( ^ω^)ウルトラマンブーンのようです

34 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 21:25:59.11 ID:HFb2kPlf0
乙でした
それでは投下させていただきます


ネカフェばんざーい!

 
37 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 21:28:01.76 ID:HFb2kPlf0


('A`)「レーダーに生体反応あり!」


電子画面に浮かび上がった、チカチカと点滅する赤い光。
間違いない――――奴のお出ましだ。
ご苦労な事だ。この美しい地球へと向かう旅はさぞ疲れただろうな。

('A`)「カメラ切り替えます!」

手際よくスイッチを操作する。
ずらりと並んだモニター一面に広がる映像を眺めて、俺はごくりと唾を飲んだ。


そこに映っていたのは、海面に佇む一匹の巨大な怪獣。


見るからに頑丈そうな皮膚。口元から覗かせる鋭い牙。
こんな異形が街にまで上がってこようものなら、確実に大惨事になるだろう。


 
39 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 21:30:23.07 ID:HFb2kPlf0
当然、野放しになど出来る筈が無い。


('A`)「目標を画面にて確認!
   位置は本基地より北西に二十三キロ先、
   現在、特に動きは見せていません!」


状況を簡潔に説明する。
怪獣はまだ体のおよそ半分を海中に預けているためか、動きは遅い。

……遅いが、徐々に浮上して来ている。


俺は力の限り叫んだ。


('A`)「要請します。至急、出動命令を!!」


 
42 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 21:32:22.93 ID:HFb2kPlf0
('A`)「命令を……はぁ」


……言ってからまた虚しさが込み上げてきた。
思わず吐いた溜息が、今の俺の身にはやけに温かく感じられる。


こんな風に熱くなっているのは基地にいる中で俺だけだ。
他の隊員は呑気に会話を交わしている。
飛び込んでくる緊張感のない単語を聞く度に、どんどんやる気が削げていく。

仕方がない。
これは危機などではないのだから。


('A`)「あのー、命令を……」

モララー隊長に声をかけたが見事に無視された。
俺の声だけが、ただただ基地内でやたらと大きく響く。
凄ぇ切ない気分。

まあ、今に始まった事ではないのだが。


 
45 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 21:34:15.24 ID:HFb2kPlf0
思えば、子供の頃にもこんな事があったなぁ。
ああ、忌まわしき想い出が蘇ってくる――――。



遡る事十年以上前。
小学校の学芸会で「白雪姫」を演じる事に決まった時だ。

俺はどうしても王子様役がやりたかった。
動機は実に単純なもので、
密かに恋心を抱いていた女の子が前もって白雪姫役に決定していたからだ。

はい、皆様の予想通りクライマックスのキス目当てです。フヒヒ。

……自分が主人公の器じゃない事ぐらい分かっていた。
王子様なんてモノは人気者がやる役だって、十分に理解していた。
俺はクラスのヒーローなんかじゃない。
ただの一生徒だ。


それでも、勇気を出して立候補したんだ。


 
48 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 21:36:41.69 ID:HFb2kPlf0
――――なのに。

俺が必死で手を上げても、司会進行を務めていた委員長はスルーしやがった。


そりゃね、クラスでは目立ちませんでしたよ。
友達もいなかったですよ。
でもですね、ちょっとぐらい耳を貸してくれたっていいじゃないですか。


結局、俺に割り当てられた配役は七人の小人役だった。
理由は「チビだから」。
残酷でしたよ、現実ってヤツは。

渡された台本に台詞はなかった。
七人いる中で、俺の役だけ台詞がなかった。
書いてあったのは「(ここで面白い動き)」とかいう抽象的な指示。
要するにその場の賑やかしだ。
涙で明日が見えなかった。

その日の帰り道で降った雨を、俺は未だに忘れられない。


 
51 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 21:39:04.61 ID:HFb2kPlf0
PTAの陰謀がなければ木の役だったであろう事を考えると、
俺は恐怖で夜も眠れなかったよ。

……くそう、思い出したらまた怒りが込み上げてきた。
あの野郎、この恨みは墓場まで持ち込んでやるからな。
末代どころか、末代の精子まで呪って――――。



('A`)「――――って、そんな事はどうでもいいんだよ!
   何だこの悲しい記憶は!
   つか何でまだ覚えてんだよ俺の脳ミソ! あああああああああ!!」



俺のハートは泣いていた。
死にたい。


 
53 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 21:41:02.37 ID:HFb2kPlf0
――――落ち着け、大事なのは今だ。
現実に戻り、楽しげな声が聞こえてくる後方の会議場へ目を向ける。


(,,゚Д゚)「でさぁ、この前見つけたスイーツの店なんだけど……」

(*゚ー゚)「うんうん」

(,,゚Д゚)「今週末にでも行かね? どうせ仕事なんてサボっても問題ないし」

(*゚ー゚)「えー、どうしよっかな〜」


ギコさんとしぃさん、また人目も憚らずイチャついてるし。

('A`)(……っていうかですね、ここ職場ですよ? 勤務中ですよ?)

心の中で突っ込みを入れる。

つーか半分くらい嫉妬。
何がスイーツ(笑)だ。男は黙ってわさビーフだろ。
畜生、これが恋愛ってヤツか。
永遠に童貞と言う名の手枷を嵌められた俺には無縁な話だぜ。


 
57 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 21:43:54.30 ID:HFb2kPlf0
その隣でワイワイ騒いでいる連中に視線を移す。

念を押すが、これは怪獣の姿を目の当たりにしている人間たちである。
決して修学旅行のバス内における学生ではない。


('、`*川「キャー、上がっちゃった! 貧民だったのに二抜けしちゃった!」

(#゚∀゚)「ちきしょぉぉぉぉぉぉいい加減誰か5以下切りやがれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

(´・ω・`)←5以下を溜めてる人

从 ゚∀从「オワタwwwwwwオレまだ五枚も残ってるしwwwwwwwww」


('A`)(クソッ! 何でこれで給料が一緒なんだよ!)

同期の三人は上官と仲良くトランプ遊びに耽っていた。
あのさ、それ業務じゃねーじゃん。
業務とゲームって、語感はちょっと似てるけど全くの別物じゃん。
て言うか副長もはしゃがないで下さい。いい年して。

……真面目に働いている自分が馬鹿らしくなってくるよ、ホント。


 
60 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 21:46:22.25 ID:HFb2kPlf0
俺は堪え切れず皆の元に駆け寄った。

( ・∀・)「あれー、どうかしたかい?
      今やっと僕にハイパー大富豪タイムが訪れたところなんだけど」

('A`)「えー、あのですね。指示を仰ぎたいのですが……」

( ・∀・)「あ、ゴメン、よく聞こえなかったから気付かなかったよ」

('A`)「……えと、怪獣が現れたんです」

( ・∀・)「うん、出てるね」

('A`)「それで、出撃の許可を……」

( ・∀・)「えー、そんなに急がなくても大丈夫でしょ。
      あの怪獣、水浴びにでも来てるだけだろうしさ。
      宇宙も暑くなってきたんだろうねぇ」

('A`)「……」

毎度の事ながら、俺は呆れて物も言えなくなってしまう。

こんなふざけた意見が正しいという事実に。
そして、こんな人が地球防衛軍日本支部の隊長だという現実に。


 
62 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 21:48:33.44 ID:HFb2kPlf0
実際、怪獣は大した害なんて起こさないのだ。

それこそ目的は水浴びだったり、水分補給だったり。
ごく稀に海底資源を求めて到来する奴らもいるが、
採取されるのは俺たち地球人にとって価値のないモノばかりなのでどうって事ない。


だったら、防衛軍なんて無くても一緒だと言いたくなるだろう。


ところがそうもいかない。
一般人は怪獣の実情なんて知らないのだから、当然パニックに陥る。
無害とは言え、アイツら外見だけは無駄に怖いからな。

そこで我が地球防衛軍の出番となる。
怪獣と戦闘し、「命がけで平和を守っている」という事をアピールするのだ。
要は印象操作である。

放っておけば怪獣は勝手に帰っていくが、人々はそんなもんじゃ満足しない。
俺たちが何もしなければ、彼らは防衛軍に対して不信感を抱くだろう。
理由を説明したって信じて貰える訳ない。
だって、怪獣が絡んでるんだぜ?

だから、反撃されない程度に嫌がらせをして早々にお帰りいただくのだ。
そうすれば傍目には軍が怪獣を撃退したように見える。


 
65 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 21:50:52.24 ID:HFb2kPlf0
つまり平和を演出するのが俺たちの仕事だ。
皮肉にも、俺はこんなところでヒーローを演じているのだ。


('A`)「でもですね、流石に何分も放置というのも……」

( ゚∀゚)「いいじゃん。大丈夫だって。
    とりあえず、あと一ゲームだけやらせてくれよ」

ジョルジュの野郎が口を挟んできた。

('A`)「お前もよ、もっと真面目に任務に当たろうって気はねぇのか」

( ゚∀゚)「だってさー、放っておいても問題ないんだぜ? あれ。
    頃合を見計らって出撃したんで十分だって。
    その方が効率いいだろ。どうせ被害もほとんどないんだし」

('A`)「……もういいよ」

何を偉そうな事を言ってやがんだ。
こいつだって、入隊して真実を知った時は驚いていたくせに。


 
68 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 21:53:06.11 ID:HFb2kPlf0
そりゃあ、俺だってショックだったさ。

幼い頃、怪獣が現れる度にビクビクしていた。
そこへ颯爽と飛んできて敵を退治する地球防衛軍に、俺は憧れていたんだ。

地球を守る正義の味方。
本当に格好良かった。羨望の眼差しで見ていた。
――――いつしか、俺は防衛軍に入りたいと思うようになっていた。


……その夢が叶ったというのに、何だこのザマは。


俺が憧れていたのは何だったんだ。

無知のままでいた方がずっと良かったよ。
夢なんてモノは、壊れてしまったらもう元には戻らないんだから。

毎日がくだらない。
俺だけがやる気を出したって空回りするだけ。
地球を救うためじゃない、地球人に偽物の平和を捧げるために働いている。

そんなのって、本当にくだらないよ。


 
70 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 21:55:06.01 ID:HFb2kPlf0
俺は厭になってその場から立ち去った。

モニターを見れば、ちょうど怪獣が背中を洗い始めたところだ。
ああ、平和だなぁ。
これが平和なんだと理解してしまえば、きっと楽になれるだろう。

('A`)(でも……こんなのって本物の平和じゃねぇよ)

愚痴りつつ管制塔の椅子に腰掛けた。
相変わらず座り心地は最悪だ。
別に高い位置にあるわけじゃないが、うちの軍ではレーダー室を塔と呼んでいる。
由来は知らない。知ったところで何の得もない。

ピコピコと電子音を立てる機器に囲まれると、不思議と気分が落ち着く。
それと同時に、ますます悲しくなってくる。

だって、こんな立派な機械も大して役に立っていないんだぜ?


('A`)「ハァ……」


……俺って、何のために頑張ってるんだろうな。


 
72 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 21:57:29.63 ID:HFb2kPlf0
('A`)「あーあ、機械はいいなー」

子供の時から、俺の親友といえば機械だった。
学校で友達を作れなかった俺は家に引き篭もってゲームばかりしていた。
……もっとも、それさえ一人だったけど。

ボンバーマンはストーリーモードしかやった事がないし、
SDXのヘルパー機能とか俺への当て付けとしか思えなかった。
当時の夢に至っては、『がんばれゴエモンでおんぶプレイをする』だったんだぜ。
まあ、桃鉄はえんまにも勝てるようになれたけどね!

俺の悲話は終わらない。
近所の玩具屋でやっていた福引でマルチタップが当たった時なんか、
無理を言って連射タップに変えてもらったぐらいだ。
果てしなく切なかった事をよく覚えている。
あ、どうでもいいけど連射タップって凄い持ちやすいのな。


('A`)「……って、そんな辛い記憶を二回も思い出してんじゃねぇよぉぉぉぉぉぉ!!
   俺のばか! がばがばまんこ!!」


もう嫌だこんな人生。


 
75 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 22:00:11.51 ID:HFb2kPlf0
そんな風に厭世的な気分になっていると、
不意に、耳に入ってくる音の変化に気が付いた。

('A`)「……ん……?」

慌ててレーダーに目を遣る。

('A`)「生体反応が……もう一つ……?」

新たに表示された光。
その白く輝く点が、先に出現した怪獣を表す赤い光へと近付いていっている。
速度は急。
進路は直線。
最短経路を、最高速度で通過している。


(;'A`)「おい、どういう……!」

――――こんなケースは初めてだ。
もう一匹怪獣が襲来したとは考えにくい。奴らはああ見えて譲り合いの精神を持っている。
こんな時になんだけど、そういうところは見習いたいと思います。

……って、今はそれどころじゃないっつーの!


 
77 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 22:02:11.67 ID:HFb2kPlf0
一体、何が起きているんだ?

背後からバタバタと足音が聴こえてくる。
どうやら、皆も異変に気付いたようだ。
……流石にそこまでは腑抜けていなかったか。

(,,゚Д゚)「おい、ドクオ!」

('A`)「あ、ギコさ――――」

(,,゚Д゚)「何やってんだ! さっさとモニターを見ろ!」

怒鳴るような声が響く。
ああ、そうだった。レーダーよりも分かりやすいヤツがあったな。
早速顔を上げてみる。


('A`)「はい…………ぃい!?」


不可思議の解答を目の当たりにして、俺は思わず奇声を上げてしまった。
自分でも心拍数が上昇しているのが分かる。


 
79 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 22:04:19.07 ID:HFb2kPlf0
(;'A`)「な……何だ、ありゃあ!?」


そこに映っていたのは。



( ^ω^)



怪獣と対峙する、珍妙なポーズを決めた巨人の姿だった。







        ( ^ω^)ウルトラマンブーンのようです




 
83 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 22:06:43.07 ID:HFb2kPlf0
('A`)「ちょっ、何なんですかアレ!」

(,,゚Д゚)「知るかボケ! こっちが聞きてーよ!」

粗雑な口調で言い返される。
ギコさんも相当に困惑しているのだろう、まあ普段から俺に対してはこうだけど。


( ゚∀゚)「おいおい……どういう展開だよこれ」

('、`;川「と、とととっとりあえず落ち着こっ! みんな!」

( ゚∀゚)「副長が一番落ち着いてませんよ……」

(´・ω・`)←股間のモッコリが気になる

从;゚∀从「うひゃー、怪獣vs謎の超人ってヤツか?」


どうやら、他の隊員も同様に動揺しているようだ。
……言っとくけど、シャレじゃねぇからな。


 
85 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 22:08:43.45 ID:HFb2kPlf0
('A`)「…………」

慌てふためく皆をよそに、俺は不思議と平静を取り戻す事が出来た。
今じゃ、両の眼はモニターに釘付けになっている。
瞬きさえ忘れそうになる。

('A`)「超人、か」

言葉では上手く説明できない。
――――けど、この昂ぶってくる気持ちは何なんだろう。

ヒーローと呼ぶには、間の抜けた顔をし過ぎている。
お世辞にも格好いいとは言えない。
それでも、このくだらない日々に活を入れる刺激としては十分だ。
俺はこういうドラマに憧れていたのかも知れない。

それこそ、昔地球防衛軍に憧れていたように。


('A`)「……すげぇ、面白くなってきたじゃねぇか!」


いつの間にか、俺は無垢だった頃の心に戻っていた。


 
87 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 22:11:06.71 ID:HFb2kPlf0



/"<・>___o)「水浴びうめえwwwwww地球サイコーwwwwwwww」

「ジュワワ!(そこまでだお!)」

/"<・>___o)「ん?」

久方ぶりの行水を楽しんでいた剛力怪獣『ノローツス』。
その心地良い一時が、突如聴こえてきた怒号によって妨害された。
急ぎ、ノローツスは声の主へと目を向ける。

そこにいたのは――――。


( ^ω^)「ジュワ!」


――――変な奴だった。

( ^ω^)「ジュワワワワ! ジュワ、ジュワワ!」

/"<・>___o)「日本語でおk」

( ^ω^)「V801星雲からの使者! 正義の味方、ウルトラマンブーン参上だお!」



 
90 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 22:13:42.73 ID:HFb2kPlf0
( ^ω^)「よくも現れたな極悪怪獣め!
      地球の平和を乱す奴はこのブーンが成敗してくれるお!」

/"<・>___o)「いや、俺、水浴びしてただけなんスけど……」

(#^ω^)「ええい、この期に及んで命乞いかお!
      もう許さんお! 喰らえ、ブーンナッコォー!!」

/"<・>___o)「ちょwwwwwwwww」


説明しよう! 『ブーンナックル』とはただのグーパンチだ!
拳が出来ていないので殴った本人もかなり痛いぞ!


/#<・>___o)「てめええええ! 人が下手に出てりゃあ調子に乗りやがって!!」

( ^ω^)「遂に本性を現したな!」

/#<・>___o)「てめぇがいきなりブン殴ってきやがったからだろうが!」

( ^ω^)「うぬぬ、こいつは凶悪だお……。
      貴様のような奴は僕が全身全霊を掛けてぶちのめしてやるお!!」


 
91 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 22:16:00.86 ID:HFb2kPlf0



( ゚∀゚)「おい、何か始まったぜ!」


巨人の先制攻撃を皮切りに、二者の戦闘が始まった。

怪獣はその発達した手足を存分に使った力任せな打撃を。
片や、巨人はその攻撃を去なしながら的確に拳打を当てていく。
一撃の重さでは怪獣に軍配が上がるだろうが、
命中率や精度においては、断然巨人の方が上回っている。

その迫力ある肉弾戦の次第を、俺たちはカメラを通して見守っていた。
まるで映画だ。おもすれー。

('A`)「おぉっ!」

怪獣は焦れたのか、
自分の身の丈ほどはあろうかという尻尾を振り回し、巨人の頭部を襲った。
掴まれれば、一気に戦局が巨人の側に渡るだろう。
そのリスクを背負っての反抗だ。


 
96 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 22:18:14.18 ID:HFb2kPlf0
――――が、巨人はそれを身をかがめて回避。
逆に、一旦視線を切った事で隙の生まれた怪獣へと猛接近した。

隣接後、顎へと拳が打ち上げられる。
素人の目線からすれば、それは決定打に思えた。
しかし、怪獣はダメージを負ってよろめきながらも、何とか堪え立姿勢を保っている。

('A`)「クソッ、何でマイクねーんだよ!」

全くもって残念だ。
映画は映画でも、無声映画だぜ。
臨場感を味わうには、やっぱり仰々しい音声がないとな!


从 ゚∀从「いけ! そこだ! カウンター! カウンター!」

興奮しているのは俺だけじゃない。
ハインなんかは顔に満面の笑みを浮かべている。
副長だって、声こそは発していないが、眼はずっとモニターに向いたままだ。

('A`)(ああ、そうだよな……きっと俺だけじゃなかったんだよ)

受け止め方の違いはあれど、誰もがこの状況に夢中になっている。
皆だって、現状に不満を持っていた筈なんだ。


 
99 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 22:20:25.00 ID:HFb2kPlf0
从 ゚∀从「あー! 何でそこで決められないんだよっ!」

('A`)「ってか、エキサイトし過ぎです、ハインさん」

从 ゚∀从「バカ、これで熱狂するなって方が無理だろ。
      オレも何か燃えてきたぜー! てや!」

('A`)「ちょwwwww殴んなwwwwwwww」

从 ゚∀从「うっせーこのヤロー! デュクシデュクシ!」

('A`)「痛ぇwwwwwwwww」

女らしさの欠片もない乱暴なパンチを数発貰った。マジで痛い。
まあ、こいつはそういう奴だから仕方ない。


(*゚ー゚)「大丈夫かな……こっちにまで来ないよね?」

(,,゚Д゚)「心配するな……何があっても俺がお前を守ってやる……!」

(*゚ー゚)「ギコくん……」

一方、この人らはいつも通りだった。


 
102 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 22:22:23.53 ID:HFb2kPlf0
('A`)「…………ん?」

ふとショボンに目を遣ると、妙な表情をしているのに気が付いた。
何か考え事をしているような、そんな顔だった。


('A`)(まっ、別に気にするほどじゃ……)

( ・∀・)「しかしまあ……」

('A`)「あっ、隊長。どうかしましたか?」

( ・∀・)「どうやら僕らが出動する必要なさそうだね、こりゃ。
      あの感じだと、巨人が怪獣を撃退して終わりだろうから。
      いや、手間が省けてよかったよ」

('A`)「あー……そうですね」

確かに、今の所巨人の方が優勢だ。
このままいけば決着がつく。
逆に、下手に干渉しようものならこちら側に厄災があるかも知れない。
俺たちの出る幕じゃないのは明白。傍観していればいいだろう。

しかし……この人はこんな時でも楽する事しか考えていないのか。ハァ。


 
104 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 22:24:24.60 ID:HFb2kPlf0
両者の戦闘はまだ続いていた。

だが、若干怪獣の動きが鈍ってきているように見える。
それを自身でも分かっているのだろう、
最後の力を振り絞るかのように暴れ回っていた。
巨人も律儀にソレにお付き合いして、猛る怪獣と激しく組み合っている。


(´・ω・`)「ドクオ、ねぇねぇドクオ」


それまで一言も口にしていなかったショボンが、突然話し掛けてきた。
……興醒めだぜ、ったく。

('A`)「んだよ、盛り上がってきたとこだってのに」

(´・ω・`)「あのね、ちょっと気になる事があって」

('A`)「何だァ?」

(´・ω・`)「あれ、滅茶苦茶暴れてるけど波とか大丈夫なのかな」


 
105 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 22:26:38.88 ID:HFb2kPlf0
('A`)「平気だっつーの。怪獣が暴れて津波が発生した時の為に、
   対岸には防波堤を設置してあるんだから。
   ……っつか、それはお前の担当だったじゃねぇか!」

(´・ω・`)「そうだね。防波堤は僕が設計した。昼夜を費やしてね」

ショボンは軍のメカニックを務めている。
基地の設備や、街に設置する防衛施設などの設計もこいつの職分だ。
もちろん、防波堤に関しても例外ではない。


('A`)「じゃあ大丈夫なんじゃね。
   強度や高さなんかもちゃんと計算してあるんだろ?」

(´・ω・`)「うん。でもね、それって一匹分しか想定してないんだよね」

('A`)「……へっ?」


(´・ω・`)「二匹分の津波には多分耐えられないんだよね」


 
109 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 22:29:39.49 ID:HFb2kPlf0
(;'A`)「はぁぁ――――!?」

ふざけんな、このヤロウ!

慌てて映像に目を移す。
……思った通りだ、やはり海面には荒々しい波が立っていやがる。
あれだけ二人で暴れ回っているのだから当然だ。
岸に辿り着く頃には、巨大な津波になっている事だろう――――。


マズイ、それは非常にマズイって!
俺は頭の整理がつかないままショボンの胸倉を掴んだ。

(#'A`)「てめぇぇぇ、何でもっと早く言わなかったんだよ!」

(´・ω・`)「だって……ドックンが楽しそうにしてたから……(ポッ」

(#'A`)「ポッ、じゃねーよ! てめぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

やべぇ、こいつマジでブン殴りてぇ。


 
112 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 22:32:27.86 ID:HFb2kPlf0
そんなバイオレンスな衝動を抑えつつ、俺はモニターを注視し続ける。
恐らくは。もう既に小さな波は沿岸に到達している筈。
防波堤に蓄積された被害が最小限であればいいのだが。


('、`*川「どうしたのよ、そんなに騒いで」

(;'A`)「副長、大変です! 急いで沿岸付近の住民に避難勧告を出して下さい!」

('、`*川「あらあら、そりゃまた何で……大体突堤があるでしょ」

('A`)「違うんですよ! それ、ショボンのボケがマトモに作ってないんですよ!
   本気でヤバイです、このままだと防波堤が決壊してしまいますって!」

('、`;川「あらら、大変じゃない!」

副長の顔に狼狽が浮かぶ。
これまでに見た事のない、驚きと畏れが入り混じった表情だ。

生温いニセモノの平和に慣らされた俺たちにとって、今の状況は全くの想定外。
うろたえるだけで何も出来ない。防衛軍と名乗っているのに、だ。


 
113 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 22:34:32.90 ID:HFb2kPlf0
まさか、こんなところに危険が潜んでいたとは思わなかった。
俺はそれに気付かず、ただ突っ立っていただけだった。
――――クソッ、俺はアホか! テメエも職務を怠ってんじゃねぇか!

('、`;川「あの辺りには住宅が多いから、大惨事になるわ!」

('A`)「ですから、早く放送を――――」

(´・ω・`)「もう遅くね?」

('A`)「お前が言うなぁぁぁぁぁああ!」

ああ、こんなに人を殴りたくなったのは初めてです。


('A`)「つーか、何でギリギリの耐久力にしてんだよ!
   堤防の建設資金をケチらなきゃもっと頑丈に出来ただろ!」

(´・ω・`)「だって……余った予算を着服しようと思ったから……」

('A`)「氏ねぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」


 
115 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 22:36:30.35 ID:HFb2kPlf0



/メ;<・>___o)「ハァ……ハァ……」

時間にしてほんの数分程度の戦闘であったが、
身体中に傷を負ったせいでノローツスは疲弊し切っていた。

/メ<・>___o)「クソッ、やってられっかよ!
       つか何で俺がやられなきゃならないんだよ!」

正論を撒き散らしながら、ノローツスはブーンから目を切って逃げ出した。
向かう方角は沖。
海底には搭乗してきた宇宙船がある。
水深が深いほどその船体を隠すのに適しているからだ。


(#^ω^)「うおー! 逃がすかおー!」


すぐさまブーンは先回りし、満身創痍の怪獣の進路を塞ぎ逆に追い立てる。
沖とは正反対の方向、つまり――――沿岸部へと。


 
118 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 22:39:13.76 ID:HFb2kPlf0
(#^ω^)「待ちやがれー!」

/メ<・>___o)「ちょwwwww来んなwwwwwwwww」


お互い全速力で浅瀬に向けて突っ走る。

徐々に市街地のある陸地へと近付いている事をノローツスは分かっていたが、
ブーンは気付く様子も無くひたすらに追い続ける。


/メ;<・>___o)「いやいや! こっち街あるからヤバイっての!
        このままだと、俺、家とか踏み潰しちまうってば!」

(#^ω^)「何ィ! 貴様、地球の民の暮らす街まで荒らすつもりかお!
      ますます許す訳にはいかないお!」

/メ<・>___o)「どんな解釈だよ!!
        俺、結構この星のお世話になってるからそんな事したくないんスけど……」

(#^ω^)「問答無用、言い訳は聞きたくないお! さっさと止まるお!!」

/メ<・>___o)「あああァァァァァ! もう知らねー! どうなっても知らねー!」


 
120以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/08(土) 22:40:15.81 ID:u0W/xTTDO
だがそこにいてはならない人物が表れたのだ


<ヽ`∀´>「ついに完成したニダ」

(,,゚Д゚)「あぁ‥」

奴らは手に持った双頭バイブを口にくわえてお互いピストンを始めた


<ヽ`∀´>「そろそろニダ」

(,,゚Д゚)「も‥もう出る‥」


二人は二人の世界観をもっているようで誰も近付けません

<ヽ`∀´>「と冗談はやめとくニダ」

(,,゚Д゚)「そうだな」

 
122 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 22:42:01.88 ID:HFb2kPlf0



(;'A`)「ちょっ、マズイですよ! アイツら街の方へと向かってます!」

避難勧告を済ませた後もまたまた厄介が降り注いできた。
交戦が止んだと思ったら、何と二体揃って沿岸へと爆走し始めたのだ。
……非常にヤバイ。ヤバイですよ。

('A`)「隊長、何か対策をしないと危険です!」

( ・∀・)「うむ、そう思ってね、さっきギコに命令しておいたよ。
      VIPホークで出撃しろってね」

('A`)「おおっ!」

( ・∀・)「今回は手加減はいらないと伝えた……きっと彼ならやってくれる筈だよ」

VIPホークとは我が軍が誇る高機動型汎用……うんちゃらかんちゃら戦闘機の事だ。
最高速度はマッハ二を計測し、バルカンの装弾数は十八万発を超える。
ミサイルまで積載した優れ物だ。
ちなみに僕はゆとりなのでマッハ二が時速何キロなのか分かりません。


 
126 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 22:44:40.00 ID:HFb2kPlf0
ともあれ、だ。

('A`)「いやー、でもギコさんが手加減なしに飛ぶのって久々ですね。
   ようやく先輩らしいトコが見られそうですよ」

俺はほっとして胸を撫で下ろした。
普段は惚気てるだけだが、こと戦闘機の操縦に関してはギコさんの腕は確かだ。
あの人が本気を出せば、少なくとも足止めぐらいは軽く出来る筈。

余程の事が無い限りは大丈夫だろう。
そう、余程の事が無い限りは――――。


『隊長っ! 隊長っ!』


――――唐突にスピーカーからギコさんの声が聴こえてきた。
同時に、漠然とした不安が押し寄せてくる。


( ・∀・)「ん? どうかしたかギコ隊員?」

『大変です! 燃料タンクが空で出撃できません!』


 
127 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 22:47:09.54 ID:HFb2kPlf0
( ・∀・)「……いやいや、だったら給油すればいいじゃないか」

『そうしようにも、貯蔵タンクの中も空っぽなんですよ!
 先日の点検で補充されてるもんだと思っていたのに……』

(;・∀・)「ええっ、じゃあどうするんだい?」

『どうもこうも、どうしようもないですよ!』

(;・∀・)「あわわ……ドクオくん! 前の点検をやったのは誰だい!?
      君たちが当番でやってたんだよね?」

その通りだ。
整備や点検、切らした物の補給などは俺とその同期の仕事になっている。
週ごとに四人が交代でやっているんだが――――。

('A`)「えーと、確か……あっ……」

……思い出した瞬間、俺は絶望した。




(´・ω・`)「あ、ごめん。原油高いからケチっちゃった(テヘッ」


もしかして、真の地球の危機ってこいつの事なんじゃないかしらん。


 
129 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 22:49:32.25 ID:HFb2kPlf0
ひとしきりショボン(←何故かマトモに仕事が出来ない)を罵倒して、
俺は漫然とその場に立ち尽くした。
視線の先には、依然としてモニターの向こうに映る二つの巨体がある。

('A`)「いやいや、マジでどうすんの……?」

住民にはなるべく遠くへ避難するよう放送しておいたが、
街だけは移動させる事は出来ない。

生身でアレに立ち向かうか? ……無茶だって。


('A`)「…………畜生」


禍がすぐそこまで迫っているというのに、俺は見る事しか出来なかった。
その事が堪らなく悔しかった。



つか――――よく考えたら元凶って巨人の方じゃね?


 
130 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 22:51:47.93 ID:HFb2kPlf0



結局、陸地に上がる前に怪獣が巨人に倒されたおかげで、
何とか最悪の事態は免れる事が出来た。
と言うよりは、怪獣が何故か岸に到達する寸前で止まってくれたからなのだが。
彼の勇気ある行動を、俺たちは決して忘れはしない。

――――もっとも、被害は決して少なくない。

津波による住宅浸水が百数十件。
震動による住居の倒壊が数十件。
街道にいた人々に降りかかった被災が……以下、長くなるので省略。

幸いにも、死傷者は出ずに済んだ。
欠陥だらけの防波堤が、奇跡的にある程度の時間耐えてくれたのだ。
その間に住民が避難する事が出来たという訳だ。
この時ばかりは俺も神様の存在を信じましたね、ハイ。
ショボンは殴っておきましたが。

しかし、死者は出なかったとは言え、多くの人々が負傷した。
今も入院している人が多数いる。

最悪ではなかったが、爪跡は残ってしまった。


 
131 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 22:53:40.82 ID:HFb2kPlf0
元はと言えば、あの巨人が余計な事をしなければこんな惨事にはならなかった筈。

そこで俺たちは一つの作戦の計画を立てた。
その名もズバリ『トラウマを与えて二度と来れないようにするぞ作戦』。
……まあ内容は名称そのままで、
要するに巨人を攻撃する事で地球に来たくなくなるような状況を作るってワケだ。


('A`)「でもですね、隊長。アイツだって悪気があった訳じゃないんですから
   そんな強引に追い払ったりするのも可哀想じゃないですか。
   いや、確かに話が通じる相手かどうかは分かりませんけど……」

(#・∀・)「何言ってるんだい! おかげでこっちは大変なんだから!
      市街の復旧作業も楽じゃないんだし、
      おまけに、アメリカ本部からはお達しが来るときたもんだ!
      『HAHAHA。次もこの調子だったら我が軍が介入するよ』だって。
      まったく、米国の奴らはこんな時だけ強く出てくるからイヤだよ。
      この基地をアイツらの好きにさせてたまるか! 誰にも渡さないよ!」

('A`)「はぁ」

最後の方は完全に私怨が混じっていたけれど、つまりはそういう事だ。
俺だってアメリカの連中が干渉してくるのは本意じゃない。
気が乗らなくてもやるしかないのだ。
――――例え、それが正しい行いなのか定かでなくとも。


 
133 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 22:56:05.46 ID:HFb2kPlf0
そしてその日は訪れた。

あの巨人が初めて俺たちの前に姿を現わしてから三週間後。
場所は同じく海。
囮の怪獣模型(製作者・ショボン)に誘き出され、間抜け顔のヒーローはやって来た。


( ・∀・)「それじゃ、各自僕の命令通りに動いてくれたまえ。
      ……作戦実行だ!」

モララー隊長の号令に合わせ、隊員一同それぞれの持ち場につく。

パイロットのギコさん・ジョルジュ・ハインの三人はVIPホークに乗り込み、
オペレーターである俺としぃさんが適時彼らに指示を出す。
副長は交戦間に巨人に関するデータの採取を担当する。

ちなみにショボンは機材の準備以外特に役割は与えられていない。
実に賢明な判断だと思います。


('A`)「ヒーロー、か」

飛び立っていく三機の戦闘機を見送りながら、俺はぼんやりと物思いに耽っていた。
広い宇宙から見れば、あの巨人はきっとヒーローなのだろう。
……なんだか、よく分からない。アイツの意志自体は間違っちゃいないのに。


 
134 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 22:58:34.47 ID:HFb2kPlf0



( ^ω^)「よくも現れたな怪j……って、あれ……」

ブーンは困惑した。
辺りを見渡すが、先程までいた筈だった怪獣の姿はそこにない。

(;^ω^)「ありゃ、いないお。どこ行ったんだお」

気を抜いた瞬間。

(;^ω^)「痛っ!」

右足に伝わる刺すような痛みに思わず声を上げてしまうブーン。
何事かと思い足元を見ると、自分の周りを何か鳥のようなモノが飛び交っていた。


『次、左の太腿を狙うぞ! 急所には当てるなよ!』

『『了解!!』』

(;^ω^)「ちょwwwwwwwナニコレwwwwwwwwwwww」


 
135 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 23:01:32.35 ID:HFb2kPlf0
それは果たしてVIPホークだった。

自慢の機動力でブーンの巨体を取り囲むようにして旋回する。
そして、隙を見計らってバルカンを一斉に掃射。
広範囲に渡って発射する理由は、弾を一点集中させると深く傷つけてしまうためだ。
そこまでする必要はない。

(,,゚Д゚)『要領は怪獣を追い返す時と同じだ、とにかくウザったい攻撃をしろ!
    蚊とか蝿みてーにな!』

無線を通してギコが若い二人に作戦を伝える。
その指令に従って、三機はブーンの急所以外の部分目掛け弾丸を撃ち込んでいく。

上々だとギコは思った。
後輩が自らの手足となって動いているのだから。


( ・∀・)「よし、いいぞ! その調子だ!」

その様子をモララーはモニター越しに眺めていた。
大層ご満悦な表情だった。


 
139 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 23:06:26.61 ID:HFb2kPlf0
今日の天気は、晴れ、ところにより鉄の雨。

三つの銀に輝く機体は白線を引き連れながら、低空を自由自在に駆け廻る。
広大な蒼いキャンパスに、細い絵筆を走らせるかのように。
描くのは美しい円。
それはまるでブーンを囲う領域めいていて、事実そうであった。
彼らの描くサークルは完璧にブーンを包囲していた。

時折放つバルカン射撃の鋭さは雀蜂を想起させる。
はたまた、それこそギコの言うように夏の夜に舞う鬱陶しい蚊の類か。


(;^ω^)「UZEEEEEEEEEEEE!!」

ブーンは何が何だか分からずにいた。
どうして自分が攻撃されなければならないのか。

( ^ω^)「どういう事だお、僕はただ地球の危機を救いに……」

銃弾の雨は止まない。
決して大きなダメージにはならないが、それはあくまで肉体的な話だ。
戦闘機の群れは精神的にブーンを追い込んでいく。


 
140 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 23:08:18.97 ID:HFb2kPlf0
(;^ω^)「ワケ分かんねーお。
      怪獣もいないみたいだし、ここはとりあえず退散するお!」

堪らずブーンは退却した。
海から飛び出たかと思うと、宙に浮かび上がって遥か彼方へと消えていった。


(*゚ー゚)「目標、撤退しました!」

('、`*川「ふぅ、お疲れ様」

( ・∀・)「何かデータは取れたかい?」

('、`*川「まあ、少しは。詳しい調査はこれからになりますけど」

( ・∀・)「ともあれ、一応の成果は得られたようだね」

完全にブーンの姿が見えなくなった、レーダーにも映らなくなったところで、
基地内の隊員はひとまずの成功を喜んだ。

――――ただ一人を除いて。


('A`)「…………」


 
143 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 23:13:24.85 ID:HFb2kPlf0



作戦は長いスパンに渡って行われた。
隊長曰く、恐らく一度だけでは効果が薄いからとのコト。

月に数回模型を出しては引っ込めを繰り返し、
巨人がやって来たらすかさずVIPホークで襲撃、少しずつトラウマを植え付ける。
そんな反復作業を巨人が来なくなるまで続けた。


その間に分かった事も幾つかあった。
あの巨人がどこから来たのかも、帰る際のルートから逆算して判明した。
どうやら、遠く銀河系より向こうにある星から怪獣退治のために来ているらしい。
ソースはN○SA。

ただ、それでも作戦は中止しなかった。
誘き寄せては追い払い、誘き寄せては追い払い、誘k(ry
とまあ、こんな具合にしつこく巨人に対して嫌がらせを実行し続けた。

まるでストーカーだ。
訪れてくるのは向こう側である事の違いはあれど、
やっている行為その物はストーカーのするソレと大差ない。


 
146 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 23:16:13.67 ID:HFb2kPlf0
正直言って、あまりいい気分ではなかった。
きっと他の隊員もそうだろう。
……いや、これは「そうであって欲しい」という俺の願望か。


そうやって何度も何度も作戦を繰り返すうち、次第に巨人は来ないようになった。


かくして地球の厄災は排除されたわけだが、俺はどうにも心から喜べない。

俺は巨人を撃退する度に罪悪感に苛まれていた。
だって、アイツ自身に全ての非がある訳じゃないのだから。
アイツは自分が正しいと思った事をやってるだけだ。

なのに、いくら奴が地球にとって傍迷惑な存在だとは言え、
何の意思の疎通もなしに無理やり追い払うのは少し酷なんじゃないか?

せめて、巨人と会話がしたかった。
分かり合えるとは到底考えられないが、それでも――――。

まあ、そんな風に考えているのは自分だけなのかも知れないけどさ。


 
149 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 23:18:34.52 ID:HFb2kPlf0
そしてまた以前のような日常が戻ってきた。
俺が大嫌いだった、欠伸が出るほど退屈な日常が。


( ゚∀゚)「……だから、俺はヤスイリオスケの描くおっぱいが最高だと思うのよ」

(´・ω・`)「あ? LO信者舐めんな。
     胸ってのはあるかないかぐらいのサイズがいいんだろうが。
     朝木貴行こそが至高」

( ゚∀゚)「そういう事は初期の緋鍵の絵で抜いてから言えよ」


……ご覧の通り、今じゃすっかり平穏な毎日だ。

毎朝基地に来て、くだらない会話をして、機器の整備をして。
たまに怪獣が現れて、嫌がらせ程度に攻撃して、追い払って。
何もない時は何もしないで。

あの時以上の刺激なんかこれっぽっちもない。
本当に平和だ。平和すぎて、生きている実感が湧いてこないぐらいだ。


 
152 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 23:21:57.54 ID:HFb2kPlf0
( ゚∀゚)「あーあ、おっぱいの素晴らしさを理解できないなんて、
    おめー人生の78%は損してるぜ?」

(´・ω・`)「はぁ? 言っておきますがロリ巨乳は全然いけますけど?
     反村幼児の漫画とか大好物ですけど!?」

( ゚∀゚)「きめぇwwwwwwwwwww」

(´・ω・`)「やだ、性欲止まんない……」

つかお前ら、その会話の内容を理解できる人間が何人いると思ってんだよ。
その前に職場でHENTAIトークは止めてくれ。
ちなみに僕は小宮裕太が大好きです。遂に単行本発売? 都市伝説だろ。


あーあー、もうイヤだ。
とうとう真面目に働く気もなくなっちまったよ。


('A`)「早退けしまーす」

( ・∀・)「いいよー」


――――どうせ俺がいなくても何とかなるんだ。


 
154 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 23:23:37.02 ID:HFb2kPlf0



仕事を早々に切り上げて、寄り道もせず自宅のボロアパートに帰ってきた。
扉を少し動かすだけで壊れた蝶番がキィキィ鳴りやがる。
相変わらず癪に障る音だ、なんて考えながら、
俺は床に転がりうとうととシミだらけの天井を眺めていた。

('A`)「眠い……本格的に寝るか……」

最近寝てないせいか、睡魔が怒涛の勢いで押し寄せてくる。
なんという大量の羊の群れ。
これは間違いなく最強の特技・どとうのひつじ。

やべ、マジねみぃ。

そう思い押入れから布団を取り出そうとすると、一冊の古びた本を発見した。

('A`)「……何だ、コレ」

随分と薄い冊子だ。しかも作りが尋常じゃなく甘い。
表紙に目を遣ると『白雪姫』と書いてあった――――ああ、昔やった劇の台本か。
よく見ると汚い字で俺の名前が書かれてある。


 
158 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 23:25:56.88 ID:HFb2kPlf0
何でこんな物わざわざ持って来たんだろうか。
俺にとっては辛い思い出でしかないのに。

('A`)「つっても、ついつい懐かしくなって読んじゃうんだよね、こういうのって」

ペラペラとページを捲ると、すぐに俺の配役を見つける事が出来た。
役の名前のところに黄色い蛍光マーカーで線が引かれていたからだ。

('A`)「『小人G』って……七人いる中の七人目じゃねぇか……・」

……何か今と大して変わってないな、俺の役柄って。

何だか虚しくなってくる。
今も昔も、何一つ俺は変わっちゃいない。


('A`)「……ん?」

ふと、携帯が鳴っている事に気が付いた。
いい加減『着信音イチ』から卒業しなくてはならないな。


 
162 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 23:27:48.44 ID:HFb2kPlf0
('A`)「ハイ、もしもし」

( ・∀・)『あっ、ドクオくん!?』

電話の主はモララー隊長だった。
切迫した声の調子から、受話器の向こうで狼狽している様子が目に浮かぶ。
――――嫌な予感がするな。

('A`)「どうしたんですか、そんなに焦って……」

( ・∀・)『緊急事態だ、急いで基地に戻ってきてくれ!』

('A`)「いや、あの、何があったんですか?」

( ・∀・)『詳細は後! とにかく早く来てね!』

そこで電話はぶちっと切られた。

('A`)「……ナンだってんだ、一体」

訳も分からないまま俺は家を飛び出して、
海と山に囲まれた、自然の要塞である防衛軍基地へと戻った。


 
167 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 23:31:00.20 ID:HFb2kPlf0



基地に到着すると、すぐに異様な雰囲気が俺を出迎えた。
嫌が上でもヤバイ空気を察知してしまう。
ただどうにも状況が呑み込めないので、何が起きているのかまでは把握できない。

('A`)「あの、どういう事なんですかね?」

そんな訳で隊長に訊いてみる。

( ・∀・)「ほら、モニターを見てごらん!」

(;'A`)「……いや、見てもよく分からないんですけど」

言われるままに海原の様子を映し出しているモニターに視線を送ると、
そこには何やら宙に浮かんだ円盤めいたモノが映っていた。

ほら、アレだ。

所謂UFOって奴ですかね。


 
171 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 23:33:27.47 ID:HFb2kPlf0
しかしまあ、センスのないカラーリングだ。
普通UFOって近未来チックな銀色とかじゃん。何で金ピカなんだよ、趣味悪ぃ。
色が変だとフォルムまでダサく思えてくる不思議。

('A`)「ちょっ、何ですか、アレ」

( ・∀・)「分からない……未だ反応を見せていないから余計にね」

聞けば、突然あの円盤が海上に出現したらしい。
それで、一切のアクションを起こしていないからますます訝しんでいる、と。


――――その時だ。


(*゚ー゚)「……!? 基地のレーダーが円盤からの電波を受信しましたっ!
    どうやら――――発信されてきているのは映像及び音声データの模様!」

( ・∀・)「何だって!? ……よし、映してくれ」

(*゚ー゚)「はいっ! メインスクリーンを受信中の映像に切り替えます!」


 
173 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 23:35:09.30 ID:HFb2kPlf0
しぃさんが手早く機器を操作する。
ああ、普段からこのぐらい真剣に働いてくれたらいいのになぁ。

そんな淡い願いを抱いてるうちに、モニターがパッと切り替わった。


『地球の諸君よ、御機嫌よう! 本日は絶好の征服日和だな!
 そう、我々はまさしくこの惑星を侵略しにk……』


すいませーん、下半身しか映ってませんよ。


『おい兄者、カメラの位置ずれてるぞ』

『なに、誠か弟者!』

『だから言っただろう、二人しかいないんだから俺がカメラマンを務めてやるって』

『何を言う、ビデオレターには一同揃って出演するものだろ!』

『OK、時に落ち着け兄者。我が儘に付き合ってやるからとりあえずカメラ直させてくれ』


すいませーん、早く本題に入って下さい。


 
177 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 23:37:23.94 ID:HFb2kPlf0
( ´_ゝ`)『どう、映ってる? 俺ちゃんと映ってる?』

d(´<_` )『おk。バッチリだ、兄者』

( ´_ゝ`)『どうしよう……顔見られてると思ったら急に緊張してきた……』

全く同じ顔が、二つ。
……誰だお前ら。


( ´_ゝ`)『えー、おほんおほん。えーとですね、あのですね。
      要するに俺ら、地球征服に来たワケです』


――――はぁ?

('A`)「何だって!?」

(´<_` )『そういう事だ。手始めに日本から侵略させてもらう。
      悪く思うなよ』

反論しようにも、こちらからはメッセージを送る事は出来ない。
……どうやら、今は黙ってこいつらの話を聴くしかなさそうだ。


 
181 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 23:40:06.46 ID:HFb2kPlf0
奴らの演説は続く。

( ´_ゝ`)『自己紹介が遅れたな。俺の名は兄者、横にいるのが双子弟の弟者だ。
      ……ふふふ、お前ら今、
      「たった二人で征服なんて無理だろ……常識的に考えて……」とか思っただろ!
      残念でしたー! これを見ろ愚民がっ!』

兄者と名乗った男が調子良く言うと、サブモニターが映している光景に異変があった。
円盤から何か――――ゴミのような物体が海に落ち、小さな爆発が起きたのだ。

するとだ。

(;'A`)「んなっ!?」


Σ/ ゚ w>「…………」


……煙の去った場所に、三つの首を持った怪獣が現れていた。

( ´_ゝ`)『これぞ我々サスガ星人の技術力の結晶、カプセル怪獣だ!
      凄いぞー! かっこいいぞー!』


 
183 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 23:42:25.78 ID:HFb2kPlf0
(´<_` )『ところで兄者よ、ずっと気に掛かっていたんだが何故この国からなんだ?』

( ´_ゝ`)『だって貼りスレでzip要求したら「地球の日本に池カス」って言われたんだもん。
      けど俺、自分でも引いちゃうほど金ないから、もう乗っ取って強奪するしかないじゃん。
      地球全土の侵略はそのおまけな。
      ……まずい、貼られてたjpg思い出したらまたおてぃんてぃんが……』

(´<_` )『うむ、どうしようもなくキモイな兄者』

( ´_ゝ`)『ほっとけ。俺という人間はエロスのためなら命を懸ける男なのだ。
      この星の侵略ぐらいやってやるさ』

(´<_` )『……まあ反対はしないがな。
      どうせ俺が意見しても聞かんだろう、好きにしてくれ』

( ´_ゝ`)『よーし、お兄ちゃん頑張って侵略しちゃうぞー!
      今日はインデペンデンス・デイならぬ、インベイジョン・デイだー!』

(´<_` )『相変わらずセンス皆無だな、兄者』

( ´_ゝ`)『ええい、うるさいやい! とにかく襲っちゃうんだからね!
      ゆけい、火炎怪獣レブルガよ!』


 
187 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 23:45:26.37 ID:HFb2kPlf0
兄者の号令を合図に、三つ首の怪獣が巨体を揺らして歩き始めた。
あの進路の先は市街地のある方角じゃねぇか。
堪らなく心配なのだが……俺はそれ以上に怒りという感情に支配されていた。

('A`)「野郎、なに勝手な事話してやがんだ……!」

――――そんなくだらない理由で地球を占領するだと?

ふざけるな!

……ショボンが「分からんでもない」と言いたげな顔をしているのが若干気になるが、
そんな無茶苦茶な事させてたまるかよ。

('A`)「隊長!」

( ・∀・)「うむ、こんなケースに備えて付近にVIPホークを待機させてある。
      バックアップは任せたよ、ドクオくん!」

('A`)「はいっ!」

俺は急ぎ管制塔に上り、先に作業しているしぃさんの隣の椅子に腰掛けた。
感知レーダーを確認すると、
成程、隊長の言った通り三機を表す光が怪獣に向けて発進している。

('A`)(頼むぜ――――ギコさん、ジョルジュ、ハイン!)


 
189 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 23:48:35.75 ID:HFb2kPlf0



(,,゚Д゚)『いいか、基本は目だ! 目を狙うんだ!
    視覚は最大にして最高の情報源だ!
    そいつを奪っちまえばこっちのもんだからな!』

ギコの指示で、三機のVIPホークはレブルガの正面に浮遊する。
そして、一斉にバルカン射撃。
ギコは中央の、ジョルジュとハインは左右の首の眼球に照準を合わせる。

Σ/ ゚ w>「――――ギェェゴォォォォォ!」

頭を下げて弾丸を躱し、反撃にレブルガは火炎弾をそれぞれの口から発射した。

(;゚∀゚)『うおっ!? 危ねぇな、オイ!』

既の所で機体を傾けて回避する。
火炎怪獣と呼称するだけの事はある、火炎弾の熱気はかすっただけで、
翼の上層装甲を溶かしてしまうほどであった。
直撃すればひとたまりもないだろう。ジョルジュは思わず息を呑む。

(,,゚Д゚)『攻撃よりも避ける事を優先しろ! 前に出てもやられたんじゃ元も子もねぇ!』


 
192 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 23:50:52.38 ID:HFb2kPlf0
交戦は続く。

ギコは冷静に二つの眼球を潰したが、ジョルジュとハインの二人は手こずっていた。
何せ実戦経験がが圧倒的に少ないのだ。
彼らの積んだ経験と言えば、それこそお遊び程度。
だが、退く訳にはいかない――――その事がますますプレッシャーになっていた。


从;゚∀从『やべぇ、尾翼にヒットしちまった!』

ハイン機の尾翼に火炎弾が命中。
やられたのは片側のみだが、それだけでも機体のバランスは著しく低下する。

(,,゚Д゚)『無理をするな! ウィングがやられたら撤退しろ!
    浅瀬に不時着するんだ。近隣の市民隊員が回収に来るだろう』

从 ゚∀从『了解です……でもですね、このまま終わるのは嫌ですよ』

(,,゚Д゚)『……ん、おいっ!?』

从 ゚∀从『最後に派手に暴れてやります!』

そう言い残して、ハインの機体はレブルガの顔へ急接近した。


 
194 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 23:53:24.87 ID:HFb2kPlf0
从#゚∀从『うらっしゃああぁぁぁぁぁァア!!』

搭載している全兵装の残弾を一気に放射する。

Σ/;゚ w>「っ!」

自爆覚悟の特攻が功を奏したか、ミサイルの一発がレブルガの眉間に突き刺さった。
着弾と同時に爆発し、怪獣の右の頭は一瞬で黒焦げになった。

(*゚ー゚)『対象の右首部、生命活動を停止しました!』

(,,゚Д゚)『よっしゃ、よくやったぞハイン!』

从 ゚∀从『オレの役目はここまでです。後は任せましたよ!』

最後に一花咲かせ、ハインの機体はよろけながら退却していった。


(´<_` )「おい兄者よ、どうも戦況は芳しくなさそうだぞ。
      俺たちもレブルガに命令とかしないでいいのか」

( ´_ゝ`)「いや、アイツ俺の言う事聞かないからな……俺嫌われてるのかな……」


 
195 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 23:55:51.76 ID:HFb2kPlf0
( ゚∀゚)『クソッ、あいつにだけいい格好させてたまるかよ!』

同期の活躍を見せつけられて、ジョルジュの心に火が付かない筈がない。

( ゚∀゚)『俺もいくぜ――――!!』

先程までのし掛かっていた重圧と怯えが、急速に彼の肩から消え去っていく。
経験値の少なさなど何の関係があろうか。
大切なのは今この瞬間ではないか。

眼前には怪獣。
我が手には操縦桿。

Σ/ ゚ w>「…………グルゥ」

相手は大きく口を開き、今にも灼熱の火を吹こうとしている。
――――けど、恐れる事はない。


( ゚∀゚)『やってやんよ……!』


トリガーを引いた。
これまでとは違う、はっきりとした手応えだった。


 
198 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/08(土) 23:58:10.88 ID:HFb2kPlf0
( ゚∀゚)『……チッ。どうやら、俺も退がらなきゃならんみたいです』

レブルガの火炎弾をモロに喰らってしまった。
ジョルジュの機体は右主翼の半分を失い、破損部からは白煙が立ち昇っている。

(,,゚Д゚)『馬鹿野郎、墜落寸前じゃねーか』

( ゚∀゚)『そのよううッスね……でも』

ジョルジュは前を見る。


( ゚∀゚)『相討ちにはなったみたいッス』


視線の先には、喉を潰されたレブルガの左首があった。
ジョルジュは顔面ではなく喉を狙ったのだ。

急所なのはどちらも同じだが、
顔の正面を無防備に飛んでいたのでは火達磨になってしまう。
そこで、レブルガが火炎弾を放つ寸前で機首を下げ照準を変更したのである。
少々の失敗は、しかし大きな成功を生んだ。


 
201 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/09(日) 00:00:36.74 ID:NAHTLLVO0
( ゚∀゚)『それじゃ、先に下がらせてもらいます!』

ジョルジュが退避し、残るはギコの操るVIPホークのみ。
対するレブルガの方は、完全に視界を塞がれた中央の首しかない。


( ´_ゝ`)「やべ、勝ち目めっちゃ薄いじゃん」

(´<_`;)「どうするんだ、兄者。もう悠長な事は言ってられんぞ」

( ´_ゝ`)「……ククク、この俺を舐めるなよ。
      奥の手というのは常に準備しておくものなのだ」

(´<_` )「奥の手?」

弟者が聞き返す。

( ´_ゝ`)「そもそもサスガ星の高い技術力がカプセル怪獣を生んだ訳だが、
      バイオテクノロジーを専門に学んでいなかった俺には全くどうでもいい話だった」

(´<_` )「そう言えばそうだったな。
      俺らの学生時代、遺伝子工学が物凄いペースで発達していたのに、
      兄者は少しも興味を持っていなかったな」


 
203 ◆zS3MCsRvy2 [いいIDktkr] :2007/12/09(日) 00:02:36.91 ID:NAHTLLVO0
( ´_ゝ`)「ああ、俺はずっと機械工学を学んでいた。
      メカの技術だけは今でも誰にも負けないと自負している。
      ……ところが、生物兵器であるカプセル怪獣はどんな機械兵器よりも優秀だったんだ。
      俺の技術なんか屁の役にも立たなかった」

(´<_` )「それで、兄者もバイオ技術職に転身したんだったか」

( ´_ゝ`)「……転身じゃない」

(´<_` )「?」

( ´_ゝ`)「俺は機械工学と遺伝子工学の融合を目指したんだ。
      いつか、人造怪獣を発明してやろう思ってな」

(´<_` )「生物兵器に機械兵器を組み合わせるという事か」

( ´_ゝ`)「ああ、その通りだ」

(´<_`*)「……そうか、つまりその怪獣が奥の手って訳なんだな!
      凄いじゃないか、いつ完成させたんだ!?」


 
205 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/09(日) 00:04:45.69 ID:NAHTLLVO0
興奮する弟者。
だが、兄者は一切頬を緩めない。

( ´_ゝ`)「いや、完成はしていない」

(´<_` )「――――は?」

予想外の返事に弟者が気の抜けた声を漏らす。

(´<_`#)「何だそれは! 期待させるだけさせやがって!
     じゃあ手詰まりじゃないか、レブルガがやられたらどうするつもりだ!」

( ´_ゝ`)「落ち着け、弟者。あくまで全ての工程を終えていないってだけだ」

何故なら、と付け加えてニヤリと笑う。


( ´_ゝ`)「まだ実戦で投入していないからな……!」


呟いて、兄者は宇宙船下部ハッチの開閉ボタンを押した。

一つの小型カプセルが海に落とされた。


 
207 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/09(日) 00:07:38.64 ID:NAHTLLVO0



('A`)「目標、完全に生命活動を停止しました!」

レーダーが怪獣の心拍等を察知しなくなったのを確認し、
俺は心の中で密かにガッツポーズを決めた。

('A`)(なんだよ、皆やれば出来るんじゃないか)

俺たちにだって地球を救えるんだ。
入隊して初めて本当の平和に貢献できたと思う。
今、俺は猛烈に感動していた。やったね! いえーい! わっほーい!


『これから帰還する』


とどめを刺したギコさんから無線が入ってきた。
どこか誇らしげなその声が、俺にはとても頼もしく聞こえた。


 
209 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/09(日) 00:09:20.39 ID:NAHTLLVO0
――――だが。


(*゚ー゚)「……っ、新しい生体反応……?」


消えた筈の光が再び浮かび上がった。


それとほぼ同時に、ギコさんからの通信が途切れた。

(;゚ー゚)「……ギコくん!?」

しぃさんの顔は明らかに凍りついていた。
肩はぷるぷると細かく震え、ひどく蒼ざめた表情で目の焦点は定まっていない。
俺も漠然とした不安で胸が一杯になる。


( ・∀・)「ドクオくん、映像をチェンジしてくれ」

('A`)「はっ、はい。モニター切り替えます!」


 
212 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/09(日) 00:11:18.71 ID:NAHTLLVO0
切り替わった画面に映っていたのは、何とも奇想天外な姿をした怪獣だった。
――――いや、『怪獣』と呼べるかどうかも怪しい。


≪:::;; owwv「――――」


('、`;川「……あれ……怪獣……なの?」

副長も首を傾げている。
何せ、生物と呼ぶにはあまりにも人工的すぎるからだ。

右腕には手の代わりに斧が、左腕には鋏が付けられていて、
皮膚と言うより何か分厚い装甲のようなもので全身が覆われている。
額には鉄製らしき尖った角が生えていて、
尻尾の先には棘の生えた鉄球が接合されていた。

('A`)「怪獣……なんでしょうね、多分」

まだ兵器と言った方が納得がいく。
……むしろ、本当に専用に作られた兵器なのだろうか?


 
218 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/09(日) 00:13:48.30 ID:NAHTLLVO0
(;゚ー゚)「ギコくんっ! 応答して、ギコくん!!」

しぃさんの絶叫が反響する。
その上ずった甲高い声が、ひどく悲しく聴こえるのはどうしてだろうか。


モニター内に映る怪獣はしばらくその場に立ち尽くしているだけだったが、
ある時を境に突然動き始めた。
ゆっくりと、けれど着実に一歩一歩前進してきている。


レーダーを見る限り――――向かっている方向はこの基地だ。


( ・∀・)「……マズイ」

(;'A`)「ちょっ、奴こっちに向かってきてますよ!」

(;・∀・)「…………」

(;'A`)「隊長っ!」


 
220 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/09(日) 00:16:14.22 ID:NAHTLLVO0



(*´_ゝ`)「実験成功ktkr!」

(´<_` )「……しかしまあ、想像と違って不細工な怪獣だな」

( ´_ゝ`)「バカにするでない!
      いいか、コイツには他のカプセル怪獣にはない性能が備わっているんだぞ」

(´<_` )「なに、一体それは何だ兄者?」

( ´_ゝ`)「ああ……それは索敵機能だ。
      奴の脳内には生体及び電波受信レーダーが内蔵してある。
      要は戦闘機だろうと生き物だろうと察知できる訳だな」

(´<_` )「ほう、それは凄い」

( ´_ゝ`)「……そして早速その機能を発揮できる機会が与えられたようだ。
      こちらから奴に向けて電波を送信し、命令する。
      『戦闘機に指示を出していた基地を索敵し、襲え』ってな!」


 
223 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/09(日) 00:18:50.88 ID:NAHTLLVO0



所詮俺は小人なんだ。
決して王子様なんかじゃない。

どう足掻いても脇役は脇役。
お姫様の気を紛らわせる事は出来ても、本当のピンチの時には何も出来ない。
ただうろたえるだけで、絶体絶命の危機から助けてあげる事なんか出来やしないんだ。

俺では白雪姫は救えないんだ。

結局、俺には小手先だけの小人の役がお似合いだったんだ。
それなのに姫を助けるヒーローになりたかっただなんて、勘違いもいいとこだ。


(;'A`)「チクショウ……」


俺はアイツに何も抗えないのか。
指をくわえて、茫然と見ている事しか出来ないのか――――!


 
225 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/09(日) 00:21:21.50 ID:NAHTLLVO0
映像から計算するに、あの怪獣の進行速度はおよそ時速二十キロメートル弱。
そして現在位置からこの基地までの距離は約九キロメートル。
このままだと、三十分もしないうちにここが襲撃されてしまう。

(;'A`)「隊長、逃げましょう!」

(  ∀ )「……イヤだね」

(;'A`)「はいィ!?」

( ・∀・)「この基地は僕の基地だ。
      他の誰にも渡さないし、一歩たりとも入れるつもりもない」


……こんな一刻の猶予も許さない時に、何を言っているんだ、この人は。


(;'A`)「いや、この場合は違うでしょ!」

( ・∀・)「違わないさ。この地球防衛軍日本基地こそが僕なんだ。
      ここを守る事が僕の全てなんだ。
      ……あんな訳の分からない連中なんかに、好きにさせてたまるか!」


 
230 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/09(日) 00:24:05.82 ID:NAHTLLVO0
そう強く言って、モララー隊長は基地内の隊員全員に号令をかけた。


( ・∀・)「君たちは逃げても構わない! だが僕はここに残って最後まで戦う!
      無謀な作戦だ! 有効な攻撃手段なんてもう殆どないんだから!
      それでも僕は戦おう!

      ……だけど、最後に一つだけお願いを聞いて欲しい。
      強制はしない、隊長命令でもない。
      新しい基地が出来ても、この基地の事を忘れないでくれ」


隊長は拳銃を懐から抜き出し、銃口を見つめて言う。


( ・∀・)「これから僕は外に出て奴の足止めをしてくる。
      ……こんなしょぼいピストルじゃ、何のダメージにもならないかも知れない。

      でももしかしたら、急所に当たってくれたりでもすれば……!

      ――――可能性はゼロじゃないと思うんだ。
      ゼロじゃない限り、僕はこの場所を守り続けようと思えるんだよ。
      僕にとって、この基地こそが平和の象徴なんだからね!」


 
234 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/09(日) 00:27:26.11 ID:NAHTLLVO0
――――初めて。この人を尊敬する事が出来た。

隊長の言う通りだ。
ニセモノとは言え、平和は平和だ。
地球の秩序を保っていた事には変わりない。

……それなのにこんな非日常を望んでいただなんて、俺はなんてバカだったんだろう。
何一つおかしいところなんてなかったと言うのに。


('A`)「…………!」

ドアを潜ろうとする隊長の背中を見て、堪らなく自分に腹が立った。
俺も、何かしたい。
――――この星の役に立ちたい!


('A`)「……隊長、俺も行きます! 俺もこの基地に残ります!」


気付けば、しぃさんとペニサス副長もそう叫んでいた。


 
237 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/09(日) 00:30:24.75 ID:NAHTLLVO0
(*゚ー゚)「私も……ギコくんをやられて黙ってなんていられないから……!」

('、`*川「私はいつ如何なる時も、隊長を補佐するつもりでいます。
     どんな時だって、ね」

( ・∀・)「…………」

('A`)「隊長、やりましょう」

( ・∀・)「……皆、ありがとう」


皆の心が固い結束で結ばれた。

俺はもう悩まない。やる前から出来ないだなんて考えない。

汗ばんだ掌を見つめて、ぎゅっと握り締める。
それだけで勇気が湧いてきた


……何か一つ忘れているような気がするが、まっ、いっか。


 
239 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/09(日) 00:32:45.57 ID:NAHTLLVO0
('、`*川「……でも、もう武器はないわ……どうしたらいいのかしら……」

副長がポツリと呟く。
……そう、それが大問題だよなぁ。

( ・∀・)「うん、そこなんだよね……」

('A`)「どうしますか?」

( ・∀・)「とりあえず、ありったけの武器を用意しよう。
      予備の戦闘機用バルカンだとか、そういったモノも集めてくれ」

('A`)「ハイッ!」


そうは言ったものの、果たしてそんな攻撃が通用するだろうか。
何せあの装甲だ。
ちょっとやそっとの事じゃとても傷つけられそうにない。


 
243 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/09(日) 00:36:17.35 ID:NAHTLLVO0
――――そうやって思案していると、
唐突に背筋がぞくっ、とする冷ややかな感覚を覚えた。


「フフフフフ……」


何やら不敵な(と言うか不気味な)笑みが部屋の後ろから聴こえてくる。

('A`)(妖気っ!?)

恐る恐る、四人揃って振り返ってみた。





(´・ω・`)「ついに僕の出番が来たようだね!」



ああ、そうだ。忘れてたのってコイツだ、コイツ。


 
245 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/09(日) 00:39:06.98 ID:NAHTLLVO0
('A`)「つーかお前、今までどこにいたんだよ」

(´・ω・`)「そんな事はどうでもいいじゃないか。
      それよりも、今は武器が必要なんだろう? コレを見てくれたまえ!」

そう高らかに宣言して、ショボンは懐から何かを取り出した。

見れば、普通のピストルよりも若干大きめの銃だった。
ただ一つ不思議なのは、カートリッジに当たる部分が存在していない事だ。
代わりに充電器と電子パネルのような部品が取り付けられている。


('A`)「……ナニ、これ」

(´・ω・`)「これぞ僕が秘密裏に開発した『光線銃』だよ……!
      この銃から放出されるレーザーはどんな硬い物質でも貫き、
      更に射撃初心者でも扱いやすい優れ物だ!
      射程も抜群、精度もバッチリ!
      僕のメカニック人生を賭して完成させた逸品なのだよ!」

('A`)「おおっ!」


ってか、もっと早く出せよ!


 
247 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/09(日) 00:41:53.21 ID:NAHTLLVO0
('A`)「よし、じゃあ早速そいつを持って……」

(´・ω・`)「ちょっと待った」

ショボンから光線銃を受け取ろうとすると、すっと上に持ち上げられた。
ああ、子供の頃こんなイジメをよく受けたなぁ……って、そんな事はどうでもいい。

('A`)「おい、一体なんだよ」

(´・ω・`)「あれだよね、ドクオは僕にごめんなさいしなきゃだよね」

('A`)「はぁ?」

(´・ω・`)「この前僕を殴ったよね、受け取る前にその事を謝らなきゃダメだよね」

('A`)「いやもう、マジスンマセン」

(´・ω・`)「あ? そんな並び変えたらマンスジマンセーになるような言葉で謝罪になるか?
     全然謝る気ねぇだろ。土下座しろよ土下座。
     『ショボン様申し訳ございませんでした』って地面に額つけて言ってみろよ。
     つかしゃぶれよ。おう、早くしろよ! あぁ!!」


とりあえずウザいので、銃を奪い取ってグリップエンドで殴っておきました。


 
250 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/09(日) 00:44:40.81 ID:NAHTLLVO0
ショボンがその短い人生(享年二十四歳)に幕を下ろしたところで、
再度マトモなメンバーで真剣に会議する。

('、`*川「銃は一丁しかないみたいね……」

('A`)「……俺が行きます。行かせてください!」

俺がヒーローの器じゃない事ぐらい分かってる。
それでも、だ。
どこにもヒーローがいないのなら、誰かがヒーローになるしかないんだよ。

今回の場合、それは俺なんだ。
白雪姫を救う王子様にはなれなくても、地球を救う英雄にはなれるかも知れない。

――――いや、ならなきゃいけないんだ!


('A`)「では、行ってきます」


光線銃を片手に。
背中には皆の期待を一身に受けて。

怪獣の待つ戦場へと俺は旅立った。


 
251 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/09(日) 00:47:30.76 ID:NAHTLLVO0



('A`)「来たな……」

俺は岸に立っていた。
対角線上には海をざぶざぶと掻き分けて進む歪な怪獣がいて、
その後ろには防衛軍の基地がある。

('A`)「射程は一キロメートルぐらい、か」

だけど、ギリギリまで引きつけてから撃った方が威力は大きいだろう。
怖がっちゃダメだ。
敵の巨体は留まる事無くどんどんとこちらに迫ってきている。
焦っちゃダメだ。

≪:::;; owwv「――――――」

……そして、とうとう射程範囲内に怪獣が入ってきた。
そこから少し待ち、間隔が三百メートルほどに狭められるまで我慢する。


('A`)「――――今だ!」


やがてその時は訪れた。俺は怪獣の胸に照準を合わせ、トリガーを引いた――――。


 
253 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/09(日) 00:49:38.63 ID:NAHTLLVO0
カチッ、カチッ

('A`)「……あれっ?」

カチッ、カチッ

('A`)「あれれ〜?」

カチッ、カチッ

('A`)「これれ〜?」

カチッ、カチッ

('A`)「……おい、ちょっと待てよ……シャレにならねぇぞ……」

カチッ、カチッ

('A`)「まさか……」


怖々電子パネルを覗き込んで見ると――――アハハ、『充電サレテマセン』だって。



(;'A`)「ショボオオォォォォォォォンンンンンッ!!!!」


 
257 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/09(日) 00:52:41.50 ID:NAHTLLVO0
終わった。

もう距離はほとんど残されていない。
尋常じゃないデカさ。圧倒されてしまうほどの迫力。
俺の数十倍、hydeの数百倍はあるに違いないな、こいつは。
サイズ相応の威圧感だ。
怪獣が腕を薙ぎ払えば、俺なんかいとも容易く吹っ飛ばされてしまうだろう。

……はぁ。
最後の希望がコレかよ。

やっぱり俺はヒーローなんて最初っから無理だったんだ。
カチカチと鳴る空っぽの光線銃が、見事に俺の無様さを表しているように思えるよ。
地球を救うとか、大層な事を本気で考えてさ。
その結果がこのザマだ。
情けなくて――――本当に悔しくて。


(;A;)「チクショウ……チクショウッ!」


涙が止まらねぇよ。


 
259 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/09(日) 00:54:50.33 ID:NAHTLLVO0
≪:::;; owwv「――――」

怪獣が大きく斧の付いた右腕を振りかぶった。
あちゃー、死んだなこれは。
首を刎ねられるだとか、そんな生易しいレベルじゃ済まなさそうだ。鬼畜怪獣め。

≪:::;; owwv「――――」

……こいつ、攻撃の時にも叫ばないのかよ。
なんて冷たい怪獣だ。本当に戦車とかの兵器と一緒だな。

≪:::;; owwv「――――」

もういい、もういいんだ。
俺には主役は荷が重過ぎた。

≪:::;; owwv「――――」



――――俺が死んだら、地球もお終いなんだろうか。


そんなの……そんなの嫌だ!
俺はこの星が好きなんだ! 俺はこの星を守りたかったんだ!
畜生――――でも、もう終わっちまうんだ。


 
262 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/09(日) 00:57:35.63 ID:NAHTLLVO0
けど、そう思った後も俺はまだ生きていた。

('A`)「…………ん?」

中々斧が振り下ろされないので、不思議に思って瞼を開いてみた。
するとだ。おい、何が起きていたと思う?

そうだな、分かりやすく例えよう。
白雪姫がいいな。俺は何だかんだであの話が好きだったんだぜ。
お姫様が小人と遊んで森暮らしの鬱々とした気分を晴らしていたのはご存じかと思う。
その小人こそがまさに俺だ。まあ、ある程度は白雪姫を救えただろう。
だけどそんなのはぶっちゃけ危機でも何でもない。
本当の危機は、毒リンゴを食べて眠りについてしまった事だよな。
小人たちじゃその危機を解消する事は困難過ぎて、お姫様を助けられなかった。

じゃあ、そのピンチを救ったのは誰かって?
そんなの決まってるじゃないか。




( ^ω^)「へあっ!!」


王子様が――――ヒーローが助けに来てくれたんだよ。


 
264 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/09(日) 00:59:58.65 ID:NAHTLLVO0
ヒーローはいつも遅れてやってくるんだ。
いつだってそう。いい所だけを持っていく。ある意味じゃ、ずるい存在。
そんなんだから、典型的なヒーローにはアンチが付いたりもする。

だけど何よりも頼りになって、何よりも、強い。


(#^ω^)「うおおおおおおおおお!!」


巨人は怪獣に馬乗りになって、その顔面をボコボコに殴っていた。

≪:::;; owwv「――――」

怪獣はやはり声を上げていない。痛いのかどうかも分からない。
まるで機械だな、なんて考えた。

≪:::;; owwv「――――!」

一転、怪獣が巨人をひっくり返そうと身を起こす。
しかし、巨人はそんな事はお見通しとばかりに軽く体をひねって今度は背後を取った。
――――強い。


 
266 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/09(日) 01:03:30.42 ID:NAHTLLVO0
( ^ω^)「どっせーい!」

≪:::;; owwv「――――」

巨人はそこから怪獣を持ち上げ、思い切り海面に叩き付けた。
海水の飛沫が勢いよく俺に掛かったが、そんなの気にしてなんていられない。
俺が出来る事。それは信じて見続ける事だ。


( ^ω^)「とどめだお……!!」


巨人は自分の胸の前で十字を組み、
ボソボソと呟きながら動けない怪獣を睨んでいる。
俺には何か――――力を貯めているように見えた。


(#^ω^)「デリリウム(訳:狂乱)光線、だお――――!」


巨人がそう叫んだ瞬間、手の交差した所から光が放たれた。
光は一筋の直線軌道を描いて……怪獣の体を貫いた。


眩しさのあまり瞳を閉じ、しばらくして開いた時には、もう怪獣は消し飛んでいた。


 
268 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/09(日) 01:05:46.73 ID:NAHTLLVO0



(´<_`;)「くそっ、何て事だ……邪魔が入りやがった」

( ´_ゝ`)「…………」

(´<_` )「兄者よ、まさかのアクシデントだったな」

( ´_ゝ`)「…………」

(´<_` )「……そう落ち込むな。途中までは、確かに兄者の勝ちだった。
      兄者の計画は完璧だったし、作った怪獣も素晴らしかった」

( ´_ゝ`)「…………」

(´<_` )「今日は諦めよう、兄者」

( ´_ゝ`)「……エロ漫画買いまくりの夢が……オワタ……」

d(´<_` )「OK心配した俺が馬鹿だった。それでこそ兄者だ」


 
270 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/09(日) 01:08:21.83 ID:NAHTLLVO0



UFOが去った後。
俺は戦闘を終えた巨人と向き合っていた。

('A`)「…………」

掛ける言葉が見当たらない。
俺たちはこいつに酷い事をした。有無を言わせず追い払ったんだ。
顔向けなんて出来ないというのに。

――――どうして、こいつは俺を見てくるのだろう。

(;^ω^)「おー、危ないところだったお」

('A`)「あの、さ……どうして地球が危ないって事を察せたんだ?」

( ^ω^)「おっおっ、この星にあるNAS○から信号が届いたんだお。
      『日本に侵略者が現れたぞー』って」

('A`)(○ASAすげー)


 
273 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/09(日) 01:10:48.08 ID:NAHTLLVO0
('A`)「でも、どうして?
   俺たちはアンタに、こっちの都合であんな最低の事をしたんだぜ?」

素朴な疑問を投げかけてみる。

( ^ω^)「そんなの関係ないお。
      僕は困っている人がいたら、行って助けてあげる、それだけだお。
      別にそれが誰であっても、どこであっても気にしないお。
      それがV801星雲に生まれた僕の宿命なんだお」

――――ああ、こいつは本物のヒーローだ。
俺は心からそう思えた。
自分のためじゃなく、ただ人のために行動する事が出来る。

やっぱり本物のヒーローは俺なんかとは違うな。
俺はきっと、侵攻されたのが地球じゃなかったら勇気を出せていなかったと思う。


('A`)「……ありがとう」

( ^ω^)「どういたしまして、だお」


 
276 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/09(日) 01:12:27.07 ID:NAHTLLVO0
巨人は俺に向かってその大きな手を差し出してきた。
……ちょっとビビってしまった自分が情けねぇ。


( ^ω^)「記念に握手するお!」

('A`)「あ、ああ」


流石に手全体は握れないので、巨人の人差し指の先だけそっと両手で触れた。
温かい手だった。
このまま包み込まれそうだな、と感じた。


( ^ω^)「名前を教えて欲しいお。僕はブーンというんだお!」

('A`)「ブーン、か。俺はドクオ」

( ^ω^)「ドクオ、また地球のピンチの時には駆けつけるお。
      僕は君の勇気に感動したんだお。今後贔屓にするお」

感動って……まさかコイツ、俺の光線銃スカ撃ちを見てやがったのか。
やべっ、恥ずかしー。


 
279 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/09(日) 01:15:02.50 ID:NAHTLLVO0
話し込んでいると、いつの間にか日が暮れて海に夕日が落ちてきていた。

ブーンはそろそろ帰ると言い、俺に手を振る。
そんな日常動作だけで強い風が吹いた。でも、嫌な風じゃなかった。


( ^ω^)ノシ「それじゃ、サヨナラだおー!」

('A`)「おう、またな」


空高くへ飛んでいくブーンの後姿を、俺は見えなくなるまで見送り続けた。


ヒーローは間抜けだけど、最高に格好良かった。
やっぱなるもんじゃないな、憧れるもんだよ、ヒーローってのは。
まあ、そう簡単になれない事は今回でよく分かったけども。



またな、ブーン!
ありがとう、ブーン!


いつかきっと、もう一度こうしてゆっくりと語り合おうな!


 
284 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/09(日) 01:17:29.28 ID:NAHTLLVO0



それから、それから。



('A`)「東に生体反応……って、あー! また二つです!」

(;・∀・)「えー、またかい?」

('、`*川「ここ最近、毎回来てない? あの人」

(;'A`)「ブーンの野郎、調子に乗りやがって……!
    ちょっ、アイツいきなり街に向かって進んでやがりますよ!!」

(*゚ー゚)「三人とも、足止めお願いします! 気を付けてねギコくん!」

『『『了解!』』』

('A`)「チクショ――――! やっぱり甘やかすんじゃなかった――――!」



今日も地球は平和です。


 
287 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/09(日) 01:22:54.75 ID:NAHTLLVO0
('A`)( ・∀・)( ゚∀゚)从 ゚∀从「   


                     i | 三|        ̄ノ    ノ    ー|ッ
           ___      ノ.'市'   つ   (__    ヽ、    /|´し
            ∫ ̄ ̄ ニ「冖              :1ー-----------u、
       ┬――-′   ー-------y 、    _..................」       ィニ----------、_r 、
       亅            /"´      │   :广レ---------∪       '广  `\ ィ 、
      丿   _----- 、    廴____j―‐‐っ _ l    」        〈_,,、    !゙\   ゙ヽト`\
     _/′  /   丿    ,'〕  −  :l ノ‖      ..----、   '、_..、〉   丿 `ゝ_r'"゙フ  1
    +Fー----- ゞ+ /    //  ‖   ´ _ll     〈'´  /   _l/ ゙'´  _/ ............-‐′  }
           /′    / ,'  _l厂    _,'〕    l'ゝl _..r''´   _/\、   'く    '、      丿
        _,,..r''´     _ノソ ,,..‐´廴......-‐''´ ゝ-----ゝ '!「-----‐"    `ゝ、 _-ニ 、 '、    _..r''´
 ___,,....--‐''"      _../  ̄´                           `ー'´    ヘ _r'"´
゙⌒''''''''''''''''――‐'''''''''''''´                                       ヽ:l′


                                                」('、`*川(*゚ー゚)(,,゚Д゚)






(´・ω・`)「おしまい」
 
289 ◆zS3MCsRvy2 :2007/12/09(日) 01:24:16.86 ID:NAHTLLVO0
以上でこの話は終わりです
支援dd


イメージソングのようなもの
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1474102

いのうえ〜



読んでいただきありがとうございました!
そしてめろんさん、思ったより時間かかってごめんなさいです

合作はクライマックスだよー!
これからの作品もこうご期待!


 

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