71 :祭り6『外来魚』:2011/08/30(火) 00:35:18 ID:gY0np6FU0




 不敵な笑みを浮かべて歩く、浴衣姿の男。


( ^ω^)


 夏祭りの露店が並ぶ歩道の中心を、男は歩く。
 しかしその眼は、ただ、ある一点だけを見据え、周りの人や露店は眼中に無いかのようだ。

 周囲の人々は、その男が放つ気迫に怯え、逃げるように歩道の端へと逸れてゆく、
 結果、男の周りには不自然なスペースが出来あがっており、
 それがまた、事の異常性を感じさせる。

  _
( ゚∀゚)「なんだあいつは……? 雰囲気が只者じゃないぞ……!」

/ ,' 3 「ま、まさか……奴は!」
  _
( ゚∀゚)「荒巻じいさん! 知っているのか!?」


 露店を開いていた老人が、信じられないという表情で、体中を震わせている。
 額に汗を浮かべ、青ざめた顔のまま、必死に声を絞り出した。



/;,' 3 「悪名高き金魚すくい荒らし……人呼んで『外来魚』!!」


  _
( ゚∀゚)「が……『外来魚』……!?」

/;,' 3 「日本中の夏祭りに突如現れ、奴が去った後は一匹の金魚も残らないという……」
  _
(; ゚∀゚)「なんだよそれ……! やべぇのか!?」

/;,' 3 「とうとうこの町にも現れおったか……!」



/;,' 3 「奴は金魚をすくった後、決まり文句のように必ずこう言うそうじゃ……、

      『もう水しか残って無いお、カキ氷屋からシロップを貰ってジュース屋にでもなるといいお』とな、

      隣町も奴の被害に悩まされているとか……」

  _
(; ゚∀゚)「隣町の露店にやたらとジュース屋が多いのは奴のせいだったのか!?」
  _
(; ゚∀゚)「たしかに、やけに生臭いジュースだと思ってたんだ……」



/;,' 3 「このままではこの町の金魚すくい屋が壊滅させられるぞ……!!」
  _
(; ゚∀゚)「……俺、みんなに伝えてくる!」


…… …… ……




ノパ听)「あーッ!! 破れたァ!!」



ノハ;凵G)「まだ一匹しかすくってないのにー!!」

( ФωФ)「泣くな泣くな……ほれ、一匹おまけしてやろう」

ノハ*゚听)「うおーッ!! いいのか!?」

ノハ*゚听)ノシ「おっちゃーんありがとなー!」

( ФωФ)「ハッハッハ、はしゃぎすぎて転ぶなよー」


  _
(; ゚∀゚)「おーい! ロマネスクのおっちゃん!」

( ФωФ)「む、長岡のトコの坊主か、一回100円だぞ、やるか?」
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(; ゚∀゚)「それじゃあ一回……って違う! そんなんじゃねえ!!」
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(; ゚∀゚)「やべぇ奴が来てるんだ! 金魚を全部もってかれちまう!!」

( ФωФ)「……ほう、詳しく話してみろ」


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(; ゚∀゚)「なんでも『外来魚』とかいう、とんでもない金魚すくい荒らしが来てるらしい!」

( ФωФ)「『外来魚』……? 聞いたことが無いな」
  _
(; ゚∀゚)「俺、さっき見たんだ……すごい迫力で近づけなかった、
       雰囲気で分かる! あいつは只者じゃねえ!」
  _
(; ゚∀゚)「このままじゃここの金魚を綺麗さっぱり取られちまう……なにか対策を……!」



     「対策ねぇ、でも残念ながら、もう遅いみたいだお?」


  _
(; ゚∀゚)「あ……!」

( ФωФ)「……貴様か、『外来魚』とやらは」


( ^ω^)「ご名答」



( ФωФ)「……ふむ」


 群青色の浴衣を着込んだ男、
 少々小太りだが、腕の筋肉を見る限り、並の男では無いと分かった。


( ^ω^)「どっこいしょ、っと」


 男はそれまで持っていたクーラーボックスを地面に置き、その上に座り込んだ、
 椅子代わりにしているが、おそらくすくった金魚を入れるためのものだろう。
 水槽いっぱいの金魚を全て持ちかえるとなれば、ただのボウルや袋では入り切らないからだ。

  _
(; ゚∀゚)「……」


 そして、その男を見定めるにあたり、なによりも一番気になるものがあった、
 それは、男が背中側の帯に挿しこみ、背負っている──巨大な輝く“ポイ”だ。

 ポイとは、プラスチックでできた輪に薄い紙が貼られた、金魚すくいに使う道具であるが。
 男が背負っているそれは、晩ごはんに突撃する某番組のシャモジのように大きく、
 さらに、全体が金でできているかのように光り輝いている。


( ФωФ)(ポイの形をした巨大なオブジェ……か?)

( ФωФ)(なんにしろ、それだけの自信や実力の現れだろうな)



( ^ω^)「さーて、この100円で、ぜーんぶ取らせてもらうとするお」

( ФωФ)「……ほう、100円で、か」

( ФωФ)「この大量の金魚を、一回だけですべてすくう気か?」

( ^ω^)「おっ、その通り、なにかおかしいかお?」


 どうやら、相当の自信を持っているようだ、
 もし話通りの実力の持ち主なら、本当に言った通りの事を実現してもおかしくはない。


( ФωФ)(すべての金魚を、ひとつのポイで、すくう……か)




( ФωФ)「……いいだろう、見せてみろ、その腕前」

( ^ω^)「おっおっ、話の分かる店主で良かったお」
  _
(; ゚∀゚)「おっちゃん!! いいのかよ!?」

( ФωФ)「……もとより、相手が誰であろうと拒むつもりは無い」

( ФωФ)「だが……それよりも、見てみたくなったのだ、この男の自信の源……実力をな」
  _
(; ゚∀゚)「……」


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( ゚∀゚)「……分かったよ、おっちゃん」
  _
( ゚∀゚)「おっちゃんが、そう言うなら、もう俺は止めはしねぇ」

( ФωФ)「ああ、それでいい」


 露店の裏に置いてある、いくつもの箱、
 『金魚すくい用ポイ』と書かれたその箱の中から、ポイを取り出す。


( ФωФ)「紙の厚さは……6号でいいか?」

( ^ω^)「あ、そういうのいらないお」

( ФωФ)「……なんだと?」


 そう言うと、男は懐から何かを取り出した。


  _
( ゚∀゚)「あ……あれは!!」


 男が取り出した物、それは、

 男のその余りある実力の秘訣であり、

 男が編み出した金魚すくい必勝法、その、最重要アイテム――





  _
( ゚∀゚)「サーティーワンアイスクリームの店員がアイスすくう時に使うでかいスプーン!!!」


( ^ω^)「このMyポイを使わせてもらうお!!」








( ФωФ)「いや、ダメに決まってんじゃん」

( ^ω^)「え!!?」


…… …… ……




  (((( ´ω`) トボトボ…


  _
( ゚∀゚)「い、行っちまった……」

( ФωФ)「なんだったんだ、あいつ」


 かくして、脅威?は去っていった。

 男は去り際に、「僕を負かしたのはアンタが初めてだお、このポイはアンタに相応しいお」
 と言って、背負っていた巨大なポイを置いていったのだが。


( ФωФ)「これ、邪魔だな……捨てよ」



 ( ФωФ)  二三 ー⊂⊃ ポイッ
      と彡



/ ,' 3 「ポイだけにポイってか! ガハハ!」   完!

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