('A`)ドクオと飛竜と時々オトモのようです6−3 前のページへ] 戻る [6−4へ

79 :6―3:2011/12/18(日) 22:23:49 ID:88pYr5WMO

さてこの物語の読んでくださっている、物好きな皆様方ならば、もうお気付きだと思うが。一人、いや一匹まだ登場人物が出てきていない。

では、これから彼女の話をしよう。

これは二匹のオトモと、ユクモの英雄の物語。
彼女がずっと、その小さな胸に抱えてきた、悲しみの話を。






(*゚∀゚)


80 :名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 22:25:47 ID:88pYr5WMO

彼女の名前はツー。アイルーだ。


そもそもアイルーというのは、非常に知能が高く、器用な生き物だ。ドンドルマでは、理髪店を営業していたり、鍛冶屋をしていたりと、活躍の場は多岐に渡る。

だがユクモのアイルーは、彼ら以上の知性を持つ。この理由は未だに明らかにされていないが、ユクモの湯の効能だという説が有力となっている。

ユクモのアイルーは、主人である狩人を愛し、死ぬまで己の主人へと尽くす。


それは彼らの誇りであり、生きる意味であるのだ。


だからこそ


(*゚∀゚)つ((メ)ΦωΦ )「むぅ……ツー、我輩のヒゲを引っ張るのは止めるのである。普通に痛いのである」

(*゚∀゚)「ひゃははwwww」

(;=゚ω゚)ノ「ツーちゃん、やめるよぅ!引っ張り過ぎだよぅ!もうご主人様の輪郭がおかしな事になってるよぅ!!!」


こんな光景は異常であった。


81 :名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 22:32:13 ID:88pYr5WMO

( ΦωΦ)「全く、ツーは少しお転婆が過ぎるのである。イヨゥを見習って、もう少し静かに出来ないものか」

(*゚∀゚)「うん、それムリだニャー!それにイヨゥは臆病なだけだニャー!!ツーは勇敢だからニャー」

ユクモ史上初めてのHR6、ロマネスク=フェイト。ユクモの守り手であり、これからの活躍を渇望されている狩人だ。

(*゚∀゚)「まったくイヨゥも、もっと頑張るニャー。そんな事じゃオレっちの妹にも追い抜かれちゃうのニャー」

(=゚ω゚)ノ「うぅ、僕はツーちゃんと違って戦いには向いてないんだよぅ。採集してる方がご主人様の役人立てるんだよぅ」

そして彼に付き従う二匹のオトモが居た。

一匹は現ギルドオトモであるツー。

そして虎柄の毛色を持つ、少しオドオドした雄アイルーがイヨゥである。


82 :名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 22:33:16 ID:88pYr5WMO

( ΦωΦ)「さて、それではそろそろ狩りに出るのである。お前達、準備は出来ているのであるか?」

(*゚∀゚)「万全ニャー」

(=゚ω゚)ノ「はい、ご主人様。出来てますよぅ」

そして彼らは今日も狩りに行く。

(*ー∀ー)『だが断るニャー』
( ΦωΦ)「ところでツー、そろそろ頭から降りぬか」


ツーは漠然と、こんな日々がいつまでも続くのだと思っていた。

ロマネスクの背中を守り、イヨゥをからかう、そんな日常がツーにとって宝物だったのだ。


83 :名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 22:33:36 ID:88pYr5WMO










あの日【砂漠の暴君】ディアブロス襲来の報を聞くまでは。


84 :名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 22:36:14 ID:88pYr5WMO
【角竜】ディアブロス、広大な砂漠地帯を支配する飛竜である。

プライドが非常に高く、危害を加えられたり縄張りを侵されると凄まじく猛り狂う故に【砂漠の暴君】と呼ばれている。

棘の付いた襟飾りを持ち、目のうえに二つの巨大な角を備える飛竜。首にある襟状の堅固な鱗や角などは恐竜に於ける『角竜類』と近い。

尾は『曲竜類』のように先端部が棍棒状になっており、鋭い牙を持つが飛竜種の中で数少ない草食竜である。

昼でも夜でも関係なく動き回る上に、移動の殆んどを地面の潜行で行うので、監視が難しく
地響きを感じれば、いきなり目の前に【角竜】ディアブロスが現れた等という報告も珍しくはない。


そんなディアブロスが三頭。ユクモを包囲するように砂漠に現れた。


85 :名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 22:37:33 ID:88pYr5WMO

ギルドマスターは頭を抱えた。一匹だけでも第一種危険モンスターとして扱われるディアブロスが三頭。とてもではないがユクモの狩人だけで対処出来る状況ではない。


本来ディアブロスは、討伐より捕獲任務があてられる。


動き回るディアブロスを監視し、眠りに就いた所で捕獲するのだ。


しかし今回は複数のディアブロスがいる。縄張り意識の高いディアブロスは、最初から猛り狂った暴君の状態だろう。捕獲は困難だ。

( ΦωΦ)「我輩が行くしかないだろう」

/ ,' 3「ロマネスク」

それならばユクモ最高の狩人、ロマネスクを出すしかないのだ。だが、アラマキは迷っていた。“来るべき日”に向けて、ここでロマネスクが命を落とすような事があってはならない。


86 :名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 22:38:34 ID:88pYr5WMO

( ΦωΦ)「マスター。我輩では不満か」

/ ,' 3「……いや、残念ながらお主しかおらんのぉ」

アラマキは渋々ロマネスクを討伐任務に出す事を許した。

(,,・Д・)「ぜったい帰ってこいよゴルァ」

( ΦωΦ)「あぁ、勿論である。ギコも、我輩が居ない間、修行を怠るなよ」

(*゚∀゚)「任せとけニャー!オレっち達にかかればディアブロスなんてちょちょいのちょいだニャー」

(=゚ω゚)ノ「頑張るよぅ」

村の期待を、縋る想いを一身に受け、彼らは砂漠へと向かった。

厳しい戦いになる事は、ロマネスクもオトモ二匹も充分理解していた。


87 :名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 22:40:36 ID:88pYr5WMO

しかし最初の一頭は予想に反し順調だった。砂漠の端、木陰で眠っているところを捕獲したのだ。

( ΦωΦ)「ふむ、最初の一頭は順調であったな」

(*゚∀゚)「ちょっと拍子抜けだニャー!もっと骨が折れると思っていたのにニャー!!」

(=゚ω゚)ノ「戦わないで済んで安心したよぅ。でもまだ二頭いるよぅ、それに嫌な予感もするよぅ」

イヨゥの言葉にロマネスクも同意する。そもそも気が抜ける様な状況ではないのだ。

ここで一つ、戦いの定義という物を一つ紹介しておこう。


複数の敵と“連続”で戦うと、複数の敵と“同時”に戦う事には大きな違いがある。

一般的に同時に二体の敵と戦う場合、要求される実力は敵の最低四倍は必要だと言われている。


88 :名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 22:41:43 ID:88pYr5WMO

一対一を繰り返す場合、大きく要求される物は【戦い続ける体力】と【集中力】だ。

しかし一度に複数を相手取る場合、要求される物はさらに多岐に渡る。

簡単に例を挙げるが、全身凶器となる飛竜、純粋に脚も牙も爪も全てが二倍だ。それに加えて“どちらのモンスターに幾らダメージを与えたか”。モンスターを追撃する場合は“どちらの方が弱っているのか”その全てを正確に把握しなければならない。

だからこそロマネスク達が行おうとしている【角竜】ディアブロス同時狩猟は、どれだけ凄腕のベテラン狩人でもやりたがらない。

( ΦωΦ)「ふむ。出来れば同時にディアブロスと戦う様な状況は避けたいものであるな」

(=゚ω゚)ノ「まったくですよぅ」






しかしイヨゥの予感は最悪な事に的中した。


89 :名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 22:42:54 ID:88pYr5WMO

次の日の朝、ロマネスク達は巨大な砂嵐を目撃する。ただの砂嵐ではない。二つの嵐が駒の様にぶつかっては離れを繰り返す。そして、その衝撃が地響きとなって砂漠を揺らしていた。

( ΦωΦ)「………」

【角竜】ディアブロス、それが二頭。しかも自分の縄張りを荒らされて憤怒しているのか口からは黒い息を吐き出している。

状況は、どう見ても悪い。しかし更に最悪な事があった。

(*゚∀゚)「……ユクモの方に向かってるニャー」

( ΦωΦ)「そのようだな」


90 :名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 22:43:43 ID:88pYr5WMO

もっとユクモから離れた場所であれば、どちらかが弱るまで静観する事も出来たが、これだけ近付かれるとそれも出来ない。

( ΦωΦ)「行くしかない、のであるな」

(*゚∀゚)「ニャー」

(=゚ω゚)ノ「はいですよぅ」

駆け出した。彼らがここまで来たのはユクモを護る為。ここでみすみす奴等をユクモに近付ける訳にはいかない。

(#ΦωΦ)「うおおおおおおお!!!!!!」

鼓舞する様に雄叫びをあげる。狙うは、既に角が一つ折れたディアブロス。


距離が詰まっていくに連れ増してくる飛竜特有の威圧感。しかしユクモの英雄とまで呼ばれるロマネスクは、それを簡単に打ち払う。最初の一撃、これに全力を注ぐ。


二頭のディアブロスの注意が互いに向いている状態の今ならば、この攻撃は必ず成功する。


91 :名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 22:45:06 ID:88pYr5WMO

己のリーチのギリギリまで近付き、背後から相棒【雹砲】ウルクスレイを引き抜く。

(#ΦωΦ)「勝負なのである!!」


狙うは甲殻のない腹部。ここに叩き込む。


初撃、ディアブロスの身体を削ぎ取るように突きを放つ。そして間断なく突き上げ。


ここまでの連携は完璧、狩人になってから何千、何万と繰り返してきたロマネスクならではの隙の無い連撃。
しかし相手は飛竜。それも全長20mの大型。
その鈍い痛覚は、ロマネスクの連撃を全く気にする様子がない。


だが


(#ΦωΦ)「ハアァァアアアア!!!!!」


ここからがロマネスクの愛槍【ガンランス】の真骨頂。


92 :名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 22:45:59 ID:88pYr5WMO


(#ΦωΦ)「全開ッ!!撃ちであるっ!!!!!」




ウルクスレイの柄部分から枝分かれした砲身。そこから繰り出される【全弾砲撃】フルバーストである。


火を噴いたガンランス、堪らず片角のディアブロスは膝を付いた。


(#=゚ω゚)ノ「いよぉおおおお!!!!!」

透かさずイヨゥが、ペイントボールをぶつける。


(#*゚∀゚)「ニャーァアアアア!!!」


加えてツーの剣斧が、ロマネスクの傷付けた場所を寸分の違いなく追撃を加えた。


最初の一手は文句なく成功だ。


93 :名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 22:49:10 ID:88pYr5WMO

( ΦωΦ)「………」

ロマネスクは素早く次弾を装填する。油断なく盾を構えながら、咆哮に備えた。


『Ualaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!!!』

『Galaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!!!』


ディアブロス独特の長い咆哮。本来なら前転であったり、物陰に隠れたりしてやり過ごすのだが、ガンランス使いは、正面からそれを受ける。

(;ΦωΦ)「グヌゥ……」

音が振動となってロマネスクの左手を揺らす。だが、ロマネスクの身体にブレはなく、見事二頭のディアブロスの咆哮を受け切った。


94 :名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 22:50:21 ID:88pYr5WMO

ロマネスクの動きは機敏だ。淀みなく下半身から力を伝え、片角のディアブロスに得物を突き立てる。

(#ΦωΦ)「うおぉぉおおおお!!!!!」


しかし甲殻がなくとも、【砂漠の暴君】ディアブロス。突き刺さったのは、50Cm弱。

(;ΦωΦ)「っ!!やはりディアブロス、甲殻は無くともその硬さは飛竜随一かっ!!」


突き立てられたガンランスを、全く意に介さないディアブロス。寧ろ、焦ったのはロマネスクの方だった。突き立てたガンランスが、抜けないのだ。


95 :名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 22:51:15 ID:88pYr5WMO

さて、ここでガンランスという武器について簡単ではあるが説明しよう。


ガンランスの歴史は新しく、使われ始めたのは太刀や双剣といった武器よりも後の事になる。


所謂【花形】である太刀、双剣、大剣とは全くと言って良いほど運用思想が異なる。逆に言えば、やはり槍としての形状をしている為に、ランスとは少し似か寄る所がある。


まず守りに主眼が置かれているという点。


この点に於いて、先に挙げた【花形】である三種とは大きく異なる。


それに加えてガンランスによる斬撃は、斬り上げ以外ほぼ“突き”で行う必要があるという点だ。“斬撃”の概要に関しては【太刀】の説明の時に詳しく話そうと思うので、ここでは摘む程度にしておく。


『突き立てる』『突き貫く』『突き刺す』といった言葉があるように、皆のイメージでは得物で相手の体内を貫くと感じるだろう。しかし、これは狩人の用いる“突き”には当て嵌まらない。


96 :名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 22:53:52 ID:88pYr5WMO

まず解りやすい様に、ヒトを例に取って見てみよう。急所と呼ばれる『心臓』『肺』『腎臓』など、この辺りは皆に聞き馴染みのある部位だろう。


幾ら身体を鍛えようと、鍛えられない部位。だからこそ、それを急所と呼ぶ。だが、この考えは大きな間違いだと言わざるを得ない。


何故なら、これらの内臓を傷付けるためには、筋肉であったり肋骨であったりを全て刺し貫く必要があるからだ。


そして、それ以上に相手の体内から得物を“抜く”という事が一番の問題となる。


だからこそ、突きは一撃必殺の“博打技”と呼ばれるのだ。


だが狩人達が使う“突き”は、『刺し貫く』ではなく『突き削る』。


敵の身体を削ぎ取るための物なのだ。


97 :名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 22:54:46 ID:88pYr5WMO
さて、ここで話をガンランスの特性に戻す。


従来の突きと、狩人の突き。ガンランス使いは、敢えて従来の突きを行う。だが勿論、いくら狩人であろうとも先の例からは漏れない。

今ロマネスクが陥っている様に、抜けなくなる。


そんな事、彼は百も承知。


(#ΦωΦ)「甘いのであるッ!!!」

響き渡る砲撃音。ウルクスレイから放たれた【拡散砲】だ。超至近距離からの砲撃が、ディアブロスの腹部を焦がす。


そして、この砲撃は更なる追撃の狼煙でもある。


(#ΦωΦ)「ッ!!」


この砲撃により、今までディアブロスの腹に突き刺さっていたガンランスが抜けたのだ。これこそが【従来の突き】を可能にするガンランス、それもロマネスクが最も得意とする戦い方だ。


再び、切り上げ。そこから連撃の突きへと繋げていく。そして再び砲撃。


流れる様な動作。ロマネスクにとって、今の一連の動きは狩人になってからずっと磨き上げてきた物だ。


98 :名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 22:55:41 ID:88pYr5WMO

(=゚ω゚)ノ「ご主人様っ!!!」


背後から掛けられたイヨゥの叫びに、ロマネスクは咄嗟に身体を捻り、全力で前転した。


『Ualaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!!!』


通り過ぎていく、もう一頭のディアブロス。


( ΦωΦ)「ツー、頼む」

(*゚∀゚)「お任せニャー」

ツーは、その一言で自分が何をすべきか察した。猛烈なスピードで、先程突っ込んできたディアブロスに近づくと


(*゚∀゚)「ニャー、このマヌケー!そんな図体しててアイルー一匹も倒せないのかニャ?ん?」


その可愛いお尻を向け、挑発した。


99 :名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 22:57:59 ID:88pYr5WMO

非力なアイルーが、飛竜を馬鹿にする。そんな事をディアブロスは許さない。ディアブロスは決して寛大な賢君ではないのだから。


『Ualaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!!!』


(*゚∀゚)「その調子だニャー、砂漠の暴君。ツーが相手をしてやるのニャー」


ロマネスクの狙い通り。一頭のディアブロスは、今完全にツーに気を取られている。勿論、ロマネスクもツーだけでディアブロスと戦えるとは思っていない。しかし、今は何よりも時間だ。この弱っているディアブロスを、ツーが引き付けている間に倒してしまいたい。

( ΦωΦ)「ツー、耐えて欲しいのである」


ツーも正しく、主人の考えを理解していた。今、自分がしなければならないのは時間稼ぎ。ロマネスクが一頭を倒すまで、こちらに引き付けなければならない。


100 :名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 22:58:51 ID:88pYr5WMO


( ΦωΦ)「イヨゥ!あちらのディアブロスが近付いて来たら、すぐに知らせるのである!!」

(=゚ω゚)ノ「はいですよぅ!」


もう一匹のオトモであるイヨゥは、ロマネスクに張りついたまま二頭のディアブロスを注意深く見つめている。

イヨゥは、オトモアイルー達の中で力のある方ではない。寧ろ、飛び抜けて力が弱い。昔はアイルーらしからぬ語尾と、そのひ弱さが原因でアイルーの間では虐められていた程だ。


だが、その点を補って余るほど彼は優秀な頭脳を持っていた。


(=゚ω゚)ノ「ツーちゃん!ディアブロスを斬るなら尻尾を狙うんだよぅ!!首にはツーちゃんじゃ届かないけど、気を逸らすのが目的なら尻尾で充分なはずだよぅ!!!」


全体を見渡し、的確に今出来る最善の選択肢を伝える。こんな芸当が普通のオトモに出来るだろうか。否、出来るはずがないのだ。


101 :名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:07:33 ID:88pYr5WMO

ディアブロスを、単独で引き付けるオトモ、ツー。
そして、主人とオトモを万全の構えで補佐するイヨゥ。


この二匹の力が、【ユクモの英雄】ロマネスク=フェイトを今まで支え続けてきた。


102 :名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:08:15 ID:88pYr5WMO

( ΦωΦ)「ふう、流石はディアブロスなのである。しかし我らとて、負ける訳にはいかぬ。負けられない理由を抱き、お前達と戦う事を決意したのだから」


片角のディアブロスは、ロマネスクの言葉を最後まで聞く事なく、突進した。


( ΦωΦ)「全く、せっかちな王であるな」


しかし、これをロマネスクは難なく躱す。軽くステップを踏んでディアブロスの正面へ。ここで再び腹部へと刃を走らせる。
的確に、先程から傷付ている“その一点”へとウルクスレイを突き刺す。今までよりも一段と深く突き刺さる。


( ΦωΦ)(あと少し……あと少しなのである)


ツーの方は一見問題無い様だ。これが狡猾な【迅竜】ナルガクルガであったり、ずば抜けて知性の高い【火竜】リオレウスであったなら、すぐに見抜かれていただろう。

【角竜】ディアブロスだからこそ、戦い始めてからずっとツーはディアブロスを騙せているのである。加えて怒ったディアブロスの動きは速い。だが、如何せん真っ直ぐ過ぎるのだ。


以上の理由から、ツーはディアブロスから逃げ続ける事が出来ている。


103 :名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:08:45 ID:88pYr5WMO

これだけ聞くと、狩りは順調だと思えるだろう。だが本当のところ彼等に余裕などは存在しない。というより、寧ろロマネスク達は窮地に立たされているのだ。


オトモの弱点、それは体力に尽きる。


(;* ∀ )「ハァ……ハァ……。こっ、れは……きっついニャー」


104 :名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:09:21 ID:88pYr5WMO
















その限界は、唐突に訪れた。


105 :名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:11:17 ID:88pYr5WMO

(;=゚ω゚)ノ「ツーちゃん!!!!!」

(;ΦωΦ)「!?」

イヨゥの悲痛な叫びが、砂漠に木霊する。ツーの動きが不意に止まったのだ。
あれではディアブロスの格好の的、しかも意図した動きだとも思えない。


(* ∀ )「―――」


恐れていた事態が起こってしまった。砂漠に大の字に俯せるツーは、自らの限界まで逃げ続けた。だがアイルーの小さな体で、飛竜と根比べをすればこうなる事は当り前。
やっと動きを止めた標的に、雄叫びを上げ嬉々として突っ込んでいくディアブロス。


(#=゚ω゚)ノ「させないよぅ!!」


イヨゥは全速力でツーを抱え込み、地中に潜った。確かにディアブロスの突進は猛烈だが、不幸中の幸い距離は彼の方が近かった。


106 :名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:12:06 ID:88pYr5WMO

寸での所で、ツーを助けだしたイヨゥ。


それを見てロマネスクは“安堵の息”を吐いた。


そう、ユクモの英雄は一番してはいけない事をしてしまったのだ。


それは“安心”油断と言っても良い。


(メ;ΦωΦ)「グフゥ……!!」


片角のディアブロスが、ニヤリと嗤っていた。

深々と貫かれたロマネスクの脇腹からは、ドクドクと赤い液体が溢れていた。


107 :6―4:2011/12/18(日) 23:15:53 ID:88pYr5WMO

地中から出てきてイヨゥは、目の前の光景を見て絶句する。脇腹に大きな風穴を作った主人。その大きさからディアブロスの角に刺し貫かれたのだと分かった。

(;=゚ω゚)ノ「ごっ、ご主人様ッ!!」

イヨゥは、狩人を仕留め喜び狂う二頭のディアブロスを無視して駆け寄った。


(メΦωΦ)「イヨゥ……ツーは無事であるか?」

(=;ω;)ノ「はい、ツーちゃんは無事ですよぅ!ご主人様、すいませんよぅ!僕が勝手に離れちゃったから……僕のせいですよぅ!」

咄嗟に、起き上がろうとするロマネスクへ支えようとするが、手で制された。


(メΦωΦ)「戦いは、まだ終わっていないので、ある。我が輩は、まだ戦える」

(;=゚ω゚)ノ「無理ですよぅ!その傷じゃ、満足に動ける訳ないですよぅ!!」


誰が見ても満身創痍。死に体と言っても過言ではない。見ればロマネスクの脇腹からは大量の血液、顔色も青白くなっている。


だが、そうであっても


ロマネスクは己の足で立ち、こう言い切った。


108 :名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:16:49 ID:88pYr5WMO





(メΦωΦ)「我が輩は狩人である!この身は、ユクモを護る盾!!この身朽ちようとも、我が輩は逃げる事を是としない!!!」







_


109 :名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:17:54 ID:88pYr5WMO

これが、今なおユクモで英雄と呼ばれるロマネスク=フェイト。その本質。
身体を刺し貫かれようとも、彼は退く事を是としない。誇り高きユクモを護る盾。


『Galaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!!!』


―――だからこそ


ディアブロスの突進を受けて尚、彼は一歩も下がらなかった。
ずっと待っていた瞬間。片角のディアブロスが、無防備に慢心した突進を繰り出すのを。


(メΦωΦ)「待って、いたのである……この時を……」


ロマネスクの愛槍【雹砲】ウルクスレイ。それが突き刺さる。
いや“突き刺さる”という言葉では足りない。“突き抜けた”のだ。


111 :名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:22:08 ID:88pYr5WMO

ずっと狙い続けた腹部の傷。少しずつ、傷口を広げていった。そこに、ディアブロスの突進の勢いを利用し突き刺した。


時速80kmで疾走するディアブロス、その胸を正確に突く。間違いなくロマネスクにしか出来ない技である。


『Galaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!!!』


しかし暴君は止まらない。今ディアブロスを突き動かしているのは、生物としての本能だ。


ディアブロスは、前腕を振り上げ忌々しい狩人の身体を押し潰そうとする。


112 :名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:23:03 ID:88pYr5WMO


―――だが





『ユクモの狩人を舐めるなあぁぁぁああああ!!!!!!!!』


113 :名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:24:18 ID:88pYr5WMO

太刀にも、大剣にも、他のどんな武器にもない、ガンランスだけの固有兵装。強靭な飛竜の肉質ですら無視する、問答無用の一撃。


(#ΦωΦ)「オオオォォォオオ!!!!!!」


―――対竜種用 竜撃砲


圧倒的火力も以て、ディアブロスを体内から焼き尽くす。


114 :名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:25:26 ID:88pYr5WMO

『Guohooooo………』


今までの雄叫びとは、全く質の違う悲鳴。そのままディアブロスは、倒れ臥した。


(メΦωΦ)「……まずは一頭、なのである」


ロマネスクに油断は無い。

だがディアブロスは、まだ一頭残っている。ロマネスクの身体は既に満身創痍。状況は言うまでもなく最悪である。


115 :名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:26:08 ID:88pYr5WMO

(メΦωΦ)「イヨゥ、ツーは?」

(*゚-゚)「ここにいるのニャー」

ロマネスクに呼ばれ、すぐに地中から出てきたツー。体力は、まだ完全に戻っていないのか、時折肩で息をしている。


同胞が倒され、動揺を隠せないディアブロスが動かないのを見て、ロマネスクは言った。


(メΦωΦ)「ツー、イヨゥ、お前達は逃げろ」

ピク、とツーの猫耳が揺れる。


116 :名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:26:59 ID:88pYr5WMO

(* ∀ )「……なんでニャ?もうツーはいらない子なのかニャ?」

予想外の言葉に、ツーは身体を震わせて尋ねる。

(メΦωΦ)「ツー、お前は充分にやったのである。あのディアブロス相手に、何時間も、逃げ続けたのである。その活躍、見事としか言い様がない。充分、我が輩のオトモとして尽くしてくれたのである」


主人の労りの言葉。しかしツーが今聞きたいのは、こんな言葉ではなかった。


オトモとは主人と共に生き、主人の為に死ぬ。


(* ∀ )「イヤニャー!ツーは、ご主人様と一緒に死にたいのニャー!!」


普段からお転婆だの、口が悪いだの、敬意が足りないと口酸っぱく嗜められていた彼女。


だが彼女は、心から自分の主人を愛していたのだ。それはオトモ特有の刷り込みによる敬愛だったかもしれない。苦楽を共にした情なのかもしれない。


だが、それは紛れもなく彼女だけの、ツー自身の想いであった。


117 :名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:27:51 ID:88pYr5WMO

(メ#ΦωΦ)「聞き分けよッ!!!!」


だがロマネスクは、ここに来てその想いを否定した。


(* ∀ )


怒鳴るのも辛いのか、ロマネスクは大きな血の塊を吐いた。だが、それでも喋るのを止めない。

(=゚ω゚)ノ「ご主人!」

なんとかイヨゥも出血を止めようと、出血元を強く押えているのだが、効果は見られない。

(メΦωΦ)「イヨゥもツーも、今まで良く我が輩を支えてくれた。だが、それも此処までなのである。今日も以てお前達との契約を切る」

(;=゚ω゚)ノ「ご主人様!」

『Ualaaaaaaaaaa!!!!!!』


主従の繋がりを断ち切る様に、残されていたディアブロスか吠えた。
そして、その巨体を地面へと潜らせる。


ロマネスク達に緊張が奔った。


118 :名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:28:42 ID:88pYr5WMO

(メΦωΦ)「……お前達は、これからのユクモを支えていく若者達の導き手となって欲しいのである」

(* ∀ )「……」

(= ω )ノ「……」


―――これが、不甲斐ない主人からの、最期のお願い、なのである






( ΦωΦ)『ツー、お前が無事で良かったのである』


120 :名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:29:35 ID:88pYr5WMO


(*;∀;)「ごしゅじ……」

ツーは、最後までその言葉を発する事が出来なかった。ツーの小さな身体が、大きく投げ飛ばされたからだ。これには“ロマネスク”も驚きを隠せなかった。





(=;ω;)ノ「ハァ……ハァ……」





ツーをあそこまで遠くに投げ飛ばしたのが、あの“非力な”イヨゥだったからだ。


121 :名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:30:29 ID:88pYr5WMO

暫しの放心状態を経て、我に返ったツーは叫ぶ。

(*;∀;)「ニャ、イヨゥ!なんでツーを投げたのニャ!?」

それに、イヨゥは裂けんばかりに叫び返した。


(=;ω;)ノ「ツーちゃんは生きるよぅ!!生まれてきたしぃちゃんの為にも!ご主人様の為にも!!」


小さな身体で、精一杯の大声。しかし、そこには確かにイヨゥの魂が込められていた。

(メΦωΦ)「……イヨゥ」

この小さなアイルーの精一杯の主張、ロマネスクは否定する事が出来なかった。いや、誰にも否定させはしない。いつも臆病で、自分を隠してきたイヨゥが、やっと自分の意志を主張したのだ。

(メΦωΦ)(誰にも、それを否定させはせぬ)


イヨゥは続けて、こうも叫んだ。

(= ω )ノ「変な口癖で、いつもイジメられてきた僕を助けてくれたのはご主人様だよぅ。いつか恩返しがしたい、そう思っていたんだよぅ。力が弱くて、不器用で、本当にどうしようもなかった僕を救ってくれたご主人様に……僕はここで報いたいよぅ!」


122 :名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:31:05 ID:88pYr5WMO

ディアブロスが地中に潜った時は、決して大きな物音を立ててはならない。視界も利かない地中な中で、奴は耳を頼りに獲物を狙うからだ。ディアブロスと戦うなら絶対に忘れてはいけないルール。

それを頭の良いイヨゥが、忘れているはずがなかった。


波紋の様に広がる地響き。そして、それが収まった瞬間【角竜】ディアブロスは、再び地中からその巨躯を躍らせ顕現した。


狙いは言うまでもなく、イヨゥ。


(#=゚ω゚)ノ「イヨォォォオオオ!!!!」


しかしイヨゥは、軽やかな跳躍でそれを躱す。その動きに速さはない。ただ巧さだけがあった。


(=゚ω゚)ノ「ご主人様、僕の初めての我が儘を許して下さいよぅ。ツーちゃん、僕の初めてのお願いを聞いて欲しいよぅ」




―――僕はただ、君を護りたいんだよぅ


123 :名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:32:01 ID:88pYr5WMO

(メΦωΦ)「行け、ツー。主人と仲間のお願い聞き届けてくれ」


(* ∀ )「ツーは……ツーは……」


『にゃあああああああああああああああああ………!!!!!』


ツーは、駆け出した。ユクモに向かって。どうしようもなく、ここで一緒に死にたい自分を、自らの意志で押し殺し、何度も転げ、心臓が警笛を鳴らそうとも、ツーは逃げ出したのだった。


124 :名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:32:56 ID:88pYr5WMO
(メΦωΦ)「……全く、最後まで手のかかる娘だったのである」

視界から小さくなっていくツーを見て、そっと微笑んだ。
傍らには、イヨゥ。

(=゚ω゚)ノ「全くですよぅ」

(メΦωΦ)「イヨゥは、本当に良かったのであるか。ここに残って」

オトモは、軽く首を振って努めて明るく言い放った。

(=゚ω゚)ノ「勿論ですよぅ!!主人の命令を聞くのがオトモの生き甲斐なら、主人の為に最期まで戦うのもオトモの生き甲斐ですよぅ!!

―――それに何より」


(=^ω^)ノ「ツーちゃんを護りたかったんですよぅ」


125 :名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:34:15 ID:88pYr5WMO

ロマネスクは、ふっと微笑んだ。種族の違いはあろうと、やはりイヨゥも“男”だという事か。


( ΦωΦ)「―――イヨゥ“秘薬”を渡せ」

(;=゚ω゚)ノ「えっ!?でも、あれは……」

(メΦωΦ)「分かっておる。だが、このままでは奴を倒す事は叶わぬ。それならば、ここで使うしかあるまい」


ロマネスクの言う秘薬。この世界に飲むだけで、傷付いた身体が治るような便利な物は存在しない。
滋養を高めたり、疲れを感じさせにくくする程度のものだ。
秘薬とて同じ。飲めば傷が癒える訳ではない。


ただ痛みをぼかす。痛点を鈍くする。


現在でいう“モルヒネ”の様な役割を持っているだけだ。

それは死を待つ者だけに許される一種の麻薬である。


126 :名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:35:06 ID:88pYr5WMO

(メΦωΦ)「ふぅ……イヨゥ。では、参ろうか」

ロマネスクは、左手に持っていた盾を捨て、槍を両手で構えた。

(=゚ω゚)ノ「はいですよぅ」

二人の視線の先には、【角竜】ディアブロス。今尚猛り狂う飛竜は、その獰猛な牙を剥き出しにし、二人に襲いかからんと身を沈めている。


ロマネスクとイヨゥ、最期の戦いがどの様な物だったのか、誰も知らない。
知ってる者は、誰一人として居ない。


ただユクモの狩人達が、全身を傷だらけにして帰ってきたツーを見て、慌てて砂漠に向かった所
尻尾を斬られ、片角を折られて絶命していたディアブロスと、それと折り重なる様にして立ったまま冷たくなっていたロマネスク。


そして、少し離れた所に小さなオトモが倒れていた。その表情には、小さな笑みが浮かんでいたという。


127 :名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:35:53 ID:88pYr5WMO

ユクモに帰ったツーだが、辿り着いた瞬間にその場で倒れ三日三晩眠り続けた。人々は、ロマネスクの狩りが成功したからこそツーが帰ってきたのだと思った。主人の為に生きるオトモが、主人を置いて帰ってくるなど、誰も想像していなかったからだ。


ツーは、村の英雄のオトモとして皆に称えられた。主人と共に“最後まで”戦い、生きて帰ってきたオトモとして。


三日後、目を覚ましたツーが見たのは、ユクモの平穏無事を祝い喜ぶ、村の者達の姿だ。


128 :名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:36:20 ID:88pYr5WMO





その時、彼女は何を想ったのだろうか。


主人と大切な仲間を失った彼女に、その煌びやかな祭りは、どう映ったのだろうか。


それは、彼女にしか分からない。


129 :幕間:2011/12/18(日) 23:37:41 ID:88pYr5WMO

ユクモの村から少し離れた場所。そこに一際目を引く大理石造りの大きな建物があった。

(゚、゚トソン「キュート様、Gの狩人二人に正式な依頼を受領して頂きました」

そこに二人の女性の姿があった。一人は、トソン。背中に大きな楽器の様な物を背負っている。

そしてもう一人。綺麗な純白の絹織物を来て、髪に大きな装飾を付けた少女。齢は二十歳弱くらいだろう。少女と女性の境目、その曖昧な境界線にいる彼女は、文句なく美しく、可憐であった。


o川*゚―゚)o「ご苦労様、トソン」


130 :名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:38:34 ID:88pYr5WMO

キュートは、疲れた顔をした侍女トソンを労るように柔らかく微笑んだ。

(゚、゚トソン「私に気遣いは無用です。キュート様こそ、大丈夫なのですか?彼のユクモ神が現れてから、ろくに睡眠も取らず、騎士様方の説得を試みておられると聞いておりますが」

キュートは、トソンの言葉に首を振り、私よりも今は狩人様達の心配をするべきてず、と言った。


o川*゚―゚)o「フォックス様と貴方が出られれば、状況も変わったでしょうに。私の無能故に狩人達に危険を強いる事になってしまいました」

(゚、゚トソン「……大丈夫です。ギコも理解している様でしたから」

余り感情を表に出さないトソンだが、長年傍にいるキュートには、今のトソンの気持ちが痛い程伝わってきた。

o川*゚―゚)o「ごめんね、トソン。貴方がギコ様を大切に想っているのは、私もよく知っているわ」

(゚、゚;トソン「べっ、別に私はギコを好きだなんて言った事なんてありませんよっ!!それにギコは弟の様なものですし……」


ふふっ、キュートは本当にギコ様の事が大切なのね、と微笑んだ。


131 :名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:39:37 ID:88pYr5WMO

o川*゚ー゚)o「そういえば、もう一人。ドンドルマより来られたGの方はどうでしたか?」

(゚、゚トソン「あの時の狩人ですか?……正直、間近で見た時は少し拍子抜けでした。実際、姫様と洞窟で彼の戦いを見ていなければ、Gの称号も嘘なのでは、と疑っていたと思います」

トソンの余りにも率直な意見を聞いて、キュートに笑みが零れた。

o川*゚ー゚)o「ふふっ、確かにあまり大きな方ではなかったものね」


キュートは、掛けられていた上着を羽織ると、大きなテラスへと続く硝子造りの扉を開け放った。

強く吹き込む冷たい風。

o川*゚ー゚)o「でも、何故か私はあの方を信じられる。そう思うのです。理由は分からないのですが、この身に流れる血でしょうか。それが“彼を信じろ”と私に囁くのです」

不思議ですね、彼女は楽しげに呟きながら片膝をついた。それに習いトソンも慌てて同じように片膝をつく。


132 :名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:40:18 ID:88pYr5WMO

o川*ーーー)o「……父様、母様、ユクモをお守り下さい」

願いは、自らの両親へ。キュートと、その姉を護り、死んだ二人へ。


o川*ーーー)o「姉様、生きていて下さい」


トソンは、この祈りを毎朝キュートが行っているのを知っていた。亡き両親へ、そして存命かも分からぬ自らの姉。


133 :名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:41:02 ID:88pYr5WMO






o川*^ー^)o「……参りましょう、トソン。今日も、私達の歌を届けに」

(-、-トソン「はい。ご一緒致します」


吹き込む風が、優しく二人を包み込んだ。


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