('A`)ドクオと飛竜と時々オトモのようです4-5 前のページへ] 戻る [次のページへ

359 :4−5:2011/06/02(木) 16:03:53 ID:OeLLN6Qs0

そして三つ目。

('A`)「三つ目は? それが本命なんだろ?」

ギコはドクオの見透かした言葉に、驚き眼を見開くが平静を装い三つ目を明かす。

(,,゚Д゚)「オレが陽動してリオレウスを引き付ける。  その間にドクオが二人を連れて村まで逃げる。幸い当初の目的地までは、そこまで距離は無い」

ドクオは溜息を吐いた。やはりか、と。

ドクオは、数日しか話していないギコの心の奥底。

本質を正しく理解していた。

つまりは“死にたがり”なのだ。

自己犠牲の固まり。自分を全く顧みない。

それでは駄目なのだ。ギコは分かっていない。

ユクモの狩人達にとって、如何にギコが代えがたい存在であるのかを。

自分が居なくなった後のことを、全く考えていないのだ。

しかし、同時に感嘆もしていた。

この状況で、努めて冷静にドクオと同じ三つの策を出した事に。

生憎と、三つ目の策は少しばかりドクオと違っているが。


360 :4−5:2011/06/02(木) 16:05:06 ID:OeLLN6Qs0

(,,゚Д゚)「オレとしては三つ目が良いと思うぞ。ドクオに陽動をやってもらった方が、良いんだろうけどな……。

だがユクモに来て間もないドクオに、こんな危険な役割は任せられない」

だから、オレがやる。

ギコは最後にそう区切った。

飛竜相手に単独の陽動なんて正気の沙汰ではない。

ドクオが行った陽動は、“帰る場所”ありきの行動。  しかし、今回のは逃げ場のないデスマッチ。

三人が無事にリオレウスの縄張りを抜けるまで、引き付ける。自分自身が隠れる事は許されない。

陽動となる者を見失ってしまえば、逃げていた本命の方にリオレウスが食い付くかもしれないからだ。

(,,゚Д゚)「ドクオ、お前はそれで良いか?」

('A`)「……そうだな。恐らく三つ目が一番勝算が高いだろう」

ギコは、ドクオの言葉にどこかホッとしたような息を吐いた。

('A`)「だが、三つ目は採らない」

驚愕、ギコの表情にありありと溢れる驚き。

(#,,゚Д゚)「なんでだゴルァ! 一番被害の少ないのは、間違いなく陽動だぞ!!!」

('A`)「あぁ、お前の言ってる事は正しく理解してるつもりだ。  確かにそれが一番無難だと思う」

(,,゚Д゚)「だったらなんでだゴルァ!!」

('A`)「簡単な事だ、お前は前提が間違っている。“誰かを犠牲”とする考えは捨てろ。そして犠牲になろうとするな」

薄暗い洞窟の中、三歩先にいる物の輪郭ですらはっきりと把握出来ない。

ただ、そんな暗闇の中でドクオの存在感だけが際立った。

フィレンクトは、ただ息を呑む。


361 :4−5:2011/06/02(木) 16:08:27 ID:OeLLN6Qs0

('A`)「俺達全員が生きる、という事を前提に考えれば採る方法は見えるだろ」

(,,゚Д゚)「!?  お前、リオレウスを討伐するつもりなのかゴルァ!!」

これにフィレンクトは、さらに衝撃を受けた。

あのリオレウスを討伐する?

思い出しただけで震えが止まらない。

あの巨大な存在を前に、人間の小ささをまざまざと見せ付けられた。

(;‘_L’)「わっ……わたしは……」

自分が外に出て出来る事など、何もない。

きっと戦うのならば、この二人だけだろう。

それでもこの震え、恐怖。

実際に戦う事になるかもしれない二人はどれ程の恐怖を感じているのだろうか。想像すら出来ない。

('A`)「その通りだ」

(,,゚Д゚)「無茶苦茶だぞゴルァ!! 飛竜種の成体を相手に二人で挑むなんて馬鹿げてるぞ!!」

('A`)「やってやれない事はないさ」

洞窟に響く怒声。

自分を犠牲に三人の安全を高めようとするギコ。

あくまで全員で助かろうとするドクオ。


362 :4−5:2011/06/02(木) 16:09:03 ID:OeLLN6Qs0

しかし、フィレンクトはここで言い様の無い違和感を感じる。自分はドクオやギコの本質を理解しているわけではない。

だが漠然と『ドクオはきっと無用な荷物は切り捨てるのだろうな』と考えていたのだ。何故かと理由を尋ねられても答えられない。

ドクオの冷徹そうに見える切れ長の目が、落ち着いた雰囲気がそう思わせたのかもしれない。

だから今の状況は意外である。

この二人の争い、客観的に見れば間違いなくギコの主張に理がある。

一人が死んで三人が確実に助かるのならば、間違いなくその方法を採るべきだ。   しかしドクオは認めない。

('A`)「ギコ、お前は自分が犠牲になれば三人が助かると思ってるんだろ」

(,,゚Д゚)「……少なくともオレら二人が、飛び出して討伐する可能性よりは高いだろうな」


フィレンクトには、二人の口論に割り込む隙を見つけられなかった。

どちらが正しいのかなんて、分からないのだから。

(,,゚Д゚)「別に死にたいわけじゃねぇ。 ただオレとお前が両方ともくたばっちまったらフィレンクトさんとヘリカルを、誰が安全に導くんだ」

(‘_L’)「………」


ギコの言葉に、フィレンクトはハンマーで殴られたような衝撃を受けた。

そうなんだ。私とヘリカルはこの上ない荷物、重荷。

担げば潰され、この二人の命すら脅かす。


363 :4−5:2011/06/02(木) 16:09:33 ID:OeLLN6Qs0

(‘_L’)「……わたしは 」

この二人のぶつかり合いに、私が口を挟む事は許されない。

('A`)「いいや、ギコ。お前は怖いんだ。自分の知らない所で仲間が傷つくのが」

(,,゚Д゚)「!!」

('A`)「それなら自分が傷つく方法を選ぶ、ってとこだろう。   全く、困ったもんだ」

ドクオのこの意見は、殆んど勘から出たものだ。 昨夜のギコが話した英雄ロマネスクの話。

少なくとも、ギコはロマネスクの事を敬愛している。   それは、別段長く付き合っていなくても分かる。

そこからロマネスクの考えに、ギコが感化されていると予測しての突っ込みだった。

(,,゚Д゚)「……お前に何がわかる。死にに行ったロマネスクさんを見送る事しか出来なかったオレの気持ちが分かるのかゴルァ!?」

ギコは怖がりだ。自分が傷つくのは怖い。だが仲間を護れないのは、もっと怖いのだ。

だからこそギコは、死にたがる。

仲間を護り朽ち果てるのが、唯一その恐怖から逃げる道なのだから。




('A`)「分かるさ。そんな奴は何人も見てきた。ドンドルマの先達は、そうやって俺達に“狩人のなんたるか”を教えてきた。   だから俺は逃げなかった。もう誰も失う事のないようにと、強くなろうと決めた」


(,,゚Д゚)「……」


('A`)「それに陽動は俺も考えていた事だ。だがお前の立てた作戦とは違う。  俺が陽動すれば、生存率はグッと上がっただろう」


ギコは、その言葉に拳を強く握り耐えた。


364 :4−5:2011/06/02(木) 16:10:39 ID:OeLLN6Qs0

オレはまだまだ弱い。ドクオに陽動をして貰えれば成功率は高くなる。

でも、それじゃオレが護れない。

いや、オレも護られてしまってる。

(,, Д )「エゴだって、そう、言いてぇのか?」

('A`)「あぁ。だが決して醜い物じゃない」

(,,゚Д゚)「……」

無言で睨み合う二人、ギコだってわからず屋ではない。ドクオの意見を聞いて、図星を付かれた部分が少なからずあるとも思った。

だが、それでも簡単に変えられぬ。曲げられぬのが“信念”。

しかし、そんな二人を取り成すように小さな声が聞えてきた。

     『……お父さん、どこ?』

(‘_L’)「ヘリカル!?  ここにいるよ!!」

小さな、小さな声。

狩人達二人が護ろうとしている者から、聞こえた声だった。

*(‘‘)*「おとーさん!!」

洞窟の奥から飛び出してきたヘリカルは、ギュっと強くフィレンクトに飛び付いた。

*( ; ;)*「ヘリカルね、恐かった。起きたら、おとーさんが居なかったから……」

(‘_L’)「……すまないね、ヘリカル。もう大丈夫だよ」

それに応えて、フィレンクトも義娘を強く強く抱き締めた。


365 :4−5:2011/06/02(木) 16:11:07 ID:OeLLN6Qs0

『……えるのか』


('A`)「なんだ?」


(#,,゚Д゚)「テメェの決断、この小さな命に賭けて誓えんのかゴルァ!?」


洞窟の中、一杯に響き渡るギコの叫び。


壁にぶつかり合い、反響し、その叫びはどこまでもこだました。


しかし、だからこそ。


その後に発せられた言葉は、凪ぎの水面の様に静かで力強かった。


('A`)「誓おう」


この小さな命。村に身命を賭した男の命。全てを護ろう。


('A`)「狩人の名に於いて」


そして、これからのユクモを担う若い狩人の命も。




最後にドクオはギコに聞こえないよう、心の中で付け足した。


366 :4−5:2011/06/02(木) 16:12:16 ID:OeLLN6Qs0

(,,゚Д゚)「勝算はあるんだろうな」


('A`)「無論だ」


狩る、そう決めたなら話は早かった。先程までの対立は無かったかのように。


(,,゚Д゚)「どうやってリオレウスを攻略する。聞かせてくれ」


('A`)「考えはあるんだ。だが、確認したい事が幾つかある。  フィレンクトさん、貴方にも」


(‘_L’)「……えぇ、分かりました」


まずは、地形の確認。周辺にある大樹や泥濘。知りすぎて困るという事はない。  加えて近辺の村への道。


('A`)「なるほど。最初に考えた案でいけそうだ」


(,,゚Д゚)「どうやるつもりだ?」


ギコの疑問に、ドクオはニヤリと笑って答えた。









('A`)「奴から翼を奪い取る」


367 :4−5:2011/06/02(木) 16:14:10 ID:OeLLN6Qs0

*(‘‘)*「おにーちゃん達、戦うの?」

これから起こるであろう生死を賭けた戦い。
ヘリカル自身、幼いながらも今この洞窟に溢れている緊張感を精一杯感じ取っていた。

(,,゚Д゚)「………」

少女の不安を、ギコに汲み取る余裕は無かった。

これから戦う【火竜】リオレウス。それも十二分に成長した成体。

二人という少人数で、成体を相手にするのはユクモ随一のギコであっても初めての経験だった。

('A`)「大丈夫だよ、ヘリカル。すぐに終わらせて帰ってくる」

*(‘‘)*「……ほんと?」

少女の不安気な瞳。

モンスターによって家族を殺された少女。

再び、その危機に直面する。   ヘリカルが感じている不安は筆舌し難い物であるだろう。

('A`)「ヘリカルも、ヘリカルの大切な家族も。俺達が護る。

なぁ、ギコ」

(,,゚Д゚)「!!  ……おう。だからそんな顔するんじゃねーぞゴルァ」

ゴツゴツとした手で、ギコはヘリカルの頭を不器用に撫でた。

*( ー ー)*「……うん」

(‘_L’)「すいません、貴方達に全てを押し付けてしまって」

('A`)「気にするな。俺達はそれが仕事だ。  フィレンクトさんにはフィレンクトさんの。

父親としての仕事があるだろう」

(‘_L’)「……はい」


368 :4−5:2011/06/02(木) 16:14:44 ID:OeLLN6Qs0

背に携えていた双剣、【コウリュウノツガイ】を引き抜く。


('A`)「ギコ、準備は良いか?」


それに呼応して、ギコも自身の大剣【ジークムント】を掲げた。


(,,゚Д゚)「任せろ」


狩りを前に、余計な雑念は不要。


必要なのは明確な覚悟。


生きて帰る。勝利するという決意だけ。




『おにーちゃん!これ持っていって!!』


('A`)「!?」


その時、ドクオの胸に湧いた懐かしい気持ち。


混じり気の無い黒でありながらどこか透き通った髪。


369 :4−5:2011/06/02(木) 16:15:10 ID:OeLLN6Qs0












川 ゚ -゚)『そんな不安そうな顔をするな、私は帰ってくるよ。お前の元に』


370 :4−5:2011/06/02(木) 16:16:37 ID:OeLLN6Qs0

('A`)「これはヘリカルの物だろ。良いのか?」

川‘‘)「……うん、お父さんに初めて貰ったプレゼントなの。  だから絶対に返しにきて……。ヘリカル、お父さんと待ってるから!」

ドクオは、少女の髪留めを、少女の気持ちを受け取り、自分の無造作に伸びた後髪を束ねた。

('A`)「受け取れ、ギコ。そして自分の手で必ず返せ」

(,,゚Д゚)「おう!!」

ギコは、それを自らの利き手である右手に括り付けた。

('A`)「ヘリカル、帰ったらまたあの歌を聞かせてくれ」

川*' ')「うん!」

光の向こうへと躍り出た。

凄まじい速度で元来た道を引き返していく。

出来るだけ音をたてて、派手に爆進する。

その頃、リオレウスは四人が隠れている洞窟から一キロ以上離れた上空に居た。

一キロ、人間にしてみれば気安い距離ではないが飛竜にすれば、ただの一歩と変わらない。

他の生物と一線を画した嗅覚を持つ飛竜は、鼠が動き出した事を的確に把握していた。

空を一回り、二回りと繰り返し、獲物の位置を確認していく。

小型種は【索敵】と【戦闘】に別れて、群れで狩りをする必要があるが

殊、リオレウスにそれは必要ない。

そしてリオレウスに見つかったが最後、奴は獲物に向かって真っ直ぐ滑空する。余りにも的確で、痛烈な一撃。


373 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/02(木) 18:44:58 ID:OeLLN6Qs0

いえいえ、再開します


374 :4−5:2011/06/02(木) 18:46:22 ID:OeLLN6Qs0

しかしドクオも、また流石。

耳に入ってきた異常な風切り音。

何か大きな物体が、風に逆らい向ってくる。

その一つの情報でドクオは、リオレウスの接近を察知し素早く木陰に隠れた。

姿を消した鼠に、リオレウスは歯噛みしながらも再び上昇する。

透かさずドクオは、再び木陰から飛び出して走りだした。

ここで隠れていれば確かにリオレウスからはやり過ごせるかもしれないが、それでは意味が無い。

('A`)「付き合ってもらうぞ、空の王。俺とお前、二人ぼっちの鬼ごっこだ」

応えるように【火竜】リオレウスも、また吠えた。

人と飛竜、極めてアンフェアな鬼ごっこの始まりだ。


375 :4−5:2011/06/02(木) 18:48:13 ID:OeLLN6Qs0


         歌いましょう―――目覚めの唄――― 


         奏でましょう―――生命の旋律―――


    きっと誰かを救うから    貴方の紡ぐ  その調べ


           誰かを 祈る その心


          きっと 誰かを 護るから


       ―――歌姫 キュート=バレンタイン―――


376 :4−5:2011/06/02(木) 18:48:57 ID:OeLLN6Qs0

('A`)「ギコ、もう一度確認しておくがユクモ樹はこの先にあるんだな?」


(,,゚Д゚)「ああ、来た道にそって真っ直ぐ進めばユクモ村で一番大きなユクモ樹があるぞ」


ドクオの確認事項は、それだけだった。


今改めて考えてみれば、余りにも無茶苦茶な作戦。


いや、ギコに課せられた役割はそれ程難しい物ではない。


危険なのは、ドクオだ。


この作戦の成否はドクオの陽動にかかっていると言っても過言ではない。


そう、二人が選んだ作戦は、単純な【待ち伏せ】だった。


如何にも先時代的だと思われるかもしれないが、たかが【待ち伏せ】と侮るなかれ。


ずっと昔から今に至るまで、潰える事なく続けられてきた単純な作戦は、それだけ先人達が有用性を保証しているとも言えるのだから。


そも、モンスターとの戦闘において【待ち伏せ】というのは最もポピュラーな作戦なのだ。

しかし、それは万全の準備を成してこそ言える。

罠を張り巡らせ、幾重にも謀ってこその待ち伏せ。

ただ待機しているだけの今回は、それとは言えない。

だからこそ、全てはドクオにかかっているのだ。


377 :4−5:2011/06/02(木) 18:50:13 ID:OeLLN6Qs0

(,,゚Д゚)「……馬鹿野郎が、なにが“自己犠牲”だ。アイツもオレとかわらねーじゃねーか」

この依頼を終えたら、とりあえず一発殴ろうと、ギコは“ユクモ樹の上で”密かに思った。

一方、そんなギコの思いを知る由もなく。

ドクオは、リオレウスと絶賛鬼ごっこ中。

昨日の続きが出来ると、空の王は嬉々としてドクオを追い掛けていた。

あの時は、間一髪の所で逃がしてしまったが今日はそうはいかない。

リオレウスは、自らの全力を以て鼠を追う。

これが、王の、王足り得る資質なのだ。

今、ドクオを追う飛竜がティガレックスであれば。

きっと、既にドクオを見失ってしまっていただろう。   圧倒的な種としての格差は、必然的に慢心を生み出す。

狩るのは飛竜、獲物は人間。

その構図は、もはや飛竜にとって必然であるのだから。

しかし、永きに渡って狩人と戦ってきた【火竜】リオレウスは、消して油断しない。

常に的確に狩人の動きを見極め、確実に仕留める事の出来る一瞬を冷静に探っている。

だからこそリオレウスは気付く。

“昨日”と“今日”の違いに。


378 :4−5:2011/06/02(木) 18:51:12 ID:OeLLN6Qs0

昨日は、仕留められそうなタイミングが何度もあった。

しかし、今日はそれが見当たらないのだ。

('A`)「………」

顔色を変える事なく、昨日と同じ絶妙なタイミングで左右へと身体を振り、リオレウスのタイミングを崩すドクオ。

しかし、その速さは昨日の倍以上。

それもそう、昨日は自分よりも大きなフィレンクトを背負いながらの逃走だったのだから。

リオレウスも、昨日と動きが違うという事は理解した。

しかし、飛竜の本能ではその要因を理解するまでには及ばない。

ならば、とリオレウスは炎を練る。

昨日は忌々しい壁に阻まれたが、今回は走りながらだ。

爪は躱せても、この火球ブレスは躱せまい、と。

('A`)「……チッ」

狩人も、気が付き身体を強引にリオレウスに向けた。しかし、それは絶望的に遅い。

時速200キロ、摂氏600度以上の速度と熱で吐き出されるリオレウスの炎息は、抵抗する事自体を許さない必殺の武器。

リオレウスは、勝利を確信する。


379 :4−5:2011/06/02(木) 18:51:40 ID:OeLLN6Qs0

しかし








('A`)「俺に、炎は効かない」


380 :4−5:2011/06/02(木) 18:52:57 ID:OeLLN6Qs0

ドクオは、自らの双剣でそれを逸らした。

いや、軌道を無理矢理に捻曲げたと言うべきか。

例えるならば、脈々と流れる圧倒的な勢いを持つ水流のど真ん中に、鉄筋コンクリートをブチ込んだような。

驚くのも無理はない。

こんな事、普通の人間が出来る事ではないのだ。

いや、誤解を招かぬようにはっきりと言おう。

たとえG級の狩人であったとしても、こんな芸当出来るわけがない。

加えて、この事象はドクオに人並み外れた特殊な技能があって引き起こされた物ですらない。

しかしドクオの両目は確かに時速200キロのブレスを捉え、金銀の双剣は600度以上の火球を逸らした。

それは一重に、ドクオの持つ双剣による所だ。

ドクオの持つ金銀の双剣、【夫婦剣】コウリュウノツガイは、【雌火竜】リオレイアと【火竜】リオレウスの貴重な素材を、ふんだんに使って作られている。

それも、ただの人間では一生に一度遭遇出来るかも分からない希少種の物だ。

リオの魂とも言える“紅玉”を丁寧に時間を掛けて、剣の形に打ち直し、銀火竜と金火竜の鱗で刃と柄を作る。

その上で、刃の部分に火竜の髄を丁寧にコーティングした、ドンドルマの鍛冶職人入魂の二振り。

この双剣だからこそ、リオレウスの炎を受けても焦げ一つ付かなかった。

飛竜であるリオレウスに、人間のような感情があるのかは分からないが

もし、それを持ち得たならば

きっとこの時、リオレウスは驚愕していただろう。


381 :4−5:2011/06/02(木) 18:56:05 ID:OeLLN6Qs0

('A`)「ここまで来れば大丈夫だろう。待たせたな、リオレウス。鬼ごっこはひとまずここで終わりだ」

リオレウスは、堂々と自分を見据える狩人に異様な雰囲気を感じた。

怖気づいたのだ。

両翼を二度、三度靡かせ距離を開けた。

そして驚く事が起きる。

('A`)「!?」

空の王が頭を垂れたのだ。

偉大な物にかしづく様に。

('A`)「コイツ……俺の双剣に反応してるのか?」

ゴクリ、とドクオは息を呑んだ。今まで何年と狩りを続けてきたが、こんなリオレウスを見るのは初めてだった。

偉大な同胞を使い、作られた双剣に対し

王は、頭を下げた。

('A`)「……」

静かな時間が流れる。人間と飛竜、どちらも動く事なく互いに正面から向き合っている。

ユクモの神木に囲まれた、この小さな空間で。

一人と一頭は、ただどちらとも言葉を発する事無く、黙っていた。


382 :4−5:2011/06/02(木) 18:57:08 ID:OeLLN6Qs0

先にこの沈黙を破ったのはドクオだ。

('A`)「ドクオ・ウェイツー。ドンドルマの狩人にして“G”を戴く者だ。

御相手願おう、空の王」

動き出したのは、飛竜。

ドクオの名乗りに応えるかのように、長く、そして強く吠えた。

('A`)「……チッ」

余りに長い咆哮。普段ならばその衝撃に当てられる事無くスルリと躱すドクオだったが、ここまで長く吠えられると流石に対処の仕様がない。

先手はリオレウスが取った。

('A`)「……面倒だな」

鋭く見舞われるリオレウスの翼爪。  足の爪とは違い毒線は無いが、それでも人間を仕留めるには十分な威力を持っている。

これをドクオは、リオレウスに背を向け必死に跳び退き回避した。

体勢は最悪。

リオレウスに背を向けた状態、それに加えて跳んだ為に身動きが取れない。

新人の狩人が、突然の攻撃に対してやってしまう最悪の避け方だった。


383 :4−5:2011/06/02(木) 18:58:52 ID:OeLLN6Qs0

この方法では、地面から身体を起こす時に一瞬だけ必ず無防備になる。

その一瞬を見逃すほど、飛竜は甘くない。

起き上がりにブレスを見舞われ、跡形も無く蒸発してしまった狩人も少なくない。

その最高の好機。リオレウスも勿論認識している。

すぐさま追撃をかけるために飛び上がらず、そのまま突進する事でドクオを砕こうとする。

('A`)「……厄介な奴だ」

ドクオは地面に着地する一瞬に、片手で地面を押し返し、側転の要領でその隙を消した。

勿論、リオレウスの目論みは空回りに終わる。

加えて、このタイミングで攻守が逆転。

リオレウスの巨体が、単純に突進すれば

その反転の鈍さは、欠伸が零れる程だ。

身体が大きいというのは、大きなメリットであり  大きなデメリットになる。

透かさず、ドクオは自分を捉えられず、そのまま通り過ぎたリオレウスに向けて走りだした。

“双剣”という武器の特性上、一撃でリオレウスを倒す事は出来ない。

だからこそ、このような細かな隙を見逃してはいけないのだ。

生粋の双剣使いであるドクオは、勿論これを理解していたし

だからこそ、正確にリオレウスの脚を不規則な形で切り結んでいた。


384 :4−5:2011/06/02(木) 18:59:58 ID:OeLLN6Qs0

しかしリオレウスは全く意に介さないかのように、その場で尻尾を振り回す。

('A`)「……チッ、これだから図体のでかい奴は」

身体が大きいというのは、痛覚の鈍感さに関係する。

一般的に飛竜種に限らず、どんなモンスターでも痛みにのたうち回るなんて事はない。

蓄積した痛みが、一気に身体の底から溢れだした時に、奴らは初めて“痛み”という物を自覚する。

('A`)「………」

だから今は我慢の時。

出来る限り、リオレウスの脚を集中的に切り結んでいく。

ドクオの戦法は単純。リオレウスと距離を取り、突進を誘う。

それを躱し、奴が振り返る前に脚を狙う。

痛くも痒くもない、とばかりに尻尾を振るリオレウスだが

着実に、その脚に蓄積は溜まっていく。

この構図が、最初から最後まで終始動かなければドクオは確実に勝利するだろう。

しかし、相手にしているのは飛竜。

人間よりも圧倒的に上位。

gaohooooooooooo!!!!!!!

たった一吠え、それだけで一連の攻守は逆転してしまうのだ。


385 :4−5:2011/06/02(木) 19:00:55 ID:OeLLN6Qs0

“音”というのは、つまるところ“振動”だ。

リオレウスの雄叫びは、大気中の空気を振動させ

ドクオの三半規管を、直接刺激する。

聴覚だけでなく、人間の平行感覚を司る三半規管を、揺らされれば

いくら強靭に肉体を鍛えようと無意味。

空の王の怒りは、焼き尽くす炎となって愚者の身を焦がす。

('A`)「不味いな」

咆哮により動けなくなった一瞬。

そこに加えられた、尻尾による回転攻撃。

ドクオは間一髪でそれを避ける。

しかし、次の瞬間。

リオレウスが大きく翼を広げた。

この構えから繰り出される攻撃は、万国共通。

('A`)「!?」

“飛び上がりブレス”


386 :4−5:2011/06/02(木) 19:01:26 ID:OeLLN6Qs0

リオレウスが繰り出す多種多様の技の中で、最も凶悪な攻撃。


吠えて、ブレス。


この単純かつ明快な攻撃によって幾人もの狩人が命を落としてきた。


凄まじい衝撃と共に、ドクオが立っていた場所から5m四方が焼け焦げた。


リオレウスは、満足そうに何百度にもなる灼熱を吐いて、上機嫌に空を舞った。


殺してやった。


あの忌々しい鼠を。


王たる自分に逆らい、逃げ続けたモノを。


387 :4−5:2011/06/02(木) 19:04:19 ID:OeLLN6Qs0

しかし、なんだというのだ。あの鼠は自分の灼炎を受け間違いなく絶命しているはずだ。それなのに緊張感から開放されない。自分の本能が言っている。

まだ終わっていないと。

『王は、路肩の石を蹴っても気が付かない』


『なぁ、空の王。お前は気付いていたか?』


('A`)「まず一つ目だ」


あれは何だ?


あの忌々しい鼠は、何故焼け爛れた様子もなく悠然と立っているのだ。


それに、奴が手に持っているのは何だ。


あれは


('A`)「左右6つの尖爪。お前が地に落ちるまでに何本無事に残っているかな」

ドクオは、再び駆け出した。


388 :4−5:2011/06/02(木) 19:05:18 ID:OeLLN6Qs0

そもそもドクオは、何の考えもなく陽動を買って出た訳ではない。


リオレウスを倒すための、ピースを集める為に行っているのだ。

そして一つ目のピースは、すぐそこだった。

('A`)「ひどいな、これは」

グシャグシャに潰されたフィレンクトの荷台。


そこにある勝利の鍵。


リオレウスから翼をもぎ取る為の鍵が。


ドクオは、素早く荷車の中から“それら”を引っ掴んで再び駆け出す。

もうリオレウスとやり合うつもりはない。この先に待つ巨大なユクモの樹。そこまで付かず離れずの距離で飛竜を誘導する。

目指すは、ギコとの約束の場所。

二人の狩人に“勝利の光”が指す。


389 :4−5:2011/06/02(木) 19:06:16 ID:OeLLN6Qs0

生い茂る森、無数に林立する木々の中でも、飛びぬけて背の高いユクモ樹の上でギコは座っていた。

打ち合わせでは、ドクオがここまで誘導してくるらしい。そんな飛竜をコントロールするような事が出来るのか、とも思ったが自分は仲間を信じて待つことしか出来ない。

しかし、不安は拭えない。時間稼ぎにしては遅すぎる。自分がこの場所に辿り着くまでの陽動だったはずなのに。ドクオは一体何をしているのか。


(,,゚Д゚)「!!  来たか!!」


薙ぎ倒されていく木々。真っ直ぐこちらに向かってくる。


(,,゚Д゚)「……流石だな。宣言通り、あのリオレウスをコントロールしてやがる」


ゆっくりと心を落ち着ける。三度息を吸い、吐いた。


三年来の相棒である大剣、ジークムントを握り締める。ヘリカルに借り受けたリボンは柄と自分の手を結ぶのに使っている。


そういえば、こうやって人に頼んで狩りをするのは何時ぶりだろう。

思えば、本当の意味で人に頼った事など一度も無かった。


だからこそ手が震える。


他人の努力の成否が自らに重くのしかかる。


390 :4−5:2011/06/02(木) 19:07:22 ID:OeLLN6Qs0

(,,゚Д゚)「……」

そうか。

俺は、こんな重圧を大切な仲間にかけていたのか。

(,,-Д-)「……謝らねぇとな、帰ったら」

見据える先には飛竜、リオレウス。

その一歩先を行くドクオ。

(,,゚Д゚)「大した奴だ」


ここからが狩猟の本領。仲間との力を合わせた戦いだ。

('A`)「ギコオオォォォオオ!!!!!」

空の王から、翼をもぎ取る。

30m以上あるユクモ樹から飛び降りる。


ジークムントを携えて。


これが二つ目のピース。


空の王よりも、高みからの奇襲。


Ghyaaaaaaaaaaaaa!!!!!!


391 :4−5:2011/06/02(木) 19:11:12 ID:OeLLN6Qs0

地面に縫い付けられたリオレウス。


翼が折られたのだ。


(,,゚Д゚)「ハァハァ……」


('A`)「……ふぅ」


その飛行能力。圧倒的な制空力故に繊細過ぎる作り。その脆さ。

('A`)「良くやったな」


(,,゚Д゚)「あぁ。だが、まだ終わってない」


片翼を折られた空の王。その顔には、憤怒がありありと浮かんでいる。


自分より下等な存在に。


王たる自分の翼が奪われた。


許せない。許してはならない。


('A`)「……油断するなよ、ギコ。こいつは一筋縄ではいかない」


(,,゚Д゚)「……誰に言ってやがる。ユクモの狩人の力を見せてやるぞゴルァ!!」


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