('A`)ドクオと飛竜と時々オトモのようです3−2 前のページへ] 戻る [4話へ

192 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/29(火) 16:49:25 ID:GkD/7Z4s0
   狙撃手の才能?     そんなもんはねぇさ。  弛まぬ努力と強い気持ちだろ。  
        まぁ、強いて才能という言葉を使うならば

         “良い眼”をもってるか、だろーな。


        ―――One Shot Killer ジョルジュ=ランドロ―――


193 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/29(火) 16:49:52 ID:GkD/7Z4s0
('A`)「!!」

ζ(゚ー゚*;ζ「ツン……」

ブーン達の戦場から400m程離れた小高い丘。何気なくドクオが選んだこの場所は、確かにツン達を見るには適した場所だった。そこで様子を窺っていた二人は、具に戦場の異変を感じ取っていた。

('A`)「退屈しないな、ここも」

ドクオは、ドサッと地べたに座り先程捕まえた兎を捌いていた。

ζ(゚、゚*;ζ「……落ち着いてますね」

一方、デレは気が気ではないようだ。立ったり座ったり、歩いたり止まったり、一目見ただけで落ち着きを失っていると分かる。

('A`)「焦る気持ちは分かる。だが、まぁ。あんな必死な二人を見るとな。なかなか手を出せん。    それに言っただろ。あの男は勝つよ。そういう風になってんだよ」

ζ(゚、゚*ζ「……すいません。私、今意地悪言いましたね」

気にするな、と焚き火を用意しながら本当になんとも思ってない風にドクオは答えた。

('A`)「まぁ、ツーには地中で待機してもらってる。本当に危うい一瞬はツーが助けてくれるだろう。   それから俺達が駆け付ければ良い」

はい、と答えたデレだが手に持っていた弓を背に戻す事はしなかった。


194 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/29(火) 16:50:13 ID:GkD/7Z4s0
('A`)「俺達は、あいつらが勝った後に誉めてやるだけだよ」

黙々と夕食の準備を行うドクオ。

川から汲んできた水に塩を入れ、それで先程の兎肉を揉む。こうして兎独特の獣臭さを消すのだ。

この一手間をしてから、少量の塩をまた塗し、それから火にかける。

ζ(゚、゚*ζ「ドクオさん、手際が良いですね」

ん、とドクオはまた頬を掻く。

('A`)「これは、ドンドルマ地方の狩人なら普通の事だよ。ユクモが温泉を基盤に成長したギルドならば、ドンドルマは食を基盤にして成長したギルドだからな」

だから慣れてるんだよ、とドクオは少し照れ臭そうに言った。

もくもくと上がった煙りが、肉の焼ける香ばしい薫りと共に麓へと下っていった。


195 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/29(火) 16:50:37 ID:GkD/7Z4s0

感じた。一発の弾丸が自分の脇をすり抜けて行くのを。

( ^ω^)「……まったく困った幼馴染みだお」

発射地点は、自分の40m程後方。見なくても分かる。ここにいるのは二人だけ。ボクとツンだけだ。

ξ゚听)ξ「……変な気を遣わないで。身体に悪いわ」

来てほしくなんてなかったのに。

そのままボクを囮にして、安全な所まで逃げて欲しかったのに。

( ^ω^)「ボクの気遣いは、毒か何かかお?」

ξ゚听)ξ「ギギネブラ並みの威力だったわ。本当に気持ち悪いったらありゃしない」

(;^ω^)「ちょっ、ツンはギギネブラなんて狩った事ないお?」

あら、そうだったわね。ツンは普段交わしている軽口と全く変わらない雰囲気で答えた。

ξ゚听)ξ「……もう少し、私達が強くなったら狩りに行きましょ」

その一言で十分だった。

あぁ、きっと狩りにいこう。何度でも。ツンと一緒ならきっとボクはいつまででも戦える。


196 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/29(火) 16:50:57 ID:GkD/7Z4s0
だから今は







ξ#゚听)ξ『 こ の ク ソ 鳥 を ぶ っ 飛 ば す !!!』(^ω^#)


197 :3−3:2011/03/29(火) 16:51:59 ID:GkD/7Z4s0
ツンの放った弾丸は、見事にクルペッコの眉間に命中した。

しかしただそれだけ。不意打ちではあったが、余りに威力が無さすぎた。

そんな事は百も承知。ツンはブーンから離れ、そしてクルペッコからも離れ、冷静に見つめていた。

ξ゚听)ξ「ブーン。私の事、“信頼”してるわよね?」

( ^ω^)「勿論」

ξ゚ー゚)ξ「……そう」

幾度も、クルペッコの嘴によって啄まれたブーンの身体。動く事もままならないであろう攻撃を受けてなお、ブーンの身体は活力に満ちていた。

先程までの柄を長く持ち、出来るだけ広範囲、高威力を狙った大振りから     柄を短く持ち、素早く振るえるようにした。

リーチは短いが、瞬発力に自信のあるブーンは、この持ち手を生かしたヒット&アウェイの戦い方が持ち味なのだ。

武器をギリギリまで持たず、全力で走り敵に近付いて素早く武器を抜き、一撃を加えて離れる。

謂わば、ハンマーによる抜刀術。

これこそが、ブーンの強みなのだ。


198 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/29(火) 16:53:01 ID:GkD/7Z4s0
着実にクルペッコに傷を負わせていた。  しかし、クルペッコもやられてばかりではいない。

元々ヒトの数倍の身体を持つ、【彩鳥】クルペッコに通常の戦術など通用しない。
なにせ、奴はブーンが全力で走った距離を三歩とかからず詰めてくるのだから。

その勢いのまま繰り出される突き。それがブーンを何より苦しめていた。

一発殴れば、三発突かれる。
問題なのはブーンがクルペッコから遠ざかる時に、背を向けること。無防備な背中を見逃す程、【彩鳥】は甘くない。
しかし、その構図が、ツンによって一気に塗り替えられる。

ξ゚听)ξ「そこよ!ブーン!」

後ろからクルペッコの動きを注意深く観察していたツンが、クルペッコの死角となる場所を探して、そこに通常弾Lv1を撃ち込んでいるのだ。

攻撃に参加せず、ブーンの攻防を見守っているだけのツンにとって、それは容易かった。

そして、弾が打ち込まれた場所にブーンが飛び込む。   こうしてクルペッコのカウンターは封じられた。ブーンは、的確にクルペッコの頭を狙いハンマーを打ち据えていく。

段々と、執拗に蓄積されていく痛みにクルペッコは、怒りを覚えた。

しかし、クルペッコには理解出来ないのだ。今、ツンが行っている事の意味が。だから、何も出来ない。ただ、されるがままの状態が続く。

これは、普通のパートナー同士が出来る芸当ではない。

支援者が、相手の事を本気で護りたいと願い

攻撃者が、支援者の事を本気で信頼していないと出来ないやり方だ。

これが本当の“信頼”。何物にも代え難い、狩猟において絶対に必要な要素なのだ。


199 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/29(火) 16:53:59 ID:GkD/7Z4s0
この袋小路を脱出するにはどうすれば良いのか。

彩鳥の選択は正しかった。飛翔、クルペッコは空に舞い、二人との位置取りを替える事を選んだ。

ξ;゚听)ξ「やられたわ!!」

着地地点は、ツンとブーンの中間地点。

(;^ω^)「おっ!」

二人は綺麗に分断されたのだ。

これでは、ツンはブーンに死角を教える事が出来ない。それに、援護をしようとクルペッコに弾を撃ったところで全く意に介さないだろう。

それでこちらを攻撃してくるような事があれば最悪。

二人のコンビネーションは、クルペッコの“飛ぶ”という一つの動作で封殺された。

ブーンは透かさずクルペッコの足元に飛び込んでいく。
先程までのやり方は、使えないがそれでもコイツの意識をツンに向ける訳にはいかないからだ。

(メ#^ω^)「おおぉぉおお!!!!!」

ξ゚听)ξ「……ブーン」

考えるんだ、私。なにか打開策は無いのか。この難局を乗り切る事は出来ないのか。

クルペッコに見つからずに、ブーンの後ろに回り込んでみてはどうだろう。

いや、また飛ばれて同じ事の繰り返しになるだけだ。    様々な選択肢が頭に浮かんでは消える。


200 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/29(火) 16:54:27 ID:GkD/7Z4s0
ξ゚听)ξ「!!」

その時、匂いがした。この場所には似合わない、鼻を擽る良い匂いが。

見付けた。小高い丘の上、そこから私を心配そうに見つめている見知った人を。

ξ;゚ー゚)ξ「……全く、我ながら良いお姉ちゃんを持ったもんだわ」

ならばやる事は決まった。限界まで自らのライトボウガンに詰めていた通常弾Lv1を全て取出し、あの弾を込める。

もし採集の際、大型と出くわした時の為に、持ってきていた弾丸。

出来れば、クルペッコの翼に。

それも、クルペッコの痛点が一番集中している翼の根元に当てたい。

ガキ、っという音を立てて装填された一発の弾丸。

外さない、外せない。

この一発は絶対に。

ブーンは、今必死に私に注意が向かないようにクルペッコを攻撃してくれている。

私が何とかしてくれる、という信頼の元に。


201 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/29(火) 16:54:52 ID:GkD/7Z4s0



だから、私はただ狙い撃つのみ。

引き絞られ、放たれた弾丸は、私の目線と寸分違わぬ所へと命中した。


202 :【幕間】:2011/03/29(火) 16:55:41 ID:GkD/7Z4s0

「デレ、弓を構えろ」

確かにそう言われた。今まで平然と、二人の戦いを静観していたドクオさんが、急に立ち上がった。

ζ(゚ー゚*;ζ「はい!」

('A`)「デレ、弓の有効射程範囲はいくつだ?」

ζ(゚ー゚*ζ「……100m弱だと思います」

なるほど、とドクオさんは軽く笑った。

('A`)「じゃあ、その常識を打ち破る時だ。あのクルペッコ、狙えるか?」

ζ(゚、゚*;ζ「かなりキツいと思います。撃ち下ろしになりますから、届くとは思いますが、精密射撃となると……。まずここからでは的が絞れません」

くくっ、とドクオさんはまた笑う。

('A`)「大丈夫、的なら今出来た」

ツンとこの距離からでも感じる鼻につく独特な臭い。この臭いに覚えがあった。

ζ(゚ー゚*ζ「……あれは、ペイントですか?」

('A`)「ああ、あれはデレの妹が付けた物だ。クルペッコが飛び上がったタイミングで、あれを狙え」

従来、ペイント玉やペイント弾はマーキング機能として使われる。その独特で強烈な臭いから何キロ先にいるモンスターでも、ある程度把握できるようにする道具だ。


203 :【幕間】:2011/03/29(火) 16:56:05 ID:GkD/7Z4s0
ζ(゚、゚*;ζ「でっ、でもっ!あんなにクルペッコに動かれたら、どうしようもないですよ!  せめて動きが止まらないと!それに飛ぶタイミングを計りながらなんて……」

('A`)「動きは、男の方が止めてくれる。飛び上がるタイミングは俺が言うよ」

ζ(゚ー゚*;ζ「そんな……やっぱり無茶ですよ」

('A`)「大丈夫、もう覚えた。タイミングは任せろ。後はあの男次第だな」


204 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/29(火) 16:56:50 ID:GkD/7Z4s0
ツンが、クルペッコに向かって遂に撃った。
それもペイント弾だ。疑うな、信じろ。ツンには何か意図があるはずだ。

ここで必要なのは、疑念ではなく信頼。

だからこそ、ボクはコイツと全力で向き合うだけだ。

長い戦いになった。クルペッコに執拗に啄まれた右肩は、もう感覚がない。 ずっとハンマーを振るうのに踏張っていた左足も、痙攣している。

それでも倒れられない理由がある。

クルペッコが翼先に付いている火打ち石を両翼で擦り付けた。今日何度も見た、火打石による打撃。もう身体が覚えていた。

( ^ω^)「……来いお」

ここで必要なのは威力。散々と蓄積してきたダメージを、一気に表に引き出してくれる、全力の一撃。

柄を最大限に長く握り込む。父から譲り受けたこの【デッドリボルバー】で。

ツンを護る為の一撃を。

渾身の一撃を。

クルペッコが跳んだ。速い、15mあった距離が一歩で半分まで近づいた。

落ち着け。動きを読み、予測する。  クルペッコの狙いは自分。ただ、目の前にハンマーを振り下ろせば当たるのだ。問題はタイミングのみ。

身体を千切れるほど、捻って力を溜める。

( ^ω^)「………」


205 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/29(火) 16:57:22 ID:GkD/7Z4s0
クルペッコの脚が、地面を強く踏んだ。

来る。

『今だニャッ!!!』

地面から突然聞こえた声。自然と身体は動いていた。捻った身体を解放し、限界までハンマーを振り上げ落とす。

圧倒的な重量を生かした、この一撃。

乾坤一擲の『スタンプ』が、クルペッコの頭を捉えた。


            Gyaaaaaaaaa


響き渡るクルペッコの悲鳴。粉々に砕けた忌々しい嘴。

決め損なったか。傷だらけの身体では、やはり本来の全力には届かなかったようだ。

しかし、クルペッコにとってこの一撃は重かった。侮り故の手痛過ぎる代償。

ブーンは直ぐ様追撃をかける。あと一撃で、終わらせられるかもしれないのだ。

しかし、クルペッコはそんなブーンの決死の追撃を嘲笑うかの様に踊りを舞って、空を飛んだ。

飛んでしまったのだ。   何も知らずに。


206 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/29(火) 16:57:48 ID:GkD/7Z4s0



             『デレ、今だ』


207 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/29(火) 16:58:14 ID:GkD/7Z4s0
(;^ω^)「!?」

一陣の風が通り過ぎた。

風はクルペッコの翼。付着していたペイントの跡に突き刺さり、そのまま貫通して逆側の翼をも裂いた。

落下する【彩鳥】クルペッコ。

下で待つのは、余りにも巨大な一撃。

この千載一遇の好機。必ず物にする。

(#`ω´)「うおおぉぉぉおおお!!!!!!!!!!!!」


瞬間、クルペッコの頭が弾けた。


208 :【幕間 2】:2011/03/29(火) 16:59:09 ID:GkD/7Z4s0
('A`)「そろそろだぞ、デレ」

矢をつがえる手が震える。自分の護りたい命が懸かった一矢というのは、ここまで緊張するものなのか。

今までに経験したことが無い程、弓が重かった。

('A`)「落ち着いて的だけを見据えるんだ」

ζ(゚ー゚*;ζ「はい」

('A`)「……そう緊張するな。言っただろ、お前は凄腕の弓使いだよ。自信を持て」

ζ(゚、゚*;ζ「でも、こんな遠距離初めてですよ」

想像してみろ。今、俺達の目の前に存在している物はなんだ。

ζ(゚ー゚*ζ「……分かりません」

('A`)「それはな、空気だよ。目には見えないけど、確かに空気はそこに存在している。
それらを全て貫通させるイメージを持て」

ζ(-ー-*ζ「………」

ドクオさんの言っている事が、なんとなく分かった。だからこそ瞼を閉じた。

イメージを膨らませる為に。


209 :【幕間 2】:2011/03/29(火) 17:00:04 ID:GkD/7Z4s0
『デレ、今だ』

ζ(゚ー゚*ζ

放った一撃、矢が弦から離れた所で弓を背中に戻した。

命中の有無を確かめる必要はなかった。

遠めで、無様に地面に突き落とされるクルペッコが見えた。

ζ(゚ー゚*ζ「ドクオさん、弓を使ったことあるんですね」

('A`)「いや、俺の幼馴染がな。よく俺に無理やり弓の練習をさせてる時に、そんなアドバイスをしてたんだよ」

ζ(゚、゚*ζ「へー、てっきりドクオさんは弓も使えるのかって思っちゃいました」

「まぁ、使えないことは無いんだけどな」と、頬を掻きながらドクオは言った。

ζ(゚ー゚*ζ「今度教えてくださいよー」

('A`)「俺は物を教えるのが上手くないからな。誰か他の人を当たってくれ」

ζ(゚、゚*ζ「……残念です」

『まぁ、俺の先生の教え方が悪かったせいだ。悪く思わないでくれ』

('A`)(でも……あの時、クーが言った事の意味は、デレが証明してくれたけどな)


210 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/29(火) 17:00:30 ID:GkD/7Z4s0
(*^ω^)「いやったおおぉぉおお!!!!」

ξ*゚听)ξ「もう、そんなにはしゃがないでよ!みっともないわねっ!」

クルペッコはHR1の狩人が昇級するための試験に使われるモンスターなのだ。試験を受けるためには、ギルドが指定するクエストをこなさなければならない。   それを飛び越してのクルペッコの狩猟、ブーン達が喜ぶのも無理ない話である。

クルペッコが何故狩人の登竜門に選ばれるのか。それには幾つか理由がある。


211 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/29(火) 17:00:51 ID:GkD/7Z4s0
まず飛べる事。

HR1の狩人達は、まだ単独で飛竜を狩りに行く事が出来ない。だから、空を自在に舞う敵と戦う経験が少ないのだ。

これから出会うであろう、そういうモンスターに対処出来るかどうか。

二つ目が、弱化攻撃。

クルペッコが吐き出す胃液は発火性が強く、少し火を近付けただけで豪々と燃える。

この胃液まみれになった身体に、クルペッコの火打ち石が直撃しようものならば、剣士用の装備を身に付けている狩人でさえただでは済まない。

しかし、一番の問題はガンナーだ。

この胃液は、常々ガンナーを苦しめる。想像すれば分かるだろう。

ボーガンの引金を引く度に起こる小さな火花。それだけでクルペッコの胃液は燃えだす。

つまりボーガンを操る狩人は、絶対にこの胃液を掛けられてはいけないのだ。


これらの厄介な理由。そして三つ目。これが一番大事な事。

狩りが終わっても、村に帰るまでは絶対に油断してはいけない。

狩人と大型モンスターとの戦闘は凄まじい。

だからこそ周りにいる別の大型モンスターに嗅ぎつけられる恐れがある。

絶対に気を抜いてはいけなかったのだが。


212 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/29(火) 17:01:10 ID:GkD/7Z4s0
(*^ω^)「ボク達、昇級出来るんじゃないかお?」

ξ*゚听)ξ「そうね!クルペッコを倒したんだから!!」

だからこそ丘の上から二人を眺めていたデレは、危ういと思った。

普通の狩猟でも、剥ぎ取りは素早くとギルドからは指導されている。

ましてや、今回討伐したのは【彩鳥】クルペッコ。最初に聞こえたあの鳴き声、別の種の声帯を模写し、自らの命を省みず放つ捨て身の技。もしかしたら来るかもしれない。別の敵が。

そして感じたあの独特の威圧感。デレは駆け出した。このままでは、あの子達が危ない。

油断し、弛み切った二人には、ドスジャギィでさえ強大な敵となるだろう。

全力で脚を上げ、出来るだけ前に押し出す。

行ける、先日の戦闘や連日の移動による疲れは全くない。

しかし、そんなデレの全力疾走を軽々抜き去り駆け往く影が一つ。

ドクオだった。


213 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/29(火) 17:01:46 ID:GkD/7Z4s0
ただでも気配に敏感なドクオは、クルペッコの特性【声マネ】を知らなくとも、あの独特なプレッシャーを感じた時点で駆け出していたのだ。

猛烈な加速で、グングンと二人に近付いていく。

ツンも自分に近付いてくる影に気が付いたが、自分達と同業だと知っていた事もあり、警戒しない。

そことは別の角度から凄まじい勢いで突っ込んでくる二頭の暴走機関車。

先に気が付いたのはブーン。

音のする方を見れば、余りに重量のある、速度を保った突進が自分達に迫っている。

この時初めて、ブーンは父から譲り受けたデッドリボルバーを歯痒く思った。

どうしてハンマーなんだ、ランスや大剣ならばツンを庇う事が出来たのに、と。   そう思うまでに、二頭の大猪は自分達に差し迫っていたのだ。

ここでブーンが、咄嗟にツンに抱き付き地面に押し倒したのは、勿論少しでもツンを庇うためである。

志高い、ちっぽけな騎士の為にもう一度繰り返そう。

決して邪な気持ちで、女性を押し倒したのではない。

しかし、いつまで経っても覚悟していた衝撃が来なければ、多感な時期の乙女が勘違いを起こしたとして。それもまた無理のない事だ。

結果、ブーンの股間は盛大に蹴り上げられる事となる。


214 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/29(火) 17:02:08 ID:GkD/7Z4s0
('A`)「全く、習わなかったのか?モンスターの剥ぎ取りは迅速に、ってな」

(*゚∀゚)「ニャー、口酸っぱく言ってきたと思うのニャー」

【大猪】ドスファンゴを受け止めたのは、ドクオと地中に隠れていたツーだった。

ξ;゚听)ξ「ツー様っ!?」

(;^ω^)「それに、あの時の人もいるおっ!」

驚く二人を横において、あくまでドクオとツーはマイペースだった。

('A`)「ツー、このドスファンゴはギルド的に狩っても良いのか?」

(*゚∀゚)「ニャー。クルペッコが呼び出したモンスターは、例外的に誰が狩っても良い事ににゃってるニャー」

そうか、とドクオは背に納めていたもう一本の刀を取り出す。

('A`)「ツーは、二人を連れて下がれ。妹の方は、怪我してないだろうが男の方は、補助無しじゃ歩くのも辛いだろうからな」

(*゚∀゚)「ニャー」

すかさず、呆然としていた二人の頭を小突き正気を取り戻させると、ブーンの手を引いて走りだした。


215 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/29(火) 17:02:38 ID:GkD/7Z4s0
さてっと、ドクオは此処で一呼吸置く。

一瞬出来た間。ドクオは足下に落ちていた手の平大の石を蹴った。

それは見事に、ツーが抑えていた方のドスファンゴに命中する。

これで二頭の注意はドクオに向いた。

('A`)「兎だけで四人分賄えるかと思ったが、幸運だった」

金銀の双剣が、沈みかけた夕陽に照らされ真っ赤に燃え上がる。

動き出したのはドクオが先だった。








ζ(゚ー゚*ζ「はぁ、ツンったら無茶ばっかりして!!」

ξ゚听)ξ「うるさいわねー、結果的に討伐出来たんだから良いじゃない」

その頃、こちらでは姉妹喧嘩が始まろうとしていた。  ただの姉妹喧嘩と侮るなかれ、この二人は狩人なのだ。殴り合いにでもなろう物なら、酔っ払った大男の喧嘩よりも質が悪い。


216 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/29(火) 17:03:17 ID:GkD/7Z4s0
ζ(゚、゚*ζ「あれは運が良かっただけよ、ブーン君もツンに言ってあげて!」

(;^ω^)「おっ」

ξ゚听)ξ「なによ、自分の方が数年早く生まれただけで偉そうにしないで。ブーンもデレに何とか言ってよ!」

(;^ω^)「おっおっ……」

大体デレはっ、とツンの追撃を遮るタイミングでブーンが口を挟んだ。

( ^ω^)「あのー、さっきのひょろい男の人だけに任せて来ちゃって良かったんですかお?」

ζ(゚ー゚*ζ「……良いのよ。きっとあの人は、ドクオさんはそういう次元にいる人じゃないから」

ξ゚听)ξ「あら、デレがそんな言い方するなんて珍しいわね。というより四人専門の貴方が、よく二人で狩りに行ったわね」

ζ(゚ー゚*ζ「仕方なかったのよ。じい様から、あの人を監視して欲しいって言われていたし。それにギコさんとの腕相撲を見て、ある程度のレベルだって事は分かったしね」

ξ゚听)ξ「ふーん、まぁ良いわ。それに確かにデレのあの一撃は本当に大きかったから」

(*゚∀゚)「……」

ツーは、そんな二人には構わずドクオの様子をじっと見ていた。


217 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/29(火) 17:03:44 ID:GkD/7Z4s0
ζ(゚ー゚*ζ「それにしても、よく戦闘中に私達に気が付いたわね。流石、鷹の眼ね」

ξ゚听)ξ「……別に、見て気付いたんじゃないわ。匂いがしたのよ」

ζ(゚、゚*ζ「匂い?」

ξ゚听)ξ「肉を焼く匂いよ。それでデレに気が付いたのよ」

ζ(゚、゚*;ζ「……」

この言葉を聞いた時、デレは心の底から震えた。あの時ドクオが何気なく選んだ、あの丘も。あのタイミングで、調理をしだした事も。何もかも計算し尽くされていたのだ。

(*゚∀゚)「三人ともよく見ておくニャー。あれが完成された狩人の一つの形ニャー」

それは戦いではなく、舞いだった。

( ^ω^)「……」

ξ゚听)ξ「……」

初めてドクオの戦いを見た二人は等しく口を閉ざす。魅入っているのだ。ドクオの舞いに。

左右の手に握られた一対の双剣が、二つの放物線を描きドスファンゴを鋭く斬り裂く。

緩みないスピードで振り続けられる刃は、点ではなく線を描く。

それが一つの結界となり、絶対防御となる。

そしてドクオが紡ぎだす剣となるのだ。


218 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/29(火) 17:04:04 ID:GkD/7Z4s0
( ^ω^)「……凄いお」

ξ゚听)ξ「……綺麗ね」

ここまでは落ち着いて見ていたデレが、一つ気が付いた。

ζ(゚、゚*ζ「……なんだか、ドスファンゴが小さくなってる?」

それに答えたのはツー。

(*゚∀゚)「多分、あれは狩りながら剥ぎ取ってるのニャー」

寒気が走る。そんな事が人間で可能なのだろうか。   三人は同じ事を思っていた。

あの大きすぎる背中に、追い付いてみたい、と。


219 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/29(火) 17:04:33 ID:GkD/7Z4s0


('A`)「ん、どうした?猪の肉は嫌いなのか?」

(;^ω^)「いっ、いえいえ!お気遣いなくですおっ!!」

夕食は四人と一匹になった。
ドスファンゴから剥ぎ取った素材は、食べられる部分以外はツンとブーンに渡した。

元々ドスファンゴで作ろうと思う物など無かった。それに使い道のない自分が持つよりも、前途有望な若い狩人に使って貰った方が有益だろう、と考えたからだ。

(;^ω^)「ドクオさんは狩人になって何年になるんですかお?」

('A`)「ドクオで良い、ブーン。狩人に尊敬は最低限しかいらない。それよりも信頼の方が大切だ。
正式に狩人になったのは十年前だな。16の時だ」

(;^ω^)「十年でHR6ですかお、とんでもないスピードですお」

('A`)「いや、俺は元々ドンドルマ出身だからな。そこでGの称号を受けた事からユクモでは最高ランクを貰ったんだろう」

( ^ω^)「G級……」

父が憧れ、それでも届かなかったその領域。


220 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/29(火) 17:05:01 ID:GkD/7Z4s0
( ^ω^)「G級の狩人は、伝聞でしか聞いたことがないですお。何人くらいいるんですかお?」

('A`)「Gを持つ狩人は四人だ。まぁGを持っていなくとも、俺達より強い変人は居たがな」

“One Shot Killer”“Spear The Gungnir”そして“Elven Arrow”。この三人にドクオを加えた四人がGを頂く事を許された狩人。

( ^ω^)「ドクオにもあるんですかお?そんな称号」

('A`)「“さん”付けをやめたんだから、敬語もやめてしまえ。称号か、俺にもあったがな。もう忘れちまった。自分でそう呼ぶ事なんてなかったしな」

(;^ω^)「でっ、では失礼して敬語をやめさせて頂くお!!」

('A`)「おー、そうしろ。俺も使わないしな」

最初はぎこちなかった男二人の会話も、次第に弾んできた。ブーンは元々友人の多い方ではあったが、ベテランの狩人との会話は、まず尊敬から始まる。

だからこそ気兼ねなく話せる凄腕の狩人という意味では、ドクオが初めての存在だった。


221 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/29(火) 17:05:32 ID:GkD/7Z4s0
(*^ω^)「このお肉美味しいおー!!」

('A`)「猪の肉は獣臭いが、しっかり血抜きすればアプトノスの霜降りのような味になる」

(*^ω^)「おっおっ!ドクオは狩りだけじゃなく料理も凄腕だお!!」

そんな事ないよ、とドクオは喜ぶブーンの顔を嬉しそうに見ながら頬を掻いた。   ここまで真っ直ぐ見つめられながら褒められるのは、如何にも照れくさい。

ξ゚听)ξ「あの様子を見てると、さっきまでの姿が嘘みたいね」

ζ(゚ー゚*ζ「そうね、私も最初ドクオさんの姿を見た時は頼りないって思ったもの。今でもギギネブラと戦っていた時の彼は、現実じゃないみたいだわ」

(*゚∀゚)「まー、オレっちも最初、ドクオが狩人だって気付けなかったからニャー」

こちらでは、女子+雌が話している。

ζ(゚ー゚*ζ「ツー様も気付かなかったんですか?」

(*゚∀゚)「ニャー。なんというか身体も細いし、オレっちの事を助けようとするし、運搬に使っていたガーグァを【青熊獣】がいるからって逃がしたりしてたからニャー」

ξ;゚ー゚)ξ「変わった人なんですね」


ドクオが作った料理を四人で食べ終えた。

一狩り終えた後の食事は、やはり美味い。皆、お腹一杯まで食べて動くのも億劫なのか、焚き火を囲んで武器の手入れをしていた。


222 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/29(火) 17:05:59 ID:GkD/7Z4s0
('A`)「そのハンマー、良く手入れがされているな。それに、なにか使い込まれた武器独特の趣を感じる」

( ^ω^)「おっ!これはボクの父ちゃんが旅に出る前に譲ってくれた物なんだお!」

('A`)「ほー、デッドリボルバーか。良い狩人なんだな、ブーンの父は」

( ^ω^)「良いとーちゃんでもあったお。誕生日には必ずリオレウスの牙や爪を贈ってくれたお」

ζ(゚ー゚*ζ「ドクオさんの双剣は、凄い綺麗ですけど。鉱石を使った物なんですか?」

('A`)「ん、これはリオレウスとリオレイアの夫婦剣だな」

この言葉に三人は息を呑んだ。金と銀の夫婦剣。それはユクモの狩人、誰もが憧れる武器。

(;^ω^)「討伐したんですかおっ!?あの火竜の希少種を!!」

('A`)「いや、討伐したわけじゃないがな。一度戦った事はある。その時に奴らから剥ぎ取った素材を使って作ったんだ」

( ^ω^)「……信じられないお」


金銀の火竜。それは飛竜の頂点に立つ存在。

飛竜の中で最も高貴で、最も強大な竜なのだ。

そしてブーンの父親が、旅に出る原因となったモンスターでもある。


223 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/03/29(火) 17:06:25 ID:GkD/7Z4s0
( ^ω^)「ドクオ!!!」

('A`)「ん、どうした?」

( ^ω^)「ボクに狩りを教えて欲しいお!!」

ドクオを見つめる真っ直ぐな瞳。
迷いも無く、そして遠慮の無い実直な言葉。

('A`)「あぁ、別に構わないよ」

(;*゚∀゚)「ニャ?」

(;^ω^)「えらい軽いお」

('A`)「いや、俺がユクモに来た理由に準じているからな」

( ^ω^)「ブーンを鍛える事がですかお?」

('A`)「まぁな」

それ以上、ドクオは深くを話さなかった。  夜も更け、月もすっかり山の向こうに姿を消している。

ただ焚き火の柔らかな灯りと、暖かな温度が、四人を包んでいた。


224 :【終幕】:2011/03/29(火) 17:06:56 ID:GkD/7Z4s0
ユクモギルドの地下。“大老殿”と呼ばれる場所がある。

そこに足を踏み入れる事が許されるのは、ごく一握りの狩人とギルドマスターであるアラマキ。そして、大老衆と呼ばれる五人の者だけだ。

『ギコ、状況を説明してくんろ』

(,,゚Д゚)「はっ!積乱雲を引き連れ現れた【雷狼竜】ジンオウガは、渓流エリアを大きく逸れ、ユクモ山の頂上付近に住み着いたようです」

『にゃるほどー、という事は切迫した状況ではないのかにゃん』

(,,゚Д゚)「確実に、とは言えませんが。ただ、現時点で撃退が必要な状況ではないと思われます」

『ほえばー!じゃが迅速に動かねばなるまい』

『アラマキよぉー、これはあの言い伝えの予兆と考えた方が良さそうじゃのー』

/ ,' 3「ふぉほほ、問題あるまい。この時のために彼の双剣使いを送って貰ったんじゃからのぉー。
それに、残りの“G”もこちらに向こうてくれとるらしいしのぉ」

『しかし、ドンドルマの竜人に貸しを作るのは癪だにゃん』

『ほえばー、今はそんな事を言っとる場合じゃあるまいのぉー』


225 :【終幕】:2011/03/29(火) 17:07:17 ID:GkD/7Z4s0
(,,゚Д゚)「しかし、祭りは……」

/ ,' 3「中止にするしかあるまいのぉー。楽しみにしている子供達には申し訳ないがのぉ。  チミは一度彼の双剣使いと狩りに行って来ると良いのぉ。チミがユクモでは一番“G”に近いからのぉ。その領域を体験してみるのも大事じゃろうてー」

(,,゚Д゚)「はい!!」

ユクモに伝わる伝説。G級の存在。その二つが大きく交わり、絡み合う。

ユクモの存亡を賭した戦いの足音が、一歩、また一歩と近づいていた。



('A`)ドクオと飛竜と時々オトモのようです 三話 END

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