( ・∀・) 破滅が間近なようです
-
954 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
:2007/12/06(木) 22:46:28.93 ID:jc4PHnNCO
- 日常の終わりは、意外な程にあっけなかった。
だからこそ僕はこう言うんだ。
( ・∀・)「君を最後まで守りたい」
たとえそれが、どんなに無謀だとしても。
( ・∀・) 破滅が間近なようです
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955 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
:2007/12/06(木) 22:47:53.98 ID:jc4PHnNCO
- 「ガアアアアアアッ!!」
叫び声をあげて飛び掛かってくるおぞましい生物。
映画「エイリアン」の表題になったそれの口元から、
長い牙を生やしたような容貌をしている。
(;・∀・)「うああああああっ!!」
恐怖で身体が動かない。
眼前に迫った牙が、僕の胸を貫こうとする。
(;゚ー゚)「危ないっ!!」
突然、誰かに横から押し飛ばされた。
僕は堪らず地面に倒れ込んでしまう。
その勢いで左頬を擦り、火傷のような熱い痛みを感じた。
「ギャアアアアアアアっ!!!」
と、鳴り響く化け物の断末魔。
見ると僕を押した人物――どうやら女性のようだ――がそいつを撃ち殺したところだった。
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960 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
:2007/12/06(木) 22:49:17.38 ID:jc4PHnNCO
- (*゚ー゚)「モララー君、大丈夫?」
こちらを振り向いてみせた彼女は、なんと僕の元クラスメート。
化け物の深緑色をした返り血は、
彼女の赤い服と合間ってクリスマスカラーを成している。
そんな場違いなことを考えつつも、僕は命の恩人に礼を言うことにした。
( ・∀・)「椎崎さん、ありがとう」
(*゚ー゚)「どう致しまして、モララー君」
彼女の名は椎崎詩歌、日系アメリカ人。
容姿は中の上、勉学はクラスで十番前後、運動は鈍い部類の男子にぎりぎり勝てない程度。
全てが並以上で、しかし、一番になることはけっしてない。
僕の記憶の中の彼女は、そんな人だった。
( ・∀・)「驚いたよ、まさか君がこんな芸当の持ち主だったなんて」
(*゚ー゚)「えへへ、必死だったからね」
( ・∀・)「それにしても凄いって、一発でコアを打ち抜くなんて!」
コアとは、つまりは化け物どもの弱点のことだ。
やつらの両目の間に紫色の突起物として存在するそれは、
あいつらにとって余程大切な部位らしい。
それこそ、銃で打ち抜かれると即死する程に。
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964 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
:2007/12/06(木) 22:50:49.60 ID:jc4PHnNCO
- 化け物が僕達の世界に現れたのは、今から半月程前のこと。
少し、時間を巻き戻してみようか。
「……未確認飛行物体に対し、日本政府は……」
( ・∀・)「くっだらねー」
宇宙から日本上空に円形の物体が飛来し、その場に浮かび続けてはや三日。
当初はワクワクしたこのニュースも、
やれどこの団体が調査するんだ、いやいや我々のような国こそ相応しい等という、
くだらない言い争いと状況変化の乏しさのため、僕の中では既に精彩を欠いていた。
( ・∀・)「もっとハジケた行動を起こしてくれないとな……、ポップコーンみたいによ」
そう呟き、キャラメルポップコーンを一掴みほうばる。
噛む度にコーンの香ばしい風味とキャラメルの優しい甘さとが口中に広がっていった。
やはりブライアン爺さんの店のキャラメルポップコーンは、世界最高の食い物だ。
……やたら手が粘つく点さえなけりゃあな。
-
966 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
:2007/12/06(木) 22:52:23.87 ID:jc4PHnNCO
- ( ・∀・)「さて、どっかの局でアメフト中継やってねーかな」
テレビをスポーツ系のチャンネルに切り替えようとした瞬間、
「ぎゃああああああっ!!!」
遥々日本から実況中継をしていたキャスターが甲高い声をあげた。
直後、彼女の首が吹っ飛ぶ。
(;・∀・)「俺は映画でも見てんのか!?」
訳が分からない。
何だってこのニュース番組は、
こんなハリウッド紛いのフィクションを流し始めたんだ。
(;・∀・)「作り物……だよな?」
カメラの持ち手を失ったのか、テレビ画面の視点が落下した。
ヒビが入ったそれは、しかし映像を伝え続ける。
(;・∀・)「……んっ、こいつは何だ?」
僕は画面の奥に、黒くうごめく何かを見た。
こいつは、まさか……。
( ・∀・)「エイリアン……?」
未確認飛行物体、加えて日本に向けてミサイルの大群が放たれたのは、
それからたった一週間後のことだった。
-
969 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
:2007/12/06(木) 22:53:52.98 ID:jc4PHnNCO
- あの日、未確認飛行物体から白い粒が雨の如く降り注いだらしい。
粒の正体は化け物どもの卵。
そいつらは落下しながら羽化成長し、
地上につくころにはクロコダイルよりも迫力ある大きさになっているそうだ。
厄介なことに化け物の卵は、列島に際限なく降り注いだ。
結果日本は壊滅し、遂に我等がアメリカは、奴さんを化け物ごと焼き払うことにした。
( ・∀・)「しかし冷たい話だねぇ、頻りに核使用を主張した某国よりゃ温和だろうけどさ」
何はともあれ未確認飛行物体は、
この日をもって大陸弾道ミサイルによってぶっ潰されるはずだった。
いや、実際に日本上空のそれは粉々になった。
だがしかし、本当の悪夢はこれからだった。
-
971 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
:2007/12/06(木) 22:55:12.97 ID:jc4PHnNCO
- (;・∀・)「おいおいおい、これは悪い夢じゃないか?
それとも、うちのテレビもとうとうボケが入ったのか?」
僕の視線の先にあるおんぼろテレビは、世界中にあの未確認飛行物体と同じような物が、
合わせて百以上飛来したということを知らせていた。
僕が住まうミズーリ州セントルイス市も、どうやら未確認飛行物体の笠を冠った状態らしい。
(;・∀・)「……」
全身が凍ったように冷たくなった感覚を覚える。
僕は少しでも気を落ち着けようと、キャラメルポップコーンを口に入れた。
( ・∀・)「飲み込めねー……」
いつの間にか渇いていたた口は、ポップコーンを喉に通すことを中々許さなかった。
-
974 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
:2007/12/06(木) 22:57:16.46 ID:jc4PHnNCO
- それから更に五日後。
撃ち落としても撃ち落としてもその度飛来する未確認飛行物体と、
それらが放つエイリアンどもにより、
世界中はパニック状態に陥っていた。
電気は止まり、ガスも止まり、ついには水まで止まり。
ああ、現代社会って案外脆かったんだ。
そんな感想を抱いたのは、ほんの二、三日前のこと。
(;・∀・)「ちっくしょー」
僕はというと、現在自転車に乗って必死に草原を走っている。
腰につけたホルダーには頼りない銃が一丁、それ以外は着の身着のままだ。
-
976 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
:2007/12/06(木) 22:58:43.28 ID:jc4PHnNCO
- (;・∀・)「クラムの倉庫に篭ってりゃ、バレないと思ったんだがな」
化け物がここらにのさばり出してからの二日間、
僕はクラムスクールのテキスト倉庫を隠れ場にしていた。
大学に行くために世話になった場所だったから、鍵の場所なんかは把握してたしな。
ちなみに元の家は運の悪いことに、
早い段階で化け物に目をつけられ、占拠された。
( ・∀・)「しっかし、貴重な銃弾を大分使っちまったな」
呟きつつ、腰の銃に目をやる。
侵入してきた化け物から逃れるために窓を破った際、二発。
自転車へとたどり着くまでの牽制に、三発。
銃に込めていなかった予備の弾を合わせても、せいぜい十かそこらしか残っていない。
( ・∀・)「とにかく、あいつらに見つからないような場所を探そう」
そんな場所、もはや残っていないのかもしれないけど。
-
979 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
:2007/12/06(木) 23:00:00.34 ID:jc4PHnNCO
- ( ・∀・)「にしても、自転車にさえ乗ってりゃ、寝る時以外は安全そうだな」
あいつらは人間より余程早く走るが、流石に自転車には追いつけない。
囲まれちゃあ終了だし、いつかはそんな時も来るんだろうが、
このただっぴろい草原なら、その点安心……
バンッ
(;・∀・)「えっ?」
鈍い音がした後、徐々にペダルが重くなってきた。
これはもしや、パンク……。
(;・∀・)「うあああっ、ついてねえええええっ!!」
僕は泣く泣く自転車を手放すことにした。
-
982 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
:2007/12/06(木) 23:01:34.16 ID:jc4PHnNCO
- ( ・∀・)「ちょい疲れたな」
自転車がおしゃかになってから三時間。
僕の足は、流石に限界をむかえようとしていた。
(;・∀・)「つーか、移動する意味なんざない気がしてきた」
例えセントルイス市の外、更にはミズーリ州の外、ひいては国外に行っても、
どうせ化け物がのさばってんだ。
それならばいっそ、休憩して体力温存してもいいじゃんか。
うん、そうしよう、楽だし。
( ・∀・)「どっこいしょ」
僕は座り込み、空を見上げた。
非常時だってのに、相変わらずどこまでも青い。
いっそムカつくぐらいに綺麗な……って、あれっ?
急に空が曇った?
「グルルルルル」
(;・∀・)「うわっ!!?」
空を暗く見せたのは、いつの間にか背後にいた化け物の影だった。
-
984 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
:2007/12/06(木) 23:02:40.74 ID:jc4PHnNCO
- (;・∀・)「うああああああっ!!」
恐怖で身体が動かない。
眼前に迫った牙が、僕の胸を貫こうとする。
(;゚ー゚)「危ないっ!!」
突然、誰かに横から――――そうして、現在に至る。
(*゚ー゚)「モララー君、私達どうなっちゃうんだろう?」
( ・∀・)「さあ、どうなるんだろうね」
(*゚ー゚)「……でもよかったぁ、最後にモララー君といられて」
小柄な彼女は、さして大柄でもない僕を見上げてニコリと笑った。
こうして見るとなかなかチャーミングかもしれない。
(*゚ー゚)「今だから言えるけど、私、モララー君のこと好きだったの」
( ・∀・)「ふーん」
素っ気ない返事をしてそっぽを向く。
赤くなった頬を見られるのは、恥ずかしいから。
-
986 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
:2007/12/06(木) 23:03:38.08 ID:jc4PHnNCO
- 日が暮れ、辺りはすっかり黒に染められた。
寒さのため、歯の根が合わなくなる。
(*゚ー゚)「うーん」
椎崎はというと、さっきからポーチの中をガサゴソといじっている。
何か僕に見せたいものがあるらしい。
( ・∀・)「一体何なんなの?」
(*゚ー゚)「それは見てからのお楽し……」
ガサガサガサッ
周囲の草が揺れる音。
悲しいかな、風は吹いていない。
一度草の揺れる音が聞こえたのを皮切りに、音がは様々な場所から聞こえ始めた。
やつらは黒いから、裸眼じゃこの暗闇と見分けることはできない。
もしかしたら、既に囲まれているのかもしれないな。
-
989 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
:2007/12/06(木) 23:04:50.58 ID:jc4PHnNCO
- (* ー )「モララー君」
椎崎が僕の胸に飛び込んできた。
彼女の震えが服越しに伝わってくる。
( ・∀・)「案外脆いものなんだね」
僕らを取り囲む全てが、僕は心の中でそう付け加える。
(*;ー;)「でも、でも……私は、確かにここにいるよ?」
草の揺れる音は、ますますうるさくなってきた。
囲まれているのは確実だな。
だけど僕の心は、不思議と椎崎の方ばかりを向いている。
"確かにここにいる"
この一言が、弱った僕の心にえらく染み入ったのだ。
どうやら僕は、椎崎に惚れたようである。
-
992 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
:2007/12/06(木) 23:05:46.64 ID:jc4PHnNCO
- ( ・∀・)「君を最後まで守りたい」
たとえそれが、どんなに無謀だとしても。
今や椎崎は、恐らく地球上で唯一の、僕の確かな居場所だから。
(*;ー;)「嬉しい……」
椎崎はその後小さく、しかしはっきりと呟いた。
(* ー )「大丈夫、きっと助かるよ」
-
997 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
:2007/12/06(木) 23:07:00.08 ID:jc4PHnNCO
- 昨夜草を揺らした主は、結局何もせずに遠ざかっていったため、
僕らは無事に日を越すことができた。
(*゚ー゚)「よかったね、モララー君」
笑顔でそう言う椎崎。
しかし僕は、もう笑う気にはなれない。
(*゚ー゚)「大丈夫だよ、この広い世界で、きっと私達だけは助かるから」
草の音が遠ざかる寸前、またもや椎崎はポーチに手を突っ込んでいた。
しかし、それだけなら確信には至らない。
何より決定的だったのは、今朝ちらりと見たあの光景。
寝たふりをしながら薄目を開けて見た、あの光景。
―――椎崎が、化け物のコアと同じ、紫色をした発振器らしき物をいじっていたのだ。
-
1000 : ◆Cs058I7w36
:2007/12/06(木) 23:08:05.13 ID:jc4PHnNCO
- (*゚ー゚)「どうしたのモララー君、顔が青いよ?」
(;・∀・)「……椎崎さん、君が僕に見せたかった物って一体なんなの?」
(*゚ー゚)「えー、分かってる癖にぃ!」
そう言って、抱き付いてくる椎崎。
口が開いたままのポーチから、バラバラと紙切れ――僕を写した"数千枚もの"色褪せた写真が零れ落ちた。
(* ー )「ずっと、一緒だからね……」
静かな狂気を感じ取り、僕はブルリと身を震わせた。
〜FIN〜
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