('A`)は野球選手のようです 4-2




( ><)『あ、今先ほどのリプレイが表示されています』

( ゚∋゚)『元々二遊間寄りに守っていましたね。しかしあの打球をキャッチするとは素晴らしい反応速度です』

( ><)『キャッチしてから2塁に転送するのも早かったですね』

( ゚∋゚)『そうですね。100点満点、文句なしの長岡君のファインプレーです』


( ><)『さて、それでもツーアウトながらランナーは3塁に進んでいます』

( ゚∋゚)『しかし次のバッターは川島君でしょう? 彼も渡辺を苦手にしてましたね』

( ><)『はい、昨シーズンは8打数0安打。完璧に抑えられています』

( ゚∋゚)『まあヴィッパーズは全体的に渡辺を苦手としていますからね。やはり先ほどの長岡君のプレーは大きいです』


そして7番川島は平凡なライトフライ。
宝が作ったチャンスは長岡によって潰された。


( ´∀`) 「仕方がありません。きっとまたチャンスは巡ってきます。それまでこの1点に抑えましょう」


守備に就く前、喪名監督が選手を集める。
それは選手みんながわかっていることだが、再確認のいみでは大きかった。


( ><)『さあ3回表の攻撃。ピッチャーは高岡ですが……』

( ゚∋゚)『先ほどから制球が定まりませんね。高岡には珍しい』

( ><)『さあ、8番十三に対しての第1球目……あっと!』


(;-_-) 「!」


明らかな失投。
比木が構えたのはアウトローの直球。
それが完全に抜けて真中に来てしまった。
いくら8番と言えど、プロのバッターはこの球を見逃さない。


( ><)『抜けた! 一二塁間を破るヒット! 高岡先頭打者を出してしまいました!』


(;-_-) 「……」


打席には9番の渡辺が入る。
高岡と渡辺は犬猿の仲だ。
高岡が渡辺にぶつけなければいいのだが……


( ><)『渡辺バントの構えです』

( ゚∋゚)『当然でしょうね』


結局渡辺は初球を軽々とバントし、ランナーを送った。
1アウトランナー2塁。得点圏にランナーが進んだ。


( ><)『さあ、次のバッターはこの人!』

( ゚∋゚)『先ほどのプレーで波に乗っていますよ』


( ><)『先ほどのファインプレーで見事渡辺を援護した長岡!』

( ゚∋゚)『次はバットで援護して欲しいですね』


( ゚∀゚)「……よし、大丈夫。落ち着いた」


さっきの第1打席は球場の雰囲気に舞い上がってしまっていた。
だが今は、違う。さっきのプレーで余計な緊張感はなくなった。
さらに相手ピッチャーの高岡の状態。決していいものではないだろう。


( ゚∀゚)「……打てる」


大丈夫だ。俺は2軍で.356を打った。
ここでも打てる――そう自分に言い聞かせる。


ミセ*゚ー゚)リ 「ながおかくーん!!」


そして自分を応援している人がいる。
俺は、負けない。


('A`) 「なんだか無性に死にてえなあ……」


(-_-) (……固い感じが、なくなった。こいつ、やはりただものじゃないな)

从 ゚∀从 「……」

(-_-) (気をつけろよ。甘い球は厳禁だ)

从 ゚∀从 (わかってるって)


第1球。
アウトコースへのストレート。
長岡はあっさり見送った。


(-_-) (……嫌な見送り方だ)


(-_-) 「……」


ミットをインローに構える。
球種はフォークだ。


从 ゚∀从 「……」

(-_-) 「……?」


高岡が首を振る。
今度はアウトローへのスライダーを要求する。


从 ゚∀从 「……」

(-_-) 「……」


また首を振る。
今度はアウトへのチェンジアップ。


从 ゚∀从 「……タイム」


高岡が、タイムを取った。


(-_-)(……何だ?)


マウンドに駆け寄り、グラブで口を抑えて話す。
高岡がタイムを取るのは久しぶりだ。
何かあるのかもしれない。


从 ゚∀从(んー、あいつとは直球勝負したいなって)

(;-_-)(なっ……!)


(;-_-)(ば、バカなことを言うな! 開幕戦だぞ!)

从 ゚∀从(ん、やっぱそう? わりーわりー。じゃあちゃんとするわ)

(-_-)(……)


( ><)『あ、キャッチャーがボックスに帰ります。何をしていたのでしょうか』

( ゚∋゚)『サインの確認じゃないでしょうか』

( ><)『そうですか。1アウトランナー2塁、バッターは1番長岡です』


(-_-)(……)


インローへのフォークボール。
先ほど要求した球と同じだ。


从 ゚∀从(……)


今度は頷く。
さっきの会話はなんだったのだろうか。
まるで否定されることがわかっていたような口振りだったが。


( ><)『さあ、カウント1‐0から第2球』


フォークが投げられる。
ストライクからボールになる球だ。
しかしこれも長岡は見送る。


( ><)『ボール。カウントは1‐1です』


(-_-)(……)


次はまたもストライクからボールに逃げるスライダー。
高岡はまたも頷く。


( ><)『第3球目投げました、ボール! スライダー外れました』


(-_-)(……また、見られた。何を待っている?)


( ゚∋゚)『長岡くんはじっくりと狙い球を絞っていますね』

( ><)『そうですね。高岡は次なにを投げるでしょうか』


( ゚∋゚)『さあ、バッティングカウントからどう攻めるか……』


(-_-)(これ以上カウントを悪く出来ない。ストレートだ)


アウトローにミットを構える。
高岡が頷く。ボールが投じられる。


( ><)『打った! 打球は一二塁間へ!』


( ><)『一二塁間深い当たり! ファーストは捕れない!』

( ゚∋゚)『当たりが弱いから抜ければ1点ですよ』


('A`)(くっ……)


こちらにボールが飛んできた。
深いゴロ。取れるかはダイビングでも微妙なところだ。


('A`)「うおおっ!!」


決死のダイビング。
グラブの先に捉えた感覚があった。


( ><)『取った! 毒田ダイビングキャッチ!』

( ゚∋゚)『しかし……』

( ><)『ああっと一塁には投げられない。流石イースタン盗塁王。俊足ぶりを見せつけました』

( ゚∋゚)『でも毒田くんはナイスプレーですよ。ランナーを3塁に釘付けですから』


( ><)『さあ次のバッターは2番京橋。攻撃的2番として昨年チーム最多HRを放ちました』

( ゚∋゚)『今宮監督も思い切った采配をしますね』

( ><)『去年は30HRを放った大砲! さあ高岡抑えられるか!』

(-_-) (京橋か……厄介だな)

从 ゚∀从 (何から入る?)

(-_-) (今日はまだツーシームを使ってないな……それで行こう)

从 ゚∀从 (把握)


( ><)『さあバッター京橋でランナー1・3塁! 第1球投げ……あっと長岡スタート!』

( ゚∋゚)『いいスタートですよ』


(;-_-) (なに!?)


初球スチール。完全にノーマークだった。
長岡は2軍で盗塁王を獲得している。
その足は、驚異的な速さで2塁に向かう。


( ><)『さあ比木の肩と長岡の足の対決……あっと京橋スイング!』


(;-_-) 「!」

从;゚∀从 (バスターエンドラン!!)


長岡に気を取られなかった高岡の球はコースに決まる。
それは誤算だったのだろう、ボールは力なく転々とセカンドに転がる。


( ><)『バスターエンドラン! しかしこれは平凡なセカンドゴロ!』

( ゚∋゚)『……本塁は、間に合わんでしょう』


セカンドの毒田は一塁に転送。
しかしその間にゴロゴーしていた3塁ランナーが生還。
レールウェイズが2点目を取った。

V 0−2 RW


内野手陣がマウンドに集まる。


( ・∀・) 「今のはしょうがねえよ。ツーアウトだ。次の玉造は抑えてくれよ」

从 ゚∀从 「わーってるって」

('A`) 「すいません。せめて長岡をアウトにできてれば……」


ユニフォームを土で汚した毒田が申し訳そうに言う。
高岡はそれを返す。


从 ゚∀从 「ん、いいよ。別に期待してなかったし」

('A`)


(-_-) 「……おい」

从;゚∀从 「え? ち、ちげーよ! 俺が言いたいのは毒田が予想以上の働きをだな……」

('A`) 「よーし、パパこの4万人の前で舌噛み切っちゃうぞー」


( ><)『……なにか揉めてますね』

( ゚∋゚)『険悪なムードというわけではなさそうですが……あ、茂等君が毒田くんのこめかみを抑えています』

( ><)『いったい何なんでしょうか』

( ゚∋゚)『アクアリウム式の精神安定法じゃないでしょうかね』

( ><)『そうですか』


( ><)『今季アクアリウムフィッシュからトレードで入団した毒田。

      今日は1三振。しかし守備で光るプレーを見せています』

( ゚∋゚)『毒田くんも3割経験者ですからね。きっといいシーズンになりますよ』

( ><)『そうですね。期待しましょう。さあそれぞれ守備位置に入って再開です。

      2アウトランナーなおも2塁。バッターは3番玉造。パンチ力があります』


(-_-) (もう相手は小細工はしてこない。ねじ伏せる)

从 ゚∀从 (そうこなくっちゃ)


( ><)『さあ点を取られた後の高岡の第1球。

      ……ストライク! 見逃しの直球148キロ!』

( ゚∋゚)『いいボールですねえ。間違いなく今日1番の球ですよ』

( ><)『ピンチにこそピッチャーの真価が問われると言います。さすが20勝高岡!』


(-_-) (……いいボールだ)

从 ゚∀从 「……やっとエンジン掛かってきたぜ」


( ><)『2球目、投げました! ストライク! チェンジアップ空振り!』

( ゚∋゚)『今までと比べて腕が振れてますね』


(-_-) 「……」


( ><)『第3球目……投げた! 見逃し! 149キロストレート見逃し三球三振!

      高岡このピンチに三球三振! これがエースの真骨頂!』


( ゚∋゚)『しかし……今日の渡辺に対して2点は厳しい……』

( ><)『今日の渡辺、先頭打者を出しながらもバックに助けられ好投を続けています』

( ゚∋゚)『こういうときの渡辺は調子づきますからね。一筋縄ではいきませんよ』


そして3回裏。


8番、擬古、空振り三振。

(;,,゚Д゚) 「ごらぁ!」


9番、高岡、見逃し三振。

从 ゚∀从 「ま、しゃーねえ」


そして頼みのリードオフである茂等もサードゴロに倒れた。

( ・∀・) 「……チッ」


そして4回表の先頭打者。


从;゚∀从 「!」

(;-_-) 「くっ……」


フルカウントまで粘られ、痛恨のツーベースを浴びる。


( ><)『また高岡は甘いボールが行きましたか? 鳥谷さん』

( ゚∋゚)『……そうですね。今日は制球に苦しんでますね』

( ><)『普段はコントロールがいいんですが……心配です。

      さあ得点圏にランナーを貯めて迎えるは故障の小和田に代わって池沼!』


(^q^)「花は桜木男は池沼。少年老い易く学成り難し。一寸の光陰軽んずべからず」


( ><)『この池沼、ランナーなしの場面では打率.071。

      しかしランナー有りでは3割を超え、さらに得点圏では4割を超えます』


(;-_-) 「やっかいだな……」

(^q^)「野球とは”日々勉強” ”日々精進” ”学而不思則罔、思而不学則殆”」


从 ゚∀从 (関係ねーよ。6割は打ちとれんだ)


( ><)『1球目ストレート、見送ってワンストライク』


(-_-) (ランナーがいなけりゃ怖くもなんともないんだが……)


ミットをアウトローに構える。球種はシュートだ。


(-_-) (ショートにゴロを打たせる。右打者の膝元だ)

从 ゚∀从 (おk)


( ><)『高岡第2球……投げた。シュート! 見逃してボール!』


(-_-) (1−1……もうひとつストレートを入れるか)


从 ゚∀从 (ストレート……)


( ><)『第3球投げました』


(^q^)「うぃくwwwwww」

(;-_-) 「!?」


池沼がバットを出す。
しかし少しタイミングが遅れたのかボールは1塁スタンドに向かう。


( ><)『ファールボールです』

( ゚∋゚)『ストレートを待っていたと思うんですけどね。それでも振り遅れましたね』


( ><)『さあ2−1、追い込みました』

( ゚∋゚)『何を投げてくるんでしょうかね』


(-_-) 「……」

从 ゚∀从 「……」


( ><)『さあセットポジションに入って第4球。投げた!』


(^q^)「!」


インハイの150キロ近いストレート。
思わずバットを出す。


(^q^)「うひwwwwwwwwwwwツーシームれすたwwwwwwwwwww」


( ><)『打ちました、平凡なショートゴロ、セカンドランナー動けず。茂等が捌いて1アウト』

( ゚∋゚)『今のは……少し変化しましたね。ツーシームですか?』

( ><)『インハイのツーシームですか。危ない球ですが』


( ゚∋゚)『そのボールだけを見ると危ないですけどね。直前にアウトローの直球を見せたのが大きかった』

( ><)『なるほど、思わず手を出すことを見抜いていた、というわけですか』

( ゚∋゚)『それを見越しての微変化というわけでしょう』

( ><)『さあ、最も危ないバッターをやり過ごしました。1アウトランナー2塁』


結局高岡はこのピンチを乗り切る。
ホームランを打たれた安孫子をレフトフライ。
その間にタッチアップでランナーは3塁へ。
しかし7番天王寺をセンターフライに打ち取りスリーアウト。


( ゚∋゚)『高岡は苦しいピッチングですが、なんとか持ちこたえていますね』

( ><)『そうですね。次は4回裏、2番毒田からの攻撃です』


('A`) 「……」


攻めあぐねている。それが結論だ。
渡辺の緩急をつけたピッチングにあの茂等さんですら手玉に取られている。


( ><)『さあ、渡辺ここまでわずか被安打2。先ほど三振に取った毒田を打席に迎えます』

( ゚∋゚)『さっきはバント失敗の末の三振ですからね。この打席が実質初打席ですよ』


('A`) 「……」


狙い球は何に絞ろう。
スローカーブは自分には恐らく打てない。
だったらスクリューか、シュートか。


('A`) 「……決めた」


今まで見た感じ、初球は大体スローカーブから入ってくる。
それを狙い打つ。とはいえ普通では駄目だ。


『2番、セカンド、毒田』


観客席が湧く。ファンの皆さんを放さないためにもここらで結果を出したい。


( ><)『さあ、毒田が右打席に入ります。渡辺がプレートを踏んで、振りかぶって、投げた!』


('A`) (初球!)


初球はやはりスローカーブ。
それを確実に捉えるためには……これしかない。


( ><)『あっと毒田スローカーブをセーフティバント!』


それを見て三塁手と投手と一塁手が前に出てくる。
それを見逃さない。


( ><)『あっと、プッシュバント! 三塁手の横を抜ける――!!』


( ><)『しかしショート長岡のカバーが速い! 転がったボールを素早くキャッチ!』


(;'A`) 「! ……くそっ!」


俺は特に脚が速いわけではない。
プッシュバントは相手の虚をつかないと成功しない。
しかし長岡には読まれていた。
全力で走るが間に合わないだろう。


普通なら。


( ><)『長岡送球が大きい――!!』


('A`) 「! ラッキ!!」


長岡の送球が大きく逸れた。
ボールはファールグラウンドを転々と転がる。
その間に俺は2塁を陥れた。


( ><)『記録はヒットと長岡のエラー。毒田は2塁を陥れました』

( ゚∋゚)『良くないですねえ……毒田くんはさほど足が速いわけじゃない。それほど慌てなくても、という感じでしたね』

( ><)『そうですね。ランナーは2塁ノーアウト。バッターは三番魔将です』


J( ゚_ゝ゚)し 「魔空間の出番やで!」


( ><)『さあ魔将は見逃し三振に倒れて1アウト2塁バッターは先ほどツーベースを打った宝』

( ゚∋゚)『彼は期待できますよ』


( ^Д^) 「……」


今までなかなか崩れなかった渡辺。
しかし毒田の奇襲でそれがこじ開けられようとしている。


( ^Д^) (ここで打たなきゃ4番じゃねえよな)


素振りを重ねる。
打席に入る。2塁上の毒田を見た。


('A`) 「……」


(;^Д^) 「……なにしてんだあいつ」


ショートの長岡を怨嗟の目つきで見つめている。
同じ高校出身ということだが何かあったのだろうか。


从'ー'从 「……」


第1球はスライダー。ストライクを取られる。
2球目はチェンジアップ。空振りをしてしまう。


( ><)『渡辺あっさりと追い込みました』

( ゚∋゚)『さっきの打席はカットされてのツーベースですからね』

( ><)『なるほど、早めに追い込んだ、と』

( ゚∋゚)『そういうことです』


3球目はアウトコースに大きく外れるストレート。
4球目も見せ球のシュートだ。


(;^Д^) 「ちっ……」


散々泳がされている感じだ。
相手のペースに飲まれている。


( ^Д^) (せめて……右方向に……)


セカンドの深い所に転がせば毒田は3塁に行くだろう。


( ^Д^) 「!」


5球目。インコースの辛い所へのストレート。


(;^Д^) (渡辺がストレート勝負だと!?)


なんとか肘をたたんで叩きつける。
ボールは大きくバウンドしてサードへと向かう。


( ><)『宝打った! 大きなバウンド!』

( ゚∋゚)『これは内野安打じゃないですか』

( ><)『サードが取る、サード京橋は強肩! ファーストに転送、アウト!

      しかし2塁毒田はその間に3塁へ!』

( ゚∋゚)『最低限の仕事ですね』


『5番、キャッチャー、比木』


( ><)『さあ得点圏にランナーを置いてバッターは比木。先ほどは四球を選んでいます』

( ゚∋゚)『比木は怖いバッターですからね。後ろが朴なのでフォア覚悟の厳しいコースを突いてきますよ』


その通り渡辺はボール覚悟の厳しいコースを攻める。
1−2からスライダーが抜けて1−3になった時、動きがあった。


( ><)『キャッチャー天王寺立ちました。歩かせます』

( ゚∋゚)『一発で逆転ですが……朴なら抑えられる、ということでしょうか』


<ヽ`∀´> 「……」


ネクストサークルで歩かされる比木を見る。
今日比木は2四球。なぜか。後ろに“安パイ”の自分がいるからだ。


<ヽ`∀´> 「なめるな」

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