【第12話:馬鹿と天才、紙一重】





( ^ω^)「ペニサスの元気が無い?」

( ・∀・)「そうなんだよー。
      なんか、覇気がないっていうかさ・・・・・・」

昼食時の他愛ない話題の中の一つだった。
それにも関わらず、モララーは真剣そのものだった。


( ^ω^)「いつも通りに見えるお?」

( ・∀・)「僕のお弁当をつまみ食いしなかったんだよ!
      自前のお弁当以外に、購買で買ったりもしてなかったし・・・・・・」

( ^ω^)「世間では、それを正常に戻ったと言うんだお」

( ・∀・)「きっと、何かあったに違いないんだよ・・・・・・」

腕を組み、ぶつぶつと唱え始めた。
内藤の言葉など、まる耳に入ってはいない。

( ^ω^)(自分から話題をふったくせに・・・・・・)


( ・∀・)「そういえば、何で屋上行かないの?」

( ^ω^)「・・・・・・行く必要が無くなったんだお」

( ・∀・)「どういうこと?」

( ^ω^)「別に何でもないお。
     ただ、何ていうか・・・・・イラッときたというか・・・・・・」

先ほど、内藤が屋上へと階段を上っている最中の事だった。

携帯の振動に気付き、開いたところドクオからの一通のメール。
添付された画像には、ミルナとドクオとジョルジュが仲良く食事をとっている風景。
本文には『ドクオ☆一人でもやれば出来る子(≧▼≦)』

携帯を閉じると、内藤は迷わず、もと来た道を引き返した。


( ^ω^)(あっ、なんかまた殺意の波動が・・・・・・)

( ・∀・)「どうしたの?」

( ^ω^)「いや、何でもないお」


( ^ω^)「そんなことより、ペニサスのことだお!
     モララーが言うからには、きっと何かあったんだお!」

ポケットに入った携帯の電源を切り、一時的に記憶を消し去る。
取り繕うように、内藤は捲くし立てて話した。

( ・∀・)「うん、多分なんかあるんだよなぁ・・・・・・。
      心配だな・・・・・何があったのかな・・・・・・」

( ^ω^)「ふーん、そんなに心配なんてモララーはペニサスの事が好きなのかお?」

( ・∀・)「・・・・・・え?」

( ^ω^)「・・・・・・え?」


(;・∀・)「・・・・・・ええっ!!そそそそ、そんな事ある訳ないじゃないか!!
      僕が、そんな、ペニサスちゃんの事を・・・・・すすす、好きだなんんて!!
      ありえない、ありえない!!
      ブーンがフェルマーの最終定理を証明するより無いことだって!!
      馬鹿な事言っちゃいけないよー!!変な事言うんじゃないよ!!
      冗談にしてもつまらないよ、100点満点で0点だよ!!
      暑さで頭がおかしくなっちゃったんじゃないの??あははははは!!」

教室中に響き渡るモララーの笑い声。
にも関わらず、他の者は誰一人として笑みを溢さなかった。


( ^ω^)「・・・・・・・・・・・・」

( ・∀・)「あはは!!あはは・・・・・・」

( ^ω^)「・・・・・・・・・・・・」

(;・∀・)「・・・・・・・・・・・・」


( ^ω^)「暑さで頭がおかしくなったのは、お前の方だお」

(;・∀・)「はい・・・・・すいません」

モララーの不健康な肌は、あっという間に赤く染め上がる。
頬についているご飯粒が、場違いに白を強調していた。

( ^ω^)「そうかお・・・・・冗談のつもりだったのにねぇ・・・・・。
     まさか、モララーがあの暴力女を好きだなんて・・・・」

(;・∀・)「言わないでよ?言わないでよ?」

( ^ω^)「どうしようかなー?」

にたにたと笑顔を浮かべる者と、俯くばかりの者。
傍から見れば、いじめの風景に見えないことも無い。


( ^ω^)「僕としては止めた方が良いと思うお。
       あんな暴力しか脳の無いような、がさつな女」

( ・∀・)「えと・・・・・そういう所が好きって言ったら?」

( ^ω^)「・・・・・・へ?」

( ・∀・)「僕は女の子っぽいってよく言われるから・・・・・・。
      ペニサスちゃんは男の子っぽいってよく言われるじゃない?
      だから、釣り合いがとれるっていうか・・・・・・」

恥ずかしげに語るモララーを内藤は直視出来なかった。
言葉に出来ない、甘酸っぱさを感じてしまったのだ。


( ・∀・)「ペニサスちゃんはカッコイイよね。
      運動も出来るし、大勢の前でも自分を曝け出せるし」

( ^ω^)「モララーの勉強だって、尊敬出来るものだお?」

( ・∀・)「・・・・・男の子なら、スポーツマンに憧れるものだよ」

その気持ちは分からないものではなかった。
内藤もその昔、カバディの選手になりたいと夢見た事があったからだ。


( ^ω^)「でも、男がカッコイイ女に憧れるってのは良いのかお?」

( ・∀・)「うん、今時の男は軟弱だから」
     
( ^ω^)「自分で言うなお」

その後も、モララーのペニサス語りは続く。
戦隊物に憧れる小さな子供を彷彿とさせる興奮具合だった。

内藤は聞き流していたのは言うまでも無い。


(*・∀・)「それでね、それでね!」

( ^ω^)「・・・・・・そろそろストップして欲しいお。
       というか、そんなに好きならデートの一つでも誘ったら良いお」

(#・∀・)「そんな事、出来る訳ないじゃない!」

( ^ω^)「いや、ここは怒る場面じゃないお」


( ^ω^)「なんなら、僕がとりもってあげるから・・・・・・」

( ・∀・)「いやぁ、でも・・・・恥ずかしいし・・・・・。
      僕なんかと二人っきりじゃ、つまんないだろうし・・・・・・」

( ^ω^)(自分が迷ってる時は大して気に留めなかったけど、あれだお。
       うじうじしてる男って、本当に情けなく見えるものだお)

また一つ、内藤は大人の階段を上る。



そんな時、教室の扉がガラリと開く。
現れた人物に、内藤は良いタイミングだと心の中で笑った。

('、`*川「おいーっす!
     昼練なんて無くなれと、切に願うペニサス様のおかえりだよー!」

ペニサスは相変わらず、女らしさの欠片も見せていない。
大股で歩き、手に持った500mlの飲料を一気に飲み干した。

( ^ω^)(カッコイイというか、野蛮人だお)


('、`*川「内藤、今なんか失礼なこと考えたでしょ?」

(;^ω^)「な、何の事だお!」

('、`*川「分かる、私には分かるぞ!!
     貴様が私の事を野蛮人だとか考えていることが!!」

(;^ω^)「な、何故そのことを!!」

('、`*川「声に出てるんだよ、豚野郎おおおおおおおお!!」

教室中を駆け回る鬼ごっこにも関わらず、生徒達の反応は冷静なものであった。
それどころか、机を端に寄せ邪魔にならないようにするわ、応援をするわ。
この光景が日常茶飯事だという事が、容易に理解出来た。


( ・∀・)(いつもは素直に楽しめるんだけどなぁ。
      一回、自分の気持ちに素直になると・・・・・・)

『ちょっと、嫉妬しちゃうかな』

そんな考えは、内藤に失礼だとモララーは頭を大きく振って、振り切った。


('、`*川「地獄の閻魔に出会う覚悟はオーケー?」

(;^ω^)「死ぬ事だけは確定ってのは勘弁してもらいたいお・・・・・・」

教室の隅っこに追い詰められた内藤に逃げ場は無かった。
周囲からは止めを願う生徒達の、熱烈な視線が注がれている。

( ^ω^)(考えろ、この場を脱出する方法・・・・・・)

( ^ω^) ピコーン!


( ^ω^)「モララーが大事な話があるって言ってたお!
       休み時間が終わる前に、話を聞いてあげた方が良いんじゃないかお?」

('、`*川「モララーが・・・・・・?」

ペニサスが振り向いた一瞬の隙を突いて、内藤は逃げ出した。
脱兎の如し速度には、流石のペニサスも追いつけない。

舌打ちの音が、そこかしこから聞こえた。


(;・∀・)「えっ、ちょ、何言って・・・・・・!!」

( ^ω^)b「じゃあ、僕はやっぱりドクオの所に行くから!
        さっきの打ち合わせ通りに上手くやるんだお!」

立てられた指は、逆さの方が現状に適しているのではないか。
モララーがそんな考えを浮かべるている内に、内藤の姿は消えてしまった。


('、`*川「馬鹿だよな・・・・・どうせ、休み時間が終わればここに戻るのに」

( ・∀・)「あはは・・・・・そうだね」

('、`*川「で、話って何よ?」

(;・∀・)「・・・・・・・・あっ・・・・・と・・・・・・」


( ・∀・)(ここで勇気を振り絞らないでどうする、モララー!
      男だろ!軟弱キャシャリン何て呼ばれても男なんだろ!!
      今ここでやらないんだったら、いつやるんだよ!!
      行動を先延ばしにするんじゃない、明日って今だろ!
      たった、一言、簡単なその言葉を言ってしまえば全部終わるじゃないか!
      この手に掴め、幸福という名の二文字の花。
      見事、咲かせてご覧になりませう!)

その思考にかかる時間、僅か0.001秒。
人智を逸した集中力は、追い詰められた兎が発するものである。


( ・∀・)「ペニサスちゃん!」

('、`*川「何よ?」

( ・∀・)b「今日デート行こうぜ!」

モララーがウインクをすると、爛々とした瞳に浮かぶ無数の星達。
輝きが膨れ上がり、今にも流星となってペニサスに降り注ぎそうな。

そこに、普段の内気な少年の姿は無かった。
いや、指を天を刺すかのように突き立てる彼を同一人物と思うのが至難というもの。
静止した時が、何よりもそれを表していた。


('、`*川「えーっと・・・・・・何だって?」

( ・∀・)「おいおい、冗談はよしてくれってばぁ!
      シャイボーイな僕の精一杯の勇気を台無しにしちゃうつもりかい?
      ヘイヘイ、彼女、お茶いこうぜぃ!」

モララーは腰を振り、妖艶な雰囲気を醸し出しながら踊りだす。
パチパチと手を叩き、周りのものを誘うかのように軽快なリズムを刻む。
これも、彼なりに考えた、警戒心を失くす術なのである。

そして、どこかの誰かを彷彿とさせるてんぱり様だった。


( ・∀・)(のってきた、今の僕なら空だって飛べる!!)

そんなダンスもクライマックスを迎え、彼は机の上に意気揚々と飛び上がる。
かと思えば、そこから飛び降り、ペニサスの目前にまで迫るのだ。

( ・∀・)「今日は僕と一緒にオールナイトフィーバーだぜぃ!!」

膝をつき、両手を大きくペニサスに掲げた。
それは白鳥や、孔雀の求婚を模倣しているのだろう。
背景に薔薇を散りばめたくなる程、彼のテンションは最高潮であった。

のだが。


('、`*川「・・・・・・・・・・・・」

ペニサスの反応は冷たいものであった。

モララーの事を養豚場の豚を見るかのように見下し、溜め息を吐く。
しかしながら、彼の普段の姿を知るものなら当たり前の反応ではあった。



( ・∀・)「・・・・・・・・・・・・」

('、`*川「他に言うことは?」

( ・∀・)「えーっと・・・・・すいません」

('、`*川「よろしい」

自身の愚行に気付き、モララーは頭を掻き毟る。
焦りに悩ませれば、美しいその顔も見事に台無しとなっていた。

(;・∀・)(やってしまった、やってしまった!
      自分でも信じられないくらい、自分の事を見失ってしまった! 
      ペニサスちゃんの目が、氷よりも冷たく感じちゃうよ!
      それどころか、周囲の視線でエターナルフォースブリザード状態だよ!
      極寒の地で一人、裸同然の状態の僕は一体どうなってしまうのかぁああああ!!)

脳内実況に身を任すモララー。
当然、問題の解消には何の意味もなさない訳であるのだが。


( ・∀・)「許してちょんまげ!」

('、`*川「良いよ、デートしようよ」

( ・∀・)「・・・・・・え?」

渾身のギャグはスルーされたものの、モララーは耳を疑った。


( ・∀・)「パードゥン?」

('、`*川「だから、デートしようぜって言ってるのよ。
     今日は丁度、放課後の部活は休みだから暇してる訳。
     ・・・・・・あ、出来ればお金はアンタ持ちだと嬉しいかなぁ、なんて」

(*・∀・)「やったああああああああああああああ!!」

話を最後まで聞き遂げることもなく、モララーは歓喜に震える。
ペニサスは奢りの件を了承したのだと、勝手にそう受け取った。


('、`*川「放課後までに何するか考えとけよー。
     暇させたら、承知しないかんなー!」

( ・∀・)「もちろん、最高の一日に仕立て上げるよ!」

その言葉を言い終えると、タイミング良く予鈴のベルが鳴った。
ペニサスは何を付け加える訳でもなく、自分の席に戻っていった。


( ・∀・)(デートコースかぁ・・・・・・どうしようかなぁ)

行き当たりばったりで決まった事なので、行く当てなど無かった。
それどころか、デートなど初めてのだったのでモララーは頭を悩ませた。

そして、考えつく。
つい最近、デートの話を聞いた覚えがある事を。

( ・∀・)(会長に話を聞いてみよう!)

誰も、それを止めることが出来ないのが悔やまれる。


外はいまにも雨が降り出しそうだった。




重厚な雲、空を灰色に染め、気分が滅入りそうになる。




それにも関わらず、モララーは放課後の予定に心を寄せ、顔を綻ばせていた。





【第十二話:おしまい】

前のページへ] 戻る [次のページへ