('A`)は野球選手のようです 7-3



『4回の裏の攻撃は、1番セカンド、毒田』


('A`)(……)


初回のような奇襲はもう通じないだろう。
今日の内藤は調子がいいが、渡辺はもっといいだろう。
ここまでの3回、奪三振は6。驚異的なペースだ。


('A`)(注意すべきは……スローカーブか)


1球目、スクリューから入ってくる。
打つ気のない俺はそれを見送る。


('A`)(やっぱりストレートは使ってこねえか……)


もしかしたらこの試合、もう俺にはストレートは来ないかもしれない。
それならそれで狙い球が一つ減ってまあいいが。


从'ー'从(……)


2球目、インコースへのストレート。


('A`)(ストレートだと?)


バットを出す。その瞬間、ボールが少し動く。
止めようとしたが遅かった。ハーフスイングを取られ追い込まれた。


('A`)(次は何か……)


先ほどの宝さんには3球勝負を挑んでいる。
俺にも挑んでくる可能性は高い。


('A`)(どっちだ……?)

从'ー'从


渡辺の顔からは読めない。
3球勝負か、1球外すか――


从'ー'从(ゴゥァェ)

( ∵)(ゴバラア)

('A`)(どっちだ……)


渡辺のしなやかなフォームからボールが繰り出される。
ボールは低めいっぱいに決まるストレートだ。ストレート?


('A`)(違う!)


でかけたバットを止める。


案の定ボールは落ちる。
フォークボールだ。


从'ー'从(ふふん、よく見たね)

('A`)(2球も続けて引っかかるほどバカじゃないさ)

从'ー'从(っそ。なら、これは?)


テンポよく、渡辺が投球動作に入る。
なにが来るかは、なんとなくわかっていた。


('A`)(やっぱり……!!)


渡辺の決め球、スローカーブ。
80キロ台のその球に、頭でわかっても体が勝手に反応し、バランスが崩れる。


从'ー'从(終わりだよ)

(#'A`)(させ……るかぁ!)


バランスを崩しながらなんとかバットに当てる。
だが当てただけだ。ボールは転々とショートの長岡に向かう。


( ゚∀゚)(よっと)


先ほどの茂等さんとは違い、流れるような動作で一塁に送球する。
もちろんアウト。先頭打者としての役割を果たせなかった。


('A`)(くっ……)


ベンチに帰る前、渡辺をチラリと見る。


从'ー'从(ふふん)


ニヤリと笑われた。


次の慶三も渡辺に翻弄され三振。
そして打順は3番に移る。


『3番レフト、魔将』


J( ゚_ゝ゚)し(……)


J( ゚_ゝ゚)し(……)


先ほどの回、自分の頭の上を越された。
自分の魔空間のせいで。


J( ゚_ゝ゚)し(自分の魔空間も制御でけへんなんか……マクウカニスト※失格や)


1回は完璧な魔空間制御だった。
しかし4回のミスでチャラ。
ホライゾンは好きだ。だから、援護しなければならない。


※マクウカニスト……魔空間を操る人。元中日マクーこと幕田氏など


そして、第5球目。


从'ー'从(くらえ!)


今までアウト中心の配球からのインハイストレート。
思わずバットを出す。


J(;゚_ゝ゚)し(ぬううっ!)


手の感触からわかる、バットを折られた。
もはやグリップだけになったバットを叩きつけ、俯きながらダイヤモンドを回る。


J(#゚_ゝ゚)し(くっ……)


若干イライラしながらダイヤモンドを回る。
大事な試合に何も力になれない自分がもどかしい。


J( ゚_ゝ゚)し(……?)


何か、静かだ。
ヒットならヒットなり、アウトならアウトなりで歓声が上がりそうなものだが。
ガイエルはついに二塁に到達してしまった。


J( ゚_ゝ゚)し(……)


何か、バックスクリーンがキラキラ光っている。
いつもはプレーの邪魔にならないように暗くなっているはずだが。


J( ゚_ゝ゚)し(……んんー?)


よくよくバックスクリーンに目を凝らす。
そこには。


HOME RUN


七つの文字が、浮き上がっていた。


その時、ライトスタンドから地割れのような歓声が上がった。
ミス(実際にはガイエルのミスではないが)を帳消しにするソロホームラン。
暗くなっていたベンチもガイエルのプレーに沸き立つ。


('∀`)「アーログバゴゲェ」

J( ゚_ゝ゚)し「はいいつもの毒田ラリアットー」


チームメイトとハイタッチを交わす。
これでマクウカニスト※もまだまだ引退しないで済みそうだ。


※マクウカニスト……魔空間を操る人。元中日顔面ヘディングこと宇野氏など


これでたまらないのが渡辺だ。


从;'ー'从(バットへし折ったんだぞ……反則だろ……)


動揺が収まらないまま次のバッターを迎える。


『4番ファースト、宝』

( ^Д^) (初球だ)


明らかに渡辺は動揺している。
冷静な渡辺がこんなに動揺するのはこの試合で恐らくここだけだ。
このチャンスは、逃さない。


从;'ー'从(……)


なんとなく気合いの入っていないままやって来たストレート。
それを逃すほどプロの4番は甘くはない。


(#^Д^) (おらっ!)


ややアウト寄りの球を思い切り引っ張る。
ボールは鋭いライナーを描きながらライト前へ。


( ^Д^) (ホームラン狙ったんだけどな……)


( ∵)(ワタンゴ)

从'ー'从(大丈夫です。シャキッとします)

( ∵)(クルンゴ)

从;'ー'从(厳しいなあ……すいません)

( ∵)(オガサハラ)

从'ー'从(……ちゃんとやりますってば)


『5番サード、朴』


<ヽ`∀´>(……渡辺か)


朴は開幕戦では渡辺を攻略したものの、相変わらず苦手にしていた。
左同士と言うのもあるが、どうにも渡辺の球筋が苦手なのだ。


<ヽ`∀´>(……)


ストレートやスクリューでカウントを稼がれ、スローカーブでとどめを刺される。
そして、この打席も似たような感じだった。


<;ヽ`∀´>(……)

从'ー'从(ふふん)


案の定、カウント2‐1。
次に来るのはスローカーブだ。わかっている。
なのに打てないのだから仕方がない。


<ヽ`∀´>(来た!)

从'ー'从(どうせ、わかってても打てないでしょ?)


やはり、スローカーブ。
左打者の自分の膝元に沈みこむボールだ。


<#ヽ`∀´>(ぬうん!)


力いっぱい振る。
力が入りすぎてボテボテの当たりになる。
その打球はショートの守備範囲だ。


( ゚∀゚)(余裕!)


素手で掴んで一塁に送球する。
ボールはファースト藤山のミットに一直線に飛んでいく。
しかし。


/;^o^\(!)


長岡の捕球は完璧だった。
長岡の送球も完璧だった。
しかし、藤山の捕球が穴だった。
藤山は送球をグラブの縁に当て、ポロリ。エラーだ。


<ヽ`∀´>(……感謝感激)


自分の打率は下がった。しかし、どうでもいい。
チームのチャンスを広げられたなら、どうでもいい。


/;^o^\(わ、渡辺さん……すいません……)

从'ー'从(んー、いいよ〜)

/;^o^\(……)

从'ー'从(高岡ちゃんとの対戦だったら〇してたけどね)

/^o^\フッジサーン


『6番ライト、擬古』


(,,゚Д゚)(……俺のバッティングは渡辺には通じねえ)

从'ー'从


(,,゚Д゚)(だから、奇襲をかける)


擬古はバットで自らのヘルメットを2回叩く。
それはサインだ。宝と朴はヘルメットのつばを触る。
大丈夫。2人には伝わっている。


从'ー'从(……)


渡辺がクイック投法でボールを投げる。
その瞬間宝と朴が走り出す。


(;∵)(ゴエッ!?)

从;'ー'从(ダブルスチール!?)

(,,゚Д゚)(違うぜゴルァ)


そして自分もバントの構えに入る。
何回も、何千回も、何万回も練習してきた左打席から三塁線に転がすバントだ。


从;'ー'从(バントエンドラン……!?)


渡辺は驚きつつも前に飛び出してくる。
そこを、狙う。


(,,゚Д゚)(ゴルァ!)


コン、と小さな乾いた音が響く。と同時に走り出す。
ボールは前に出てきた渡辺の手が届かない絶妙の所に転がした。
完全にバントヒット狙いだ。


从;'ー'从(くっ……)


投手の守備範囲ではない。
かといってサードはスタートが遅れている。
結果はサードがボールを取っただけ。悪送球を恐れて一塁になげることすらしなかった。


从;'ー'从(……)


ツーアウトは簡単に取った。
しかし今、満塁のピンチを背負っている。
そして迎えるは、かつての不動のリードオフ。


『7番ショート、茂等』


( ・∀・)(……)


一塁上を見る。
擬古が嬉しそうに手を挙げている。


(,,゚Д゚)ノ


その姿に歓声が沸く。
茂等は、その歓声に不自由したことなどなかった。


( ・∀・)(……)


かつての自分は、3割には未到達ながら高い出塁率と俊足で1番の座に座っていた。
36歳になる今季も、開幕から1番に座った。
しかし、彼を取り巻く環境はあまりにも激変した。


( ・∀・)


動体視力の低下。かねてから近視気味だった茂等の視力はさらに低下した。
それが原因かはわからないがかつてないほどのスランプ。
絶頂期には2割8分を打った打率は今や2割2分まで後退した。


( ・∀・)


足も遅くなった。
誰にも負けたことの無かった100m走も若手の川島に負けた。
自分の身体能力は明らかに下がっているのだ。


( ・∀・)(でも、戦場に立つ以上それは言い訳にしか過ぎない)


それが茂等の結論だった。
親友である諸本はすっぱり引退する道を選んだ。それはいい。それも一つの美学だ。
だが自分は違う。何が何でもこの世界にしがみついてみせる。
ジジイだとバカにされようがファンからさげすまれようがこの世界に残ると決めたのだ。


( ・∀・)(そのためには、結果を出さないとな)


マウンド上の渡辺を見る。
若干汗はかいているが動揺は見られない。


ライトスタンドからはチャンスマーチが流れる。
その軽快な音楽に胸が高鳴る。


从'ー'从(……)


1球目。


(;・∀・)(!)


いきなりのスローカーブ。
完全に不意をつかれ見送る。


( ・∀・)(……)


あの変化球も若い時なら対応できたかもしれない。
しかしそんなことを言っても仕方がない。


2球目、スクリューはボール。
3球目、またもスクリューでボール。
カウント1‐2。バッティングカウントだ。


( ・∀・)(……)


そして、第4球目。
渡辺の腕から投げられた球は明らかに失投。
真ん中に抜けたツーシーム。


( ・∀・)(もらった!)


余計な力を入れずに、シャープに振り切る。
手には、ここ最近感じていなかった真芯で捉える感覚が、あった。


从;'ー'从(〜〜〜っ!)


渡辺が慌てた顔で打球が行ったレフトを見る。
打球は、高く高く上がっていく。


しかし。
ライトスタンドの大歓声は、次第にしぼんでいく。


「ファール!」


打球はポール際で切れ、無情にもファールゾーンに切れていく。
茂等は、うなだれたい気持ちになる。


( ・∀・)(……最高の当たりだったのにな)

从;'ー'从(あっぶねぇ……)


第5球目。
渡辺のしなやかなフォームから力強いストレート。
インハイに食い込むものだ。


(;・∀・)(つっ……〜〜〜!!)


バットが、出ない。
とっさに審判を見る。
――結果は、分かりきっているが。


「ストライクアウト!!」


从#'ー'从「よっしゃああ!!」


渡辺がガッツポーズをする。
レフトスタンドが湧く、ライトスタンドからため息が湧く。


(  ∀ )(……)

(#・∀・)「ああっ!!」


バットを思い切り叩きつける。
それでも心は晴れなかった。


   123 456 789 RH
RW 001 1       24
V  000 1       14

RW 渡辺‐ビコーズ
V  内藤‐和手枡



『5回の表、レールウェイズの攻撃は1番ショート長岡』


(;^ω^)(……)


野球帽を取り、汗を拭う。
1人の、弱冠22歳の男にいいようにされている。
カウント2‐2。7球目。


(;^ω^)(ぬうっ!)


渾身のインハイストレート。
これをカットされては商売あがったりだ。


( ゚∀゚)(……)


しかし長岡はそんな思考などつゆ知らず、少しバットを出し簡単にカットする。
球速は156キロ。これで5球連続ストライクをカットされている。


(;^ω^)(はあ……)

(;<●><●>)(……フォークで決めましょう)

(;^ω^)(把握だお)


いつものフォームから今年新しく覚えたフォークを投じる。
今度はストライクからボールになる球だ。
しかし。


( ゚∀゚)(……)

(;^ω^)(……)

(;<●><●>)(化物……)


長岡のバットは微動だにしない。
思えばいつかの自主トレでこの男にフォークを見せたのは失敗だった。


なんにせよフルカウント。
俊足の長岡のこと、フォアボールにはしたくない。


(;<●><●>)(ストレートです)

(;^ω^)(……把握)


散々カットされているストレートが通用するのか。
自分で自分の球の球威に疑問を持ちながら投げ込む。


(;^ω^)(……)


投げる。
長岡の目が輝く。
打つ。ボールが飛んでいく。


(;^ω^)(……)


内藤の脳内では、情報が単語として断片的に再生されるのみだった。


( ゚∀゚)(よしっ!)


長岡の手には確かな手応えがあった。
154キロのストレート。それを完璧に弾き返した。
ボールは高い弾道でセンターの頭を越えんとする。


(K;‘ー`)「ぐうぅ!」


センターの川島がジャンプする。
しかしボールには届かない。結局ボールはセンターの頭を越えた。


( ゚∀゚)(川島は処理にてこずってる……三塁行けるか?)


しかしそれはかなわない。
ガイエルのカバーが思いのほか早かったからだ。


( ゚∀゚)(チッ……)


しかしそれでも悠々スタンディングで2塁到達。
最強のリードオフの実質初打席は綺麗なツーベースだ。


そして2番の京橋は不慣れながらも送りバントを決める。
ワンアウト三塁。外野フライでも一点だ。


『3番ライト、池沼』


「ほら、たかしちゃんの番よ」

(^q^)「やだやだ、もっとママの足を舐めたいのれす!」

「あらあら、後でゆっくり舐めさせてあげるから。ほら、チャンスよ」

(^q^)「ほんとら! 行ってきます!」


池沼が右打席に入る。
相変わらずベンチに母親がいる安心感か、どうにも隙が見当たらない。


(^q^)(打点ゴチっすwwwwwwサーセンwwwwwwww)

(;^ω^)(……)

(;<●><●>)(……)


先ほどの長岡の一撃でなんとなく自信を喪失しているバッテリー。
そんな状況の時は、たいてい良い結果を生まない。


(;^ω^)(……)


なんとなくで投じるストレート。
そんな力も何も籠もっていない球は狙い撃ちされる。


(^q^)(どっかーんwwwwwwww)

(;^ω^)(!)


初球を、完全にねらい打たれた。
読んでいたのだ。自分がストレートから入ることを。


(^q^)(打点+打率上昇ゴチwwwwwwww)


そんな考えを抱きながら一塁を蹴る。
打球はレフト線へのライナー。抜ければ完全な長打コースだ。


(^q^)(うぃくwwww)


快足を飛ばし、2塁を狙わんとする。
その道中、3塁を見る。
そこにはベース上で打球を見つめる長岡がいた。


(^q^)(なんでスタートしてないのwwww打点返せwwww)


その時、スタジアムが歓声に包まれた。


J( ゚_ゝ゚)し(しっかりしろや、ホライゾン!!)


歓声の原因。ガイエルのライナーダイビングキャッチだ。
池沼の打球を見て、すぐに目を切り落下点に素早く到達する。
守備が得意ではないガイエルのビッグプレーだ。


( ゚∀゚)(……ゴー)


しかし長岡は落ち着いていた。
素早くスタートするガイエルを見てタッチアッブの態勢に入っていたのだ。


ダイビングしたので、もちろん送球は間に合わない。
しかしランナーを無くすビッグプレー。
内藤を助けるビッグプレーだ。


(;^ω^)(助かった……)

(^q^)(ちぇー。まあ打点がついたからいいれす)


RW 3‐1 V


その後立ち直った内藤は4番ビコーズを三振に取る。
5回3失点。合格とは言えないが、ギリギリの投球が続いている。


   123 456 789 RH
RW 001 11      35
V  000 1       14

RW 渡辺‐ビコーズ
V  内藤‐和手枡

本塁打 小和田 43 ガイエル 38



5回の裏、先ほど崩れかけた渡辺も立ち直る。
8番の和手桝、9番の内藤を連続三振に取って早くもツーアウト。
そして、俺の打席が回ってきた。


『1番セカンド、毒田』


('A`)(……)


('A`)(……)


もう渡辺は完全に立ち直っている。
若手捕手と投手に求めるのは酷だが、もう少し粘って欲しかった。


从'ー'从


マウンド上の顔にも余裕が滲んでいる。
絶対的な自信。それが渡辺の武器だ。


从'ー'从(……)


1球目。
カットボール。見送る。
相変わらず俺にストレートを使う気はないらしい。


('A`)(となると、次はスクリューかフォークあたりか……?)

从'ー'从(……)


2球目。ゆるくタイミングを外す。
スローカーブだ。速い球待ちだった俺は難なく崩され空振り。


('A`)(早くも追い込まれた、か)


とりあえずカット狙いでどんな球種にも対応できるようにする。
そこには、一応ストレートも含まれている。


从'ー'从(……)


3球目。スローカーブを見せた後のストレート。
その速さは実際の速度よりも速く見える。
その球をカットする。


('A`)(……ストレート使うのかよ)

从'ー'从(誰がお前なんかにビビるかってんだ)


('A`)(ありがたいねえ……全力で相手してくれてるってことだろ)

从'ー'从(ふん……)


渡辺が第4球を投げる。
今度はストレートからのスローカーブ。
あまりの球速差にやはり態勢が崩れる。


(;'A`)(ぐっ……!)


わかる。このまま振れは芯に当たらず内野ゴロになる。
そんなことはさせない。上から思い切り叩きつける。


从'ー'从(!)


叩きつけられたボールは高いバウンドで三遊間へ。
三遊間の深いところだ。長岡が捕球する。そして投げる。
タイミングは微妙だ。


('A`)(……)


このまま素直に走っていたのでは間に合わない。
この場面、何をすべきか……


(#'A`)「うおおっ!」


俺が選択したのはヘッドスライディング。
走り抜けた方が速いとかいろいろ言われているが、やはりヘッスラは自己鼓舞になる。


(#'A`)(間に合え……!)


俺の指がベースにかかる。
ボールが藤山のミットに収まる。
どちらが早い――?


「セーフ!」


勝ったのは、俺の方だった。


『2番センター、川島』


(K‘ー`)(……)


ブン、ブンと素振りをする。
ツーアウトながらランナー一塁。
今日の渡辺からどれだけランナーを出せるかはわからない。
ならば、出てしまった時に返しておきたい。


(K‘ー`)(……)


渡辺が5球目まで投げ、フルカウント。
恐らく、次に決めてくる。


从'ー'从(……なにするかな)

( ∵)(ゴワアナハ)

从'ー'从(グヤアマナ)

(K‘ー`)(……しかし、コミュニケーションはどうなってんだ?)



【現在の状況】

   123 456 789 RH
RW 001 11      35
V  000 1       14

RW 渡辺‐ビコーズ
V  内藤‐和手枡

本塁打 小和田 43 ガイエル 38


5回裏 ツーアウト一塁
投手 渡辺
打者 川島
一塁 毒田


先攻 シベリアレールウェイズ
打順 守備 名前 AA 年齢
打率 本塁打 打点 盗塁

1 遊 長岡 ( ゚∀゚) 22
.369 14 61 31

2 三 京橋 35
.279 31 84 33

3 右 池沼 (^q^) 34
.333 23 106 0

4 捕 ビコーズ ( ∵) 31
.289 24 97 0

5 左 小和田 (^o^) 32
.321 42 123 0

6 一 藤山 /^o^\ 26
.276 25 85 0

7 二 十三 29
.231 8 41 0

8 中 放出 37
.278 2 13 0

9 投 渡辺 从'ー'从 29



後攻 ニュー速ヴィッパーズ
打順 守備 名前 AA 齢
打率 本塁打 打点 盗塁

1 二 毒田 ('A`) 25
.318 6 37 2

2 中 川島 (K‘ー`)22
.278 9 58 23

3 左 ガイエル J( ゚_ゝ゚)し 37
.243 37 89 2

4 一 宝 ( ^Д^) 27
.307 31 106 0

5 三 朴 <ヽ`∀´> 33
.266 24 73 1

6 右 擬古 (,,゚Д゚) 31
.244 0 27 10

7 遊 茂等 ( ・∀・) 36
.227 1 18 12

8 捕 和手枡 ( <●><●>) 24
.189 0 7 0

9 投 内藤 ( ^ω^)25




『2番センター、川島』


(K‘ー`)(毒田さん……)


一塁上でユニホームを土で汚した毒田を見る。
毒田に回ってきた時点ですでにツーアウト。
普通なら萎えてもおかしくない場面だ。


(K‘ー`)(……)


ブン、ブンと素振りをする。
マウンド上の渡辺を見る。


从'ー'从(……)


落ち着いたものだ。
あれがエースの風格というものなのだろう。
左打席に入ってベンチを見る。


( ´∀`)(……)


喪名監督からの指示はない。
『好きに打て』ということだ。


(K‘ー`)(……)


足で左打席をならす。
1回での失敗で懲りたのか、毒田のリードは小さめだ。


从'ー'从(……)


それでもランナーを警戒してかクイック投法での1球目。
速い球。ストレートだ。


(K‘ー`)(……)


変化球狙いだった自分は思わず見逃す。
どうやらバッテリーはムダに毒田を警戒しているらしい。


相変わらずのストライク先行。
こちらはなんとかバットに当ててカットするのがやっとだ。


从'ー'从(……)

(K;‘ー`)(……)


カウント2‐2からの8球目。
恐らく、この打席まだ自分に投じていない球がくるだろう。
渡辺のウイニングショット。すなわちスローカーブ。


从'ー'从(……)


渡辺には自信があった。
自分のスローカーブで川島を抑えられる自信。
超高校級として鳴り物入りで入団した自分。しかし間もなくプロの壁に苦しんだ。


从'ー'从


何を投げても打たれる日々。
次第に渡辺の活躍の場は華やかな一軍から泥臭い二軍に移っていった。


その二軍でも打たれる日々が続いた。
次第にやる気を無くし練習にも身が入らない日々。


「何か、持ち球を増やしてはどうだ? 例えば、カーブとか」


そんな渡辺にそんなアドバイスを与えた人物。
渡辺の恩人とも言える人物。


( ´∀`)


それがその当時レールウェイズの二軍投手コーチ、現ヴィッパーズ監督の喪名である。


从'ー'从(……)


ロージンを手に取り、間を取る。
自分のスローカーブは喪名と2人3脚で作り上げた。
もはや芸術と称されるわかっていても打てないスローカーブは喪名の物と言ってもいい。
しかし喪名はスローカーブを完成させてすぐにヴィッパーズに行ってしまった。


从'ー'从(それなら……)


ヴィッパーズのベンチで腕を組む喪名を見る。
喪名の目は、ヴィッパーズの勝利を疑っていない。


从'ー'从(恩人の前で、成長した姿を見せるのが、恩返しですよね)


ロージンバッグを地面に落とし、打席の川島を睨みつけた。


(K‘ー`)(……)


わかっている。スローカーブが来ることは。
だが打てない。何故かはわからないが川島はスローカーブが打てないのだ。


(K‘ー`)(……)


弱気だった。
『打たなくてはならない自分』と『打てるわけがない自分』とがせめぎあっていた。


从'ー'从


渡辺の左腕からボールが繰り出される。
予想通り、スローカーブだ。


(K;‘ー`)(くっ……)


左打者の自分の外側に沈んでいくカーブ。
バットを出す。ダメだ。届かない――


('A`)「慶三!」


その時、背中から毒田の声が聞こえた。
その瞬間、なんだかいつもより腕が伸びたような気がした。
実際には体が入っただけだろうが――


(K‘ー`)(!)


そして、バットはボールを捉えた。
ちょうど沈むボールをすくい上げる感じで。
ボールはスライス回転をしながら、レフト線へと飛んでいく。


(K‘ー`)(あ、当たった!)


自分でもびっくりの打球だった。
ボールは意外に伸びてレフト線の内側に……


(;^o^)「うおおっ!」


レフトの小和田がダイビングキャッチを試みる。
しかしボールはグラブをほんの少しかすめ――小和田から逃げていった。


('A`)(ナイス、慶三!)


ツーアウトなのでバットに当たってすぐスタートできる。
レフトはもたついている。ホームに行けるか――?


N| "゚'` {"゚`lリ「行けぇ!!」


三塁コーチャーの阿部コーチが腕をぶっ飛びそうなぐらい回している。
ホーム突入のサインだ。


(#'A`)「任せてください!!」


三塁を蹴りながらスタンドの歓声に負けないように叫ぶ。
阿部コーチも返す。


N| "゚'` {"゚`lリ「ホーム生還したら俺の××を〇〇してやる!」

(#'A`)(いらねぇ――――――!!)


(;゚∀゚)(ドクオ先輩……それはウチの守備を舐めすぎですよ……!)


毒田は三塁を蹴った。
しかし小和田の処理は意外に速い。
中継の球が長岡に渡る。
毒田はまだ、ホームに到達していない――


( ゚∀゚)(刺せる!)

( ∵)(ゴェェ)


キャッチャーのビコーズがグラブを構える。
長岡はそこに向かって思い切り送球する。


( ゚∀゚)(1回の……)

(#゚∀゚)「お返しですよっ!」


ショートから、鋭い返球が返っていく。


( ∵)(ゴェェ!)


長岡の送球はビコーズの構えた所と一寸たりとも違わない。
完璧な送球。これならタッチアウトにできる――!


(#'A`)「させるかよぉぉぉぉ!!」

(;∵)(!)


ボールを受け取ったとき、ビコーズは見た。
勢いをつけて、最高速を以て自分に体当たりする毒田の姿を。


(;'A`)

(;∵)


両人が激突し、倒れる。
毒田はすぐさまホームにタッチする。
タイミング的にはアウト。球審はアウトのコールをしようとする。


「……!」


しかし、球審は見た。
ビコーズのミットから、ボールがこぼれ落ちているのを。


「セーフ!!」


(#'A`)「よっしゃあああ!!」


ベンチ、ライトスタンドから地鳴りのような歓声が響いた。


从'ー'从(……)

( ゚∀゚)「すいません、もっとしっかり返球出来てれば……」


マウンド上にレールウェイズ内野陣が集まる。
バツの悪そうな顔をしているのは長岡だ。


( ∵)「ゴワァグワエオ」

从'ー'从「ビコーズさんの言うとおりだよ。仕方ないさ」

( ゚∀゚)「……」

从'ー'从「それより大事なのは次のガイエルを抑えることだ。きっちり頼むよ」

( ゚∀゚)「……ハイ!」


その言葉を受けて各人が守備位置に帰る。
ランナーは二塁。バッターは先ほど本塁打のガイエルだ。


J( ゚_ゝ゚)し(みんな、期待しててや!)












J( ゚_ゝ゚)し「三振してもた」




   123 456 789 RH
RW 001 11      35
V  000 11      26

RW 渡辺‐ビコーズ
V  内藤‐和手枡

本塁打 小和田 43 ガイエル 38




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