スターティングメンバー
ニュー速ヴィッパーズ
1 遊 茂等 ( ・∀・)
2 二 毒田 ('A`)
3 左 魔将 J( ゚_ゝ゚)し
4 一 宝 ( ^Д^)
5 捕 比木 (-_-)
6 三 朴 <ヽ`∀´>
7 右 川島 (K‘ー`)
8 中 擬古 (,,゚Д゚)
9 投 高岡 从 ゚∀从
シベリアレールウェイズ
1 遊 長岡 ( ゚∀゚)
2 三 京橋
3 一 玉造
4 左 放出
5 右 小和田 (^o^)
6 中 我孫子
7 捕 天王寺
8 二 十三
9 投 渡辺 从'ー'从
N| "゚'` {"゚`lリ 「ふむ、やはり大方の予想通り先発は渡辺だな」
(;'A`)「あのーコーチ?」
N| "゚'` {"゚`lリ 「ん? なんだい? ホモビデに出たいのかい?」
('A`)「違います。えーと、ピッチャーの渡辺って……」
俺は見たままを口にしてよいのか迷う。
もし触れてはいけないタブーな話題だったら……
('A`)「女じゃないんですか?」
N| "゚'` {"゚`lリ 「……違う。と、思う。多分」
('A`)「多分なんですか」
N| "゚'` {"゚`lリ 「誰も渡辺さんの着替えをみた者はいないらしいよ」
N| "゚'` {"゚`lリ 「まあ実力は折り紙付き。前年は緩急をつけたピッチングで14勝だ」
('A`)「へー」
知らなかった。レールウェイズはあまり人気のある球団ではない。
だからメディアへの露出も少ない。さらに交流戦でも渡辺と当たったことはなかった。
N| "゚'` {"゚`lリ 「いい投手さ。なあ高岡?」
从 ゚∀从「……しらねっすよ」
珍しく高岡さんがふてくされた顔で応対する。
なんでだろうと思っていると阿部コーチが説明してくれた。
N| "゚'` {"゚`lリ 「高岡と渡辺はね。ライバルなんだよ。昔っから」
('A`)「昔から……」
N| "゚'` {"゚`lリ 「高校どころか小学校のリトルリーグからずっとライバルだ」
('A`)「へえ……」
从 ゚∀从「チッ」
なんだろう。腐れ縁とでも言うのだろうか。
こんなに途切れない縁も珍しい。
从 ゚∀从「おい……毒田」
('A`)「はい?」
从 ゚∀从「お前、エラー多かったよな……?」
('A`)「ま、まあ。改善したつもりですが」
从 ^∀从「そう。渡辺との試合でエラーしたら〇すから」
('A`)
そんなこんなでプレーボールの時間が近づいてくる。
開幕戦の一勝はただの一勝ではない、と言われる。
オフシーズンに積み重ねた物を発揮するこの舞台。
最高のパフォーマンスを見せなければ負ける。
この試合は、今年の流れを決める大事な試合だ。
( ´∀`)「皆さん、集合してください」
喪名監督の前に選手が集まる。
ベンチ外の選手も合わせて28人だ。
( ´∀`)「いよいよ開幕です。見なさいこの集まってくれたファンの方を」
('A`)「……」
( ´∀`)「決してこの試合は144分の1ではありません」
( ・∀・)「……」
( ´∀`)「月並みですが、がんばりましょう!」
「「「おう!!」」」
( ><)『全国一億人の野球ファンの皆様こんばんは!
今日この日を待ち望んでいた方も多いのではないでしょうか!』
( ゚∋゚)『いやー今日は快晴ですね。まさに野球日和と言っていい』
( ><)『そうですね! ニュー速ヴィッパーズ対シベリアレールウェイズ 第1回戦の模様をお伝えして参ります!』
( ><)『実況は私、稚内弘人、解説は阪神ジャガースのショートを勤めた鳥谷敬さんです』
( ゚∋゚)『こんばんは』
( ><)『さあ鳥谷さん、プレーボールの前に両チームの見所を教えてください』
( ゚∋゚)『そうですね。やはりヴィッパーズは20勝投手の高岡ですね。
彼はちょっとやそっとじゃ崩れませんよ』
( ><)『なるほど! ではレールウェイズはどうでしょうか?』
( ゚∋゚)『はい、私は一軍定着を狙う長岡くんを推したいですね。
去年の一軍出場はありませんでしたが、二軍で首位打者と盗塁王を穫った期待の星です』
( ><)『はい、ありがとうございます! 始球式が終わってヴィッパーズの面々が守備につきます!』
『先攻、シベリアレールウェイズの攻撃は、一番、ショート、長岡。背番号3』
( ゚∀゚)(うう……緊張するよー)
実質プロ初打席。
やはり二軍でタイトルを穫ったとはいえ所詮は二軍だ。
やはり一軍は格が違う。まず自分はこんなに大勢の人に囲まれたことはない。
( ゚∋゚)『緊張してますねー素振りがぎこちないですよ』
( ><)『やはり二軍でタイトルを穫っても緊張しますか?』
( ゚∋゚)『しますね。やはり一軍と二軍には越えがたい壁がありますからね』
長岡が緊張しながら右打席に入る。
それを確認して審判が右手をあげる。
今、2010年シーズンが開幕する。
「プレーボール!」
わあっと、観客席から歓声が上がった。
从 ゚∀从(さーて、第1球は何にするか)
(-_-)(……好きにしろ)
从 ゚∀从(んじゃ、ストレートで)
高岡の左足が上がる。
そして体をしなやかに躍動させ、一気に力を解放する。
ボールはアウトローに構えられた比木のミットに収まった。
「ストライク!」
( ゚∋゚)『いいストレートでしたねぇ』
( ><)『球速は143キロを表示しています』
( ゚∋゚)『きっと体感速度はもっと速いですよ。長岡くんが気後れしなければいいですが』
( ゚∀゚)(……143キロ? 嘘だろ?)
自分の目には150キロを越えているように見えたのだが。
動体視力に自信がある自分でもボールを追うことが出来なかった。
2球目。チェンジアップでタイミングを外され空振り。
球速は117キロ。
しかし長岡には50キロ以上の差があるように見えた。
( ゚∋゚)『……見えてませんね』
3球目、アウトローに半速球が投げ込まれる。
その緩いボールに思わずバットを出す。その時長岡には見えた。
(;゚∀゚)(曲がる……! スライダー!!)
必死で回りかけたスイングを止めようとする。
しかし。
( ><)『スイングスイング!! スイングを取られました長岡! 三振です!』
( ゚∋゚)『バットを止めようとしましたが間に合いませんでしたね』
( ><)『三振! 高岡の2010年シーズンは三振からスタートです!』
(;゚∀゚)(くっ……)
唇を噛んでベンチに下がる。
二軍で磨いた筈の努力がまったく実を結ばなかった。
( ゚∀゚)「くそっ」
(^o^)「怒るな怒るな。まだたった一打席だ」
( ゚∀゚)「小和田さん……!」
(^o^)「気にすんな。まだ俺たちは……始まったばかりだろ?」
( ゚∀゚)「……はい」
結局一回表は高岡の独壇場。
2番京橋を三振、3番玉造は8球粘ったがサードゴロに打ち取られた。
『一回の裏、ニュー速ヴィッパーズの攻撃は、一番、ショート、茂等。背番号6』
大歓声が上がる。
これがホームゲームの強みだろう。
从'ー'从
( ・∀・)(チッ……相変わらず何考えてるかわからん面だな)
茂等は昨シーズン渡辺に対して16打数1安打とかなり苦手にしている。
茂等は渡辺の緩急の付け方が嫌いだった。
从'ー'从
第1球。
左腕から繰り出される球はとにかく遅い。
ボールはかなり遠いところに投げられたと思いきや曲がってストライクゾーンに入ってきた。
スローカーブ。これが茂等が渡辺に苦しんでいる原因だ。
( ><)『相変わらず遅くてよく曲がるスローカーブ。球速表示は86キロです』
続いて第2球。
インハイの顔近くに攻めてくるストレート。
130キロほどだが先ほどのスローカーブを見ているためやけに速く見える。
( ・∀・)(女みたいな面してんのにエグい投球しやがって……)
3球目、今度はインローへのストレート。
これは決まってカウント2‐1。
( ゚∋゚)『追い込まれましたね』
( ><)『渡辺も高岡に負けず劣らずの投球をしそうです』
4球目、スローカーブ。真ん中に入ってきているように見えるが。
( ・∀・)(これは、ボールだ)
茂等の判断通りボールは大きく曲がってボールゾーンへ。
カウント2‐2。
( ゚∋゚)『今のはよく見ましたね』
( ><)『ええ。あのストライクからボールになるカーブは振ってしまいそうですが』
( ><)『さあカウント22から5球目。何を投げるのか』
渡辺の左腕から繰り出されるボール。
ストレート。のように見える。
( ・∀・)(スクリュー!)
去年散々苦しめられた渡辺のもう一つの武器。
芯を外してゴロを量産する。
去年はその配球に全く対応できなかった。しかし。
( ><)『打った! 茂等、スクリューをおっつけて右へ! ライト前ヒットです!』
『2番、セカンド、毒田。背番号37』
('A`)(……)
ベンチから出ているサインはバント。
茂等さんを走らせる気は無いらしい。
从'ー'从(バントねえ。させないよ)
バントの構えの毒田に投じた一球目。
大きく曲がるスローカーブ。
(;'A`)(っ!)
空振り。バントの体制でも、あまりの変化に当てることができなかった。
('A`)(バケモンかよ……)
2球目、今度はストレート。
バットの上っ面に当て、キャッチャーへの小フライになる。
(;'A`)(やべっ)
しかしキャッチャーが追いつくことは出来なかった。
だがカウントは圧倒的不利な2‐0。
( ゚∋゚)『これは厳しい……スリーバントは少し怖いでしょう』
追い込まれてしまった。
ベンチを見る。
ゴーのサインが出た。『好きに打て』ということだ。
( ><)『毒田は、バントの構えを……しませんね。ヒッティングです』
( ゚∋゚)『まあ、そうでしょうね』
3球目4球目はどちらもストレートのボール。
次は5球目。恐らく次で決めてくる。
( ><)『次はどんな球を投げるでしょうか』
( ゚∋゚)『そうですね。スクリューかカーブでしょう』
( ><)『そうですか。ありがとうございます。……さあ5球目』
('A`)(渡辺の決め球は2つ……スクリューかカーブ……)
('A`)(スクリューはさっき茂等さんに持っていかれたイメージがあるはず。だったら……カーブだ)
5球目、渡辺がモーションに入った瞬間、一塁の茂等が駆け出した。
( ><)『一塁ランナー茂等がスタートした!』
( ><)『バッテリーウェスト――! 茂等のスチールを読んでいたか!』
( ゚∋゚)『このウェストは素晴らしい』
( ><)『俊足の茂等、強肩の天王寺、勝つのはどちらだ!?』
ボールがセカンドベース上でやり取りされる。
ボールの到達が早いか、茂等が早いか……視線が2塁審に注がれる。
「アウトォ!!」
( ><)『アウト! アウトです! 茂等スチール失敗!』
(;・∀・)(チッ……)
うなだれてベンチに帰る茂等。
その足で向かうのは監督のところだ。
( ´∀`)「茂等……」
( ・∀・)「すいませんでした」
( ´∀`)「……なぜ、ノーサインのスチールを?」
( ・∀・)「……渡辺の決め球がスローカーブと読みました」
( ´∀`)「それが外れた。と」
( ・∀・)「……そうです」
( ´∀`)「仕方ありません。次に期待していらすよ、茂等」
( ><)『さあフルカウントの6球目』
渡辺の左腕から投げられたのは今度こそスローカーブ。
バントでも当てられないボールをスイングで捉えられる筈もなく。
( ><)『三振!! 毒田三振です!』
( ゚∋゚)『やはり最初の2球でバントを決めたかったですね。
ちゃんとすれば今頃ワンアウト2塁でしたから』
『3番、レフト、魔将。背番号5』
J( ゚_ゝ゚)し(魔空間で四球にしたるで!)
( ><)『渡辺際どいコースにズバズバ決まります! 魔将見逃し三振! スリーアウトチェンジ!』
J( ゚_ゝ゚)し(やっぱ魔空間制御むずいわー)
( ><)『さあ二回の表の攻撃です』
高岡はこの回も絶好調。
先頭打者をセカンドゴロに打ち取り5番打者を迎える。
(^o^)「わたしです」
( ><)『さあ左バッターボックスに入るのは小和田。走攻守で非常に高いレベルのプレーを見せます』
( ゚∋゚)『しかしね……素質は問題ないんですが』
( ><)『前年度はケガの連続で出場試合はわずか27。しかし出場試合全てでヒットを放っています』
( ゚∋゚)『出れば結果を出すんですよ。大事なのはでる状態にあるかということです』
( ><)『インタビューで小和田は「今年は万全。走攻守全てでチームを引っ張る」ということです』
( ゚∋゚)『7年ぐらいそんなこと言ってますけどね』
( ><)『さあ小和田を迎えて高岡第一球ストライク。内角高めのストレート』
( ><)『高岡第二球。内角へのスライダー……打った! っとこれは自打球』
( ゚∋゚)『……小和田くん足を押さえていますよ』
(^o^)「痛いよー痛いよー」
( ><)『トレーナーが治療に向かいます。これは大変なことになりました』
( ゚∋゚)『春の代名詞ですね』
( ゚∋゚)『あ、監督が出てきましたね』
( ><)『どうやら小和田は自打球を受けて交代するようです』
( ゚∋゚)『早速さっきの宣言守れませんでしたね』
( ><)『そうですね。せめて一打席は持って欲しかった』
( ゚∋゚)『まあ春の代名詞ですし』
( ><)『小和田に代打を送ります。バッターは池沼。背番号は99です』
(^q^)「うぃくwwwwwwwぱしへろんだすwwwwwww」
( ><)『ツーストライクに追い込まれてからの代打池沼は空振り三振です』
( ゚∋゚)『高岡くんの手からボールが離れる前にバットを振ってましたよ』
( ><)『ランナーがいるときの打率は.312。さらに得点圏打率は.405。
しかしランナーなしの打率は.071。極端な数字の池沼選手です』
( ><)『さあバッターは我孫子。昨年21HRを放った和製大砲です』
(-_-)(……こいつはやっかいだ。スライダーから入るぞ)
从 ゚∀从(オッケー)
( ><)『第一球目ストライク。右打者の膝元をなめるようなスライダー』
(-_-)(次はフォーク)
( ><)『第二球……投げた!』
(;-_-)(!)
完全に失投。薄く抜けた球は力なく真ん中に入ってくる。
( ><)『打ったぁ――! 打球はレフトへ! 大きい―!』
打球はグングンと伸びていく。
ここ、ニュー速スタジアムは広い球場ではある。
しかし我孫子のパワーはそのハンデをも覆した。
( ><)『レフト魔将完全に見送った――!!
ホームラン!! 天王寺第1号ソロホームラン!!』
(;-_-)(くっ……)
ここまで完璧と言っていいピッチングだった。
しかしたった一つの失投を逃してくれなかった。
開幕戦先制点、レールウェイズ。
V 0ー1 RW
レフトスタンドを呆然と見つめる高岡。
ホームラン1本ぐらいで崩れるピッチャーではないはずだが。
とりあえず落ち着かせるためマウンドへ向かう。
( ><)『キャッチャーがマウンドに向かいます』
( ゚∋゚)『うまく間を取りましたね。次は下位打線ですから高岡くんの本来の球なら抑えられますよ』
从 ゚∀从「んだよ。来なくていいって」
(-_-)「……まあさっきは仕方ない。次で抑えよう」
从 ゚∀从「うるせーわかってるよ」
その言葉を聞いてバッターボックスに戻る。
それにしてもさっきの球は酷かった。
高岡は紅白戦からこちらあんな抜け球が多いような気がする。
本来はそんなピッチャーではないはずなのだが。
从 ゚∀从(……)
右バッターボックスには7番天王寺を迎える。
守備には定評があるが打撃はからっきしな典型的なキャッチャーだ。
(-_-)(天王寺はさほど怖くない。打ち取るぞ)
从 ゚∀从(……)
1球目、真ん中低めにストライク。
2球目、スライダーを空振り。
(-_-)(追い込んだ。一球間を置くぞ)
从 ゚∀从(……)
ミットを構えるのは外角高めに外れるストレート。
第3球目。
(;-_-)(!?)
( ><)『あっーとこれはとんでもないすっぽ抜け! ボールはバックネットを直撃!』
( ゚∋゚)『これは……なんでしょうかねえ』
(-_-)(……)
从 ゚∀从(わりーわりー)
次の4球目、フォークを振らせて三振。
2回表の高岡はホームランの1点で押し留めた。
『2回の裏、ヴィッパーズの攻撃は、4番、ファースト、宝』
( ^Д^) (1点取られた……なら取り返す)
2年前まで4番には三冠王・諸本が座っていた。
しかし昨年諸本が早々に離脱。4番には魔将や朴を抑えて宝が座った。
そして期待に応え昨年本塁打王を獲得した。
( ^Д^) (でも……諸本さんにはまだかなわない)
諸本の実績にはまだ到底かなわない。
それに今はイップスに陥ってはいるが諸本程の男がこのまま終わるはずがない。
諸本が帰ってきても恥ずかしくないように勝たなければならない。
( ><)『さあ右バッターボックスには宝。
昨年は33ホームランを放ち東京ビックバンズの松井と共に本塁打王を獲得しました』
( ゚∋゚)『今まで併用が多く、なかなか出番に恵まれませんでしたからね』
( ><)『はい、しかし昨シーズンは全試合出場を達成。今年も全試合出場を狙います』
( ゚∋゚)『どこかの誰かも見習って欲しいですね』
( ^Д^) (……)
マウンド上の渡辺を睨む。
リードを早めにもらって勢いづくかもしれない。
( ^Д^) (その前に、叩く)
1球目、スローカーブから入る。
大きく曲がる球にタイミングが合わず空振り。
(;^Д^) (やっぱり、カーブは厄介だな)
从'ー'从(宝は一発が怖いからね。丁寧に行くよ)
2球目、右打者の胸元に食い込むカットボール。
宝のバットが出るが、根元で捉えてしまい、三塁線を転々とする。
(;^Д^) (しまっ……!)
「ファール! ファール!」
ボールはラインを僅かに切りファール。
助かりはしたがカウント2‐0。
追い込まれた。
( ^Д^) (追い込まれた……)
3球目は釣り球のストレート。
これには引っかからずカウント2‐1。
从'ー'从(……スクリュー)
4球目。
左投手独特の回転を持って投げられたボールは宝から逃げるように曲がっていく。
(;^Д^) (スクリュー……!)
バットを出してしまう。
届くか、届かないかは微妙だ。
「ファール!」
なんとかバットの先に当たり、ファールゾーンにボールが転がる。
( ゚∋゚)『今のはよくファールにしましたね』
( ><)『さっきの球種はスクリューでしょうか?』
( ゚∋゚)『そうですね。渡辺のスクリューは空振りと言うより打たせるボールですから。
その分バットには当てやすいんでしょうね』
( ><)『そうですか。さあ次は5球目』
5球目は鋭く食い込むカットボール。
しかし宝は手を出さない。
カウント2‐2。
从'ー'从(チッ……振れよこのニヤケ面)
6球目、スローカーブ。
从'ー'从(決まった!)
渡辺自身会心の手応えがあったボールだった。
右打者の宝の膝に落ちる完璧なスローカーブだ。
しかし。
( ><)『ファールファール! 宝このカーブもうまくカットしました!』
( ゚∋゚)『宝くんは扇風機のイメージが強いのですが……今のカットをみる限り改善してきましたね』
从;'ー'从(……)
スクリューはカットされた。
カットボールは見られた。
最高のスローカーブもカットされた。
投げる球が、ない。
( ^Д^) (よし……! これで奴を追い込んだ!)
( ><)『さあ7球目! 渡辺何を投げるか!』
从;'ー'从(……ストレート)
さっき宝にスローカーブを見せた。球速は94キロだ。
自分のストレートは130キロ前後。
この球速差なら打ち取れる。
( ><)『渡辺7球目! ストレートを宝弾き返した!!』
从;'ー'从(っ!)
完璧なタイミング。
ストレートが来るのを読まれていたのだ。
打球は低い弾道で左中間を破っていく。
( ゚∋゚)『これは長打になりますね』
( ><)『はい、その通り宝はスタンディングでセカンドベースへ! ツーベース!』
( ゚∋゚)『今の打席は宝くんの粘り勝ちですね。渡辺くんの球種を無くしていきました』
『5番、キャッチャー、比木。背番号27』
(-_-)(……さて、高岡を助けてやらんとな)
二度三度素振りを繰り返す。
審判に一礼をして右打席に入った。
一昨年までは8番に座り打率2割前半を打っていた。
それが去年阿部コーチに師事したおかげで一気に2割8分・20本を打てるようになった。
打てるキャッチャーに進化したのだ。
( ゚∋゚)『比木くんは去年打撃に厚みを増しましたね』
( ><)『はい、去年のブレイクがフロックではないことを証明できるか!』
(-_-) 「……」
打席に入り、渡辺を見る。
宝にいきなりツーベースを打たれたが動揺はないようだ。
从'ー'从 「……」
渡辺が第1球を投げる。
渡辺には珍しくストレートからの入り。
しかしアウトローきわどいところをボールと宣告された。
( ゚∋゚)『うーむ……あれがボールだとなかなか厳しいですね……』
( ><)『そうですね。アウトローいっぱいに決まったように見えましたが』
渡辺も不服としたような表情でキャッチャーからの返球を受け取る。
(-_-) (助かった……)
キャッチャーの自分にはわかる。
あれはストライクだ。渡辺にとれば最高の球を審判に邪魔されたということだ。
(-_-) (しかし……そんな時の方が、打ちやすい)
しかし渡辺は2球目3球目とも変化球を外す。
いずれもきわどいコースだ。
( ><)『どうしたんでしょうか、渡辺ノースリー!
ストライクが入りません!!』
(-_-) 「……」
『6番、サード、朴。背番号33』
<ヽ`∀´>(去年の二の轍を踏むようなら……首を切られる)
韓国球界でアジア新記録のシーズン56HRを達成し、鳴り物入りでヴィッパーズに入団した。
1年目こそHR王争いに絡む42HRを放つがそこからは下降線。
去年ついに一桁本塁打に終わってしまった。
今年こその復活。
それが朴のテーマだった。
( ´∀`) 「……朴と、渡辺のデータは?」
N| "゚'` {"゚`lリ 「朴の来日5年通算は52打数6安打です。打率は、.115」
( ´∀`) 「厳しいですね……」
N| "゚'` {"゚`lリ 「しかもその6安打中4安打が来日1年目での成績です」
( ´∀`) 「……賭けるしかありません。ヴィッパーズ優勝には彼の復活が必要不可欠ですから」
从'ー'从 「……」
結局4球目もスローカーブが大きく外れる。
コントロールのよい渡辺には珍しくストレートのフォアボール。
( ><)『渡辺結局歩かせてしまいました。ノーアウトランナー1塁2塁』
( ゚∋゚)『……というよりもノースリーの時点で勝負を避けた感じですね』
( ><)『そうですか。次のバッターは今年にかける男、6番朴です!』
( ><)『さあノーアウトランナー1塁2塁。左ボックスには6番朴が入ります』
( ゚∋゚)『7番8番は打撃には期待できませんからね。ここで最低1点は返したい』
( ><)『来日1年目は42HRを放ち、衝撃の日本デビューを果たした朴!
しかし来日5年目は僅か8HRに終わった朴! 今年は復活なるか!』
第1球目。スローカーブ。
左打者である朴からは背中から曲がってくるようなカーブだ。
思わずのけぞってしまう。
「ストライク!」
しかしそこから大きく曲がりストライクゾーンに入ってくる。
インローいっぱいのストライクだ。
<ヽ`∀´> (……くそ)
( ゚∋゚)『相変わらずあのカーブに対応できてませんね。のけぞってしまっていますよ』
( ><)『はい、渡辺と朴の通算対戦成績は52打数6安打。完璧に渡辺が上回っています』
( ゚∋゚)『しかもそのヒットはほとんど1年目でしょう。その頃の渡辺はまだカーブをものにしていなかった。
カーブが大きな武器になっている今では朴は渡辺を打てませんよ』
2球目はストレート。
真中にきた甘いボールだが、朴は振り遅れてしまう。
( ><)『ファール! 球速は135キロ! 渡辺の今日のMAXスピードです!』
( ゚∋゚)『80キロのスローカーブを見せられたあとにあのストレートは厳しいですね』
<;ヽ`∀´> 「くっ……」
あっさりと追い込まれた。2ストライクノーボール。
きっと渡辺は自分には打てないと思っているはずだ。
だったらそこに付け入る隙があるはずだ。
3球目はバットを振らせようとするスローカーブ。
このボールは大きく外れたこともあって見逃した。
カウント2−1。
( ><)『さあピッチャー有利のカウントで第4球……投げた!』
<ヽ`∀´> (来た!)
真中低めの半速球。
朴の大好物だ。
<ヽ`∀´> (いくら不調のウリとはいえ……)
バットを構える。
そして渾身の力で振り切った。
( ><)『打った――!! 強烈な当たり――!!』
ボールは、少し振り遅れたのか二遊間へ飛んでいく。
( ゚∋゚)『これは1点入りますよ』
( ><)『強烈な当たりはセンターへ……あっーと!!』
<;ヽ`∀´> 「!」
朴は1塁へ走りながら見ていた。
ショートが、ダイビングで打球をキャッチしたところを。
( ><)『取った! ショート長岡強烈なゴロをキャッチ! ボールは2塁、そして1塁へ!
6−4−3のダブルプレー!』
( ゚∋゚)『これはチームに流れをもたらすビッグプレーですよ』
<;ヽ`∀´> 「……」
唇を噛みしめる。
スタジアムは敵チームの長岡のファインプレーに静まり返っていた。
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