【第20話:絶対奴隷宣言】
ξ///)ξ「付き合ってください・・・・・・」
少女の言葉が、世界を薔薇色に染め替えた。
甘酸っぱい青春の香り、思わず蝶が誘われてきそうな。
もじもじと体をくねらせた少女は、返答を今か今かと待ちわびている。
俯いた視線を、時折、チラチラと動かし、相手の様子を伺っていた。
手は前方で組まれている。典型的な内気な少女というものを装っていた。
もっとも、彼女の本性を知っている者がいるのであれば、今の事態が有り得ないことだと分かりきっている。
しかし今は、この事態を作り上げる理由がある為、誰もこの異常を止めることなど出来ない。
そう、物陰から隠れて様子を伺っている男達も、例外ではない。
2人の男達と、少女が見守る最中。
告白を受けた幸せ者の返事と言えば。
('A`)「ごめんなさい」
ξ;゚听)ξ「これからよろし・・・・・・ってはあああああああああああああ!??」
それは、あまりにも予想外なもので、少女の絶叫は天を裂く勢いだったという。
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・
事の発端と言えば、少女――ツンが発した些細な言葉だった。
ξ゚听)ξ「あー、なんかパシリが欲しいわね」
( ゚∀゚)「・・・・・・は?」
実際はと言えば、それは些細な、で、片付けられるものではなかった。
ポツリと、独り言のように言われた言葉を、ジョルジュは思わず聞き返した。
( ゚∀゚)「そうだな・・・・・・うん、聞き間違いかもしれないもんな。
ツン、お前さぁ、今なんて言ったんだ?」
ξ゚听)ξ「パシリが欲しいなーって。
最近、暑いからさー。いつでもアイス買ってきてくれるような奴がいると便利じゃない?」
なんとも無茶苦茶な理由であった。
その場にはジョルジュの他に、内藤とミルナもいたのだが、例外なくツンの頭を疑った。
( ゚∀゚)「あのな・・・・・お前の性格が悪いっていうのは俺も重々承知だ。
だが、ほぼ初対面のブーンがいる前で、そういうことを言うのは・・・・・・」
ξ#゚听)ξ「何よ、私がアンタの家に来たときに、たまたまコイツらが居たのが悪いんでしょ。
大体、性格が悪いっていうのは、ちょっと聞き捨てならないわね!!」
性格が悪いというのを聞き捨てなら無いと言った前の言葉を、よく繰り返してもらいたいものだ。
そうすれば、どうして性格が悪いと言わざるを得ないのかを、納得してくれるものなのに。
と、3人の男が同時に思ったのは、当然の様に同じタイミングだった。
(;^ω^)「何ていうか、その、パシリなんて良くないと思うお・・・・・・」
ξ゚听)ξ「そうかしら?アンタなんか、むしろ適任にすら思うんだけど?」
上から下まで舐め回すかのようなツンの視線。
内藤は背筋に悪寒が走るのを感じ、ミルナの後ろに隠れるのであった。
( ゚д゚ )「ええい、ブーンの事を脅えさせるんじゃない!
ただでさえ、外見が恐ろしいものであるというのに・・・・・」
ξ゚听)ξ「黙れよ、この堅物真面目地味男」
( ;゚д゚ )「な、なんだと・・・・・・!!」
片や、金髪にピアス、整った顔立ちではあるが、今時の女子高生の象徴の様な少女。
片や、坊主頭に、いつでも仏頂面を浮かべた、昭和の時代に居ても可笑しくない様な青年。
同じ空間に居るのが不思議なほど、彼らの風貌は相反するものであった。
( ゚∀゚)「待て待て、一旦、話を戻そうじゃないか。
・・・・・・で、パシリが欲しいっていうのは本気なのか?」
ξ゚听)ξ「もちろん、出来ればアンタ達にやって貰っても良いよ?」
3人は同時に首を振った。
先ほどから、男達の結束は固まってくばかりである。
( ゚∀゚)「そらまぁ、お前は外見『だけ』なら良いからなぁ。
釣られる男だっているかもしれないけど・・・・・・」
( ゚д゚ )「確かに『外見は』認めざるを得ないな。
最近の軟弱な男なら、ひょいひょいついて来てくれるかも・・・・・・」
( ^ω^)「うん、がいk」
ξ#゚听)ξ「アンタまで、外見だけが良いみたいな事を強調したら、ぶん殴るわよ」
内藤がツンに抱く畏れは、天井無く増していくばかりだった。
さほど親しい間柄でもないのに、ここまで色々と脅されれば、当然でもあるのだが。
ξ゚听)ξ「とはいえ、流石の私もそう簡単に相手が見つかるとは思ってない訳。
だから、アンタ達に良い感じの男がいたら、教えて欲しいと思ったんだけど」
( ゚∀゚)「そんな軟弱な知り合いはいな・・・・・・」
そこまで言って、ジョルジュは口を濁らせた。
不本意にも、そんな軟弱な奴が、脳裏に浮かんでしまったからだ。
また、ミルナと内藤もそんな知り合いがいる事に気付いた。
ξ゚听)ξ「なになに、もしかして心当たりあるの?
よっしゃ、早速ソイツの名前と電話番号と住所と写真を頂戴」
(;゚∀゚)「い、いやいや、俺は友を裏切る様な真似はしないぜ?」
(;^ω^)「そうだお、それにアイツはそんなにパシリを甘んじて受けるような情けない男じゃないお!」
( ;゚д゚ )「まったくだ、いくらドクオ君と言えども、そこまで腑抜けては・・・・・・」
ジョルジュと内藤はミルナを押さえ込む様に飛び掛り、口を押さえた。
しかし、それは既に後の祭りというか、手遅れである。
ξ゚听)ξ「ふーん?ドクオ君って言うんだ・・・・・・。
あ、もしかして、この前の終業式の日にいた華奢なヤツじゃない?」
(;゚∀゚)「ま、まさか、そのようなことは・・・・・・」
ξ*゚听)ξ「当たりか、よしよし」
ツンはうろたえる男達を前に、ジョルジュの携帯をいじくりだした。
中身を見られることに抵抗は無いが、まさかと思ったジョルジュが尋ねる。
(;゚∀゚)「お前、もしかして・・・・・・」
ξ゚听)ξ「うん、その通り・・・・・・転送完了っと」
ツンは、自分の携帯とジョルジュの携帯を同時に操り、赤外線通信を行っていたのである。
当然、行き来したデータが何かと言えば、ドクオのプロフィールである。
そこには名前、住所、アドレスに電話番号、果てには写真や誕生日すら載っていた。
(;^ω^)(なんと手際の良い犯罪者・・・・・・)
ξ゚听)ξ「そこで何か言いたげなヤツ、黙ってた方が身のためよー。
さて・・・・・0*0-****-****・・・・・っと」
ツンは何者かに電話をかけ始めた。
その番号は、言うまでも無くドクオのもので、電話の先にいるのも彼であることに他ならない。
あまりの行動力に、絶句するばかりである。
ξ゚听)ξ「よし、約束は取り付けた。
早速、告白しに行ってくるわー」
(;゚∀゚)「ちょちょ、ちょっと待つんだ!!
お前は一体、何をして何をする気なんだ!?」
ξ゚听)ξ「頭悪いわねー。
そんなの決まってるじゃないの」
彼女が言うには、こういうことである。
いきなり、パシリになってくれと言っても、恐らくそう簡単にはいかない。
なので、初めは普通の恋人として過ごし、普通に奢ってもらう。
既に、この時点で何かがおかしいのだが、彼女の作戦はさらに続く。
果てには自分にメロメロになった男は、色々と奉仕したいと思うはず。
その心につけこんで、貢いで貰ったり、命令を聞いてもらう様にする。
そして最終的には完璧な主従関係を作る、だそうだ。
まるで穴だらけの作戦、それも悪魔的なものである。
それをツンは自慢げに語るものだから、やはりジョルジュは、これまでに幼馴染以上の関係を築かなくて良かったと安堵した。
ξ゚听)ξ「んで、今、そこの公園に来るように呼び出したからさー。
ちょっくら騙しに・・・・・じゃなくて告白にいってくる」
( ;゚д゚ )「なななななな、なんと破廉恥な!
恋人というものはだな、もっと神聖で清らかなものであると・・・・・!」
ξ゚听)ξ「うっさいわねー、そんなんだからいつまで経っても彼女が出来ないのよ。
今時の女子高生が求めるのは、適度なスリルと便利さと、楽しさと格好よさ。
アンタみたいな時代遅れの武士は、色恋沙汰に関わんないで、部活でもやってなさい」
ミルナは、何も言い返せなかった。
それどころか突然、立ち上がり、ジョルジュの家を飛び出していった。
窓の外からは、いかにも悔しそうな男の叫び声が轟いていたという。
(;^ω^)(う、うわー)
ξ*゚听)ξ「アンタ達も見てなさいよー、私の究極恋愛テクを見せてやるわ。
待っててねー、愛しのドクオ君☆」
ツンはドクオが映し出されている携帯の液晶に、軽くキスをした。
それは本来なら、恋する乙女の可愛げな行動だったのかもしれない。
しかし、その場に残された二人の男には、どうしても、不気味なものとしか思えなかったのであった。
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・
こうして、ツンはドクオに告白をした。
その結果は、皆の想像を裏切り、失敗に終わったのである。
ツンは煮えたぎる怒りを抑えて、ドクオに別れを告げた。
そして、その怒りの矛先は、物陰から見守っていた内藤とジョルジュに向けられたのであった。
ξ#゚听)ξ「どういうこと!?なんで私がふられてるの!?
意味分かんない、アイツはひょっとしてソッチ系の人なの!?」
(;^ω^)「いや、ドクオは普通に彼女を欲しがってたお・・・・・・」
ξ#゚听)ξ「なら何で!?完璧にああいうタイプが好きそうな女の子を振舞ったっていうのに!!
私が振られる要素なんて、これっぽっちもないじゃない!!」
振舞う以前に、その外見では全てが台無しである。
ジョルジュはそう思ったものの、火に油を注ぐ気は無かったので、口を閉ざしていた。
ξ#゚听)ξ「畜生、あんなヤツに振られるなんて、私の人生最大の屈辱だわ!
私みたいな女に告白されて、本来なら、自慢してもいいくらいなのに!!」
(;゚∀゚)「と、とりあえず落ち着けって・・・・・・」
ξ#゚听)ξ「落ち着け!?これをどうして落ち着いていられようか!!
私の怒りは竜の逆鱗を越えた、スーパーサイヤ怒りよ!!」
ああああもう、自分でも意味が分からないよおおおおおお!!」
発狂とは、このことなのであろうか。
ツンは、まるで考えていなかった事態に錯乱し、泣き叫んでいた。
その声の大きさと言ったら、雷鳴の如く響くもので、近隣の人が窓から顔を覗かす程であった。
ξ;凵G)ξ「うわあああああんん!!始めての告白だったのにいいい!!
なんで、なんでなのよおおおお!!」
(;^ω^)「は、初めてだったのかお!?」
ξ;凵G)ξ「悪いか!!何だかんだ言ってたけど、処女だし、キスだってしたこともない!
それどころか男の子と付き合ったことだって、今まで一度もないんだああああ!!」
内藤は、途端にツンが可愛く思えてきた。
しかし、こんな町中でそんなことを叫ばれたら、弱ったものである。
( ゚∀゚)「まぁまぁ、たった一回振られただけじゃないか。
もしかしたら、よく知らないから戸惑って断っただけかもしれないした。
これから、振り向かせるようにすれば・・・・・・」
ξ;凵G)ξ「言われなくても、そうするわよ!!」
ジョルジュは、やれやれと首を振り、ツンをなだめていた。
鼻をぐしゅぐしゅと鳴らした後、ツンは眼光を元の鋭いものへと戻す。
流石、幼馴染と言うべきである。
ξ#゚听)ξ「見てなさいよドクオ・・・・・!
今度はアンタの方から告白させてやるんだから・・・・・・!!」
ツンはガッツポーズを掲げて、誓いを立てる。
立ち直りが早いのは、サバサバした性格が幸いしてなのだろう。
ξ#゚听)ξ「そして、今度こそパシリにするんだからね!!」
( ^ω^)(あ、そこは変わらないのかお)
( ゚∀゚)「まぁまぁ、たった一回振られただけじゃないか。
もしかしたら、よく知らないから戸惑って断っただけかもしれないしさ。
これから、振り向かせるようにすれば・・・・・・」
ξ;凵G)ξ「言われなくても、そうするわよ!!」
ジョルジュは、やれやれと首を振り、ツンをなだめていた。
鼻をぐしゅぐしゅと鳴らした後、ツンは眼光を元の鋭いものへと戻す。
流石、幼馴染と言うべきである。
ξ#゚听)ξ「見てなさいよドクオ・・・・・!
今度はアンタの方から告白させてやるんだから・・・・・・!!」
ツンはガッツポーズを掲げて、誓いを立てる。
立ち直りが早いのは、サバサバした性格が幸いしてなのだろう。
ξ#゚听)ξ「そして、今度こそパシリにするんだからね!!」
( ^ω^)(あ、そこは変わらないのかお)
こうして、一人の少女の片思いが始まった。
彼女は、男を振り向かせる為に様々な行動を起こすのであろう。
負けない。
諦めない。
挫けない。
最後には勝利が待っていると信じて。
全ては、自分専用のパシリを作るために。
【第20話:おしまい】
[前のページへ] 戻る [次のページへ]