('A`)ドクオと飛竜と時々オトモのようです4-2 前のページへ] 戻る [次のページへ

327 :4−2:2011/06/02(木) 13:58:08 ID:OeLLN6Qs0

*(‘‘)*「くろかみ♪ なーがい髪をのばしてー♪ ほーそい手足はもやしのよう♪ 背にはふたつの刀がひとつー♪ リオの名を持つ金と銀ー♪」

少女の澄んだ歌声が響く。見上げると青空も澄み切り、ぷかぷかと浮かぶ雲はゆったりと西から東へと流れている。

砂利道をガタガタと揺られながら、ガーグァが引く荷車に四人の人影があった。   三人の男と一人の少女。

*(‘‘)*「こーわい顔のライオンさん♪ 金のたてがみなびかせてー♪ 背には大きな剣がひとつー♪ ギラギラ瞳を光らせてー 狩人さんはせっかちさん♪」

少女の歌に、ドクオはククッと笑った。

(,,゚Д゚)「……俺の事か、こわい顔って」

('A`)「子供は正直で良いなー」

テメェ、ゴルァと掴み掛かるギコを軽くあしらうドクオ。 そんな二人に挟まれた少女は、いつもとは違う日常に顔を輝かせている。

*(‘‘)*「みんなで旅するのは楽しいねー」

('A`)「そうだなー、ヘリカル。なっ、ギコ」

(;,,゚Д゚)「おっ、おう!!楽しいぞゴルァ!!」

『こら、ヘリカル。あまり狩人さん達を困らしてはいけないよ』

ガーグァを操っていたフィレンクトから声がかかり、少女は一旦歌うのをやめる。

*(‘‘)*「はーい、お父さん」

子供が作り出す、特有の柔らかな空気。誰しもが持っており、誰しもが大人となる過程で失う物。

それをドクオは確かに暖かいと感じた。

そしてギコも。


328 :4−2:2011/06/02(木) 13:58:59 ID:OeLLN6Qs0

('A`)「……良いな、子供は」


(,,゚Д゚)「そうだな」


ギコが少女の頭を撫でると、少女はくすぐったそうに、気持ち良さそうに、目を瞑った。


('A`)「そういえば、俺とお前は同い年なんだってな」


(,,゚Д゚)「おう、そうらしいな。その年で“G”とは恐れ入るぞ」


('A`)「いや、ギコは猟長として色々な事に時間を割いてきたからだろう。俺はただひたすらに狩りをするだけの生き方をしてきたからな」


【猟団】というのは、同じ主義思想を持つ者同士が集まって作られる組織。ドンドルマにあった有名な猟団を挙げるならば【空王の終】などがある。


これは、空の王者と呼ばれるとある飛竜を専門的に狩る猟団である。


(,,゚Д゚)「俺の猟団は、ただ自身の向上を目指す者が集まっているだけだ。  条件もHRによる制限も無い。まぁ、ただの酒飲み友達の様なもんだ」


実直な男、それがドクオのギコに対する最初の印象。そしてそれは間違っていなかった。


それに加えて、謙虚さ。


上に立つ者の自覚を持ちながらも、個人としての尊敬を忘れない姿勢。


こうして落ち着いて、彼と話す事は少なかったドクオだったが


やはり、その印象は間違っていなかったのだと再認識する。


329 :4−2:2011/06/02(木) 14:00:33 ID:OeLLN6Qs0

('A`)「ユクモにはHR6の狩人は居ないと聞いていたんだが」

ここで、ドクオはユクモに来て不思議に思っていた事を尋ねる。

(,,゚Д゚)「……それには、色んな原因があるんだ。  ドンドルマではどうやってG級になる?」

('A`)「……これと言って試験のような物は無いな。俺の場合、Gの名を持つ飛竜を狩っていたら、自然とそう言われるようになった」

そうか、とギコは腕を組む。

(,,゚Д゚)「ユクモに所属する狩人の数は多くない。だからこそ、俺たちはちゃんと示されたルールによって昇級してきた。先日、ベーンさんの倅がクルペッコを討伐してHR2に上がったのも、クルペッコがギルドの指定する昇級モンスターだったからだ」

(,,゚Д゚)「そういう風にして、HR1〜5までの試験には指定されたモンスターを倒す、という決まりがあった。  しかし問題はHR6だ。狩人の数が少ないユクモではHR6を持つ狩人は元々二人しか居なかった」

('A`)「一人は、ブーンの親父さんかな?」

その通りだ、とギコは驚いた様子で目を見開いた。

(,,゚Д゚)「1人はブーンの親父さんであるベーンさん。そしてもう一人は、この村の英雄であるロマネスクさんだ」

('A`)「ふむ」

ここでドクオがブーンの父親がHR6だと言い当てられたのは、いくつかの理由がある。

ギコの『ベーンさん』と呼ぶ言葉に確かな尊敬の念を感じたこと。ブーンの持っていたデッドリボルバーが醸していた雰囲気。そして毎年誕生日にはリオレウスの素材を貰ったといっていたブーン。

特に三つ目。そう易々とリオレウスを狩ることの出来る者は多く居ない。やはりHR6に準ずる何者か、だとドクオは内心星を付けていた。

(,,゚Д゚)「その二人に認められる事がHR6になる為の条件だった」

なるほど、ここまででドクオがユクモの現状を理解するには十分。

HR6が自分以外に存在しない理由は、そういう事だったのか。


330 :4−2:2011/06/02(木) 14:10:47 ID:OeLLN6Qs0

(,,゚Д゚)「その二人が居なくなっちまったからだよ。ユクモにHR6が生まれなくなったのは」

そして、ドクオはここでもう一つ合点のいった事がある。

いきなり現れた俺を、HR6にしたギルドマスターの意図。

そして急に狩りに同行すると買って出たギコ。

つまりは、ドクオに見極めろと言うのだ。

Gを戴く者として。

ギコがHR6に相応しいか、否かを。

全く、けったいな押し付け方をするものだ、とドクオは内心溜め息を吐いた。

('A`)「概ねの事情は分かったよ」

(,,゚Д゚)「……すまねぇな。ユクモに来たばかりのお前さんにこんな事を押し付けて。
しかしロマネスクさんが死に、ベーンさんが旅立った今、ユクモに新しい風をもたらす事が出来るのは、お前さんだけだと、うちのじじいも判断したんだ」

('A`)「べつにGだからといって、この村に何か貢献をしたわけでもない。そんな俺がこんな大事なことを決めていいモンなのかね」

ははは、とギコは笑った。

(,,゚Д゚)「よそ者にそんな事を頼まなきゃならないくらい事態は切迫してるのさ」

優しくヘリカルの頭を撫でながら自嘲気味に呟く。


331 :4−2:2011/06/02(木) 14:12:20 ID:OeLLN6Qs0

('A`)「切迫……ねぇ。  そういえばもう一つ気になっていたことがあるんだ」

(,,゚Д゚)「おう! なんだ!」

('A`)「ツーの事なんだが、何故村の人たちはツー様と呼ぶんだ?」

これも気になっていた事の一つであった。 確かにアオアシラとの戦闘で見せた人を護る気概。ギギネブラ戦で見せた仕事の速さ、尊敬を受けるだけのものはあると思う。
しかしそれでも“様”は言いすぎだと、思っていた。

(,,゚Д゚)「なんだ、ツー様から聞いてないのか?」

('A`)「なにも聞いてないな」

ふぅむ、と腕を組み少し考えるギコ。

(,,゚Д゚)「ツー様はな、亡くなったロマネスクさんのオトモだったんだよ」

('A`)「ほう」

村を救った英雄、ロマネスク。

その命と引き換えに。


(,,゚Д゚)「あれは俺が十二の頃だ。ユクモの四方を囲むように三頭のディアブロスが住処を作った。元々ディアブロスは肉食ではないが、その獰猛な性格と攻撃性故に第一種危険モンスターとして扱われていたが
それが三頭同時に現れたんだ。 ギルドも気が付かなかった訳じゃないんだろう。それはそうさ。調査に向かった狩人達、その全てから連絡が途絶えれば嫌でも気づくだろうからな」

その時の俺は、絵に書いたようなクソガキでな。なにかお祭りのように感じたよ。いつもは毅然と振舞っている大人達が、慌てふためいているのを見て、どこかしらの非日常性を感じてたんだ。

でも、ユクモの近くにあった幾つかの集落が壊滅したと聞いて、そんなお祭り気分もぶっ飛んだよ。

親しくしてもらっていた者もその中には居た。

そんな人たちの、原形を留めない位にグチャグチャにされた死体を見れば、どんなクソガキだって事態の深刻さに気が付いた。

もうユクモは終わりだ、なんていう自暴自棄な終末論者と。狩人ならば何とか出来るという無責任な希望的観測をする者しか居なかった。

でも、あの人だけは違っていた。


332 :4−2:2011/06/02(木) 14:12:55 ID:OeLLN6Qs0

こんな絶望的な状況の中で、ただ前だけを見ていた。


多分、ロマネスクさん自身も分かっていたんだと思う。誰よりも。


この討伐で自分が命を落とすことを。


そして、ロマネスクさんは討伐に向かった。


('A`)「それで死んだのか」


(,, Д )「……あぁ、死んださ。   でも犬死じゃねぇ!!! あの人は三頭のディアブロスを全て狩り、死んだ!!! 村を救って死んだんだ!!!!
だから絶対犬死じゃねぇんだ!!!!!!」




響き渡るギコの怒声。余りの声量に、辺りの葉っぱがざわついた。


('A`)「そうだな、確かにロマネスクという人は死は犬死ではなかったようだ」


(,,゚Д゚)「……お前に何がわかるんだゴルァ」


('A`)「わかるさ、俺にも。お前はその死を踏み越えて、今狩人をしてるんだ」


(,,゚Д゚)「……」


('A`)「その人が、お前を強くしてくれたんだ。だから、その人の死は無駄じゃないさ」


333 :4−2:2011/06/02(木) 14:14:17 ID:OeLLN6Qs0

沈黙。しかし息苦しく緊張感を持ったそれではなく、優しくその空間が一枚の絵になったような、やわらかな空気。


(,,゚Д゚)「……そうか」


('A`)「あぁ。そうだとも」


334 :4−2:2011/06/02(木) 14:17:25 ID:OeLLN6Qs0

次の日、生憎の雨。しかし雨雲は厚くなく足も速かった。

四人は、といってもヘリカルはすやすやと眠っているので三人だが、荷車を押して再び道を進んでいる。

ヘリカルが喋らなくなってしまって、とんと三人の間の会話の声は途絶えた。

('A`)「……」

そんな中ここで一つ、ドクオが気になっていたことを質問する。

('A`)「……失礼だがご主人。ヘリカルと貴方は親子なのか?親子にしては歳が離れすぎていると思うのだが」

(,,゚Д゚)「……ドクオ、あまり詮索するもんじゃねーぞ」

(‘_L’)「ふふっ、気になりますか?」

確かにドクオの言う通りだった。籠ですやすやと寝息を立てている少女は四、五歳。

フィレンクトの歳は四十過ぎ位か。

確かにこの子の年の親だとすれば、少し歳が高い。

('A`)「気になる、というかな。こうやって寝食を共にし、一時とはいえ、命を共に賭けているんだ。  だからこそ、秘密を作りたくない。勿論、俺に質問があるならば誠心誠意答えさせて貰う」

フィレンクトは『なるほど』っと、口元に拵えた髭を撫でながら笑った。

(‘_L’)「お察しの通り、私はこの子の本当の親ではありません。この子は拾い子ですよ。親をモンスターに食われた可哀想な子です」

('A`)「……いや、可哀想という理由だけではないはずだ。商人は余計な荷物を背負わない。人であれ物であれ、な。それが手の掛かる子供となれば尚更だ。   ご主人は、この子に一体どんな負い目がある?」

ゆらゆらと揺らめき始めた炎。雨は、やはりにわか雨だったのか、しとしとと降ってすぐ止んだ。しかし、頬を打つ様な風が出てきた。

(‘_L’)「はぁ、全てお見通しですか。流石聞きしに及ぶGですね。   つまらない、ありきたりな話ですが、お話しましょう。 ……あれは三年前です。私を贔屓にしてくれていた村があったのですがね。そこが7m以上の体躯を持つアオアシラに襲撃されるという事件がありました」

(,,゚Д゚)「三年前といやぁ、アプトノスの大移動があった年だぞ!」

アプトノスの大移動、耳にした事がある言葉。デレの祖母が亡くなる切っ掛けとなった事件。


335 :4−2:2011/06/02(木) 14:18:46 ID:OeLLN6Qs0

(‘_L’)「あの年の狩場は荒れに荒れていました。ギコさんならばご存知だとは思いますが」

(,,゚Д゚)「……確かに、あの年は何から何までおかしくなってたぞ! アプトノスの所為で地形まで変わっちまった所もあったし、異様に飛竜の数が減っちまってたぞ!」

アプトノスは、この世界で組み上げられた生態系のピラミッドの中で最下層に所属する草食種だ。

しかし、その固体数は他を圧倒する。

元来の大人しい性質故に、取り上げられる事は少ないが   一つ、特筆される事柄がある。

それは、群れを形成する事である。

ここで一つ、皆も疑問に思っているであろう事を説明しておく。

ジャギィやフロギィ達も、確かに群れを形成する。しかし、アプトノスの群れとジャギィの群れでは、全く異なる意味を持つ。

ジャギィは、お互いの都合の為に群れを成す。

狩りを効率よく行うためであったり、集団で暮らす事により天敵である飛竜種や牙獣種に対抗する為であったり。

謂わば、共同体。

同じ共通の目的を持つ集団なだけで、仲間ではないのだ。

しかし、アプトノスは違う。

助け合い、時に幼体を護るために飛竜にでも向かっていく。

謂わば、家族である。


336 :4−2:2011/06/02(木) 14:21:47 ID:OeLLN6Qs0

その群れが、何十万頭という固まりが何百キロの距離を移動すれば、木々は薙ぎ倒され、生い茂っていた草は踏み潰される。


(‘_L’)「火事場泥棒、とは言いませんが。あの時、私は出来る限りのハチミツを集めていたんです。いつもハチミツが密集していた場所を根城にしていた小型の鳥竜種や青熊獣が、アプトノスの大移動によって住みかを替えざろうを得なかった。  それを利用して、私は出来る限りのハチミツを集めました」


('A`)「……」


(,,゚Д゚)「……」


それが引き金。食料であるハチミツを失ったアオアシラがどうなるのか。それを予想できなかった商売人フィレンクトの失態。


(‘_L’)「飢えたアオアシラは、山から一番近い村を襲いました。そこで犠牲になった六人。私が殺した六人と言っても良いでしょう。    その被害者の娘ですよ。ヘリカルは」


('A`)「……なるほど」


(‘_L’)「自分の仕事が村を、人の生活を支えているという自覚がありました。  人の命に関わる仕事だという事も。けれど、こんな形で人の命を奪うなんて行商を始めて二十五年、想像すらしていませんでした」


『だから私が、この子を護るのは義務なんですよ』


大きな、本当に大きな手がヘリカルの桜色した頬を撫でる。


337 :4−2:2011/06/02(木) 14:23:29 ID:OeLLN6Qs0

(,,゚Д゚)「お前さんはどう思う」

夜も更け、月も山の向こうに姿を消した。

護衛の任を預かる二人は、同時に寝る事をしない。
今は、ドクオが警戒をしている。
寝袋に入りながら、ギコは問い掛けた。

('A`)「フィレンクトさんの事か?」

正直なところ、ドクオもフィレンクトの事は計りかねていた。  先程のエピソードを聞くかぎり、利益至上主義のようにも感じる。   だがヘリカルを見つめる、あの瞳を見てしまえばそれが間違ってるようにも思えた。

(,,゚Д゚)「……あぁ。こう言っちゃなんだがフィレンクトさんは一概に悪いとは言えない。  俺達狩人にだって予見する事が出来たはずだ。俺が有志を募って狩場周辺の警護をする事だって出来たんだぞゴルァ!!」

確かにギコの言う事は正論だ。

しかし、〜〜たら、〜〜ればの机上の空論に過ぎない。

何処までも真っ直ぐに、折れる事を知らない、この狩人は、それでも許せなかったのだろう。

しかし、だからこそドクオはこれを否定した。

('A`)「……ギコの言いたい事は分かる。だが割り切らなければならない時は、割り切る。  俺達の力は、確かに村人から見れば絶大なのかもしれない。だが、それでも人間だ。出来る事には限りがあるし、いくら命を削った所で、それではたかがしれている」

(#,,゚Д゚)「分かってるぞっ!!そんなの分かってるに決まってんだろーがゴルァ!!!!」

いつの間にかギコは、寝袋を這い出し外に出てきていた。

(,,-Д-)「それでも俺は諦めたくないんだぞゴルァ……」

挺身の英雄、ロマネスクに憧れ狩人になったギコに育まれた清廉な心意気。


338 :4−2:2011/06/02(木) 14:24:14 ID:OeLLN6Qs0

('A`)「いつかのその心が、お前を殺すとしてもか?」


(,,゚Д゚)「あぁ。もしそうなったとしても、俺は笑顔で死ねる。  その理想を抱いたまま逝けるなら、俺は笑って死ぬ」


ドクオは素直に悲しい、と思った。だが同時に美しいとも。


一人の命を救うために死ぬのなら、長く生きもっと多くの命を救った方がパフォーマンスは良い。  確かに数字の上ではそうだ。


しかしそれが正解か、と聞かれれば。


('A`)「なら、強くなるしかないな。どんな敵と戦っても負けないように強くなるしかない。   その志を決して忘れるな。それがお前を強くしてくれる」


(,,゚Д゚)「おう!!  ドクオ!俺は強くなるぞゴルァ!!!」




あぁ、お前はきっと強くなるよ。ドクオは、そう呟いて荷車の中に戻って行った。


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