('A`)は野球選手のようです 3-1紅白戦


※野球はいっぱい人が出てくるため野球板のAAを使用します。ご了承あれ。
紅軍
1 遊 茂等 ( ・∀・)
Av.245 HR4
2 二 毒田 ('A`)
Av.287 HR8
3 左 擬古 (,,゚Д゚)
Av.274 HR17
4 一 諸本 (´・ω・`)
Av.276 HR3
5 右 濱中 ( ‘ 〜‘)
Av.287 HR13
6 三 朴荷駄 <ヽ`∀´>
Av.248 HR8
7 中 吉野 (´゚ぺ`)
Av.279 HR7
8 捕 和手枡 ( <●><●>)
Av.179 HR0
9 投 高岡 从 ゚∀从
20勝7敗 防2.37


白軍
1 中 川島 (K‘ー`)
Av.287 HR9
2 左 魔将 J( ゚_ゝ゚)し
Av.299 HR23
3 一 宝  ( ^Д^)
Av.312 HR33
4 右 戸田 (  ̄・・ ̄)
Av.200 HR12
5 三 松田 (゛ー゛)
Av.245 HR17
6 捕 比木 (-_-)
Av.278 HR21
7 遊 海埼 ( ”ー”)
Av.231 HR2
8 二 布佐 ミ,,゚Д゚彡
Av.500 HR0
9 投 内藤 ( ^ω^)
0勝1敗 防27.0



('A`) 「内藤が先発……」

/ ,' 3 「それほど期待をしている、ということだ」

('A`) 「コーチ……」

(´・ω・`) 「裏を返せば今年期待を裏切れば……ということだ」

('A`) 「……」


先攻は紅軍。俺たちだ。
マウンド上では内藤がピッチング練習をしている。
キャンプでの投げ込みが効いたのだろう、球は自主トレのときより格段に良くなっている。
きっと今日はフォークも使ってくるだろう。


( ´∀`) 「さて……いよいよこの日が来てしまいましたね」

N| "゚'` {"゚`lリ 「選手たちのモチベーションも上々です」

( ´∀`) 「そうですか。……毎年ですが、やはり選手をふるいにかけるのは辛い」


N| "゚'` {"゚`lリ 阿部高和
打撃コーチ 43歳 5年目

2189試合 率.270 本437 点1312
首位打者2回 本塁打王2回 打点王2回
座右の銘 「俺は夜の方が高打率なんだぜ」



( ´∀`) 「白の先発は内藤ですか……そろそろ開花してほしいころですね」

N| "゚'` {"゚`lリ 「有り余る才能を持ちながらメンタル面でそれを潰してきた選手ですからね」

( ´∀`) 「毒田が入ってきたことが予想以上にプラスに働いているようです。去年までのあがりがなくなった」

N| "゚'` {"゚`lリ 「新球種も覚えて自信をつけたようです」

( ´∀`) 「今回赤は少し打線を弱くしてあります……内藤に自信がつけばいいのですが」

N| "゚'` {"゚`lリ 「お言葉ですが」

( ´∀`) 「?」

N| "゚'` {"゚`lリ 「私が一か月かけて調k……育てた選手たちです。弱くは、ないですよ」

( ´∀`) 「……失礼しました」


( ^ω^) 「……」


内藤は、緊張していた。
しかし、いわゆる『あがり』ではなく心地のいい緊張感だ。
これなら、自分の力をいかんなく発揮できるかもしれない……そう考えた。


( ・∀・) 「さーて、内藤のピッチングはどうかね」


打席にはヴィッパーズ不動のショート茂等が入る。
やはりベテランの人間には不思議な凄味がある。
しかし負けてはいけない。負けたら、どうなるかは考えたくもない。


( ^ω^) (初球……フォークで行きますお)

(-_-) 「……」コクリ


正捕手である比木が頷いた。
それを見てセットポジションに入る。
ランナーがいなくてもセットポジションから入るのが自分のスタイルだ。
指にボールを挟んで、渾身の球を投げ込む。


(-_-) 「!」


比木は、ぎょっとした。
内藤はフォークを投げることを要求した。
紅白戦のため、できるだけ投手の言う通りの配球を組み立てようと考えた。
内藤から投げ込まれたボールはベースのはるか前でバウンドするボールだった。


「ボール!」


当然ながらボールの宣言がなされる。
ボールを服で拭って、内藤に返す。


( ・∀・) (今のは……フォークが落ち過ぎたか)

( ^ω^) 「……」

( ・∀・) (もうフォークは使いづらいだろ……となればストレートか)


第2球が投げ込まれる。
外角低めへのボール。ハーフスピードのストレート。


( ・∀・) (いける!)


茂等は手を出す。
しかしボールは鋭く落ちてバットをかわした。


「ストライク!」

( ・∀・) (また、フォークか)


( ・∀・) (チキンの内藤ならフォークは投げづらいと思ったが……)

( ^ω^) 「……」


ちらりと内藤を見る。
顔はいつもと変わらない。


( ・∀・) (涼しい顔しやがって……)


そして投げ込まれる、第3球。
インハイへのストレート。
思わず少しのけぞる。


「ストライク!」


電光掲示板を見る。146km/h。
その表示よりも速く見える。


2ストライク1ボール。
あっさりと追い込まれた。


( ・∀・) (勝負にくるか?)


4球目は外角に逃げていくカーブ。
誘い球だが難なく見送る。2ストライク2ボール。


( ^ω^) 「……」


内藤がセットポジションから5球目を投げる。
内角低めへのハーフスピード。


( ・∀・) (フォークだ!)


しかしボールは落ちなかった。
内角低めにズバッと決まる三振。電光掲示板は130キロを表示していた。


(;・∀・) (ちっ……)


内藤は自分が見逃すとわかっていてあの半速球を投げたのだろう。
つまりフォークを見るのをわかっていたのだ。


( ・∀・) 「おい」

('A`) 「?」


打席に向かおうとする毒田を呼びとめた。
一言二言言うためだ。


( ・∀・) 「内藤は去年までとは違うぞ」

('A`) 「……わかってますよ」


素振りを何回か繰り返し、打席に入る。
マウンドに立っている内藤は、いつもより大きく見えた。


内藤が1球目を投げる。
インコースへのストレート。144キロ。この時期にしてはいい球を投げてくる。

2球目はシュートが外れてボール。
3球目はまたもインハイへのストレート。

内藤はこんなにも強気な投球をしてくる投手だっただろうか。


( ・∀・) 「去年とは、違うぞ」


先ほどの茂等の言葉が頭をかすめる。
なるほど、そう言うことか。


('A`) (……次はフォークだ)


茂等への配球と自分への投球内容を見ると内藤は早いカウントで決めたいらしい。
とすると次はストライクからボールへ逃げるフォークを使ってくるはずだ。


内藤がしなやかなフォームから5球目を投げる。
インハイへの超速球。


('A`) 「!」


その球威に思わずバットを出してしまう。
力なく上がったボールはこれまた力なくセカンドのグラブにおさまった。


('A`) 「……やられた」


内藤が磨いたのはフォークだけではなかった。
ストレートや、2球目に投げたシュートもレベルアップしていた。
フォークしかない、と内藤を侮った自分の負けだった。


('A`) 「次は捉えるぞ、内藤」


内藤は続く擬古も三振に取り、スリーアウト。
2010年の内藤は素晴らしいスタートを切った。


( ´∀`) 「……素晴らしいですね」

N| "゚'` {"゚`lリ 「ええ、しかし去年までもランナーがいない場面では内藤は無敵でした」

( ´∀`) 「ええ……いくら調子が良くても、ランナーを出さないという試合はなかなか無い」

N| "゚'` {"゚`lリ 「しかし持ち球それぞれがレベルアップしているのは事実です」

( ´∀`) 「それを自信に思ってくれればいいのですが……」


( ´∀`) 「さて、今度は高岡ですか」

N| "゚'` {"゚`lリ 「今年も万全に仕上げてくれたようです」

( ´∀`) 「彼を上回る投手は日本どころか世界を回っても探すのは難しいでしょうね」


从 ゚∀从 「さて、いよいよ俺の出番だな」


マウンドでは内野手と捕手が集まって輪を作っている。
その中心には昨年20勝をあげた高岡がいる。
高岡は内野手に向けて話し出す。


从 ゚∀从 「俺は三振を取るのはなかなかできねえ」


長髪をたなびかせながら話す高岡は街で見かけたら女性にも間違われるような容姿だ。
しかしユニフォームの下にはもちろん筋骨隆々の男が存在しているのだが。


从 ゚∀从 「だから内野ゴロばっか出ると思う。その時はよろしく」

「「「うぃっす!!」」」

从 ゚∀从 「……お前も」

( <●><●>) 「ひゃい!?」


高岡はバッテリーを組む若手の捕手である和手枡に話しかける。
若手同士でのバッテリーは組んだことは何回かあるが高岡のような大投手をリードするのは初めてだ。


从 ゚∀从 「……頼んだぜ」

( <●><●>) 「……はい」

そのやり取りが終わると内野手陣が三々五々散っていく。
打席には去年規定打席には到達しないながらもAv.287を記録した期待の若手だ。

从 ゚∀从 「若手は早めに潰さないと……なっ!」


しなやかなフォームから投げ出されたボールは和手枡が構えたミットに寸分たがわず吸い込まれる。
インローいっぱい、ストライクだ。


(K‘ー`)「やっぱすごいな……」


続く2球目もアウトローいっぱいにスライダーが投げ込まれる。
一級品の曲がりに加えて精密機械と称されるコントロール。
それが高岡の武器だ。


从 ゚∀从 「おらっ!」

(K‘ー`)(! 真ん中!)


やはり開幕前はコントロールも狂うのか。
川島は思い切り振りぬいた。


从 ゚∀从 「……計算通り」


真ん中のボールを振りぬいたはずが転々とセカンドに転がる。
毒田が難なくさばき、一塁へ。ワンアウトだ。


(;K‘ー`) 「……なんで、捉えられなかった?」

( ^Д^) 「ツーシームよ」

(K‘ー`) 「ツーシーム……」


ネクストサークルに入っている宝は自分の独り言を聞き逃さなかったらしい。
宝のツーシームという言葉は川島にとってなじみのある言葉だった。


( ^Д^) 「おう。わずかに動いて芯を外す……あいつの得意技だよ」

(K‘ー`) 「……」

( ^Д^) 「ま、あいつを1打席でどうこうは無理だ。次にどうするか考えとけよ」

(K‘ー`) 「……はい」


J( ゚_ゝ゚)し 「次はミーのターンで―す! がんばりまーす!」


2番、ガイエル。「魔将」というファンからのあだ名が気に入ったらしく登録名も「魔将」にしてしまった。
左打席に入って高岡のボールを待つ。


从 ゚∀从 「おらっ!」


高岡の右腕から投じられたスライダーは、人知を超えた曲がりを持って魔将に激突した。


从;゚∀从 「うわっ、わりー」

J(;゚_ゝ゚)し 「アウチ! ……デッドボールもベースボールの一部で―す……」


そう言うと魔将はとぼとぼと1塁へ向かう。
両チーム合わせて初めてのランナーは魔将だった。


从 ゚∀从 「なんかあいつに投げると全部あいつの方向に飛んでいくんだよな……」

※魔将ガイエルについてはhttp://blog.livedoor.jp/hae10230/archives/51324314.html


ワンアウトランナー一塁。
右打席にはヴィッパーズの主軸、宝を迎える。


从 ゚∀从 「宝か、真剣勝負するのは久々だな」

( ^Д^) 「……」


1球目、ストレートが高めに外れてボール。
ワンアウトランナー2塁。

2球目、フォークを宝が空振って1ストライク1ボール。


从 ゚∀从 「……」


3球目、インローへの速球。
そのコースは宝の得意コースであった。


( ^Д^) (絶好球……! でも!)


宝は見逃す。ボールは大きく落ちてボール。
フォークボールだ。


( ^Д^) (やっぱりか……あんな得意コースに高岡が投げるわけねーべ)

从 ゚∀从 「……チッ」


5球目、高岡には珍しくスライダーがすっぽ抜ける。
その球を今度は見逃さない。


真ん中に流れてくる球を思い切り引っ張る。
川島に投げた狙った真中へのボールではない、失投の末のボールだ。
強く打った打球は低い弾道で力強く左中間へ向かう。
魔将は足が遅いがツーベースなら十分帰ってこれる。


(#・∀・) 「うらぁ!!」


しかしその考えは甘かった。
ゴールデングラブの常連である鉄壁の遊撃手がいたのだ。
強烈なライナーを横っとびでキャッチ。そして魔将が飛び出していたセカンドに転送。
あっという間に1点がダブルプレー。これには宝もただただ敬服するしかなかった。


( ´∀`) 「ガイエルはいつも通りですね」

N| "゚'` {"゚`lリ 「ええ。そうですね」

( ´∀`) 「しかし……高岡があんなにすっぽ抜けるとは……」

N| "゚'` {"゚`lリ 「茂等に助けられましたが、普通なら1点ですからね」

( ´∀`) 「まだ1回だけでは何とも言えませんが……」

/ ,' 3 「茂等はいい守備を見せましたね」

N| "゚'` {"゚`lリ 「荒巻コーチ。ベンチの采配はいいので?」

/ ,' 3 「構わんよ。どうせ茂等がさい配するわ」

( ´∀`) 「そうですか。……あの守備なら、今年もショートは茂等ですね」

N| "゚'` {"゚`lリ 「打率1割でもあの守備なら置くことができる。大した奴です」


『4番、ファースト、諸本』

(´・ω・`) (俺は……もう、落ち目だ)


自覚はしていた。
3冠王を獲った時と比べて、自分の能力は明らかに低下している。
しかし、まだプロの世界で生きていくことはできる。そう考えていた。あのときまでは。


(´-ω-`) 「……」


バットを立てて、昔を思い出す。とは言ってもまだ1年と立ってはいないが。
去年のシーズンが始まってすぐ、顔にデッドボールを食らった。
投手が軟投派だったのが幸いしてか、ほほの骨の骨折ですんだ。
しかし、その死球は諸本に暗い影を落とした。内角に、うまく反応することができなくなってしまったのだ。


( ^ω^) 「やっ!」


マウンドには25歳の内藤が投球練習をしている。
自分は36歳。10以上の差がある。若さをうらやましいと思ったときもあった。
怖いもの知らずの、若さが。


(´・ω・`) 「よし」


素振りを終え、左打席に入る。
マウンド上の内藤を睨みつける。
しかし内藤に気遅れている気配はない。


内藤が1球目を投げる。
アウトローに決まるスライダー。今日は初球ストライクをよく取っている。
きっと調子がいいのだろう。


2球目。インコース高めに入るストレート。
しかしコースギリギリではなく少し真ん中に寄ったボールだ。


(;´-ω-`) 「うっ!」


そのボールを捉えようとした瞬間、あの死球がフラッシュバックした。
バットを振らないどころか、目を瞑ってしまった。


(;´・ω・`) 「……」


当然、ストライク。
いとも簡単に追い込まれた。


3球目はフォーク。
打ち気にはやった諸本はいとも簡単に三振してしまった。


(´・ω・`) 「……っ!」


唇を悔しそうに噛み、ベンチに戻る。
その背中に、元三冠王の風格はなかった。


( ´∀`)「……諸本は厳しいですね」

N| "゚'` {"゚`lリ 「インコースに目を瞑ってしまっていますね」

( ´∀`)「実績を考えると一軍枠から外れる筈が無いのですが……」

/ ,' 3 「諸本は選手を束ねるキャプテンだし、いかんともしがたいのう」


はあ、と初老2人中年1人の溜め息が部屋に充満する。
果たして、その溜め息を諸本が吹き飛ばせるのはいつの日か。


( ^ω^)「……っ!」


調子が出てきた内藤は続く濱中・朴ともに三振。
これで2回を投げて内藤は5三振。
ドクオの打席以外は全て三振に抑えた。


( ・∀・)「内藤を調子付かせるとやっかいだ」


守備につく前、茂等がみんなを集める。
荒巻コーチがどこかに行ったので現在は茂等が指揮を執っている。


( ・∀・)「次の回からは揺さぶるぞ」

「「「おうっ!!」」」


対する高岡も茂等のファインプレーに助けられ、持ち直し戸田・松田を内野ゴロに抑える。


ツーアウト、ランナーなしで相対するはいつもはバッテリーを組む、比木。


从 ゚∀从「比木よ。俺の球が打てるのか?」

(-_-)「いつもお前の球を見ているからな。打てるさ」


パチパチと火花を散らす両者。
そしてそれに気後れしている人間が1人。


(;<●><●>)「……」


現在高岡のパートナーである和手枡だ。
高岡のようなコントロールのいいピッチャーの場合、キャッチャーのリードが重要になる。
先ほどから高岡は一球も首を振っていない。
つまり、配球を全て自分に任せているのだ。


(;<●><●>)(責任重大ぃぃぃぃぃぃ!!)


( <●><●>)「……」


右打席に立つ比木の足元を見る。
正直何も読み取れない。
比木は捕手ながら21本のホームランを放つバッターだ。
甘い球ではすぐにスタンドへ持っていかれる。


( <●><●>)(アウトロー……)


となれば当たっても長打にはなりにくいアウトローを要求する。
球種はストレート。アウトローにミットを構える。


从 ゚∀从「……」


高岡が頷く。
第1球が高岡から放たれた――瞬間、比木が足をアウトコース狙いで踏み出してきた。


(;<●><●>)「!」


読まれていた。
自分が一発を恐れてアウトコースを要求するのを。
球は文句なしのコースに来たが、読まれていては話が別だ。


( <●><●>)「やられた……」


比木は無理に振り切らず、おっつけてライトへ持っていった。
ライトへのクリーンヒットだ。


从 ゚∀从「……」


しかし高岡は落ち着いていた。
なおも首を振らず和手枡の要求通りに投げる。
続く海崎は高めのつり球に手を出しレフトフライに倒れた。


( <●><●>)「高岡さん……すいません」

从 ゚∀从「ん? ああ、気にすんな。ヒットくらい打たれるさ」

( <●><●>)「でも……」

从 ゚∀从「あの場面は一発が怖い。だったらあの配球はセオリーだ。実際シングルで済んだしな」

( <●><●>)「……」

从 ゚∀从「野球は点を取られなきゃ負けない。だからあれはあれでいいんだ」


从 ゚∀从「それに」

( <●><●>)「……」

从 ゚∀从「お前もちゃんと海崎を抑えたじゃないか」

( <●><●>)「いえ、それは……」

从 ゚∀从「いや、お前のおかげだ! お前は偉い!」

(*<●><●>)「……」


年間20勝を挙げる大投手に誉められて悪い気はしなかった。
しかしやはり配球を読まれたのは悪い傾向だ。きをつけなければならない。


从 ゚∀从「それに比木亡き後、次の正捕手はお前だからな」

( <●><●>)「亡き……」

从 ゚∀从「そ。亡き後」

白軍ベンチ

(-_-)「……」ブルッ

( ^ω^)「……大丈夫ですかお?」

(-_-)「……問題ない」


3回の表、紅軍の攻撃。

( ・∀・)「和手枡、ちょっとこい」

( <●><●>)「?」


参謀役である茂等が今のバッターの次に回ってくる和手枡に耳打ちする。
何か作戦があるのだろう。


( <●><●>)「……わかりました」

( ・∀・)「頼んだぞ」


2人が話しているうちに7番吉野はサードゴロ。
そしてバッターは8番和手枡を迎える。


和手枡が左ボックスに入る。
比木はその足元を見た。


(-_-)(……さっき茂等さんと話をしていた。何か作戦があるはずだ)


茂等は頭も回る男だ。
次期監督に最も近いとも言われている。


(-_-)(とりあえず、一球様子を見よう。ボール球だ)

( ^ω^)(わかりましたお)


内藤は外角高めに直球を投げ込む。
ボールは要求通りにストライクゾーンから外れた。


(-_-)(微動だにしない……狙いはなんだ?)


昨シーズン和手枡は打撃がネックとなっていた。
打率1割台ではピッチャーとともに自動アウト同然だった。
そんな相手に警戒し過ぎるのもよくない。


(-_-)(フォークだ。振らせるぞ)

( ^ω^)「……」コクリ


2球目、内藤はストライクからボールになる最高のフォークを投じた。


(-_-)(ナイスコース!)


これは3割バッターでも振るだろう。
比木の頭は1‐1カウントでの配球に考えを巡らした。


「ボール」

(-_-)(……振らない、だと)


(-_-)(またも微動だにせず、か)


これでカウントは0‐2。
これ以上カウントを悪くはできない。


(-_-)(ストレートだ。カウントを稼ぐ)

( ^ω^)(はいですお)


3球目、内藤の腕から豪速球が繰り出される。
その球に和手枡が取った行動は意外なものだった。


(;-_-)(バント!?)

和手枡はボールが腕から離れる一瞬前にバントの構えを取った。


バントの態勢に焦ったのは内藤だった。
低めに要求していた直球が、動揺からか少し浮いて真ん中に入ってきた。


(;-_-)(甘い!)


そしてそれを見た和手枡は素早くバットを引く。

(;^ω^)(バスター!)


一閃。
バント処理のために前に出た内藤を強襲するヒット。
ボールは転々とセンターに転がる。


(;-_-)「くそっ……!」


今まで完璧なピッチングを続けた内藤が初めてランナーを許した。
9番の高岡が確実に送りバントを決める。
ツーアウトランナー2塁。


N| "゚'` {"゚`lリ 「内藤の真価が問われますね」

( ´∀`)「ああ。そしてバッターは……」


『一番、ショート、茂等』


( ・∀・)「やっちゃうよーん」


(;-_-)(くっ……ここで茂等さんか……歩かせる手もあるにはあるが……)

(;^ω^)(まだ序盤ですお。それに歩かせても結局ドクオですお)

(-_-)(……わかった。ねじ伏せよう)


右打席に茂等が入る。
昨シーズンの打点こそ40だがその40点はいずれも大事な場面での打点だ。
勝負強いバッターは怖い。


(-_-)(まず様子を見る。ボールになるスライダーだ)

( ・∀・)「……」


不気味な雰囲気を漂わせる茂等。
嫌な予感を振り払いながらミットを構える。


一球目、内藤は要求通りストライクからボールになるスライダーを投げる。
しかしあっさり見送られる。


(-_-)(見られた……? 嫌にあっさりしていたな……)


先ほどの和手枡の打席を思い出す。
そうだ。逃げていては袋小路に追い詰められる。
状況を打破しなくてはいけない。
そのための武器は、内藤にはある。


(-_-)(インハイだ。ねじ伏せるぞ)

(;^ω^)(……はい)


セットポジションからボールが放たれる。
インハイへの今日一番の直球。
振らなくても、残像には焼き付く――!


( ・∀・)「ここだ!」


サッと比木の顔が青ざめる。


(;-_-)(狙っていたのか!?)


ガツン、と真芯でとらえた音がした。
ボールは、高々とレフトへ飛んでいく。


( ・∀・)「……チッ」


ボールはやがて失速し、魔将のグラブに収まった。
紅軍はチャンスを逃すこととなった。


N| "゚'` {"゚`lリ 「危なかったですね」

( ´∀`)「そうですね。完全に芯で捉えていました。しかし」

N| "゚'` {"゚`lリ 「?」

( ´∀`)「あのボールがあそこで失速したのは偶然ではありません」

N| "゚'` {"゚`lリ 「……」

( ´∀`)「あのストレートの球威。……ついに開花したかもしれませんよ。内藤地平線」


その裏、高岡は下位打線を三者凡退に打ち取る。


4回の表、紅軍の攻撃。
先頭打者はドクオだ。


('A`)「内藤と2回目の対戦だ……」

( ・∀・)「え? 2回目の対戦はないよ?」

('A`)「……へ?」


『白軍、選手の交代をお知らせします。ピッチャー、内藤に代わりまして、藤井。背番号、47』


(;'A`)「え―!?」

( ・∀・)「なんだ。そんなに対戦したかったなら尚更回すべきだったな」

(;'A`)「なんで? なんで3回ぽっちで交代?」

( ・∀・)「そりゃ紅白戦で怪我したらなあ」

('A`)「……なるほど」


結局その日俺は3打数1安打1四球。
まずまずの成績で今日の紅白戦を終えた。
試合は白軍が宝さんのスリーランなどで4‐2で勝利した。


( ・∀・)「あー疲れた。早く風呂入って寝ようぜ」

('A`)「そうですね」


初めてのチームで初めての試合。
俺は、まあまあなスタートを切った。


キャンプが終わり、オープン戦もこなした。
俺と内藤はどちらも一軍に残ることが出来た。
しかし、予想外に二軍スタートが決定した人物がいた。


(´・ω・`)「しょうがないな。結果を出せない奴はプロじゃないさ」


元三冠王、諸本信彦。
一軍枠の28人から外れた。

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