丈夫だ)


( ´_ゝ`)(初球160キロ狙います!)


兄者が左足を上げる。
全身をバネのようにつかい、しなやかなフォームで力を右腕に集中させる。
そして、一気にボールを押し出した。


「ストライーク!」


インローいっぱいのまっすぐ。
場内がざわめく。
球速はいきなり154キロを記録していた。


( ´_ゝ`)(カ・イ・カ・ン☆)


( ・∀・)(インローに決まるのは調子がいい兄者だ……やっかいだな)

( ´_ゝ`)(うふふ、茂等たんインローにビビった? ビビっちゃった?)

(´・_ゝ・`) (油断するな。もう一球まっすぐだ)


( ><)『初球はまっすぐ154キロを記録しました』

( ゚∋゚)『球速もそうですがインローにきっちり決めましたね。今日は期待できますよ』


( ´_ゝ`)(魔球ソニックライジングズババババ)


第2球。
その右腕から放たれたまっすぐは今度はアウトコースに向かう。


( ・∀・)(アウトコース……!)


茂等はそれを捉えようとする。
しかし先ほどのインローで体をうまく踏み出せない。


(;・∀・)(ぐっ……)


結局ボールに当てただけ。
打球は一塁側のファールグランドを転々とする。
カウント2‐0。


( ´_ゝ`)(よく当てれたな。褒めてつかわす)


(´・_ゝ・`) (一球外すぞ)

( ´_ゝ`)(やーだね)


盛岡のサインに兄者は首を振る。


(´・_ゝ・`) (兄者!)

( ´_ゝ`)(球数投げるのしんどいもん。3球で決めようぜ)

(´・_ゝ・`) (…………チッ)


盛岡はミットをストライクゾーンに構える。


( ´_ゝ`)(最初からそうしとけよなっての)


(;・∀・)(兄者が首を振った……何がくる?

      スライダー、フォーク……ああ、種類ありすぎでうぜえ)


3球目。
右腕から放たれたストレートは茂等の胸元を抉る。


(;・∀・)(ストレート……!)


完全に変化球待ちだった茂等はその球速についていけない。
なんとかバットにかすらせるも。


( ´_ゝ`)(ふぃー、ちょっちビビっちゃったぜ)

(´・_ゝ・`) (……)


盛岡のミットに収まっていた。
ファールチップ空振り三振。


(;・∀・)(チッ……)


『2番、セカンド、毒田』


('A`)(やべー、茂等さんが三球三振とかやべー)

( ´_ゝ`)(俺、こいつには打たせてやりたいな)

(´・_ゝ・`) (アホか)

( ´_ゝ`)(いや、同じ匂いがするっつーかさ……)

(´・_ゝ・`) (こいつは初対戦だ。慎重に行って損はない)

( ´_ゝ`)(けいおんについて朝まで生討論したいぜ……)


(´・_ゝ・`) (勝負に情けは無用だ)

( ´_ゝ`)(わーったよ)


毒田に対しての1球目。
右打者へのアウトローへのボール。


('A`)(際どい……!)

( ´_ゝ`)(しかしそこから曲がる!)


しかしそこから内側へ食い込んでくる。
シュートボール。球速はまっすぐとほぼ変わらない148キロを記録している。


('A`)(……)


ふ、と一息ついて打席を外す。
二、三度素振りをして気持ちを落ち着かせる。
流石のコントロールは冴えている。変化球のキレも悪くない。
速球の球威も抜群だ。


('A`)(……)

( ´_ゝ`)(……)


マウンドの兄者を見る。
余裕綽々といった感じでニヤニヤしている。


('A`)(ぜってー打ち崩す)


今日の兄者は絶好調だ。
しかし、綻びはどこかにきっとある。


2球目。
今度はストレート。
毒田は振り遅れ、ボールはバックネットに当たる。


( ´_ゝ`)(さあさあ追い込んじゃったよ)

('A`)(追い込まれた……)

(´・_ゝ・`) (……また、三球勝負か?)

( ´_ゝ`)(モチ)

('A`)(……)


ここまで兄者はストレートとシュートでグイグイ押してきている。
兄者は変化球の種類こそ多いが、基本はシュート・スライダー・フォーク。
そしてタイミングを外すチェンジアップ。


('A`)(茂等さんの打席を見た感じ早め早めにケリ付けたいらしいな)


なら、自分に対しても三球勝負してくるだろう。


('A`)(ここまで速球速球……そろそろチェンジアップか?)


(´・_ゝ・`) (速い球を存分に見せたからな。チェンジアップだ)

( ´_ゝ`)(把握)


そして、第3球。


('A`)(来た!)


予想通り、アウト寄りのチェンジアップ。
タイミングを外すのが目的だが初めからチェンジアップを待てば話は別だ。


('A`)(もらった!)


全力で、振り切った。


( ><)『打った! チェンジアップを捉えた打球は左中間へ!』


(;´_ゝ`)「うぇ!?」


歓声が上がる。
抜ければツーベース確実だ。
魔将と宝さんなら必ず返してくれる……!
そのとき、俺が打ったときより大きな歓声が上がった。


( ><)『取った! センター松井ダイレクトキャッチ!』

( ゚∋゚)『流石くんを救うビッグプレーですね』


(;´_ゝ`)(あっぶねー)


松井に向かって兄者は手を挙げる。
松井もそれに答える。


にしこり 「毒田くん、あのリストの料金はこんなもんじゃないぜ」


結局兄者は続く魔将をサードゴロに打ち取る。
一回表、兄者は最高のスタートを切った。


     RH
V  0 00
TB


('A`)(くそ……松井さんのプレーさえなけりゃ……)


ふと、隣を見る。
そこには緊張の面もちの内藤がいた。


(;^ω^)


まだ一球も投げていないのに脂汗ダラダラである。
まるでプロ初登板のようだ。


('A`)「なに緊張してんだ?」

(;^ω^)「……僕のプロ初KOは、ビッグバンズなんだお」

('A`)「ほお」


それは初耳だ。


(;^ω^)「亀井さんにヒット打たれて盗塁されてまた打たれて……」

('A`)「……」

(;^ω^)「満塁になって松井さんにホームラン打たれたんだお」

('A`)「それが、トラウマ?」

( ^ω^)「そうだお」

('A`)「よかったな」

( ^ω^)「?」


内藤が訝しげな顔をする。


('A`)「トラウマは払拭できて、しかもプロ初勝利がビッグバンズだ」


( ^ω^)「……ふふっ」


内藤が笑う。


( ^ω^)「なんだおそれwwwウケルwww」

('A`)「るっせーバーロー」


少し、臭すぎただろうか。


( ^ω^)「臭いおwww臭すぎwww」

('A`)「泣くぜ」

( ^ω^)「でもお陰で緊張ほぐれたおwwwdクスwww」


('A`)「それに今日彼女来てるんだろ? いいピッチしないと振られるぜ」

( ^ω^)「おっおっ、それは大変だお」

('A`)「内藤が嫌になったら俺はいつでも空いてるって言っといてね」

( ^ω^)「うるせーバカ」


( ><)『さあ、一回裏の攻撃、マウンドに上がるのは内藤です』


『一回裏、東京ビッグバンズの攻撃は、1番、ライト、亀井』


「イチ、そっちの空は青いか?」


( ><)『さあ1番打者は亀井。前回の野球W杯は一打数一安打打率10割でした』

( ゚∋゚)『首位打者ですね』


(;<●><●>)(……)


緊張しているのは内藤だけではない。
捕手の和手枡も多分に漏れず緊張していた。


( <●><●>)(腐っても世界で闘った選手……慎重に……)


和手枡が構えたのはアウトローいっぱい。
内藤は首を振ることなく投球に入る。


(;^ω^)(……)


1球目。
アウトローを狙ったストレートは少し浮いてしまう。
それを亀井は逃さない。


「イチ、これがバッティングや」

(;^ω^)(うう……デジャヴ……)


左打者のアウトローを無理に引っ張らず、レフトに運ぶヒット。
わずか1球でランナーを出してしまった。


(;<●><●>)(……まずいですね)

(;^ω^)(まずいお……)


一塁ベース上の亀井は盗塁成功率10割。
ここまで6個の盗塁を決めている。


( <●><●>)(警戒しましょう。一球ウェストです)

(;^ω^)(……)コクリ


( ><)『さあ2番坂本に対しての第1球……あっと亀井走った!』


( ^ω^)(! ウェストしたんだお!?)

(;<●><●>)(くっ……!)


和手枡は送球を焦り、ボールをファンブルしてしまう。


(;<●><●>)(す、すいません……)


僅か2球でノーアウトランナー2塁。


ノーアウトランナー2塁。
バッターには2番坂本。
その後には史上最強と名高いクリーンナップが控えている。


(;^ω^)(低めに……低めに……)


坂本に対しての第2球。
低めに行き過ぎベース前でワンバウンド。


(;<●><●>)(……)


和手枡も経験の無さから、明らかに動揺している内藤を落ち着かせられない。


3球目、カーブがすっぽ抜けまたもボール。
4球目、明らかなボール。
ストレートのフォアボールでノーアウトランナー二塁一塁。


( ><)『いまだに内藤アウトひとつも取れず。右打席には新外国人・マークを迎えます』


[ヽ゚∀゚] 「イッチョ、カットバシマース」

( ^ω^)(……)


マークはここまで3割5分近い打率と11本のホームランを記録している。
できるなら勝負は避けたい相手だ。


( <●><●>)(マークは長打が怖いです。アウトローに行きましょう)

(;^ω^)(把握だお)


マークに対して第1球。
150キロのアウトローストレート。
長打狙いなら完璧なコース。しかし、マークは長打を狙っていなかった。


( ><)『逆らわず右へ! セカンドの頭を越える!』


('A`)(ぐっ!)


俺の頭の上を強烈なライナーが通る。
ジャンプするも届かない。
打球はライトの川島の所へ飛んでいく。


(;^ω^)(ぐうう……)


大事な一戦で与えてはいけない先制点。
あの打球が落ちればまず2塁の亀井は帰ってくるだろう。
運が悪ければ1塁の坂本も帰ってくるかもしれない。


(;^ω^)(慶三……! 頼む、捕ってくれお……!)


しかしそんな内藤の思い空しく打球は川島の前に落ちる。


「イチ、これがアグレッシブな走塁や」


打球が落ちたのを見て、亀井が2塁と3塁の間から全力でスタートを切る。
もちろん、ホームへ突入する気満々だ。


(;<●><●>)(うぅ……)


和手枡ももはや先制点献上を覚悟した。
しかし、ビッグバンズの3塁コーチャーは亀井を止める。


(#K‘ー`)「うらぁ!!」


ライトの川島が、強烈な返球をしたからである。


「イチ、攻めるだけでは勝てんのや」


亀井は川島の好返球により3塁釘付け。
とはいえノーアウト満塁。そしてバッターは日本屈指のスラッガー松井。
内藤の緊張は頂点に達した。


(;^ω^)(うう……)


素人目にも崩れたフォームから1球目。
ストレートは外れてボール。


にしこり(フォームが崩れているな……これなら、打てる)


松井は内藤の1球目を見て、打てると半ば確信していた。


(#'A`)「おらー!! ボケチキン!!」


その時、セカンドから大声が飛び出した。
キャッチャーの和手枡が慌ててタイムをかける。
マウンドにはキャッチャーとセカンドが集まった。


('A`)(おい、口元グラブで隠せ)

( ^ω^)(なんだお? 松井さんなら任せて……)

('A`)(あんなバラバラなフォームの奴に任せられるかこのドンタコス)

( <●><●>)(毒田さん、それは……)

('A`)(お前もお前だ和手枡)

(;<●><●>)(!?)

('A`)(なぜアウトコースばかり要求する? こいつの球威は伊達じゃないぜ)

( ^ω^)(ドクオ……)


('A`)(そんなふぬけたピッチングしてたら彼女に愛想尽かされるぜ?)

( ^ω^)(……)

('A`)(わかったら一回真ん中にでも放りやがれクソチキン)


そう言ってドクオは自らの守備位置に戻る。
しかし、内藤と和手枡には、なんだかわからない妙な自信が生まれた。


( <●><●>)(……)


キャッチャーボックスに戻った和手枡。
和手枡はミットをインハイに構えた。球種はストレートだ。


( ^ω^)(……)


内藤も力強く頷く。
そこには逃げようとする意志はなかった。


にしこり(ふふ……いい顔じゃないか。そうこなくっちゃ)


松井は決して油断せず、左打席でバットを構える。


( ^ω^)(そうだお……逃げて打たれるより、真っ向勝負で抑える!)

( <●><●>)(……!)


和手枡も内藤の熱意を感じ取ったのか、頷く。
そして、松井に対しての第2球目。


にしこり(! インハイ、ストレート!!)


松井は面食らいながらしかしシャープにバットを振る。
松井の積み重ねた経験と実績がそうさせたのだろうか。
その時キャッチャーの和手枡は、ボールがバットに叩き潰される“グシャ”という音を確かに聞いた。
ボールは、高く高く舞い上がる。


高く舞い上がった打球は――


( ><)『ライト川島下がる! ライト川島下がる!

      川島下がる下がる、川島フェンスに到達! 川島見上げた!

      入った――! 松井の第12号はライトスタンドに飛び込む満塁ホームラン!!』


( ^ω^)(……)


内藤はギリリと右手を握り締める。
最高の直球だった。実際スピードガンは155キロを表示した。
その球を持っていかれた。


( <●><●>)(……)


キャッチャーの和手枡も次々とホームを踏む選手をぼうっと見つめている。
松井が帰ってくる。そしてホームを踏んだ。
ドームは、大歓声に包まれた。


V 0‐4 TB


この後内藤は高橋を塁に出すも、何とか踏ん張る。
しかし、この日の兄者に4点はあまりにも大きい。
最高のピッチングと最高のバッティング。
勝ったのは最高のスラッガーだった。

     RH
V  0 00
TB 4 44


この後立ち直った内藤と絶好調の兄者の投げ合いが続く。
しかし、初回の4点はいかにも大きい。
内藤は5回にも亀井にソロホームランを浴びる。
そして、試合は6回に突入した。

         RH
V  00000 04
TB 40001 57


『6回の表、2番、セカンド、毒田』


('A`)(俺の打席……)


今日の俺は2打数ノーヒット。
兄者を攻略出来ずにいた。


( ´_ゝ`)(そろそろ疲れた。昨晩シコったのが悪かったかもしれん)

(´・_ゝ・`) (死ね)

('A`)(……)


しかし兄者はここまで74球。
そろそろ疲れが見えるはずだ。そこを、叩く。


第1球。
毒田はバントの構え。
兄者は処理のため前進するが毒田はバットを引く。
兄者の体力を消耗させる作戦だ。


( ´_ゝ`)(ふーん、なるほろなるほろ、小賢しい真似するじゃないの)

('A`)(もし俺がダメでも……できるだけ体力を消耗させる)

(´・_ゝ・`) (どうする?)

( ´_ゝ`)(うーん、動くのイヤだしなあ)


第2球。
兄者のストレートは毒田の頭部近くへ向かう。


(;'A`)(!!)


危険球ギリギリのボール。
思わずのけぞってしまった。


( ´_ゝ`)(小賢しい真似するからそうなるのよん)


(;'∀`)(にゃろう……)


150キロの頭部近くのストレート。
意識せずとも、無意識に意識させられる。
初球はボールだったのでカウント1‐1。


('A`)(どうする……バントに見せかけてバスターを狙うか?)

( ´_ゝ`)(そんなこと考えてたらまたブラッシュ投げちゃうよん)

(´・_ゝ・`) (無駄にカウントを悪くする必要ないぞ)

( ´_ゝ`)(へーへー)


3球目。
毒田はバントの構え。


( ´_ゝ`)(……またか。いい加減ウザイな)

('A`)(体力消耗できないならカリカリしろ。俺はあんたを崩すなら何でもするぜ)

( ´_ゝ`)(……)


ボールが兄者の手から離れる。
また頭部近くに来るブラッシュボール。
毒田はバットを引く。


('A`)(カウントが悪くなれば否応なく勝負にくるはず……?)


しかしボールは曲がりストライクゾーンへ。
ブラッシュに見せかけたスライダー。
カウント2‐1。追い込まれた。


('A`)(……追い込まれた)


投手有利のカウント。
兄者は際どいコースを惜しみなく使ってくるだろう。
そうなれば俺が塁にでれる確率は少なくなる。
かといってバント作戦も有効とは思えない。


( ´_ゝ`)(やーっと追い込んだ。こいつウザイもんな。趣味は合いそうだが)

(´・_ゝ・`) (今まで散々インを攻めたからな……)

('A`)(次は、アウトコース!)

( ´_ゝ`)(とか思ったりしてんだろうなあ)

(´・_ゝ・`) (……インハイだ)

( ´_ゝ`)(うぃっす)


次はアウトコースと予想した俺。
しかし投じられた球は予想に反してインハイだった。
思わず手を出してしまう。
フラフラと力なく上がったボールは松井さんのグラブに収まった。


('A`)(ぐっ……)


反撃の糸口すら掴めない。
兄者との3度目の対戦も敗北した。


この後は3番魔将。


J( ゚_ゝ゚)し「このスレで初めて出れたで! がんばるで!」


必殺の魔空間を展開するが制御しきれず、自分のホームランボールをファールにしてしまう。
結局魔将はサードゴロ。
あっという間にツーアウトだ。


J( ゚_ゝ゚)し「こりゃ酷い試合やで!」


『4番、ファースト、宝』


4番に座る宝も今日ノーヒット。
今日は上位打線が機能していない。


( ^Д^) (こんな時……諸本さんなら……?)


素振りをしながら考える。
諸本は兄者に相性が良かった。
兄者が唯一苦手にしていたのが当時三冠ロードをばく進していた諸本だった。


( ^Д^) (なにが、違う……? 俺と、諸本さん……)


兄者との対戦、宝にはいいところは通算してもなかった。
この打席もあっという間に追い込まれる。
カウント2‐2からの6球目。


(;^Д^) (チェンジアップ!)


直前のストレートを見せられ、タイミングを狂わされる。
宝はその緩急をつけたピッチングにあえなく空振った。


(;^Д^) 「……くそっ!」


あまりに大きい背中を受け継いだ宝。
三冠王の背中を越えられるのは、いつの日か。


途中経過

          RH
V  000000 04
TB 40001  57


V  内藤‐和手枡
TB 流石‐盛岡

本塁打 松井 12 亀井 4



試合はさらに進む。
相変わらずランナーすらほとんど許さない流石と要所を締める内藤。
試合はビックバンズ5点リードで7回裏を迎える。



途中経過

           RH
V  0000000 04
TB 400010  58


V  内藤‐和手枡
TB 流石‐盛岡

本塁打 松井 12 亀井 4



そしてその7回の裏。
バッターは8番盛岡。
甘く入ったボールを痛打される。


(´・_ゝ・`) (もらった!)

(;^ω^)(うっ……)


ボールはレフト線を転々とする。
盛岡は悠々スタンディングで2塁に到達した。


(;^ω^)(……)


疲れからだろうか、最初より肘が下がってしまっている。
きっと次の流石はバントをしてくるだろう。
となればワンアウト三塁でバッターは上位打線に。
流石相手に、6点。ほぼ絶望的な点差だ。


( ´_ゝ`)(かっせーかっせー サ・ス・ガ☆)


打席にはピッチャーの流石。
代打を送られないということはもう完封する気満々だろう。
となればスタミナを無駄に消費はしない。
無難にバントを決めてくる。


(;^ω^)(しょうがないお。1番2番でなんとかするお)

( <●><●>)(わかりました)

( ´_ゝ`)(流石さんかっこいいって新垣結衣が求愛してこねえかなあ)


内藤がセットポジションに入る。
やはり流石はバントの構えだ。


(;^ω^)(……)


和手枡とサインの交換。
1回大きく頷く。ふっ、と息を大きく吐く。
バント覚悟の第1球。投げた瞬間一塁手と投手が前に出る。


( ´_ゝ`)(と、見せかけて!)

(;^ω^)(!? バスター!?)


バットを引く流石。
バスターかと思われたが、見送るだけ。


( ´_ゝ`)(ふふふ、さっきウザい攻撃されたからな。お返しだよ)

(;^ω^)(……)

( ´_ゝ`)(見た感じ消耗してるし。悪いね)


只でさえ疲れているこの時にダッシュをさせられる。
塁を埋めたくないためボール球を使うのも躊躇する。


(;^ω^)(UZEEEEEEEEEEEE)

( ´_ゝ`)(ふはは、恨むなら幸薄そうなセカンドを恨め)

('A`)(ごめん、内藤)


流石に対して2球目。
またも流石はバットの構え。
投げた瞬間マウンドからバント処理のため駆け出す。
しかしまたも流石はバットを引く。


(;^ω^)(チッ……)

( <●><●>)(落ち着きましょう。内藤さん、追い込んでます)

( ^ω^)(……そうだお)


カウントは2‐0。
圧倒的投手有利のカウントだ。


( ^ω^)(もうウザいから3球で決めるお!)

( <●><●>)(把握です)


和手枡はミットを低めに構える。
球種はスライダー。万全を期す態勢だ。


( ´_ゝ`)(……)


流石はまたもバントの構え。
そして第3球。


( ^ω^)(食らえ!)


内藤の腕からボールが離れたと同時にマウンドからスタートする。
流石はバットを引き――そしてバットを振り抜いた。


(;^ω^)(ちょ)


しかし、ボールはミットの中に収まる。
スライダーだ。流石は変化に対応できなかった。


( ´_ゝ`)(ちぇー、まあいいや、5点あるし)


流石は大して気にした様子もなくベンチに帰る。
そして入れ替わりに左打席に入るのは1番の亀井だ。


「イチ、チャンスに打てるのがホンマもんのスターや」


(;^ω^)(……うう)


先ほどの打席、亀井にはバックスクリーンに叩き込まれた。
調子が上がっていた矢先だっただけに厳しい一撃だった。


(;^ω^)(……)


第4球を投げてカウント1‐3。
せっかくバントを阻止したのにまたも投手不利のカウントにしてしまった。


(;^ω^)(歩かせるかお……?)


その考えもあった。
次の坂本はここまで3打数無安打。唯一内藤にタイミングが合っていない。
それに塁を埋めればゲッツーが取れる。


( <●><●>)(……)


和手枡はこちらに判断をまかせているらしい。
どうする。逃げか、勝負か――


(;^ω^)(……)


亀井の姿を見る。
その大きい体躯は大打者の風格充分。
一発を期待できるパワーとシュアなバッティングを併せ持つバッターだ。


(;^ω^)(……でも)


先ほど言われた毒田の言葉を思い出す。
そうだ。逃げて逃げて結局捕まえられたのが今までの6年の自分だ。
どうせなら――


( ^ω^)(当たって、砕けろ)


内藤が5球目を投じる。
そのストレートは糸を引くようにホームベースへ。


(絶好球!)


真ん中の速球。
亀井は半ばスタンドに放り込めると確信しつつバットを振った。


「ストライク!」


(……あれ?)


亀井は空振りしていた。
内藤の球筋は既に亀井の脳内にインプットされている。
あの甘い直球を空振る筈がないのだが。


(;´・_ゝ・`) (なんだ、あの球……)


二塁ベース上の盛岡。
盛岡は内藤の後ろから投球を見ていた。
先ほどのストレート。かなりホップしていた。
ヴィッパーズの守護神、『火の玉ストレート』と称される斉藤の球に負けず劣らずの球だった。


(´・_ゝ・`) (……)


足が、震えた。
あのボールを受けてみたい。
キャッチャーとしての本能が、叫んでいた。


( ^ω^)


(余裕な顔しちゃって……世界で戦った俺を舐めんなよ?)


フルカウントからの第6球。
内藤は力強いフォームで投げ込む。


(カーブ!)


タイミングを外すカーブ。
おそらく、見逃せばボールだろう。
しかしバットはもう動き出してしまった。


(くっ……!)


左打者の自分のインローに食い込むカーブ。
なんとか肘をたたみ、バットに当てようとする。


「ファール!!」


(;^ω^)(……)


完璧なカーブだった。
それこそ空振りしてくれても誰も何も言わないカーブだったことは間違いない。
しかし亀井はバットの先ながら当ててきた。
やはり、腐っても鯛。もとい日本代表か。


(さあ、次はなんだ?)


( ^ω^)(……)


一拍間隔を開ける。
フルカウント、ピンチ、相手、好打者。
今の状況が単語となって頭の中にこだまする。


( ^ω^)(なんだろう……なんか、ワクワクする)


タイムをかけ、プレートから足を外す。
セカンドの毒田をチラリと見る。


('A`)(?)


毒田はなにかわからない、という顔をしている。
わからなくていい。しかしきっかけを与えてくれたのは毒田だ。
必ず、この打者を抑える。
そうすることで、自分はもっと先へ行ける。


右足の体重を落とし、左足を力強く踏み出す。
胸を大きく張り、全ての感覚を右腕一本に集中させる。
肘を先に出し、腕をしならせる。最後に指先で微妙な調整をする。
その一連の動作をもって、第7球は投じられた。


( ^ω^)(どうだ!)


全身全霊をかけたストレート。
正に会心の一撃。今までの自分の野球人生で一番のボールだ。

(ストレート……ボール球……!)

ボールはストライクゾーンの遥か上を通過しようとする。
見逃せばフォアボール、しかしその球威はバットを回そうと誘う。


(バットが……出る……!)


亀井のバットはその甘美な誘いに乗り、あっけなく回る。
勢い余った亀井は、回転のまま転んでしまった。


(#^ω^)「よっしゃああ!!」


雄叫びを上げる。
スピードガンは、内藤自己最速の157キロを表示していた。


内藤は続く坂本も打ち取りピンチを脱する。
盛岡は2塁ベース上で新たな強敵の出現に震えていた。


('A`)「内藤、ナイピッチ!」

(;^ω^)「サンキュだお、ドクオ」

('A`)「さて、後は……」

( ・∀・)「俺達が点を取らなきゃな」

('A`)「ハイ!」



途中経過

           RH
V  0000000 04
TB 4000100 59


V  内藤‐和手枡
TB 流石‐盛岡

本塁打 松井 12 亀井 4



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