('A`)ドクオと飛竜と時々オトモのようです5−2
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566 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/09/06(火) 22:14:22 ID:NcmPDto6O
ギコの祝賀会からの帰り。ドクオとツーは、灯籠に薄暗く照らされた道を会話もなく歩いていた。
ドクオの脳裏に引っ掛かるモララーの言葉。
【騎士派】それが、ユクモでどのような意味を持つのかをドクオは知らない。ただツーとしぃが語った『モララーには仲間が居ない』という言葉と『騎士派と狩人派の不仲』を併せて考えれば、ある程度は容易に推測出来た。
そんなドクオの気持ちを知ってか知らずか、ツーも普段の様にドクオの頭には座らず、自分の足で彼の後ろを付いていた。
('A`)「なぁ、ツー。騎士派について少し聞きたい事があるんだが」
(*゚∀゚)「ニャー、前にも言ったけど聞いても面白い話じゃにゃいニャー」
ツー自身も、勿論分かっている事だ。ドクオの異常なまでの勘の良さ。そんなドクオに隠し事は出来ない。
だが、それでも笑って話せる様な話題ではなかった。言うなればユクモの最深部、寒々と、尚且つ黒々とした場所。
('A`)「それでも、だ。出会った時には話さなかったが俺自身、ユクモには一応目的があって来た」
そう聞いてツーは少し驚いた。ドクオが嘘をついていた事にではない。ドクオの様な腕利きが何の目的も無いなんて、と内心気付いてはいた。
567 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/09/06(火) 22:14:57 ID:NcmPDto6O
('A`)「ドンドルマの爺さんに言われてな。その目的に関係してくるかもしれない事だから、聞きたくもなるさ」
(*゚∀゚)「ニャー、そうだったのかニャー」
ドクオが自分の事について話すのは初めてだったからだ。普段、村の子供達やブーン達からせがまれてドンドルマの話をする事はあったが、その時も出来るだけ第三者の立場から話していた。ドクオの生い立ちや、想い出など、この村の中で一番近くに居るツーですら知らないのだ。
(*゚∀゚)「じゃあ、ちょっと適当に座るニャー。立ち話で済むような話題でもないのニャー」
('A`)「あぁ」
二人は、道の端に無造作に置かれていた大樽と小樽にそれぞれ腰掛けた。
568 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/09/06(火) 22:15:54 ID:NcmPDto6O
(*゚∀゚)「ニャー、どっから話したものかニャー。ドクオは、その辺りについてどこまで知ってるのかニャー?」
('A`)「ユクモに3つの派閥があるのは知っている。その中で【狩人派】と【騎士派】が不仲なのもな。だが、それしか知らない。どういった経緯で、そんな下らない派閥が出来たのか、何故啀み合っているのかも」
にゃにゃ、とドクオの言葉にツーは少し顔を強張らせた。しかし、すぐにその表情を消し去って今度は自嘲するかの様に渇いた笑いを見せる。
(*゚∀゚)「下らない、ニャー。確かに下らないんだろうニャー」
しかし、その一種の変化を見逃す程ドクオは間抜けでは無い。
('A`)「すまん、気に障ったか?」
(*゚∀゚)「ニャー、仕方ないのニャー。一致団結してモンスターと戦い続けてるドンドルマの狩人からすれば、今のユクモは下らないと言われても無理ない状況だニャー」
最重要拠点都市ドンドルマに、この様な派閥争いは存在しない。ドンドルマの抱える事情を加味して言い換えるならば『そんな事を争っている余裕など無い』のだ。
【全ての交差点】ドンドルマ。広大な大陸のちょうど真ん中に位置するドンドルマには、モンスターの襲来が、最早生活の一部となっている。
ユクモを含む八つの地方から等距離にある事が、その原因だ。それぞれの地方にしか存在しない飛竜達が、他方面に勢力を伸ばそうとした時、必ず一番最初に通らなくてはならない場所にある。
だからドンドルマの狩人は強い。場数が圧倒的に違う。それにユクモの狩人達のように自分の狩るモンスターを選り好みなんて出来ない。
そんな生易しい選択肢、与えられるはずがない。
569 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/09/06(火) 22:18:21 ID:NcmPDto6O
飛竜が現われたなら狩るしかない、これはドンドルマの狩人であればHR1の者であっても皆自覚している事だ。
ユクモの様に『自分はまだ未熟だから誰かが狩ってくれる』などという甘えを持っていない。
自分のその甘えが、大陸全土にどんな混沌をもたらすのかを自覚しているから。
('A`)「事情は、それぞれ違うというのは分かってる。それでも派閥によって干されたりするような状況は看過できない」
(*゚∀゚)「ニャー、それも皆頭では分かってるはずなのニャー」
ツーが、地面になにやら書き始めた。図で説明しようとしている様だ。
普通のモンスターならばこうはいかないが、これもアイルーという高い知性を持つ彼らの特権だろう。
(*゚∀゚)「まずユクモにはこの三つの派閥があるのニャー」
('A`)「うむ」
(*゚∀゚)「そして今、それぞれの派閥を【ギルドマスター】スカルチノフ、【騎士長】フォックス、そして【歌姫】キュート様が治めているのニャー」
('A`)「ふむ、スカルチノフとフォックスについては少しギコから知識を得ている」
570 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/09/06(火) 22:19:15 ID:NcmPDto6O
(*゚∀゚)「狩人派については説明を省くニャ。肝心なのは【騎士派】と【聖歌派】だニャー。【騎士派】は、元々武力を持たない【聖歌派】を維持する為に設立された物なのニャー」
('A`)「ふむ、聖歌派の私設武装集団のような物か。だが、それなら騎士派と聖歌派は一括りでも良いんじゃないのか?」
ここでツーは深く溜息を吐いた。
(*゚∀゚)「確かにドクオの言う事は最もだニャー。だから最初は二つの派閥は、一つだったんだニャー」
('A`)「それが、何故今になって二つに別れてしまったんだ?」
それにツーは答えられなかった。頭の中で何度も再考し、順序立てて説明しようとしている。
其れ程までに複雑なのだ。
(*゚∀゚)「……始まりは、ある事件だったニャ」
571 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/09/06(火) 22:20:18 ID:NcmPDto6O
現聖下であるキュート=バレンタインの祖父であるモナー=バレンタインが治めていた頃の事だ。
ユクモを揺るがす大事件が起きた。
モナー=バレンタインの一人息子とその家族。
総勢四人の乗る馬車が、ある飛竜に襲われたのだ。
それも、未だかつて飛竜の現れた事のない閑かな場所で。
普通、どこか危険な場所を通るような場合、狩人が何人か護衛についていたのだが。その日は、別段危険な場所でもなく、護衛も付いていなかった。
遣わされた狩人が発見した時には、馬車はグチャグチャにひしゃげ、車を引いていたガーグァの身体は食い荒らされていた。
息子は飛竜と戦ったらしく、その死体は余りにも損壊していた。
嫁は、二人の娘を抱き締めて居たのだろう。背中に大きな爪痕を付けられて絶命していた。
572 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/09/06(火) 22:21:07 ID:NcmPDto6O
二人の娘のうち、不幸中の幸いにも、荷馬車の下で気を失っているキュートが発見された。
もう一人は、誰も口にはしなかったが飛竜に連れ去られたのだろう。
食料として。
これにモナーは、大変心を痛めた。大切な一人息子とその家族を失ったのだから、当然だ。
そして、その非難は言うまでもなく狩人に向いた。
護れない盾に価値など無い。
家族を殆んど失った老いぼれが作った、それが騎士派。
その長に誰が就任するのか、という選考は困難を極めたが、ブーンの父でありユクモ最高のHR6のベーン氏の強い推薦によりフォックスが選ばれた。
それが騎士派の興りである。
573 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/09/06(火) 22:21:57 ID:NcmPDto6O
聖下の為を第一に考える者が集まる派閥。
聖下を崇拝しているからこそ、未だにその事件を根に持ち、狩人派を侮蔑する物は少なくない。
そして狩人達も、聖下の為という大義名分を振りかざし、ろくに働きもせずに地位を得ている騎士派が面白くない。
(*゚∀゚)「……という訳だニャー」
('A`)「………」
ドクオは言葉を失っていた。ツーの話を聞いて、確かに騎士派と狩人派の確執には納得がいった。
だが、これでは何時までも纏まらない。
(*゚∀゚)「でも、最近じゃ騎士派も色んな人がいるのニャー。モララーみたいに、気分で騎士派に入るような奴も現れ始めたのニャ」
('A`)「モララーは、どういう奴なんだ?」
ツーは、少し考えて言った。
(*゚∀゚)「分からんニャ。肩書きとしては、騎士派だけど狩人もしてるのニャ。HR5で、なかなか腕が立つ男だニャ」
('A`)「それは、問題ないのか?」
(*゚∀゚)「じじいは何も言わないから大丈夫ニャ。ただ、向こうでは分からないニャー」
あの飄々と、それでいて隙の無い立ち振舞い。そしてドクオに見せたあの武器。
('A`)「謎、か」
574 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/09/06(火) 22:22:59 ID:NcmPDto6O
(*゚∀゚)「ま、モララーの事はオレっちよりギコに聞くのが一番だニャー。アイツとモララーは幼馴染みであり、お互いにとって数少ない友人だったはずニャー」
ツーは、これで話は終わりだという様にくるくると身体を捻りながら器用に立ち上がった。
('A`)「幼馴染み、か」
ドクオの視線の先には夜空。満天の星々が輝いていた。
燦々と輝く星は、己の存在を主張するかの様に強く光を放つ。
('A`)「………」
その余りの存在に、ドクオは思わず手を伸ばす。
一際強い光を放つ星達を結ぶように、指をなぞった。
しかし、まだそれは形にならない。
星座とは、一等星や二等星、大小様々な輝きを放つ星が決まった季節、決まった時間に揃う事で、完成されるのだ。
('A`)(……!?)
不意に、星が流れた。流れた様に見えた。
次いで、僅かに鼻を突く様な火薬の匂い。
575 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/09/06(火) 22:23:38 ID:NcmPDto6O
('A`)「ツー」
(*-∀-)「ニャー、ボウガンだニャー。一体、どこの馬鹿かニャ」
ツーも、気が付いたようだ。夜空に流れた一発の弾丸に。
('A`)「一応様子を見るぞ。ただでも宴会騒ぎで浮ついているんだ。それに、さっきの話を聞いた後だとな」
(*゚∀゚)「ニャ、じゃあちょっくら見てくるニャー。流石にあの一発じゃ分からないのニャー」
直ぐ様、潜ろうとするツー。しかし、ドクオはそれを引き止めた。
('A`)「必要ない、大体の場所は掴めたからな。少しだけ気配を潜めていこう」
平然と言い退けるドクオ。それを聞いたオトモは、深く溜め息を吐く。
(*-∀-)「ニャー、このネコ耳は飾りじゃないつもりだったんだけどニャー。流石にこれは自信を無くすのニャ」
('A`)「?」
576 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/09/06(火) 22:27:10 ID:NcmPDto6O
音は、賀老の滝付近から聞こえてきた。
賀老の滝というのは、ユクモの命たる温泉、その源泉が流れ集う場所である。
ユクモの集落自体からは、結構な距離があり寧ろユクモ村からよりも【パッソ】という村の方が近いくらいだ。
ドクオとツーは、出来るだけ迅速に、且つ物音を立てずにグイグイと進んでいく。
そして辿り着いた賀老の滝。
('A`)「あれは……」
そろりそろりと近づき目を凝らす。
ドクオの目に飛び込んで来たのは、何とも神秘的な光景だった。
落ちては弾ける水飛沫、幾千幾万に別れて飛び散る命の水を、頭上に厳かに輝く月が照らす。
滝の下、不自然に花が咲き乱れるその場所に一人の少女が立っていた。
少しクセっ気のある金色の髪。
それを見たドクオは、いつでも抜けるようにと構えていた手を、なんでもないように柄から遠ざけた。
ξ゚听)ξ「……誰? ブーン?」
声の主は、ツン。
577 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/09/06(火) 22:27:47 ID:NcmPDto6O
ドクオは、出来るだけおどけた様に両手を上げて草陰から姿を現した。
('A`)「驚いたな、この距離で気付かれるとは思わなかったよ」
ξ゚听)ξ「はぁ。なんだ、ドクオか」
ツンは、突然の来訪者がドクオである事に少し驚きながら、溜め息を吐いた。
('A`)「気配は出来るだけ消していたつもりだったんだけどな」
ξ゚听)ξ「あぁ、気配だったりなんて新米の私には分からないわよ。ただ“見えた”だけ」
ここでドクオに一つ疑問が湧いてきた。
('A`)「見えた、というのはこの暗闇とこの距離で視認出来たという事か?」
ξ゚听)ξ「ええ、目だけは良いのよ」
なんでもないように言うツンに、思わずドクオは絶句する。
(*゚∀゚)「流石は“鷹の目”だニャー」
地中から音を立てて出てきたツー。
唐突の登場に、可愛い悲鳴をあげて後ずさるツン。
('A`)(……気配を感じられてないというのは本当、か。という事は、さっき俺に気が付いたのも本当に見えたという事か)
ξ;--)ξ「もうっ、驚かさないで下さい! それに、その呼び方も好きではないですからね」
578 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/09/06(火) 22:29:29 ID:NcmPDto6O
('A`)「そう謙虚になる事もあるまいに。ガンナーにとって目は命だ。それが優れているのは誇って良い事だろう」
ξ゚听)ξ「それが本当に、私の視力だけを揶揄してる物なら、ね。確かに、私の視力は優れているかもしれないけど“鷹の目”というのは視力よりも、どちらかといえば私の“容姿”を揶揄した物なのよ」
はて、この少女の容姿、というのは何処を指しているのだろうか。
緩く内にカールした金色の髪。ツンと高く筋の通った鼻。雪のように透き通った白い肌。大きく、切れ長な目。
百人が見て百人が、綺麗と答える容姿をしている、とドクオは思った。
('A`)「ん……」
切れ長な目、勝ち気そうな目、全てを見通すような鋭い――――
('A`)「なるほξ#゚听)ξ『納得するな』……すまん」
579 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/09/06(火) 22:30:32 ID:NcmPDto6O
そこで一息ついたのか、ツンは再び自分の作業に戻っていった。
('A`)「そういえば、ツン。こんな夜更けに一体何をしてたんだ?」
ξ゚听)ξ「んー、訓練。まぁ、そんな大層な物じゃないけどね」
ツンは手を止めずに答えた。
('A`)「そうか」
ξ゚听)ξ「最近ブーンが頑張っちゃってるから。私も少しは、ね」
ドクオは、以前デレから聞いた話を思い出した。
ツンは、元々明確な意志を持ってハンターになったわけではない。
ブーンを追いかけ、隣に居続ける為に、この道を選んだ。
('A`)「焦りか?」
一瞬、本当に一瞬だがツンの手が止まった。
ξ--)ξ「はぁ……。本当にドクオって見え透いた事を言うわね。嫌われるわよ」
('A`)「注意するべき所は注意する。先輩として当然の事だ」
ξ゚听)ξ「……まぁ、そうね」
580 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/09/06(火) 22:31:04 ID:NcmPDto6O
まだ二人が出会って、そんなに長い時間が経った訳では無い。だが、お互いの領域を把握する位の会話は済ませてある。
完全無欠の男、自尊心の強い少女、二人の会話に厭は無い。
ξ゚听)ξ「そりゃね、クルペッコと戦った時だって私は殆んど何もしてないし、訓練だって積極的に行ってるとは言えないわ。それは私自身が一番分かってるしね」
('A`)「……」
強く、自分のライトボウガンを握る少女は、目を伏せる。
ξ゚听)ξ「でも、このままじゃ駄目だって事も同じくらい分かってるつもり。依存は好きじゃない。私は、相乗して行きたいから」
(*゚∀゚)「……惚気られてもニャー」
ドクオの傍で聞いていたツーは、聞いてられないという様に、肩を竦めた。
ξ////)ξ「べっ、別にブーンとずっと一緒に居たいからとか思ってないんだからねっ!!」
顔を真っ赤に染めて、ライオンよろしく、ガルルと低く唸っている少女。
581 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/09/06(火) 22:31:37 ID:NcmPDto6O
('A`)「理由はどうあれ、自分を磨こうとする事が悪いはずないだろう。ただ、こんな時間に村から外れた場所でする必要もないだろうに」
ξ゚听)ξ「別に初めてじゃないもの。それに、普段だったらそろそろブーンが迎えに来てくれるはずなんだけど」
あぁ、とドクオは納得した。
('A`)「ブーンなら、お前の姉のトラブルに巻き込まれていたぞ」
ξ--)ξ「はー、デレったら。また爆発しちゃったのね」
この言い方からして、デレの爆発は普段から起きる事のようだ。
('A`)「まぁとにかく、ここはもう狩場に近い。大型モンスターは、ギルドが厳重に管理しているとはいえ、先のクルペッコの様な事が起こらないとも限らない。気を付けるに越した事はないぞ」
ξ゚听)ξ「大丈夫、弾丸は持ってきてるから。それに、昔からここはお気に入りの場所でずっと通ってるけどモンスターなんて見た事無いわよ」
それでもだ、ドクオが強く発そうとした言葉は、口を出なかった。
『ァグゥ……アァ……』
花咲き乱れる、この場所に相応しくない声が聞こえたから。
582 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/09/06(火) 22:32:10 ID:NcmPDto6O
('A`)「ツー!」
(*゚∀゚)「ニャー、あの草影だニャー」
ドクオとツーが素早い身のこなしで、掻き分けていく。
('A`)「!!」
(*゚∀゚)「……これは、ひどいニャー」
そこで見付けたのは人‘だった’物。
死に体と言ってもおかしくない。
鋭い何かでズタズタに引き裂かれた下半身。原型を留めているとは言えない。深く裂けた傷口からは、骨が見え、そこから留めどなく血が溢れ出ている。
吐く、というよりも漏れる様に聞こえてくる呼吸音は、まだ確かに‘コレ’が生きている事を示している。
('A`)「……何か俺達に出来る事は無いか?」
『……を、……じん、りゅう、……むらを、頼む』
それだけ言うと、少し、ほんの少しだけ安心したように彼は目を閉じた。
弛緩した彼の身体から、魂が抜けていくのを感じる。
583 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/09/06(火) 22:32:59 ID:NcmPDto6O
ドクオの睨んだ先、闇に揺れる木々の切れ目。
ツンは、そこから此方を舐めるように伺う紅い眼を、確かに見た気がした。
5―2 END
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