【第21話:ラブハリケーン】
(*゚ー゚)「ほうほう、またそんな面白事件が・・・・・・」
(;^ω^)「こっちは若干、笑い事じゃすまなかったお・・・・・・」
毎日のように、そして今日も、内藤は美府公園へと足を運ばせる。
その理由は、勿論、しぃに会うためであり、半ば日課にもなっていた。
もっとも、ここに来るのが彼にとって、一日で一番の楽しみではあるのだが。
(*゚ー゚)「本当に、話題の尽きない友達だよね。
のんびり、なんて言葉とは縁の無い人たちって感じ」
( ^ω^)「うーん、でもまぁ、僕にとっては、しぃちゃんが癒しみたいなものだから・・・・・・」
(*゚ー゚)「・・・・・あ、嬉しいな」
何も知らない人が見たとするならば、二人は恋仲、いやバカップルにすら見えるだろう。
だというのに、二人の仲は幾ら日数を重ねようとも進展することは無かった。
(*゚ー゚)「私もブーン君といる時は楽しいから好きだよー」
( ^ω^)それはどうもだおー」
何故、二人の仲が進展しない理由は簡単である。
両者共に、まだまだ大人に成りきれていないところがあるのだ。
好きという感情が、もしかしたら、この二人の間にはあるのかもしれない。
だが、今の、ぬるま湯に使っている状態で満足しきっているのが現状である。
頭上の太陽の様な激しさは、期待できそうも無い。
( ^ω^)・・・・・・そういえば、しぃちゃんは普段は何をしてるんだお?」
(*゚ー゚)「ん?そりゃあ、本を読んだり、本を読んだり・・・・本を読んだり?」
それは以外にも、内藤が初めて問いかけた質問であった。
普段は自分の事を話してばかりで、しぃの日常の話をすることなど、なかったのだから。
(;^ω^)「本を読んでるだけじゃないかお」
(*゚ー゚)「あはは・・・・・・後はお昼寝したりしてるかな。
実は、ブーン君が来るまでは暇で暇でしょうがないんだよね」
なら、この場所にいない時はどうなのか?
そういった質問が内藤の脳裏を掠めたか、言葉にすることは無かった。
立ち入らないほうが良い、複雑な事情があるかもしれないと思った。
もしかしたら、何か力になれるかもしれないが、彼女が自分から言い出すまでは聞かないのが得策だと考えた。
しぃが、自ら口に出さない限りは、自分も無責任な詮索はしない。
それよりも、彼女が今、楽しく笑っていてくれればいいかと、そういう結論を出したのであった。
( ^ω^)「んー、もうちょっと早く来れるようにするおー」
(*゚ー゚)「いいよー、全然気にしなくってさ。
今だって、十分すぎるくらい来てくれてるんだしね」
( ^ω^)「・・・・・・そうだ!今度、僕の友達と遊んでみないかお?
きっと、しぃちゃんなら仲良くなれるし、話を聞くだけよりずっと楽しいと思うお!」
(*゚ー゚)「んー、そうだね・・・・・楽しそうだね」
しぃはどこか困ったような表情を浮かべていた。
本当はそうしたいんだけど、何か事情があって駄目なのか、まるで迷っているかのように。
(*゚ー゚)「・・・・・うん、機会があったら、是非ともお願いしたいかな」
( ^ω^)「そうかお!今度、皆に聞いてみるお!」
内藤は嬉しくもあり、同時に後悔もした。
ここにいれば、しぃは自分だけのものであるかのような、そんな独占欲が生まれたのだ。
もっとも、そんな人を物の様に考えた自分に、自己嫌悪も浮かんだのだが。
(*゚ー゚)「・・・・・でもさぁ、さっきの女の子は凄いね。
告白なんて、勇気がいることをそんな簡単にやっちゃうんだから」
( ^ω^)「まぁ、その後に泣いてたんだけど・・・・・。
しぃちゃんは告白とか、したことないのかお?」
(*゚ー゚)「ないない、私にはそんな勇気はないよー。
それに、男の子の方から好きって言って貰えるのを女の子は夢見るものだよ」
( ^ω^)「確かに、告白とか大変そうだおー」
内藤は、自分が誰かに告白する場面を思い浮かんでみた。
しかし噛んでばかりで上手く言葉を話せない、自分しか想像できなかった。
(*゚ー゚)「・・・・・・やっぱり、男の子の方から、だよね」
しぃが意味ありげに呟いた言葉を、内藤は見事に聞き逃していた。
やはり、この二人の仲が進展するのは、まだまだ先の様である。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
とある喫茶店の、とある男女の雰囲気は酷く険悪なものであった。
十代半ばの男女と言えば、本来ならもっと甘くとろける様な空気が流れていてもおかしくない。
だというのに、女性側からは、不可解な、殺意の波動のようなものが送られていた。
('A`)「すんませーん、アイスコーヒーを一つ。
・・・・・・あ、ツンさんも何か飲んだりとかします?」
ξ;゚听)ξ「わ、私も、同じのでよろしくってよ?」
そんな波動を押さえ込もうと必死になっているツンに対し、ドクオの能天気ぶりには呆れるばかりである。
サービスの水に入っていた、氷をガリガリと噛み砕いている。
まるで女性に対する気遣いというものは感じられない。
店員「おまたせしましたー」
('A`)「あざーす、ツンさんもどうぞー」
ξ;゚听)ξ「あ、ありがとうございます」
二人はコーヒーにミルクを入れて、ストローでくるくるとかき回す。
店員はどこか気まずそうな二人の雰囲気を感じ取ったのか、そそくさと店の奥へ戻っていった。
('A`)「・・・・・それで、今日は何の御用で?」
ξ゚听)ξ「え、あ、はい・・・・・・この前のことで」
ちなみに今日もツンは大和撫子仕様である。
彼女なりの大人しめの服装、白を基準として、服装を彩っていた。
ξ゚听)ξ「その・・・・・・この前、私振られてしまったじゃないですか。
それが納得できn・・・・じゃなくて、その理由が聞きたくて」
('A`)「そうか・・・・・その話をしなくてはならないのか」
ドクオは寂しげな瞳を浮かべ、どこか遠い場所を見つめている。
まるで、何か深い事情があって、告白を断らざるを得なかったかのような。
('A`)「俺には、昔、異性の幼馴染がいたんだ」
ξ゚听)ξ「はぁ」
('A`)「俺たちはいつも一緒に遊んでいた。
小学校に上がり、男子と女子という違いが生まれても遊び続けた。
いつまでも、ずっとずっと仲良くいるつもりでいた」
コーヒーを一口飲み、ドクオは一息入れた。
話をするのが辛いのか、顔は俯いたままである。
('A`)「中学生になると、思春期だからか、少しばかりの気まずさが心の中に芽生え始めた。
だけど、アイツはそんな時にでも俺から離れようとはしなかった。
だから、俺も、恥ずかしい気持ちを抑えて、出来るだけ応えるようにしたんだ」
ツンは、まさかこんな長い話を聞かされるとは思ってもいなかった。
面倒くさいと思いつつも、とりあえずは耳を傾けている状態である。
('A`)「そして、忘れもしない7月22日の出来事だ。
その日はアイツの誕生日で、駅前に俺は呼び出された。
・・・・・しかし、男友達と約束をしてしまった俺はその場所に行かなかったんだ」
ξ゚听)ξ「・・・・・それで?」
('A`)「彼女は、その場所で5時間以上待っていてくれたらしい。
まぁ、これは聞いた話だから本当かは知らないんだがな。
・・・・・・そして彼女は、次の日の早朝、遠くに引っ越してしまった」
ξ゚听)ξ「え、それじゃあまさか・・・・・・」
( A )「ああ、俺は今でも彼女の事を・・・・・・」
まさか、ドクオという男にそんな過去があるとは思いもしなかった。
女とは一切、無関係な人生を送ってきていると勝手に妄信していた。
仕方ないのでドクオの事は諦める・・・・・ツンはそう考えたのであった、のだが。
('A`)「・・・・・という感じに始まるエロゲがあってだな」
ξ゚听)ξ「・・・・・・・・は?」
('A`)「俺にはそういう過去なんてまるで無いんだけどさー。
なんていうか、忘れてるだけで昔に立てたフラグがあるかもしれないだろ?
だから、その女の子のために俺は誰かと付き合う訳にはいかないんだ」
つまり、ドクオは存在し得ない、空想の女の為にツンを振ったのだ。
それはツンにとって、あまりにも衝撃的で、屈辱を伴った事実である。
('A`)「俺を想い続けて女の子の気持ちを、裏切る訳にはいかないしさ。
一途で健気で、ロリ巨乳で細身で、優しくて料理が上手くて・・・・・・。
だからゴメン、俺は君とは付き合えないんだ」
ドクオの妄想は止まらない。
自分がエロゲの主人公だとでも思っているのだろうか。
夢中になるあまり、目の前の惨状に気付いていない。
今まで我慢してきたものが、大噴火しようとしている、目の前の少女に気付いていない。
そして、どこからともなく『ぶち』と何かが千切れる音が聞こえた。
ξ )ξ「・・・・・・冗談じゃねぇぞ、コラ」
('A`)「・・・・・・はひ?」
ξ#゚听)ξ「ふざけんじゃねぇって言ってんだ、このキモオタァァアアあああ!!
何がフラグ、何がロリ巨乳、何が思い続けてた女の子!?
そんな妄想に浸るなら、家から出ずにオ○ニーに耽ってろぉぉおおお!」
忘れてはいけないことは、ここが喫茶店であるということである。
店内にいる全ての視線が二人に注がれ、コーヒーを噴出すものまでいる始末だ。
続けて聞こえるのは、店員が皿を落として聞こえるバリンという音で、まさに大惨事である。
(;'A`)「や、やっぱり正体を現しやがったな!!」
ξ#゚听)ξ「なにがじゃああああああ!!」
(;'A`)「お前みたいな外見をしたやつが、大人しい女の子のはずがないんだ!
金髪ピアスといったら、DQNかビッチかスイーツと相場は決まってる!!」
ξ#゚听)ξ「黙らんかぁああああああああ!!」
ツンの瞳は紅く、妖しく輝いていた。
(;'A`)「そ、それに最初っから、こんな事はありえないんだ!
俺を好きになる女の子が、現実に存在するはずが無いんだからな!!
どうせ、ジョルジュとかの差し金なんだろ!?」
近からずも、遠からずである。
自虐が、これほどまでに的確で、説得力のある人間はなかなかいないだろう。
しかし、ツンの暴走もドクオの負に引けをとらない。
ξ゚听)ξ「・・・・・つまり、私が本当にアンタを好きなら問題は何も無いんだろ?」
(;'A`)「え!?・・・・・・あ、うん、まぁ」
ξ#゚听)ξ「じゃあ、私はアンタが大好きだぁああああ!!
これで、何か文句あっかぁああああ!!」
最高にホットな告白である。
真夏の太陽も、恐れおののいて逃げ出すだろう。
そこに、一人の男が近づいてきた。
店長「お客さん・・・・・・いい加減、迷惑なんですよね。
お代はいらないんで、さっさと出てってくれませんか?」
若干、強面の店長さんがツンとドクオに申し出た。
そこでようやく、二人は気付くのである。
自分達を見つめる数多もの瞳と、ボロボロになった店内と。
そして、巡る巡る記憶の語る、自分自身の呆れてしまうような愚かさに。
だから、二人は一度互いを見つめなおした後、こういったのである。
ξ;゚听)ξ「はい」
(;'A`)「すいませんでした」
とてもとても、素直な姿がそこにはあった。
こうして、二人は店から追い出されてしまったのであった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
冷房の効いていない店と比べると、外はまるで灼熱地獄である。
だが、そんな暑さで、彼らは逆に冷静さを取り戻していた。
ξ゚听)ξ「・・・・・他のお店でも探す?」
('A`)「・・・・・いや、いいよ。
ちょっとだけ、そこのベンチで休んだら帰ろう」
両者共に、魂が抜けたかのような脱力を見せている。
倒れこむようにベンチに腰掛けると、ジリジリ鳴く蝉の鳴き声が響くばかりである。
ξ゚听)ξ「・・・・・・なんかもう、ごめん」
('A`)「いや、俺の方こそ、スマン」
会話は見事に続かない。
だが、ツンは諦めず、言葉を投げかけた。
ξ゚听)ξ「あー・・・・・なんていうか、改めて返事聞かせてよ。
もし、本当に私が好きだったらどうするの?」
('A`)「そりゃ、嬉しいけど・・・・・・。
なんか今となっては、植えつけられた先入観が・・・・・・」
ξ゚听)ξ「まぁ、そりゃそうだよね・・・・・・・」
二人の座るベンチの場所は、日陰などとは無縁のもので、直射日光が容赦なく照りつけている。
これ以上、この場所に居ると、本当に溶けてしまうとツンは思った。
だから、おもむろに立ち上がり、
ξ゚听)ξ「よし、夏休みが終わるまでにアンタを私の虜にしてみせる。
私の気持ちが本気だってことをみせてやるんだからね!」
そう言ったのである。
ドクオは鳩が豆鉄砲を食らったかのような顔をしていた。
ξ゚听)ξ(あんな男に舐められてたまるか!
絶対にビッチなんて言わせないんだがらね!!)
そんな事を考えながら、ドクオを置き、ツンは帰路についた。
どこか楽しげで、スキップなんて踏みながら。
元の目的を忘れていることを、彼女は気付いていない。
【第21話:おしまい】
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