花火2稲川ブーン二です
( ^ω^)「夏も終わりですねえ。こんばんは、稲川ブーン二です」
( ^ω^)「最初に断っておきますとね、ええ、こういう話をしてると……寄ってくる、っていうじゃないですか」
( ^ω^)「世間に広まるのにはそれだけの理由があるもんで、これってあながちデマじゃあないんですよ」
( ^ω^)「だから聞いてる最中に、背後からじとーっとした視線を感じたり、背中にぞぞぞぞぞっと寒気が走ったら、ああ、出たんだなあって思ってください」
( ^ω^)「今回のお題は花火というわけですが、皆さんは花火を見るとき、どんな気持ちで見てます?」
( ^ω^)「楽しかったり、綺麗だなあ、なんつって思ったり。ええ、私もね、普段はもちろんそんな気持ちで見てますよ」
( ^ω^)「それがあの時だけは違ったんだなあ。安堵、という感情を味わったのは、後にも先にもこれっきりでした」
( ^ω^)「今回お話しするのは、そんな話です」
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あれは私がまだ学生の頃なんですけどね、気心の知れた男友達で集まって、夜の街をぶーらぶーら遊び歩いてたんだ。
街っていっても昔の田舎でしたからね、遊ぶところなんてなーんにもない。
ええ、散歩みたいなもんですよ。それでも楽しいんだから、きっと若さってやつなんでしょうねえ。
('A`)「そういえば、今日花火大会だっけ」
なんてことを友達の、仮にドクオにしておきましょうかね。彼がいうんですよ。
(´・ω・`)「せっかくだからいってみる?」
もう一人の友達、こちらは仮にショボンにしましょう。
彼も乗り気だってんだから、私だけ反対するのもなんだってことで行くことになったんですよ。
だけどね、数少ない田舎の娯楽っていうのにはみんな敏感でねえ、もんの凄い数の人でごった返してるんですよ。
( ^ω^)「これじゃあ、ろくに近くで見れないお」
('A`)「俺、前に先輩から聞いたんだけど、すげえ穴場があるらしいぜ」
(´・ω・`)「僕も聞いたことある。あの山の神社のところだよね」
花火を打ち上げる川の、すぐ近くが山になってましてね。
その山ん中にある、管理人なんていやしないうらぶれた神社。
昼間でもそこは薄暗く、どーんよりとしてて気味が悪いってなことで有名で、地元の人は誰も近寄らないんですよ。ええ。
( ^ω^)「あそこはやめといた方がいいんじゃないかお」
('A`)「なんだブーン二、びびってんのか」
本当は行きたくなんかなかったんですけど、そうも言われちゃ売り言葉に買い言葉で、行ってやろうってなことになったんですよ。
ろくに整備もされてない道を登って神社に着いたわけですが、案の定というかなんというか。
あからさまにここだけふーっと空気が冷たいんですよ。
( ^ω^)「なあ、やっぱり――」
と口を開いた瞬間どおおおおおおんっと激しい音が聞こえる。
なんだと思って振り返ると、花火が始まったんですよ。
(´・ω・`)「立ちっぱなしも疲れるし」
結局、帰ろうなんていえる雰囲気じゃあなくなってしまいましてね。
ショボンの提案でお社の階段に座ることにしたんだ。
早く帰りてえなあ、腹へったなあ、いつまで続くんだろうなあ。
あーでもねえ、こーでもねえなんて考え事してたら
……ゴトッ
って後ろから何かが落ちたような音がしたんだ。
('A`)「なあ、今のって中からだよな?」
花火の音も大きかったんですけど、そらまあ近くでそんな音がしたら誰だって気付きますよ。
('A`)「おっ、鍵かかってないじゃん。入って見ようぜ」
社殿の中なんてそうそう入れる場所じゃありませんからね、好奇心を刺激されたんでしょう。
よせやーいっていう私の制止を振り切って、ドクオは社殿の中へ入ってった。
(´・ω・`)「あれ? 向こうも扉になってる」
仕方ないんで私達も続くんですがね、どうにもおかしい、なーんかおかしい、この神社変なんだ。
普通社殿っていったら御神体が飾ってあるでしょう。
それがね、何もないどころか、向こうも出口になってんだ。
('A`)「俺達、ここから入ったんだよな」
その出口から出ると神社の正面、入口から出たのと同じ景色が見える。
おかしなあ、嫌だなあ、怖いなあ、なんて話になりましてね。
丁度終わったのか花火も聞こえなくなってましたから、帰ることにしたんですよ。
ええ、入った方からではなく、向かいの出口の方から出てね。
そのことに私は、川沿いの道まで戻ってから気付いたんだ。
('A`)「関係ねえって。どっちでも一緒だろ」
なんてドクオは軽く言いますけどね、私にはどーも嫌な予感がする。
( ^ω^)「なあ、さっきまで凄い人込みだったのに、人っ子一人いないのはおかしくないかお」
そう、神社を出て以来誰とも出くわさないんだ。
初めは笑ってたドクオも住宅街に近付くに連れて、徐々におかしいって気付き始めた。
(´・ω・`)「ね、ねえ、向こうから誰か来るよ」
ショボンが指差す方向からペタッペタッと誰かが近付いてくる。
はああ、なんだ私の思い過ごしかあ。
なんてほっとしたのも束の間、私はあることに気付いた、気付いてしまったんだ。
駄目なんですよ、こんな住宅街でペタッペタッなんて、裸足で歩くような音がしちゃあいけない。
それに気付いたときには、その誰かはもう見えるところまで来ている。
川д川
ぼさーっと顔までかかるのような、長い髪の不気味な女。
その彼女がこっちを見て、
川д川「ジヒ、ジュヒヒヒヒヒ!」
耳障りな笑い声を上げながら走ってきた。
(;'A`)「うわあああああああああああああ!」
もう一目散で走って逃げる。
なりふり構わず走って走って。
そして、どこをどう行ったのか、気が付いたら例の神社の近くまで来てたんですよ。
(;´・ω・`)「はあ、はあ、ねえ、ドクオは!」
(;^ω^)「はあ、うくっ、はあはあ、わからない、無我夢中だったから」
さすがに探しに行かないと、と思ったら、
ジュヒヒヒヒヒ
もうそんな余裕はどこにもない。
( ^ω^)「神社に行こう!」
助けてくれ、助けてくれ、って祈るようにしながら全速力で走る走る。
でもそんな長時間走れるわけもなくてね、足が重くなってくるんだ。
川д川「ジュヒヒヒヒヒ!」
不気味な女の、異様にひやーっとした手が私の肩をかする。
うわああああああ、もう最後の力を振り絞って、なんとか神社の社殿へと転がり込んだ。
川д川
するとね、その女は社殿の中へは入ってこないんですよ。
しばらくじーっとこっち伺った後、女はすーっとどこかへ去っていったんです。
呆然としながら私とショボンは、元の入り口だった方から外へ出るとね、
どおおおおおおん
って花火がまだ続いてるんですよ。
(;´・ω・`)「た、た、助かった……」
安堵で二人してわんわんわんわん泣いてね、抱き合いながら崩れ落ちました。
だけどもドクオを放っておいていいわけがない。
私達は意を決してもう一度社殿へいくと、それが不思議なことにね。
……もう一つの出口なんてものは、どーこにもないんですよ。
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( ^ω^)「その日以来、ドクオは行方不明になりましてねえ。今も彼は見つかっていないんですよ」
( ^ω^)「例の神社はそれから数年後に取り壊されました」
( ^ω^)「あれからも何度かショボンと訪れたのですがね、ええ、二度ともう一つの出口が現れることはありませんでした」
( ^ω^)「私が体験した不思議な世界、あれってなんなんでしょうねえ」
( ^ω^)「いやあ、それにしてもこういうことって、あるんもんなんですねえ」
これで投下は終わりなんですけどね、ええ、私は元々別の話を書いてたんですよ
レズエロ全開の馬鹿話ってな作品で、調子よく書けてたんですが、それがどう考えても15レスをこえる
困ったなあ、どうしようかなあ、なんてあーでもねえ、こーでもねえと考えてたら
そうだ、これを総合で稲川風のネタにしてやろう。なんて思い付いたんだ
総合でネタにしたらすーっとインスピレーションが沸きましてね、目が覚めるとこんな作品が生まれてました
それでこれを書いたのが昨夜の話で、
今朝になって起きると祖母が亡くなってたんですよ
通夜も終わって明日は葬式なんですがね
今になって考えると、この話は祖母が授けてくれたのかなあなんてね
いやあ、こういうことってあるんですねえ
おわり
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