('A`)ドクオと飛竜と時々オトモのようです4-4 前のページへ] 戻る [次のページへ

346 :4−4:2011/06/02(木) 15:30:05 ID:OeLLN6Qs0

狩人達と長きに渡って戦ってきた飛竜。その中でも火竜、そして雌火竜との戦いの歴史は長い。


狩人が、一番理解している飛竜と言っても良い。


だが言い換えれば


狩人の事を一番理解している飛竜、とも言える。




―――【空王の終】 猟長ペニサス=ランクルス―――


347 :4−4:2011/06/02(木) 15:32:24 ID:OeLLN6Qs0

この威圧感。この迫力。正真正銘、飛竜のそれ。

チリチリと焼け付くようなプレッシャー、目の前の竜が息を吐き出す度に身体を焦がすような熱を感じる。

('A`)「……」

引き抜いた双剣は油断無く正眼に構えた。

この状況、【火竜】リオレウスが一吹きするだけで一変する。それ程までに、この飛竜は強大。

かなり不味い状況だ。手負いのフィレンクトに、ヘリカル。荷物が多すぎる。

('A`)「……ギコ、フィレンクトさんの状態はどうだ?」

ヘリカルに怪我は無い。だがガーグァを運転席で操っていたフィレンクトは、直撃しないまでも、その衝撃を身体に受けてしまったはずだ。

(,,゚Д゚)「……足をやられてるぞ!  折れてはいないが走れそうにはねぇ!!」

(メ‘_L’)「……お二人とも、私を置いていって下さい」

見ればフィレンクトの太股から踝にかけて、全体が赤く腫れている。今は、まだ大した怪我には見えないが半日も経てばドス黒く変色するだろう。

目から、耳から、次々と入ってくる情報を迅速に組み上げ消化していく。

('A`)「一旦退くぞ」

選択したのは、逃げだ。この場合は仕方がない。何かを護りながら戦うというやり方は、狩人の領分ではないのだから。


348 :4−4:2011/06/02(木) 15:33:38 ID:OeLLN6Qs0

(,,゚Д゚)「そうした方が良さそうだな」

('A`)「ヘリカルを頼む。俺はフィレンクトさんを連れていく。  まずは、二人の安全を確保したい」

(メ‘_L’)「無理です!私は走れません!!」

(,,゚Д゚)「もう少し行ったところに、小さな洞窟がある。そこまで走るぞ!」

二人は徹底的にフィレンクトの意見を無視する。  確かに彼の言う事は正しい。手負いの者を庇いながら逃げ切れる程、リオレウスは易くない。

だが、その尺度に狩人を当てはめるのは間違いだ。

ギコの抱える大剣、それだけで100キロ以上の重量がある。  それを背負いながら50mを6秒足らずで走る狩人に、子供一人は大した障害ではない。

(,,゚Д゚)「少し我慢してくれよ、ヘリカル」

胸当てを少し緩め、そこにヘリカルを納める。

('A`)「走れ!!」

(;‘_L’)「ぐぅ……」

斯くして狩人と飛竜の鬼ごっこが始まった。

ここでリオレウスという飛竜について、もう少し詳しく述べておこう。

まずここで知っていてもらいたいのは、飛竜という種の事だ。   何故、彼らが飛竜たり得るのか。

それは読んで字の如く、飛べるからである。


349 :4−4:2011/06/02(木) 15:34:27 ID:OeLLN6Qs0

飛竜にもいくつかの種類が存在するが、その全てが飛行可能だ。

その手段は、翼であったり、跳躍であったりと様々だが。  彼等は空を支配する。

空を飛ぶ事のメリットは、もうクルペッコとの戦闘の時に示しておいたので、詳しくは割愛するが

最大の利点は【自分のタイミングで戦闘を切り上げられる】という事にある。

これにより、飛竜は一撃離脱、電光石火の術を学んだ。

リオレウスは、その最上だ。彼らは空を自由に飛び回り、獲物の一瞬の隙を見逃さずに仕留める。

まさに空の王。上空に滞空し、放たれる尖爪の一撃は生きとし生ける物を死へと誘う。

普通の飛竜にこんな事は出来ない。

これは、飛ぶ事により特化したリオの名を冠する二種の飛竜のみに許された必殺の技である。

そして、もう一つのメリット。

それは純粋な速さだ。


350 :4−4:2011/06/02(木) 15:36:13 ID:OeLLN6Qs0

(;'A`)「………チッ」

(;,,゚Д゚)「やべぇ、もう来やがったぞゴルァ!」

その速さに抗う術を持たぬ人間は、ただただ祈るのみ。

【どうか自分を狙うな】と。

仲間が食われようて構わない。

だから来るな。

自分に尖爪。

醜いと思うかもしれない。だがこれは真実。圧倒的な飛竜の体躯を目の当たりにして、自己犠牲の精神を働かせる者など存在しない。

('A`)「散開ッ!!」

(,,゚Д゚)「おうよ!」

しかし、これらの前提は全て力無き獲物に当てはめられる事。

狩人とは獲物に非ず。狩人とは“狩る者”。

バラバラに走りだした二人は、それぞれ木立の陰に入りリオレウスの視界から消える事に成功する。

('A`)「……」

(メ‘_L’)「……私の事は、置いていってくれても良かったのですよ」

フィレンクトは、先程から思い詰めたようにうなだれていた。

確かに客観的に見てフィレンクトは荷物以外の何物でもない。それはフィレンクト自身が一番適切に理解している。

例え狩人であろうとも、いや狩人だからこそ人一人という荷物は重い。

('A`)「それでも俺達は、やらねばならない」


351 :4−4:2011/06/02(木) 15:37:10 ID:OeLLN6Qs0

(メ‘_L’)「……」

('A`)「例え、この道が困難であろうと、険しくあろうと、俺達は往く」

それが狩人。人間を守り、飛竜を貫く槍なのだ。

('A`)「フィレンクトさん。脚は痛むか?」

(‘_L’)「……生まれてこの方、こんなに痛いのは初めてです」

('A`)「少し無理をする。傷が広がるかもしれない。痛ければ声を出しても構わん。ただ、俺の首から絶対に手を離すな」

(;‘_L’)「何故そこまでするのです!?  私は……私を置いていけば、皆さんが助かる可能性は、かなり上昇するはずです!」

フィレンクトには理解が出来ない。そんな簡単な事を、何故この狩人は分かってくれない。

天秤に賭けるまでもない。私の命と、三人の無事。同じ質量の物が一つと三つ。言うまでもなく、後者が優先されるべきだ。

('A`)「命に質量なんて存在しない」

(‘_L’)「!!」

思考が口から漏れてしまっていた。

('A`)「今と同じ言葉、ヘリカルにも言えるか?」

(;‘_L’)「………」

それに、と区切ってドクオさんはこちらを真っ直ぐ見据えて言い切った。


352 :4−4:2011/06/02(木) 15:39:30 ID:OeLLN6Qs0










('A`)「“G”の狩場に敗北は無い」


353 :4−4:2011/06/02(木) 15:46:42 ID:OeLLN6Qs0

言うやいなや狩人は飛び出した。速度は最速、先程までのスピードはローギア。発進ギアだったとでも言うようなスピード。

前方から向う風の音が轟々と耳を擘く。フィレンクトは、あまりの圧力に思わず手を離しそうになる。

目も開けられない。

猛進、そして蛇行。

リオレウスもこれには目を回した。

それでも、純粋なスピードではリオレウスがやや勝っている。  少しずつ獲物に近づき鋭く爪で薙ぐが、その瞬間に奇妙に動くのだ。

右に左に、リオレウスが目を向けた方とは必ず逆に、獲物は逃げていた。

それを見ていたギコも動き出す。目指す洞窟は、もうすぐそこだ。

ドクオに気を取られている今、辿り着く事は容易い。  ギコは一気に駆けた。今ばかりは、胸に抱いたヘリカルを気に掛ける余裕はない。

彼が命を賭したのだ。自分にも救わねばならない命がある。

(,,゚Д゚)「なんて速さだぞ、ゴルァ……」

あの速さ、そして動き。まさに疾風迅雷。

疾く風、まさに雷の迅。

ドクオは、みるみる内に目的地だった洞窟を通り越していった。

これは陽動、より安全にヘリカルを逃がすためにドクオが敢行した捨て身。

(,,゚Д゚)「あんにゃろう……それはオレの仕事だぞゴルァ!!」

洞窟に飛び込む。すぐさまヘリカルを出来るだけ奥の入り組んだ場所に寝かせて外に飛びだした。


354 :4−4:2011/06/02(木) 15:47:53 ID:OeLLN6Qs0

('A`)(……ギコは洞窟に入れたか)

ドクオは一気に脚を停止した。

一瞬の間。そして吹き抜けた轟風。

リオレウスは、いきなり視界から消えた獲物に困惑する。

だがリオレウスは飛竜。そんな誤魔化しが通じるのは一瞬だけ。

すぐさまリオレウスは、後ろに反転する。

('A`)「……流石は空の王。これくらいでは撒かれてくれないか」

もうすぐ手が届く、リオレウスも必死だった。

あの素早く動く鼠を捕えるのは至難の業。

リオレウスの本能は、それを正しく理解していた。

だが逃げられれば追う、というのもまた本能。

リオレウスは笑っていた。今はこの鬼ごっこが楽しいのだ。

しかし、楽しい時間はこれで終わりだ。

リオレウスは、体内のある器官に指令を送る。

リオレウスの翼に付随する、もう一つの武器。

リオレウスを火竜たらしめる、その武器。

ドクオも、的確にその動作をキャッチする。


355 :4−4:2011/06/02(木) 15:49:01 ID:OeLLN6Qs0

('A`)「チッ……あともう少しだっていうのに」

背後からジリジリと伝わる異常な熱量が、それを文字通り肌で感じさせる。

火球ブレス。リオが吐き出すその息は、生きとし生ける物の命を刈り取る死神の鎌。

('A`)「!!  ギコ!!構えろ!!!!」

(,,゚Д゚)「任せろゴルァ!!!」

確かに捉えた背中、文句なく命中。

あの忌々しい鼠が、王たる自分の息吹きを食らって生きられるはずがない。

しかし、それを阻む者がいた。

(,,゚Д゚)「ゴルァアアア!!!!!」

ギコの構えた大剣は、王のブレスを全て受け止め雲散させた。

ドクオは、間一髪で洞窟の中に滑り込んでいた。

('A`)「ギコもとりあえず中に入れ。対策を練るぞ」

(,,゚Д゚)「おう!!」

リオレウスは、何度か前脚で洞窟に逃げ込んだ鼠を引き摺り出そうとするが、入口が小さすぎて上手く入らない。

数十分、それをずっと繰り返すが やはり届かないと悟ると、翼を広げ上空へと去っていった。


356 :4−4:2011/06/02(木) 15:50:14 ID:OeLLN6Qs0

一方、洞窟の中ではフィレンクトの手当てが行われている。

軽く見ただけで、打ち身、打撲、裂傷を負っている。  幸いにもリオレウスの爪で裂かれた訳ではなく、破壊された荷車の廃材で脚を切っていただけだった。

('A`)「動脈は切れていない。静脈ならば薬草を磨り潰して塗り込み、綺麗な布で圧迫すれば問題ない」

(‘_L’)「……すいません、お手数をかけます」

('A`)「気にするな」

(,,゚Д゚)「………」

テキパキと進められるドクオの応急処置を見ながら、ギコはどこか腑に落ちなかった。

昨夜ギコと話していたドクオなら、三人の無事の為にフィレンクトを置いてくるかもしれない、と内心思っていた。

そして先程見た、あのスピード。

あの人外の速度は、人を担ぎながら出来る物ではない。  

あれは、フィレンクトを担ぎながら行っていたのだろうか。

まさか。しかし、それしか考えられない。

それにギコの疑問は、“速さ”だけではなかった。あの動き。  リオレウスの行動を、さも後ろに眼が付いているかの如く全て見切っていた。

(,,゚Д゚)「……ドクオ、さっきのアレはどうやったんだ?」

('A`)「ん、アレとはさっきの走り方の事か?」

(,,゚Д゚)「おう、リオレウスの動きを全て躱したあの走り方だぞ」

('A`)「それ程難しい事じゃない。   ある程度の速さで走れれば誰にでも出来る事さ」

(,,゚Д゚)「……馬鹿言っちゃいけねぇぞ。  あんな奇妙な動き、見た事がねぇ」

('A`)「……ふむ。まぁ口で説明するのは難しい。実戦で教えよう。  俺自身、友から教えられたやり方なんでな、上手く説明できるか分からんが」

ドクオは、そう言うと洞窟の外に出た。


357 :4−4:2011/06/02(木) 16:00:04 ID:OeLLN6Qs0

洞窟の上空をゆっくりと旋回するリオレウスを見やる。

見逃してくれる気はなさそうだ。

('A`)「全く……ままならないな……」

狩人と飛竜の舞曲が始まろうとしている。


358 :4−5:2011/06/02(木) 16:02:56 ID:OeLLN6Qs0

薄暗い洞窟の中、地べたに寝かされていたフィレンクトを交えて話し合いが行われていた。

('A`)「まず、今の状況を整理しよう」

(,,゚Д゚)「リオレウスは、この洞窟の上をずっと旋回してるぞ。  間違いなくオレ達がまだここに潜んでいると確信しているはずだ」

(‘_L’)「そんな……しかし、モンスターがそんな知恵を働かせる事が出来るのでしょうか?」

('A`)「いや、普通は有り得ない。ただ相手は長年の狩人の好敵手、リオレウスなんだ。分かっていてもおかしくはない」

(,,゚Д゚)「オレが思うに、現状採れる策は三つあると思うぞ」

('A`)「……ほぅ、言ってみてくれ」

ギコの策、というより勝利条件の三つ。

まず一つ目、ここから自分達二人で外に行きリオレウスを討伐する事。

討伐出来ないまでも、奴の翼さえなんとか出来ればそれで問題ない。

そして二つ目、助けが来るのを待つ事。

フィレンクトの出血が止まった今、慌てて外に飛びだす理由は無い。

じっくりと、機を待って脱出出来ればするし   厳しいならばギルドからの応援を待つ。

('A`)「二つ目は却下だな。  フィレンクトさんの足は軽傷だが、傷口から細菌が入っていれば深刻だ。  それに、ヘリカルをずっとこの暗い穴蔵に閉じ込めておくのも衛生上良くない」

(,,゚Д゚)「あぁ、分かってるぞ」


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