( ^ω^)は考えるようです
-
3 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 21:10:34.87 ID:dLWLxw/c0
- 初秋の暗い夜道、至って普通の男が一人歩いている。
黒い薄手のジャケットを白Tシャツの上に羽織っており、下はジーンズといったシンプルな格好だ。
右手には吸い掛けの煙草、左手には小銭入れを握っている。
「……うおっ、寒っ」
いくら初秋とは言えども夜なのだ。
強く冷たい風が薄い上着を通り抜け、男の肌を撫ぜる。
右手に握っていた煙草を全部灰にして、携帯灰皿にその残りを押し込む。
「!? ……なんだ?」
途端彼の背筋に寒気が走る。
この夜道薄手で出かけた自分が悪いのか、しかしそれにしては嫌な感じだ。
まるで、後ろに何かが憑いているかのような。そんな不安定な感情。
足音も無いのに……不気味過ぎる。
彼はあたりを見渡しながら歩く、後ろには誰もいない。
時刻はまだ8時ほど、彼が歩いてる道には誰もいない。
いつも彼は此処の道を通っている。
バイトが遅くまであるときは丁度今の時間帯に通る事にしている。
だけどいつもは人がいる、例え台風でもだ。なのに今は自分の足音しかない。
何故?
-
6 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 21:12:27.92 ID:dLWLxw/c0
- 一つ一つは小さく、大した事でもない。
けれど着実に重なる不安。
一向に止まらぬ寒気。
恐怖に煽られ大きくなる心臓の鼓動。
重なった不安、止まらない寒気がより大きな恐怖となり彼を襲う。
周り全てが怖くなった彼は目をつぶり走り始めた。
無我夢中とは正にこの事だろう。
電柱にぶつかろうが、石につまずき転ぼうが、彼は走る走る。
家は幸い近くだ、戻れば安心できるだろう。
彼の頭にはもう家についてるビジョンが浮かんでいた。
というよりもう彼は家にいるつもりだった。
暖かい家の中、寝転がれるスペースの無い部屋。
その中心で彼は寛いでいた。頭の中では。
-
10 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 21:15:43.98 ID:dLWLxw/c0
「はぁ……はぁ……」
だがあくまでもそれは彼の「希望」であり、悪く言えば「妄想」だ。
不意に辺りに鳴り響くクラクション。
男は、はっと我に返り左右を確認する。
最初に見た右、別に変わったものは無い。
つかの間の安心、
それを彼は感じていたのか、と思うぐらいの速度で左を見た、そこには、
――――ライトをつけた大型のトラック
それがもう5M無い程の位置にあった。
-
13 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 21:17:56.44 ID:dLWLxw/c0
- 「は? え、ちょっt」
断末魔はあっけないものだった。
吹き飛ばされる男。無造作にゴロゴロと道路を転がる。
余程高速で迫っていたのだろう。男の体は無残にもバラバラになっていた。
右手、左手、右足、左足。
四肢は四方八方に飛び散った。
顔はもうトラックに撥ねられた時に潰され、目も当てられない状態だ。
トラックの運転手、近くにいた人は大騒ぎ。
人が目の前でむごい死に方をしたからだ、混乱はどんどん広がる。
こういう事の伝達は異常に早いもので、あっという間に人が集まってきた。
-
16 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 21:19:21.60 ID:dLWLxw/c0
そんな中、その道路の近くの塀の上に「あるもの」がいた。
黒い毛に覆われた体。
刃物のように鋭い瞳。
そして欠けている耳。
塀の上からその惨状を眺めていた。
人間のおこがましい決め付けなのか、錯覚なのか、事実なのかはわからない。
だけどもその姿を見た人は、
「まるでこの惨事を楽しんでいるかのようだった」
口をそろえてこう言うのであった。
-
20 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 21:21:26.37 ID:dLWLxw/c0
( ^ω^)は考えるようです
-
25 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 21:23:11.13 ID:dLWLxw/c0
( ^ω^)「皆おいすー!」
「おう、おはようブーン」
僕は今年高校二年生になった内藤という普通の男子高校生だ。あだ名はブーンという。
どのくらい普通かって言うと、一日に5回はオナニーをしているぐらい普通である。
え?普通じゃないって? 自分の定規で人を測っちゃいけないよ。
とりあえず、僕は至って普通の高校生だ。
考えることもなくなったので、窓の外を見てみる。
すると赤く染まった木の葉が僕の目に入る。
そういえばもう紅葉の季節だなぁ。
様々な木に目をやり一人で秋を少し堪能してみた。
僕にはまだ紅葉の本当の美しさはわからない、けれども秋が来たということは実感できる。
季節の移り変わりを実感できる、これは幸せなことではないだろうか。
そんなことを考えてみてから、時計を確認する。
時刻は8時15分。まだまだ余裕だ。
「今日の晩御飯はなんだろう」
退屈なのでこの事を様々な前例を思い出して考えてみることにした。
-
28 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 21:25:09.48 ID:dLWLxw/c0
- それからちょっと思考を巡らせて(ボーっとして)いると、右後頭部に鈍い痛みが走る。
痛みの正体は、大体予想がついていた。
殴られたイライラと自分の予想があっているか、その人だったら何を話そう、などで生まれた少しのドキドキを頭の中で交差させながら、後ろを向いた。
ξ゚听)ξ「全く、朝からぼーっとしてていいのかしらね? いつ何が起きるかわからないのよ?」
やはり、予想通りだった。
彼女は僕の幼馴染であるツンデレだ。
気がつけば幼小中高と同じ施設、学校に通っていた。
彼女は気が強く、それでいてサバサバしている。
幼い頃はいつも一緒に遊んで泣かされていた。
この頃から僕はMっ気があったのだろうか。
実は僕が密かに恋心を抱いている相手である。
けれども彼女は僕に好意を持っているどころか、僕を男として見てくれていない。
何故こんなことが断言できるか?
実際この耳で聞いたからだ。
-
33 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 21:27:09.92 ID:dLWLxw/c0
- 少し前に数人とパーチーまがいをしてた時の事ある。
僕は酒類に異常に弱かったらしく、すぐにベロンベロンに酔ってしまった。
その時、頭の中がぐちゃぐちゃだった僕は直前に考えていた
「ツンは僕のことをどう思っているのか」
という疑問を口に出してしまうことになる。
自分でその言葉を言った瞬間、火照っていた体が一気に冷めていった感覚は今でも忘れられない。
さて肝心の彼女の回答であるが、彼女も酒に酔っていたのだろう。
ξ*゚ー゚)ξ「えー? 可愛い友達だと思ってるよー? 友達としてだけど、大好きだよ!」
彼女の回答は僕にとっては残酷、の一単語で表されるような物だった。
例えば僕が彼女と同じように思っていれば話は別だろう。
でも、僕はその頃から彼女のことを幼馴染としては勿論、
異性としても好きだった。だからこそ凄い辛かった。それこそ酔いが醒めるほど。
そんな恐怖体験をした僕はその時の事を今でも鮮明に覚えている。
恐怖が頭に染み付いている。もう傷つきたくない、という感情が脳裏に焼きついて離れそうもない。
だから今僕はひっそり想うだけにしているのだ。
-
37 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 21:28:57.66 ID:dLWLxw/c0
- ξ゚听)ξ「…………」
ξ゚听)ξ「なーにぼーっとしてんのよ!!」
( ゚ω゚)「おぅふっ!」
学校でも平気でエルボゥをかましてくる彼女。
一見ボーイッシュな外見は、よく見ていたり話していたりすると女性らしさがある。
そのギャップがたまらない。エルボゥを喰らいながらこんなことを考えてる僕は間違いMだろう。
ξ゚听)ξ「ん?何考えてたのよ、ツンお姉ちゃんに言ってごらん?」
( ^ω^)「そのまな板を撫でてから自分の呼び方を考えて欲しいお」
ξ#゚听)ξ「………………どっせい!!」
( ゚ω゚)「みゃあぉ!」
流石に二発目のニーはきいた。
不自然に思うかもしれないが、これが僕たちの普段のやり取りだ。
ここまでエキサイティングかつスリリングかつデンジャラスのどんじゃらな日常を送っている人は、そういないだろう。
何かあれば格闘、格闘、これがいつもの事である。
-
40 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 21:31:04.22 ID:dLWLxw/c0
ストリートファイトをしているとき、ふと下に目を落としてみる。
ツンの細く白い足……たまらない。
だけど一つ不自然なものが。
( ^ω^)「…………ツン、それ新しい上履きかお?」
ξ゚听)ξ「え、そうだけど……ってあれ? 昨日買ったばかりなのになぁ……」
真新しい上履き、だけど一箇所ゴムが切れているところがある。
よくわからないけれど、何か嫌な感じがする。
ξ゚听)ξ「ま、どっかに引っ掛けたんでしょ! ほら授業授業!!」
そういって僕より先に駆け出す彼女。
可愛らしくもあり、格好良くもある。
今のこの気持ちは恋心なのだろうか、純粋な憧れなのだろうか。
そんなことが突然脳裏を巡り、払拭する為に窓の外を見る。
-
43 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 21:33:01.46 ID:dLWLxw/c0
- さまざまな種類の猫が日向ぼっこをしている。
そういえばどこかの引きこもり紛いが
「ぬこはマジやべえ、場合によっちゃツンデレより萌える」
とか言ってたっけなぁ…………。
( ^ω^)「あいつはどんな猫でも萌えられるのかおね?」
独り言をそっと呟いてみる。
決して他人に聞こえるはずのないそれは、
何故か外にいた一匹の猫には聞こえてたらしく、こちらを向いてきた。
珍しい、真っ黒な猫である。
( ^ω^)「おっおっおっ、キミは耳がいいおね……でも耳欠けてるお」
そういうとクロマラ(勝手に命名)はわざとらしく欠けてる方の耳を指して見せた。
僕にはその行為が「今頃気づいたのかバーローwwwwww」といってるようにしか見えない。
ちょっとだけ、ビキビキっときたのは内緒。
-
47 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 21:34:56.22 ID:dLWLxw/c0
「キーンコーンカーンオウッ」
(;^ω^)「やべwww始まるwww」
ちょっと風変わりなチャイムがなり終えると同時に僕は教室に向かって走り出す。
こうやって考え事、独り言をしていて時間が過ぎるのは僕にはよくあること。
……なおさなきゃな。
所変わって教室では。
(=゚ω゚)「おーし、授業始めるよぅ」
('A`)「せんせー」
(=゚ω゚)「なんだよぅ?」
('A`)「……」
(=゚ω゚)「だからなんだy(;^ω^)「すいません遅れました!!」
(=゚ω゚)「内藤か、またぼーっとしてたのかよぅ?」
( ^ω^)「いいえ、ぬこが僕に喧嘩を売ってきたんです」
(=゚ω゚)「結局は……まあいいや、座るよぅ」
-
51 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 21:37:37.97 ID:dLWLxw/c0
- 歴史の担当、いよう先生だ。
優しく、怒ることもあまりない先生である。
なめられてるといえばそうかもしれないが、僕はこの先生のことをなめてもない。むしろ好きだ。
何か和むというのか。男にしては低い身長、可愛らしい容姿……などがあるのだが。
あと僕は決してガチホモなどではない。
とりあえず急いで席に着き、教科書を出す。
すると前の席の男が話しかけてきた。
('A`)「なんだ、マジでぬこと戯れてきたのか。ウラヤマシス」
( ^ω^)「片耳のない黒ぬこだったお、僕はそいつをクロマラと名づけたお」
(;'A`)「お前……まともな人間か?」
こいつはドクオ。
僕の数少ない本音で語り合える友人であり、引きこもり紛いだ。
ぬことエロゲをこよなく愛する健全な男子高校生である。
ちなみにたまに僕はこうやって授業に遅れるので、時間を稼いでもらうときもある。
授業が始まる合図、挨拶。
それが行われてなければ出席はとられない事が多いから、という為だ。。
効果ないときは効果ないので無駄な努力に終わることもしばしば。
-
54 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 21:39:52.90 ID:dLWLxw/c0
- ('A`)「ところでよ、黒猫ってなんか嫌な感じがしねえか?」
( ^ω^)「なんでだお? ぬこ大好きじゃないのかお?」
('A`)「それもそうだが……なんていうんだろうな、俺言い伝え信じちゃう主義なんだわ」
( ^ω^)「見た目からして噂大好き人間っぽいおね」
('A`)「人を見かけで判断すると新しい血族の者にボコボコにされるぞ。根拠の無いものは怖いんだけどな、丁度黒猫の話みたいに」
( ^ω^)「よく聞くけど、例えばどんなんだお?」
('A`)「いや……黒猫が目の前を通り過ぎると不吉なことが起こる、とかよく言われてないか?
だからなんか嫌なイメージがあるんだよな……怖い怖い、オカルト系は苦手だぜ」
( ^ω^)「そんなの迷信に決まってるお、そして顔がオカルトなキミが言うんじゃないお」
('A`)「…………ウツダシノウ」
(=゚ω゚)「よしそこの馬鹿二名、うるさいから答えろよぅ」
(;^ω^)(;'A`)「……………………Sorry,I don't know」
なんと言うシンクロ、こいつは間違いなく一心同体。
自分たちでも吃驚する位同じタイミングで同じ言葉が出てきた。
周りの人間は皆笑っている。こっちだって笑いたいんだ自重してくれ。
-
57 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 21:42:08.80 ID:dLWLxw/c0
- それから授業は特に滞りなく進んでいった。
途中電波野郎が
「先生、踏絵と絵踏とよしいくぞうってどう違うんですか?」
と聞いたこと以外は何もなかっただろう、きっと。
('A`)「んでよー、黒猫の話に戻るんだが」
( ^ω^)「どんとこいだお」
('A`)「この前近くで事故があったろ、事故」
( ^ω^)「あのエグい事故かお、あれがどしたんだお?」
('A`)「噂だとな……近くに黒猫がいたらしいんだ、耳の欠けた黒猫が」
( ^ω^)「どう考えてもクロマラです本当に(ry」
('A`)「二つ理由があれば怖いだろ?」
( ^ω^)「考えすぎじゃないかお? 耳の欠けてる黒猫なんかいっぱいいるだろうし、気にしたら負けだお!」
鎖で縛られていた体を解き放つ如く天に向かって伸びをする。
さまざまな間接がゴキゴキいっている、やはり運動は重要だなと再認識。
その伸びた手を、何者かが上から押さえつけてきた。
-
61 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 21:44:27.03 ID:dLWLxw/c0
- (´・ω・`)「やあ」
( ^ω^)「……」
('A`)「……」
(´・ω・`) 「なんか言ってよ、ねえ」
( ^ω^)「登場シーンがびびるものだからやめてくれお、怖いから」
('A`)「禿げ上がってつんつるてんになるほど同意」
この長身ガチムチ巨体の男はショボン。
ガチムチといえどDQNでもない、ましてやホモでもない。
(´・ω・`) 「君たちは僕を傷つけたよね、僕にごめんなさいしないとね」
('A`)( ^ω^)「フヒヒwwwwwサーセンwwwww」
(´・ω・`) 「小腸引きずり出すぞ」
多少サディスティックかつグロテスティックな表現もあるが気にしないでおこう。
だけど真剣な表情で言われると多少本気に受け取ってしまいそうになるから困る。
-
66 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 21:47:08.98 ID:dLWLxw/c0
- (´・ω・`) 「まあ話がそれるからさっさと戻そう」
('A`)「ん?なんについて話したいんだ?」
(´・ω・`) 「君たちが話してる黒猫の話さ」
( ^ω^)「なんだお?なんか心当たりでもあるのかお?」
それはね、と一言発して深く息を吸い込んだ彼。
何か真剣な香りがする、いつものことだが。
そしてまた彼は口を開いた。
(´・ω・`) 「僕実際に見てしまったんだよ、その事故があった現場に黒猫がいた」
( ^ω^)「でもそれだけじゃ偶然かもしれないお?」
(´・ω・`) 「大丈夫、もう一つあるから。
事故にあった人は道路に向かって走ってきてた。何かから逃げるようにね。
そしてその人が吹き飛ばされ、まわりの人が集まってきた頃……黒猫がゆっくりと被害者が来た道から出てきたのさ」
(;'A`)「…………」
( ^ω^)「ぐーぜんだお、ぐーぜん。そうだおね?」
-
70 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 21:49:27.06 ID:dLWLxw/c0
- 自分でも吃驚する位焦り気味の声だった。
何故だろう、怯えているのだろうか。
まさか、ドクオじゃあるまいし……僕がそんな事で怖がるわけないだろう。
そういう考えが、頭の中にあったんだろうか。
(´・ω・`) 「まあ、そう取るのは自由だよね。
あくまで見た事をそのまま伝えただけさ。どう受け取るかは自由だよ。
そこの怯えてる奴みたい受け取っても不思議でも情けなくもない。」
(;'A`)「ミステリー、ホラー、根拠の無いオカルト物は全部駄目、得体の知れないものほど怖いものはないわ」
( ^ω^)「それが人間じゃないのかお?」
僕がそう言ってもドクオは聞く耳を持たない、持ってくれない。
流石自他共に認めるヘタレだ、こいつと一緒にお化け屋敷にだけは行きたくない。
荷物にしかならないだろう、そう思った。
すると僕の脇から突然人影が。
-
74 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 21:51:43.61 ID:dLWLxw/c0
- ( ・∀・)「……鶴は千年、亀は万年……喝ッ!!」
('A`)「びゃぁぁ!!」
( ^ω^)「またお前かお……」
今ドクオに喝を入れたのはクラスメイトのモララー。
変り種、変わり者、変人、奇人、電波野郎などと呼び方は様々だ。
彼の凄いところは空気を読まないところである。
授業中に寝ている人間の席まで歩いて行き、アルキメデスと大量に机に書きなぐって自分の席に戻ったり。
板書している先生に浣腸でもひざかっくんでもなくコブラツイストをかけてみたり。
英語のスピーチテストのときにエロイムエッサイムエロイムエッサイムとずっと唱え続けてたり。
彼は常識を逸脱した変人だ。
( ・∀・)「……悪鬼悪霊のかほりがお主からしますな……むむむ」
( ^ω^)「祈祷師かお、悪鬼悪霊なんか僕に取り付くわけないお」
( ・∀・)「お主の仲の良い者にもついてるらしいの……用心せい、ほっほっほ」
そういってすり足で教室を出て行った。
なんなんだあいつは、というか高校生の話し方ではないじゃんか。
-
80 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 21:53:22.78 ID:dLWLxw/c0
- (´・ω・`) 「……災難だね、それでは僕は勉強に戻るよ」
こう見えても彼、勤勉家なのである。
授業が終われば復習は勿論予習までやってのけてしまう。
努力を続けるということは才能の一種、まさしくその言葉が似合う人間だ。
('A`)「…………いてえ」
のっそりドクオが起き上がってきた。
頭を葱で思いっきり叩かれたこいつは、どこかいい香りがする。
( ^ω^)「なんか、葱の芳醇な香りがするお」
('A`)「鴨が葱背負って来た、じゃなくて 祈祷師が葱ブレードを持ってきた、だな」
( ^ω^)「葱ブレードとかネーミングセンスがねーおwwww」
('A`)「お前のクロマラよりましだわダボがwwww」
僕のネーミングセンスを馬鹿にするとはいい奴だ。
白猫には未使用、と名づけるほどのセンスの持ち主の僕に何をほざくのかこの愚民は。
……はいはい、厨二病乙。
こんな突込みが自然と僕の脳内に流れて来た。
-
84 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 21:55:08.34 ID:dLWLxw/c0
( ^ω^)「うわあああああ、やっと終わったああああああ」
5時限目の授業が終わり、大きく伸びをする。
今日は何故か5時限なのだ、いつもより1時間近く早く終わる。おかげで気分上々だ。
辺りを見回してみるとドクオはうつ伏せ、ショボンはノートとバトル中、モララーはお経を読んでいた。
最後の一人、なんだお前は。今日は二倍おかしいぞ。
(うA`)「あー、終わった?」
( ^ω^)「約五分前に終わったお」
('A`)「そかそか、じゃあHRまで寝るわ」
そう言い残し、遥かな夢の旅に出発したマイフレンド。
きっと彼と会うことはもう無いだろう、そう思えるほど深く遠い旅に出たらしい。
うつ伏せの彼の姿にはどこか哀愁が感じ取れ、それがまた秋を実感させた。
何くだらないことに想像力を使っているのだろうか、少し自己嫌悪。
-
87 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 21:57:00.10 ID:dLWLxw/c0
- そんな悪意に苛まれぼーっとしていると担任が入ってきてHRを始めた。
できるだけ早く済ませたいらしく内容は簡潔そのもの。
いつものことなのに何故か今日はより淡白に感じられる。
担任が発する低い言葉ももう耳にタコができるほど聞いた、
思えば去年もこの人が担任だった。
腐れ縁、という言葉を思い出す。きっと来年も同じなんだろう。
鋭い二重の目に、整えられた眉。薄い唇に高い鼻。そして無精髭。
普通にかっこいいと思える若い先生である。
だけど年に合わない風格を漂わせている。なんだろう、ベテランというか……老けて見える、きっとそれだ。
自分の担任の評価を自分なりに付けた頃、もうHRが終わり皆帰っていた。
癖なんかそう簡単になおらないや、改めて感じる。
( ^ω^)「今日も今日とて無駄な時間を過ごしてしまったお」
今更だが僕の日常の大半は独り言、考え事で埋め尽くされている。皆知ってた!?
脳内にいるであろう皆に問いかけてみるも、答えは帰ってこない。
どうやら皆お寝んねしているのだろう。嫌な予感もするがこの際考えないことにする。
-
88 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
:2007/12/01(土) 21:58:25.68 ID:KRsn6ssqO
- 支援
-
89 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 21:58:39.79 ID:dLWLxw/c0
- ( ^ω^)「さて、やっと帰れるお」
帰り道、基本僕はいつも一人だ。
ツンは仲のいい女子と……名前は覚えてない、けど聡明で綺麗な人だったことは覚えている。
綺麗でも別にタイプではないんだけどね、お近づきにはなりたいと思うよ男として。
ドクオはいつも足早に教室から立ち去ってしまう。
帰り道も真逆だし、仕方ないことだ。
だけどいつも不思議なのは、HR中寝てるはずなのに最後の挨拶が終わると、いつも最初に教室を出ること。
そこだけがいつも気がかりだった。
ショボンも道は真逆だ。
一緒に帰れれば楽しいのだろうが、勉強の話ばかりされないか心配だ。
未だに彼の趣味もわからない、やはり筋トレだろうか。
モララーは……問題外だな、うん。
一緒に帰ったら何かに毒されそうだ。
僕もエロイムエッサイムとか言っちゃうんだろうか、怖い怖い。
結局僕はいつも一人で帰っている。
自分の時間を楽しめるからいいんだけどね。べ、別に寂しくなんか(ry
-
92 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 22:00:18.27 ID:dLWLxw/c0
- ( ^ω^)「……秋ってやっぱり綺麗で、穏やかだお」
ふと発した一言、自分でも吃驚するほど無意識に出てきた言葉。
遠くの山がまず目に入った。
いつもは緑で覆われているのだが、秋が深まってきた今日では赤と緑の斑模様に染まっている。
その斑模様は夕陽を反射し、山吹色も加わりより一層美しく輝いていた。
燦然と輝くこの情景を絵にできたらどれだけ嬉しいことだろう。
だけど残念ながら自分に画才は無い、色のセンスも無い。
画家には純粋に憧れるし、尊敬の念を抱いている。
自分の感情、例えば情熱、感動、怒り、恐れ、悲しみ。
それらを自分で描いて形にすることができる。それがどれ程羨ましい事だろう。
これは画家だけに当てはまる事じゃない。
他に例を挙げるとすれば作曲家、ボーカリスト、演奏家……要するに「音楽家」というのも「芸術家」の一種だと思う。
まだまだこれ以外にもあるだろうが、自分の貧困な想像力じゃこの程度で限界。想像力も鍛えなくちゃな。
またぼーっと景色を眺めながら歩いていた。
-
95 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 22:02:39.27 ID:dLWLxw/c0
するといきなりばすっ、という音がして肩と脹脛に衝撃が。
(;^ω^)「あちゃー……こりゃついてないお」
肩にかけてたバッグの紐が切れてしまったのだ。
紐といっても細いものじゃない、きしめんのように太いものなのに切れてしまった。
( ^ω^)「ま、使えないわけじゃないからいっかお」
そう呟き残った片方の紐を肩にかけゆっくり歩き出した。
家まではあと10分ほど、それまで秋の美しさを堪能するか。
そう考えると、胸躍る様な気分になった。
-
101 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 22:04:39.36 ID:dLWLxw/c0
家に帰り、ベッドに寝転がりとりあえず休憩(要するに昼寝)したあとにすぐ晩御飯。
入浴を5分で済ませ自由時間を確保した。現在時刻、7時6分。
( ^ω^)「おっおっおっ、何するかお」
大量に時間が余ると嬉しいものだ、とりあえずテレビをつけてみる。
「……ですから『願いはかなわない』 そう思うのではなく 『願いはかなう』
想いは力なのです、願い続ければきっと誰かに届きます、歪みさえしなければ」
( ^ω^)「想いは……力、かお」
所詮理想論、そう思う。
自分が冷めてるから? 現実にそんなことありはしないから?
そうではない、ひねくれてるのだ。
一生懸命努力すること、今の時代にはそれが美徳ではない。嘲笑の的でしかない。
頑張りたくても、周りの目に耐えられず努力をやめてしまう。
最終的にはその中に溶け込み、自分も嘲笑する側になるのだろうか。
-
104 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 22:06:12.72 ID:dLWLxw/c0
- 結局は自分の意思次第だろう。固いか、脆いか。
確固たる意思を持ち、自分をしっかりと作っていれば周りの目など気にならないはずだ。
だけど現代人にはそれをできる者が少ない。
でなけりゃ多数決などで適当な意見に決まることなど、無いはずだから。
( ^ω^)「なんか番組変えるかお」
適当にチャンネルを変えてみる、すると面白そうな番組が。
「このトラックはですね、なぜか知りませんが車体と路面の高さが70センチもあるわけですね。
そして何故だかタイヤの間も異常にあいてるわけです、限界まであけたのでしょうか。人一人は寝れますね」
世にも奇妙なトラックだな、と思った。
どんな社会のはみ出し者が設計したのだろう。あれは捕まらないのだろうか。
僕には珍しく至極一般的なことを考えていた。
-
106 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 22:07:51.64 ID:dLWLxw/c0
- 「君が胸を焦がすから〜♪」
その無駄な考えを消すかのごとく携帯の着信音が鳴り響いた。
季節はずれな歌なのは秘密。メールの音だ。
今時流行りのスライド式、その動作は一日もたてば飽きが来るものだ。
何故日本人は好奇心旺盛な割に飽きっぽいのだろうか?
とりあえず相手を確認する、どうやらツンからのメールらしい。
「やっほー! 元気〜?」
今時女子には珍しい、顔文字もギャル文字も無いシンプルな文字だけのメール。
たったこれだけでも彼女らしさが伝わってくる、文字とは素晴らしいものだ。
( ^ω^)「おっおっ、元気すぎて嫌になるほどだお」
-
111 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 22:09:26.75 ID:dLWLxw/c0
- 彼女からのメールは毎日のように来る、もう返すことが日課になっていた。
大体6時半〜7時半の間に必ずこの様なメールが来る。
この時間は僕の一日の中でもっとも楽しみな時間だ。
好きな人から必ずメールが来る、これ程楽しみなことがあるだろうか?
答えは自分の中では否である。
「いつも通り元気だお! 朝からの暴力は心にきいたお……」
大体話題提起をするのは自分だ、提起と言ってもいつも自然に出てくるものだけど。
話したいことなんか一日の中で幾つもできる。
寝るまで話題が尽きないから余程僕は伝えたいことを伝え切れてないのだろう。
シャイ、初心、小心者。多分一番最後の表現が僕にはぴったりだ。別に自虐癖があるわけではない。
それから僕たちは他愛の無い話を延々と続けている。
時間にしたら4時間ほどだろうか、3分おきに返ってくるメールに2分おきに返事をしていたから……。
こんなことを考える自分は間違いなくセコいです本当に(ry
( うω^)「やばっ、そろそろ寝ちゃうお」
自分の限界をいち早く察知し、携帯のボタンを押し始める。
-
114 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 22:11:24.28 ID:dLWLxw/c0
- 「やばいお、そろそろ眠いから寝るお。
おやすみー、よい夢を」
( ^ω^)「送信……っと」
送信完了の画面を確認し、布団をかぶる。
少し経ってから返事が来た。
「おやすみー! そっちこそいい夢見なさいよ!」
そのメールを確認し目を閉じる。
今日はいつも通りの幸せな日だった。
だけどたまに苦しい日がある。
そんな日が無くなれば良いのに。よし! 無くそう!
そう思えるほど今日は元気があった。
やがて思考回路も鈍ってきて、自分の意識は海底に沈むかの如く無くなっていった。
-
115 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 22:12:54.22 ID:dLWLxw/c0
( うω-)「……今何時だお……」
( ゚ω゚)「7時5分!?」
いつもより35分遅く起きた僕。
学校には遅刻しないだろうが何故か少しだけショックだった。
朝の貴重な時間ほど失うと虚しくなるものはないだろう、そう思える程だ。
急いで朝食を口にねじ込みトイレの便器に尻をねじこみ顔を洗って歯ブラシを口にねじこみ制服を体にねじこんだ。
それ全部の所要時間、15分。
( ゚ω゚)「……完璧だ」
思わずそう呟いてしまい母親に「気持ち悪い」と言われた。
そのおかげでショック状態に陥り5分間動けなかった。
と言うことで現在時刻7時25分。
学校までは約20分かかる。
遅刻判定は30分以降だ、ということで50分には出たい。
それまでボーっと過ごすのが朝の醍醐味だ。
貴重な時間のはずじゃ? そのボーっとするのが貴重なんだろう。
とりあえず25分をボーっと過ごしてみることにした。
-
122 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 22:14:51.99 ID:dLWLxw/c0
今日は本当に無心でボーっとしてたらしく、あっという間に50分になってしまった。
かばんを肩にかけ、靴を履き、玄関のドアを開け
( ^ω^)「行ってきます!」
と元気良く出発の挨拶をして走り出す。
閉まりかけのドアから「行ってらっしゃい」と母親の優しい声が小さく聞こえてきた。
先ほどとは大違いだ、そう思いながら学校までの道を少し速度を速めて進んでいる。
朝方はさまざまな鳥が綺麗な高音で歌っている。
やはり動物と言うものは見ていると和む。
可愛らしくもあり、逞しさも垣間見せるからだ。
犬はいつも通り電柱に小便を引っ掛けたり糞したりするとこだけは許せないが。
理由は主に自分が踏んでしまうから(糞を)
全く、飼い主はマナーというものを身に付けてほしい。
ゆっくり歩き始め、景色を眺め始める。
すると近くの塀の上に奴がいた。クロマラだ。
-
123 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 22:16:49.25 ID:dLWLxw/c0
- ( ^ω^)「おいすー、クロマラは朝から何をやってるんだお?」
猫の返事は全く無い。返す素振りすら見せない。
だけども僕をずっと見ている。その鋭い瞳で。
その瞳を見ていると、急に辺りが静かになった気がした。
風と、息遣いの音だけ。
何故かは知らないが好都合だ。
この状態なら、あの事も聞ける気がする。
( ^ω^)「……君は、災いを招くのかお?」
失礼な質問だとは思っている。
だからなのか、やはりクロマラは答える様子が無い。
だけどその態度が肯定に見える、何故だろう。
いかんいかん、人の意見に左右されすぎた。
( ^ω^)「変なこと聞いて悪かったお、それじゃまたいつか!」
じゃ、と言う風に手をかざし走り始めた。
少し時間食っただろうか、5分ぐらい遅れそうだ。
秋の風を、自分の体に感じながら学校に向かう。
-
128 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 22:18:16.79 ID:dLWLxw/c0
- 一方黒猫はブーンを見送った後、
塀からひょい、と飛び降りて辺りを徘徊。
ふと目に入った赤い紅葉、それをくわえてどこかに走り去ってしまった。
猫にも美しい物はわかるのだろうか。それはやはり猫にしかわからない。
-
130 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 22:19:50.33 ID:dLWLxw/c0
- ( ^ω^)「到着ー!」
ξ゚听)ξ「遅い!」
( ゚ω゚)「サヨナラヘヴンッ!!」
正門を綺麗にジャンプで跨いだ自分に振ってきたのは御褒美ではなく、ツンの辞典だった。
ジーニアスの辞典はやはり知識が詰まっているのだろうか。他の何よりも重く感じる。
( ^ω^)「何で叩くんだお! クロマラと話してたら少し遅れちゃっただけだお!」
ξ゚听)ξ「まずクロマラって何よ! 何の名前なのよ!」
( ^ω^)「……ぬこだお、ぬこ」
ξ゚听)ξ「え、それって野良?」
( ^ω^)「もちのロン・デニス」
ξ゚ー゚)ξ「ばっかじゃないのwwwwセンス無いしwwww」
( ^ω^)「うっさいおww自分では気に入ってんだおww」
-
132 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 22:20:55.17 ID:dLWLxw/c0
- やっぱり、ツンとこうやって話してるときが一番落ち着くし、楽しいなぁ。
ふと思った。友人と恋人と言うのはどちらがいいのだろう。
友人と言うのはいつでも気軽に馬鹿やれて、楽しくて、たまにケンカするけどすぐに仲直りできる。
故に関係は長く続く。こういうものだと思う。
大して恋人と言うのは……なんなのだろう。
自分の中でもはっきりとわからない。
なんと言うのか……一緒にいるとドキドキするもの? それとも落ち着くもの?
違いは良くわからない。
でもやはり、決定的な相違が一つある。
友人(親友)と言うものは例え何日間か連絡を取らなくても何時もと変わらず接してくれる。
だけど恋人はどうだろう。
何日も連絡しなければ愛想尽かされる場合もある、勿論例外もあるが。
結論から言えば、信頼しているかしていないかの違いであるが
友人の方が関係だけを見れば長続きするものである。
-
135 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 22:22:50.01 ID:dLWLxw/c0
- ξ゚听)ξ「……ちょっと何ぼーっとしてんのよ、また考え事?」
( ^ω^)「おっと、すまんお。まさしくその通りだお」
ξ゚听)ξ「それは初対面の人にやっちゃいけないわよ? 無礼すぎるわ」
( ^ω^)「これ以上関係なんか横に広げらんないおwwww
いきなりだけど質問いいかお?」
結構な時間悩んだこの考え事。
ツンは、僕の好きな人はどういう考えを持っているんだろう。
それが気になった、そして聞きたくなった。
ξ゚听)ξ「いいけど、何?」
( ^ω^)「友人と恋人の違いってなんだお?」
ツンは一瞬顔をしかめ、悩み始めた。
うーん、うーん、と唸りながら腕を組み真剣に考える。
その仕草が、何故か堪らなく可愛かった。
-
137 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 22:24:41.22 ID:dLWLxw/c0
- そして結論が出たのか、腕をぽんっと叩き表情が明るくなる。
ξ゚听)ξ「友人は自分を楽しい気分にしてくれる人、 恋人は自分を幸せにしてくれる人かな?
恋人なんかできたことないからわからないけどねw」
( ^ω^)「お、そうなのかお?」
ξ゚听)ξ「もち、なんかビビッと来る人がいないのよねぇ……。
顔、体系なんかより雰囲気大事よ。そして話が合うか」
意外だった。
僕の贔屓目を除いても、うちの学年の中で五本の指には入るであろう程の可愛さのツンが、
未だに彼氏いない暦=年齢だったとは。
でも少し嬉しかった、まだ僕にも希望があると思えた。
こう考えてるうちはまだ決心がついてないのか、駄目な男だ。
-
138 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 22:25:47.38 ID:dLWLxw/c0
- ξ゚听)ξ「にしても……いつもあんたこんな事考えてるの?」
( ^ω^)「気になったことを考えてるんだお、いつもこういう事考えてるってわけじゃないお」
ξ゚听)ξ「へぇー……よく続くわね。あたしだったら疲れちゃうよ」
( ^ω^)「考え事程退屈しのぎはないお。授業中には持って来いだお。
でも別にツンとの会話が退屈って言ってるわけじゃないお?」
ξ゚ー゚)ξ「あたしとの会話が退屈なんて言ったらぼっこぼこにするんだからね!」
(;^ω^)「ちょwwwwねーよwwww」
やはり、至福の一時だ。
学校に来る楽しみの一つでもあるツンとの会話。
これ無しでは学校に来るのも憂鬱になるだろう。
病む前に何とかしないとな、また一つ課題が増えた気がした。
-
139 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 22:27:03.13 ID:dLWLxw/c0
- ξ゚听)ξ「そういえば……」
( ^ω^)「お、どうしたお?」
ξ゚听)ξ「なんか昨日からなんだけどね……その……」
( ^ω^)「なんだお? お兄さんに言ってみるお」
ξ゚听)ξ「お兄さん……まあいいわ。
なんていうんだろう、昨日から誰かに付けまわされてる気がするのよね」
ストーカーという物だろうか、最近はよくその話を聞いていた。
全く、男として、人としてのプライドはないのだろうか。
不思議で不思議で仕方がない。
( ^ω^)「……わかったお、何かあったらいつでも連絡してくれお。すぐ駆けつけるお」
ξ゚ー゚)ξ「本当? 頼もしぃ〜! じゃあ頼んだわよ!
元気でたわ、ありがとう! それじゃまた後でね」
嬉しそうな顔をして走り去っていった。
彼女のあんな笑顔が見れるならば、いつでも助けてあげたい。
そんな事を思いながら自分の教室に向かった。
-
143 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 22:28:50.12 ID:dLWLxw/c0
- ( ^ω^)「……自分を幸せにしてくれる人、かお」
ツンの表現は僕の言葉で言えない部分を的確に、それも短く答えてくれた。
短くはっきりと伝わる言葉、これは理屈っぽい僕には縁の遠いものだ。
どれだけわかりやすくしようと、努力を重ねて長々と説明しても的確で短い言葉には適わない。
何に適わないか、わかりやすさと言う点だ。
国語の読み取りの問題でも、作文の問題でも要点をしっかり書けてれば点数は貰える。
どれだけ長々と書いても要点さえ抑えていればそれ以外は無駄でしかない。
その無駄を好む人間が僕、好まないのが一般人、という分け方ができるだろう。
基本、理屈っぽい人間は嫌われるのだ。だから頭の中で考えるだけに留めている。
そんなことを色々考えてるうちに教室についた。
('A`)「うぃーっす」
教室で一番最初に話しかけてきたのはやはりドクオだった。
-
144 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 22:30:22.56 ID:dLWLxw/c0
- ( ^ω^)「おはいおだお、今日はクロマラと話してきたお」
('A`)「そうか……ついにお前も電波の世界に……」
(;^ω^)「ねーよwww動物愛好家どうなるんだwww」
('A`)「あれは……ありだ」
(;^ω^)「ひでえwwww」
ドクオと話すのは、やはり楽しい。
だけどツンと話したときに感じる幸せはやはり無い。
こういうと失礼だが、やはり好きな人と友人は違うんだろうなぁ。こう実感した。
それと同時に、ツンが好きだということも感じられた。
「よーし、ホームルーム始めちゃいますぞー」
やけにおっさん臭い口調で入ってきた担任。
入りながらホームルーム開始宣言をするあたりせっかちだとは思う。
それからの授業はやはりいつも通り進んでいった。
-
149 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 22:32:17.36 ID:dLWLxw/c0
- 僕の友人達(一人微妙だが)の授業中を擬音で表すとすれば、
ドクオはグースカ、ショボンはガリガリ、モララーはブツブツ。
一人不気味すぎて少しだけ噴いたのは秘密。
僕も奴と同類かなぁ……そう思ってしまうほど恥ずかしかった。
そして臭いを嗅ぎ付けたのか、奴が来る。
( ・∀・)「感じる……妖気を感じる……」
やっぱ来た、帰れ。
( ・∀・)「ブーン、お主……今日は良からぬ事が起きるぞ……」
( ^ω^)「お? 珍しいお、君が人の名前を呼ぶなんて……」
( ・∀・)「いや……今日の感じるものはいつもより強いからな」
( ^ω^)「どこで妖気とやらを感じてるんだお?」
( ・∀・)「主にチンコ」
(;^ω^)「ぶべほっwwwwww」
思わず噴き出しながら笑ってしまった。
なんなんだこいつは、シュールにも程があるだろう。
-
151 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 22:34:12.98 ID:dLWLxw/c0
- ( ・∀・)「まあ……できる限り気をつけて過ごすべきだ。
そいじゃな……アーマンダラソンダラホンダラヘンダラ」
訳のわからん呪文を唱えながら、競歩の如き歩行(膝を曲げてない)スピードで僕の視界からフェードアウトした奴。
なんか……全く読めない奴だ。
とりあえず奴の忠告を頭の隅にぶち込み、いつも通りの毎日を過ごした。
授業中に落書きして、考え事に耽って……
-
155 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 22:34:57.19 ID:dLWLxw/c0
そんなことをしていると時間という物はあっという間に過ぎていくものであり、気がつけばもう帰りのHRの最中だった。
「よーし、HR終わるぞー」
「きりーつ、きをつけー、れいー」
「さよならー」
僕がボーっとしている間に帰りの礼まで済ませてしまったらしく、ドクオの姿がもう見えなかった。
ショボンは日直だったのか、まだガリガリしている。
祈祷師は……なんか先生にお払いしてるよあの子頭大丈夫かよ……。
とりあえずそんな二人を尻目に帰路に着くことにした。
-
157 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 22:37:01.85 ID:dLWLxw/c0
- ( ^ω^)「……なんか今日はいつもと違うお」
自分だけの話じゃない、周りも合わせてだ。
まず朝僕が寝坊をしたこと、自業自得と言う突っ込みはしないでくれたまへ。
モララーの奇怪な言動、いつものことだが。
そして自分の妙な浮遊感。
眠っているドクオでさえHRの終わりぐらいわかるのに、僕はそれすらわからなかった。
何か嫌な予感がする、モララーのおかげでそれが二倍にも三倍にも膨れ上がってる。
いつも考え事をする理由は暇つぶしだが、今日の今考えてることはそれに当てはまらない。
何かを恐れている、だけどそれがわからない。だから必死に探ろうとしているのだろうか。
もう自分でもそれがわからない。
よし、家に帰ったら寝よう。満足のいくまで。
不安な気持ちを振り切るために、そう呟き走り出した。
-
158 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 22:37:53.84 ID:dLWLxw/c0
一方後方では塀の上から耳の欠けた黒猫が、
走っている高校生の後姿を睨んでいた。
朝方手に入れた赤く美しい紅葉をくわえて。
-
166 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 22:41:39.06 ID:dLWLxw/c0
- ( ^ω^)「ただいまだおー!!」
「あら、お帰りブーン」
家のドアを開けると、優しい母親の声がした。
そしてそれを聞き安心する。
何も悪いことなど無い、杞憂じゃないかと思い始めてこれた。
( ^ω^)「ちょっと晩御飯まで寝てくるお、できたら起こしてくれお」
「わかったよ、ゆっくり休んできなさい」
朝の気持ち悪い発言のときとは打って変わって優しい母親。
これが噂のデレツンなんだろうか、ツンデレしか知らない僕には初めての体験だ。
こんな事を考える余裕まで出てきて、自分でも少し驚いた。
二回にある部屋まで行くには、階段を駆け上がる必要があったため、必要以上に力強く駆け上がる。
そしてドアを開け部屋に入り、制服をハンガーにかけて、パジャマを着て準備万端。
布団に入り込み一言、おやすみと呟き目を瞑る。
走ってきて疲れたのかあっという間に意識はなくなってしまいそう。
そう思った次の瞬間にも意識が飛んでいくのがわかった。
-
169 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 22:42:37.22 ID:dLWLxw/c0
( うω^)「…………何時だお?」
携帯の時計を見てみる、現在六時五十二分。
まだツンからのメールは着てないようなのでとりあえず下に降りてみる。
とん、とんとリズミカルな音を刻み階段を下り終えるとまずは嗅覚が刺激された。
炒められた玉葱の良い香り、間違いなく今晩は……
( ^ω^)「カレーだお!」
-
171 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 22:44:44.00 ID:dLWLxw/c0
- そう叫びリビングに入ってくると、
そこには器に入れられた真っ白なカレー……あれ?
香りも幾分がスパイシーだよ……?
「今日はクリームシチューだよ、何を寝ぼけてるのかな?」
僕以外の家族みんなが笑いに包まれる。
恥ずかしい思いに身を焼かれながら椅子に座った。
目の前には白く、そして赤、緑など様々な色が入ったシチューがあった。
人参を箸でつついてみる。
ぶつ切りだがよく火が通っており、柔らかかった。
それを口の中に入れる。
熱い、でも美味い。
シチューの濃厚な味の跡に人参特有の甘みが口の中に広がる。
-
174 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 22:46:45.99 ID:dLWLxw/c0
- 次の獲物はぶっころり……じゃなくてブロッコリーだ。
サラダ等でよく食べるのを見るが、シチューにするとこれがまたいける。
大きめだが一口で全部頬張り、口の中で食感を楽しんだ。
今度はジャガイモが目に入る、箸でつついてみるとやはり柔らかい。
今回のシチューは具が大きめだがそれがまたいい。
これもやはり一口で姿を消した。
ほくほくしていて、かなり美味い。
寒いときには暖かい芋類を食うのが堪らなく良い。
結局三杯もおかわりしてしまった。
まだまだ僕も育ち盛りだなと思いつつ、下っ腹を気にしてしまう。
育ち盛りの親父化現象、これは流行る。
-
177 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 22:48:06.76 ID:dLWLxw/c0
- ゆっくり味わって食していたため、結構時間がかかってしまった。
時計を見る、現在七時二十五分。
そろそろツンからのメールが来ていてもおかしくない時間だ。
そう思いワクワクしながら部屋に戻ろうと足を動かす。
( ^ω^)「るんるんるん♪」
自分でも気持ち悪いと思うほどの上機嫌だ。
何故だろう、夕食が美味かったからだろうか。
いや、いつも美味いもんな、母親に失礼だった。
( ^ω^)「わが部屋よ!僕は帰ってきた!」
意気揚々として携帯を見る。
だけど着信は0件。
(;^ω^)「お…………」
-
180 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 22:49:50.13 ID:dLWLxw/c0
- 一気にテンションがガタッ、と落ちてしまった。
いつも楽しみにしていたポケモンを、ゲームボーイごと取られるぐらいのショックだ。
もうすぐでワタルに勝てたのに、そのとき親にゲームを取られ電源を消される。
怒りを通り越して泣き出したくなるくらいだった事を、よく覚えている。
しかし、必ず送ってきてくれてたツンがこの時間にまでメールをくれないのはおかしい。
何かあったのだろうか、急に心配になってきた。
とりあえず自分からメールを送ってみる。
「いるかお?」
たった五文字、
だけど自分から送ることは滅多に無いので、その五文字を考えるのですら時間を食った。
送信ボタンを押さんと伸ばしている手は、微かに震えている。
やっと押せた送信ボタン、きちんと確認した送信完了画面。
少しほっとする。
でもいつまで経っても返ってこない返事。
五分待つ、十分待つ、十五分待つ、けれども返事は来ない。
心配になって部屋を右往左往して見るも、この感情は収まらない。
ツンにだって用事ぐらいはあるのだろう、そういう考えが浮かんでも何故か認められなかった。
そんな自分にイライラ、返事が来なくてストレス、挟み撃ちにされている僕。
-
182 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 22:51:30.25 ID:dLWLxw/c0
そして吐き気を催し始めた頃、一件の着信が。
メールではなく電話だった、相手を確認せず緑のボタンを押す。
(;^ω^)「もしもし!?」
「もしもし!? ブーン!?」
良かった、ツンだ。
いや、この状況だと良かったと言えるのだろうか。
とりあえずツンの声はかなり焦り気味、何があったかわからないが冷静に対処せねばならないと思った。
(;^ω^)「おk、とりあえず何があったかわかりやすくお願いするお」
「あ、あのね、あんまり大きな声では言えないんだけど……」
少し彼女の声が落ち着いた、理由はわからないが状況が幾分かマシになった。
「ストーカーが付き纏って来てるみたいなんだよね……丁度今……」
朝の事はやはり杞憂ではなかったか。
本当に存在したストーカーに業を煮やした僕は、冷静に対処する事が難しくなっていた。
-
185 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 22:53:26.23 ID:dLWLxw/c0
- ( ω )「どこにいるんだお……?」
「え、えっと……この前事故があったとこの近く……丁度この前死んだ人と同じ道を通ってるみたい……」
( ω )「わかったお、すぐ行くお」
そう静かに呟き、電話を切った。
( #゚ω゚)「ぶっ飛ばしににいくお」
手短に話さないとこの怒りを顕わにしそうだった。
こんな自分の声を聞かれたくない、
その気持ちで頭が埋まっていた。
すぐさま階段を駆け下りてドアを破る勢いで外に飛び出す。
外に出ているまるちゃん(自転車の名前)に鍵を差込み、猛スピードで走り出した。
家族はその姿を見て若干引いたとか。
( ゚ω゚)「待ってろお、必ずぶっ飛ばしてやるお」
立ち漕ぎしながら静かに呟き、スピードを上げる。
ギアは勿論最大の6だ。スピードメーターは過去最高値をたたき出していた。
-
189 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 22:56:03.16 ID:dLWLxw/c0
ξ;゚听)ξ「……一体何なのかしら」
後ろを向くと何故か気配がする、さっき確認できたが一人男がついてきているようだ。
怖い、素直に怖い。
おかげで携帯の存在を忘れていて、ブーンのメールにすら気づかなかった。
なんとなく右を見たら黒猫がいて、彼のことを思い出した。
多分あの猫がクロマラだったんだろう。
ξ;゚听)ξ「どうしよう……」
ゆっくり、ゆっくり歩いている。
向こうの歩く早さはこっちに合わせているらしく、同じリズムを刻んでいた。
距離は50Mほど離れている。
だけどいつあっちが走り出してくるかわからない。
それにここは暗い路地裏だし、押し倒されでもしたら間違いなく助からない。
だからこそ早く大通りに出たい、でもうかつに走るとあっちが本気出してくるかもしれない。
早くブーン……来て……そう願い続けた。
-
190 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 22:57:56.25 ID:dLWLxw/c0
- なんで最近になって現れたんだろう。どうせなら、ずっと前からずっと遠くで見られてる方がよかった。
いや、もしかしたらずっと遠くから見てたのかも知れない。
それはそれで気持ち悪い。
なんで男ってこんなんばっか……だから嫌なのに……。
気を紛らわすために、細心の注意を払いながら考え事をしていると、明かりが近くなってくるのがわかった。
ξ;゚听)ξ(やった……もうすぐ大通りに出られる……)
距離にして残り100Mほどだろうか。
-
193 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 23:00:10.23 ID:dLWLxw/c0
- そう思った時、少し油断をしてしまった。
その油断を逃さず、後ろの足音のリズムが極端に早くなった。
50あった距離がだんだん縮まっていく……やばい……
ξ;゚听)ξ「きゃああああ!!!!」
あと数秒で捕まりそうになった頃、やっと足が言うことを聞いた。
持てる限りの力を尽くして走った、無我夢中に。
逃げなきゃ、逃げなきゃ。
「ああああああああ!!!」
ξ;゚听)ξ「きゃっ!!」
後ろから飛びつかれた。
5Mほど転がり大通りに出てしまった。
幸か不幸か、いや間違いなく不幸だろう。
大通りには余り人がいなくて、自分たちは目立たなかった。
-
194 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 23:02:14.74 ID:dLWLxw/c0
- ξ;凵G)ξ「やめてよ……あたしが何したのよ……」
男はあえぎ声をあげながら、回りを気にせず体を弄って来る。
背中、太もも、脹脛。
ゆっくり厭らしく触ってくる、気持ち悪い。
やめて、やめて。
その声は声にならず音にもならなかった。
男の厭らしく醜い手が彼女に胸、秘部に触れようかとした頃。
彼女はある男の雄たけびを聞く。
-
197 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 23:04:12.57 ID:dLWLxw/c0
- 「おおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
―――その人は、彼女が最も信頼する人間であり。
( ゚ω゚)「おおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
―――その人は、彼女に最も楽しい時間を与えてくれる。
( ゚ω゚)「ツンをはなせぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
―――彼女にとって一番大事な人。
ξ;凵G)ξ「ぶーん……」
( ゚ω゚)「おぉぉぉぉぉ!!!」
-
201 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 23:06:12.83 ID:dLWLxw/c0
- 「な、なんだよ! あいt」
ツン達の左側から猛スピードで迫ってきてるブーンは、彼女等の手前で少し下側に反れた。
彼女を避けて、獣の足を自転車で轢いたのである。
「ああああぁぁぁぁぁ!!!てめえぇぇえええぇぇ!!」
ブーンは足を轢いた後自転車から飛び降り、男に向かって走っていた。
ツンからは少しばかり遠かった。
男の方は足の痛みをを必死に押さえようとして、必死にもがいている。
そうやって暴れる様も獣の如し、醜い形相だった。
-
204 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 23:08:53.05 ID:dLWLxw/c0
- ξ;凵G)ξ「きゃっ!」
そのもがきの動作で、ツンを5M程吹き飛ばしてしまった。
その所為でツンは道路に思い切り出てしまう。
大通りなのでかなり危険な状況だ。
焦ってツンを見るブーン、まだ車はいない。
それに一度安心し、左側を見る彼の目に映ったのは先を走っている大型のトラック。
まだ影は小さい。けれども彼女を助けようにも、距離がありすぎた。
間違いなくトラックのほうが速いだろう。
スピードはあまり無いにしろ、あの重量がぶつかったらツンは助からない。そして自分は間に合わない。
彼はあらん限りの声を出し、叫ぶ。
-
206 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 23:10:21.56 ID:dLWLxw/c0
- ( ゚ω゚)「ツン!走るお! 早く道路から出るんだお!」
ツンには間違いなく届いたであろう彼の叫び。
だけど彼女は倒れながらこちらを向いて首を横に振っている。
恐怖で全身が硬直しているのだ。泣きじゃくる彼女。凄く苦しかった。
運転手がツンを見る頃ブレーキをかけても遅いだろう。
トラックの車高は高い、ようするに死角の範囲は広い。
しかもこの暗い夜、前には目を向けても下には目を向けないだろう。
-
210 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 23:12:40.21 ID:dLWLxw/c0
- このままでは助けられない、
ツンが死ぬ。
死ヌ? ナンデ?
何モ悪イコトシテナイノニ?
ソンナノアリエナイ!!
想いは口から出て悲痛な叫びとなる。
( #゚ω゚)「あ゛ぁあ゛ぁあ゛ぁぁぁぁあ゛あ゛ぁぁぁあ゛ぁぁぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!!!!!」
走りながら、叫んだ。
最早言葉にならない叫び。
それに反応するものが、ツンの近くの歩道の塀の上にいた。
-
212 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 23:14:56.34 ID:dLWLxw/c0
- 黒い風の如く塀の上を駆けるそれは一瞬何かわからない。
ツンの右先にある標識に上り、トラックが来るのをまつ黒い影。
丁度そこには電灯があり、姿が照らし出される。
ブーンはそれがやっとなんなのかがわかった。
黒猫だ、クロマラだ。赤い紅葉をくわえ、どこから手に入れたのか銀のモールも体に巻いていた。
ツンを助けようとしている、間違いない。
そうでなければあんな目立つものを手に入れはしないだろう。
ブーンは、トラックが止まってくれることを祈るしかなかった。
-
214 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 23:16:46.73 ID:dLWLxw/c0
問題のトラックが標識の手前に来た、途端飛び出るクロマラ。
運転手の目線の高さに丁度降って来た。
N| "゚'` {"゚`lリ「うおっ!?」
急に振ってきた銀と赤と黒の物に、運転手は驚き急ブレーキを踏む。
あまりスピードは出ていなかったと言えど車は車。
急には止まれないものである。
段々……段々……と縮まっていく距離。
( ;ω;)「止まれえええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」
一人の少年の悲痛な叫び。
-
217 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 23:18:43.26 ID:dLWLxw/c0
- ―――その思いは
―――届いた
止まった、トラックは残り5M無いところで止まったのである。
-
219 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 23:21:19.83 ID:dLWLxw/c0
- 急ブレーキを踏んだときに運転手は横たわっているツンに気がついたのだろうか。
止まるや否やトラックから飛び降りツンに安否を確認しに出た。
ブーンはできるだけ早く、ツンに駆け寄ろうと全速力で走っていた。
N| "゚'` {"゚`lリ「お譲ちゃん、大丈夫かい?」
ξ )ξ「…………」
つなぎを着た運転手は低く、いい声でツンに話しかけていた。
対するツンの対応は無言、目を閉じている。
N| "゚'` {"゚`lリ「……参ったな、気絶してるのかなこりゃ」
困り顔で頭を掻く運転手。
そこに、
( ゚ω゚)「ツンは!? ツンは大丈夫ですかお!?」
修羅の如き形相をしたブーンがやってきた。
涙と鼻水などでぐちょぐちょの顔をしていた。
-
221 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 23:23:26.88 ID:dLWLxw/c0
- N| "゚'` {"゚`lリ「彼氏かい? 今はそんなことどうでもいいか、お前さんが話しかけてみるといい」
その言葉に頷きツンに近寄るブーン。
しゃがみ込み、彼女の顔を覗き込む。
すると
ξ#゚听)ξ「もう! 怖かったんだから!!」
((#)ω^)「オルフ作曲!!!」
鋭いアパカッが飛んできた。
とても死にかけた人間とは思えない。
その転生してきた彼女のパンチを喰らい、ブーンは気絶してしまった。
N| "゚'` {"゚`lリ「おうおう、タフなお譲ちゃんだねぇ」
ξ#゚听)ξ「トラックに轢かれそうになるより痴漢の方がよっぽど精神的にきますよね!!」
N| "゚'` {"゚`lリ「よっぽどだな、まあいい。とりあえず済まなかったな。
それと譲ちゃん、お前気に入ったからこれをやる」
いい声の男(略していい男)はそう言って、つなぎの中から名詞を取り出した。
-
224 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 23:26:01.20 ID:dLWLxw/c0
- ξ゚听)ξ「これは……?」
N| "゚'` {"゚`lリ「俺の名刺だ、電話番号も書いてある。
そこの彼氏にも置いておいてやるから何かあったら連絡するといい」
ξ゚听)ξ「阿部……高和……?」
N| "゚'` {"゚`lリ「おう、俺の名前だ。気軽に阿部さんって呼んでくれ。それじゃな!」
阿部さんはトラックに入り込み、素晴らしいテクでターンして帰っていった。
ξ゚听)ξ「……なんだったんだろう、あの人」
彼女は気絶してるブーンに問いかけるように、小さく呟いた。
( うω−)「んー……顎が痛いお……」
僕が目覚めると、そこら中はうるさかった。
救急車、パトカーのサイレンの音がけたたましく鳴り響いていたからだ。
-
225 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 23:27:01.18 ID:dLWLxw/c0
- とりあえず、目の前にいるツンに
( ^ω^)「おはようだお」
挨拶してみた。
ξ゚听)ξ「ああ、おはよう!」
いつも通りの返答ですっかり安心したのか、体の力が抜けてしまった。
( ^ω^)「……どうなったんだお?」
ξ゚听)ξ「とりあえず、これ」
何か型紙を渡してきた。
名刺みたいだけど……。
( ^ω^)「阿部……高和……?」
ξ゚听)ξ「あのトラックの運転手の名前よ、なんか気に入られたから貰っちゃった」
-
229 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 23:29:04.97 ID:dLWLxw/c0
- なるほど、あの人か。
伝説の阿部…………おっと、この事は話せば長くなるからまた今度。
あの糞暴漢はどうしたんだろう……と思って周りを見てみる、どうやらパトカーに乗せられてったようだ。
ふぅ、と一息ついたら僕とツンの間にクロマラが降りてきた。
いつも通り、睨みを利かせている。
ξ゚听)ξ「あら! さっきは本当にありがとね!」
( ^ω^)「おっおっ、命の恩猫だお」
そう言われたクロマラは恥ずかしかったのか、一瞬目線をそらしどこかに行ってしまった。
もう一度だけ、
( ^ω^)ξ゚听)ξ「本当にありがとだお!(ね!)」
と言うとこちらを一度見て、鋭かった目を緩めた。
やっぱりあの猫はツンツンデレだったのだろう。
満足そうな顔(と言っても大して変化無し、でも僕らにはわかる)をして草むらの中へ消えた。
-
232 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 23:31:44.44 ID:dLWLxw/c0
途端、静かになる二人の周りの空気。
救急車も断り、パトカーは数が足りないため先に一度帰ってしまった。
二人の間に流れる、気まずいと言うより真剣な空気。
その静寂を破ったのは僕だった。
今の空気なら、臆病だった自分と決別できる。
そう思い、この言葉を発する。
( ^ω^)「……突然だけど、僕は君のことが好きだお」
ξ゚听)ξ「あらそう……」
ξ;゚听)ξ「へ!?」
ξ;゚听)ξ「い、いやいやいやいや、冗談か、友達としてでしょ?」
-
233 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 23:33:14.96 ID:dLWLxw/c0
- ( ^ω^)「残念ながら異性としてだお」
ξ;゚听)ξ「嘘でしょ〜!?」
( ^ω^)「この流れで嘘なんか言わんお」
ξ;゚听)ξ「それもそうだけど……私は友達にしか見れないって言うか……」
( ^ω^)「僕もそれで構わないお」
ξ゚听)ξ「……どういうこと?」
( ^ω^)「友達として大好きでいてもらえるだけで、僕は幸せだお。
君と話すことは楽しいし、幸せだお。このままの距離がいいんだお。
例え付き合ったとしたら、少なくともこの距離は変わるお。」
一息ついて、続ける。
-
234 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 23:33:59.80 ID:dLWLxw/c0
( ^ω^)「ただ、自分の気持ちを伝えたかっただけだお」
ξ゚听)ξ「そっか……」
( ^ω^)「今までどおりでいてくれるおね?」
ξ゚听)ξ「嫌だ!」
(;^ω^)「……え?」
予想GUYの返答にソフトバンクも吃驚。
やっぱり伝えなきゃ良かった……そう思ったとき彼女が口を開いた。
-
235 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 23:34:49.08 ID:dLWLxw/c0
- ξ゚ー゚)ξ「もっと仲良くするんだからね!」
( ^ω^)「……ありがとだお」
ξ゚听)ξ「気にしない気にしない! ほら帰るわよ!」
( ^ω^)「把握だお!」
今回のことがきっかけで、僕は自分の気持ちを正直に伝えることができた。
付き合おうなんておこがましい事は全く思ってなかった。ただ伝えたいだけだった。
そのおかげで、さらに友人としての距離が縮まったなら、結果としては二重丸、三重丸を上げられるほどいいものだ。
ありがとう、クロマラ。
終
-
242 : ◆PORNOqm4Ug
:2007/12/01(土) 23:45:36.92 ID:dLWLxw/c0
- 遅れましたが自分のはこれで終わりです、長い間ありがとうございました。
次は狼さんです、どうぞごゆるりと見てってください。
TOP 目次へ 黒猫グループ・共通部分へ 一つ前に投下された作品へ
次に投下された作品へ