('A`)ドクオと飛竜と時々オトモのようです6−6   前のページへ] 戻る [幕間へ

201 :名も無きAAのようです:2011/12/20(火) 00:00:49 ID:3OkAeC82O




―――【対飛竜用 閃光玉】





ギコも余りの光量に呻くが、大剣で視界を隠していたため直ぐに持ち直す事が出来た。
突然の光にのたうち回るジンオウガを尻目に、ギコは後へと下がる。


(,,゚Д゚)「助かったぞゴルァ」

('A`)「気にするな」


閃光玉を投げたのはドクオだった。

閃光玉というのは、皆に分かるように言うならばフラッシュグレネードだ。
人間より遥かに視力の良い獣に、その光量は天敵と言っていい。
現に神の名を持つジンオウガですら、それにのたうち回っているのだ。


202 :名も無きAAのようです:2011/12/20(火) 00:01:40 ID:3OkAeC82O

('A`)「アイツが従来の飛竜種の様に視覚を頼りにしているのは分かっていたからな」


ドクオは事もなげに言うが、初見の相手にそこまで見抜く事が出来る狩人が居ようか。今となっては狩人大全に殆んどの習性が載っているが、それも何十人もの狩人の犠牲の上に調べられた物だ。

(,,゚Д゚)「……お前は、本当に恐ろしい男だぞ」

ギコの感じた恐怖は無理からぬ事だ、だがギコ以上にドクオの異常性を感じている存在。しぃだった。


(;*゚ -゚)「あの人、本当におかしいのにゃ。なんであんなに普通にしてられるのにゃ」

その呟きを横で聞いていたツーも、内心同意する。


思えばツーにとっても、ドクオは不思議な事ばかりだった。


203 :名も無きAAのようです:2011/12/20(火) 00:02:37 ID:3OkAeC82O

最初はただの馬鹿な旅人だと思った。ほっそりとした体格に、なんの装備も身に付けていなかったのだから。
それなのにドクオは、ジャギノスとの戦いに割って入った。たった一匹のアイルーを助けるためにだ。

その後のアオアシラとの戦いは圧倒的だった。全く情報のない状態で、防具も着けづに傷一つ負う事なく撃退したのだ。

ドクオはそれを誇るでもなく、ただ「名前を聞き忘れたから戻っただけ」だと言った。

出会ったばかりのアイルーのために、そんな無茶をする人間だからこそ、ツーは“あの時”から誰にも主従しないというスタンスを崩し、彼に付いていった。


(*゚∀゚)「そういえば……」

【青熊獣】アオアシラも【毒怪竜】ギギネブラも、【彩鳥】クルペッコも、ドクオは初見で相手をしていた。


204 :名も無きAAのようです:2011/12/20(火) 00:03:12 ID:3OkAeC82O

余りの手際の良さに、ツーは意識していなかったが。それにリオレウスも、ユクモとドンドルマでは動き方も全く異なると聞く。


(;*゚∀゚)「ニャー……」


落ち着いて考えると、ドクオは今まで何という無茶をして来たのか。


更に驚愕するのは、ドクオはデレやツーに危害が向いた時、必ず完璧にフォローしているのだ。加えて言えば【空の王】リオレウスの討伐時も囮という役割を単独で果たしている。


危険な役割は全てドクオ自身で行ってきたのだ。


ベテランとされる狩人ほど、自分にリスクを負わされる事を拒む。長年の経験から、如何にそれが危険なのかを理解しているからだ。

誰よりも危険性を理解しているはずのドクオ。狩人は『仲間を切り捨てられる』様になってこそ一流だとはよく言うが。


それでもドクオは切り捨てた事がなかった。


205 :名も無きAAのようです:2011/12/20(火) 00:03:52 ID:3OkAeC82O

(,,゚Д゚)「どうする、ドクオ。奴にはもう後脚の死角は通用しねぇぞ」

ギコの先程の行動からも、それは明らか。

('A`)「なら、一度待つ。向こうから仕掛けて来て貰った方が、やりやすい。それに手札を知らない相手に、自ら手を晒すのは悪手だ」


油断なく距離を保ちながら、ドクオは双剣を構える。それに習いギコも大剣を構えたまま後へ徐々に下がって行った。


ドクオには予感があった。ジンオウガの様に自分の力を溜めたりするようなモンスターは、一気にその力を解放し、爆発的に動きだす。


('A`)「ギコッ!!」

(,,゚Д゚)「ああっ!」


206 :名も無きAAのようです:2011/12/20(火) 00:04:34 ID:3OkAeC82O

恐ろしい事に、ここでもドクオの予感は的中した。ジンオウガは、一切助走を付けないまま飛び掛かってきたのだ。狙いはギコ。身体全体を使い、その動きは驚くほど速い。


(,,゚Д゚)「来ると分かっていればっ!」


ギコは横っ飛びで、それを避けた。一度大剣を背に収め、突っ込んできたジンオウガを見据える。


だが


(;,,゚Д゚)「居ないッ!?」


しかしギコの視線の先にジンオウガは居ない。

(,,゚Д゚)「くっ!?」

目の前に現れたジンオウガ、咄嗟に引き抜いた大剣で押さえ付けるように防ぐ。ギコの武器が太刀やハンマーならば、この時点で終わっていただろう。

(;,,゚Д゚)「クソッ、こいつ急にスピードが……それに重い!」


207 :名も無きAAのようです:2011/12/20(火) 00:05:38 ID:3OkAeC82O

ジンオウガの行動を防いだギコだが、ジンオウガにどこで攻撃されたのか分からなかった。確かにジンオウガの動きは速い、だがそれ以上に回転しながら突っ込んできたジンオウガ。その勢いと遠心力は、ジンオウガの体当たりを、一撃必殺の域にまで押し上げる。


('A`)「………」


ドクオは思考する。現時点でジンオウガに与えた攻撃は、自分とツーの後脚への攻撃。それにギコとしぃの与えた頭部への打撃と斬撃。特にギコの与えた攻撃は、その一撃で大抵のモンスターなら絶命するレベルだ。という事は、ジンオウガの耐久力は飛竜種並と考えるべきだ。


次にジンオウガの攻撃オプションについて。まず目に付くのは、やはり発達した前脚。加えて先程ギコに放った飛び掛かり。そして尻尾による攻撃。この四つが実際に見た攻撃。


('A`)「やはり前脚の硬さも確かめておくべきか」


駈け出す。ギコに気を取られているジンオウガに後から近付く。ギコもドクオが来たのを確認して、攻撃に転じる。
荒ぶるジンオウガの尻尾を両断する様に、真一文字の斬撃。

(,,゚Д゚)「……なんて奴だ」

ギコの驚愕。ジンオウガは尻尾を丸める様にしてギコの大剣を受け止めた。
紙をナイフで切るとき、弛んだ状態で切るのは難しいが左右に張った状態ならば切りやすいのと同じだ。


208 :名も無きAAのようです:2011/12/20(火) 00:06:53 ID:3OkAeC82O

('A`)「ちょいと失礼する」


ドクオは、最速で斬り込む。確認する様に一撃、一撃を放つ。


('A`)「硬くはない、だがしなやかな強さがあるな」

ジンオウガには飛竜種の様な硬い鱗や甲殻はない。だが強靭な筋肉を纏う前脚は、いくら斬り付けても血が出てこないのだ。


(,,゚Д゚)「これならどうだぁ!!」


今度はギコが前脚を狙う。爪を磨り潰す様に、大剣を平にして叩きつけた。
ジンオウガは、たまらず後に下がる。


やはり戦いは数だ。如何なジンオウガといえどGの狩人二人を完全に抑える事は出来ない。


しかし比較的有利に運んでいるギコとドクオにも、一つ頭を悩ます事があった。


(,,゚Д゚)「ドクオ」

('A`)「……あぁ。決定打に欠ける」

ジンオウガの素早い攻撃も一人が陽動し、もう一人が攻撃するというやり方を行えば、然程恐くはないだろう。
しかし、そうなると体力に不安が出てくる。


209 :名も無きAAのようです:2011/12/20(火) 00:07:33 ID:3OkAeC82O

この硬直した局面を打開するには


(*゚∀゚)「ドクオ!」

(*゚ー゚)「ご主人様!」

オトモだった。

ここまで陰に潜んでいた二匹だが、彼らも二人の戦いを黙って見ていた訳ではない。

アオアシラ戦でも使ったジビレ罠。大型モンスターを拘束する為に開発されたそれは、長年狩人に愛用されてきた信頼のある物だ。


('A`)「ギコ!」

(,,゚Д゚)「あぁ!」

ジビレ罠の拘束時間は、モンスターの体力に左右されるが20秒〜30秒は堅い。
地面に置かれたそれは、ツーとしぃによって入念に落ち葉で隠されていた。


210 :名も無きAAのようです:2011/12/20(火) 00:09:01 ID:3OkAeC82O

('A`)「ギコ、俺の武器では奴にダメージを与えずらい。お前の武器が鍵だ」

(,,゚Д゚)「おう」


二人が作り出した時間を無駄にする事なく、設置したジビレ罠。それを最も有効に活用するには、ギコの大剣が一番だ。

ジンオウガが動きを止めた瞬間に、最大の一撃を食らわせる、ギコの柄を握る手が堅くなる。


('A`)「来い、ジンオウガ」

左右へと身体を振りながら、見事にジンオウガをコントロールする。

(,,-Д-)「……」

肩幅少し広めに足を広げ、腰を捻りながら大剣を振り上げる。
目を閉じ、精神を集中する。


211 :名も無きAAのようです:2011/12/20(火) 00:09:57 ID:3OkAeC82O

(*゚∀゚)「オレっち達も出来る限りの一撃を与えるのニャー」

(*゚ -゚)「ツーに言われなくても分かってるのにゃ」

ドクオの距離の取り方は完璧だ。ジンオウガが追いたくなる絶妙な距離を保ちながら下がっていく。


そして、ドクオが一気に跳んだ。


『Guohoooooo!!!!!!』


次いで起こったジンオウガの唸り声。成功だ、直ぐ様ツーとしぃが攻撃を繰り出す。

(#*゚―゚)「にゃああぁぁぁあああ!!!!!」

(*゚∀゚)「くたばるニャアァァアア!!!!」


しぃの鎚はジンオウガの頭を揺さ振り、ツーの剣斧が前脚に突き刺さった。


212 :名も無きAAのようです:2011/12/20(火) 00:10:53 ID:3OkAeC82O

ジンオウガが解放される様子はない。ジビレ罠に仕込まれた数百匹の雷光虫が、光を発しジンオウガを包んでいる。このままドクオが出来る限りのダメージを与え、ギコがトドメを刺す。

ドクオには、はっきりとそのビジョンが浮かんでいた。


―――しかし


('A`)(……気持ち悪いな、この違和感)


ドクオもツーと同じように前脚に潜り込み、無数の斬撃を放つ。予定調和のはずだ。だが、そんな中でドクオは何とも言えぬ違和感を感じていた。


だが、ジンオウガの動きが止まる好機。それを見逃すわけにはいかない。


213 :名も無きAAのようです:2011/12/20(火) 00:12:12 ID:3OkAeC82O

('A`)「……なんだ?」


ジビレ罠に掛かりながらも、必死に動こうとするジンオウガ。

('A`)「!?」

その顔には笑みが浮かんでいた。


反射的にドクオは下がった。

(;'A`)「ギコ!!逃げろッ!!コイツ、ジビレ罠を―――」






吸収してやがる。






続きは言葉に出来なかった。


214 :名も無きAAのようです:2011/12/20(火) 00:12:54 ID:3OkAeC82O
ジンオウガの目の前で力を溜めていたギコ。


(,, Д )「グッハッ……!!」


避けられる筈が無かった。吹き飛ばされるギコ。その距離8m。耳を塞ぎたくなる様な音が響き渡った。


('A`)「ギコッ!!」


直ぐにでも駆け付けたかった。だが、ここでジンオウガに背を向ける事は出来ない。
グッと堪えてジンオウガと向かい合う。

(#*゚∀゚)「……」

ツーは、ギコの穴を埋めるべく前に出た。

(;*゚ -゚)「ご主人様!」

しぃは、己の主人へと駆け寄る。


215 :名も無きAAのようです:2011/12/20(火) 00:14:06 ID:3OkAeC82O

(,, Д )「……畜生、なんで……」

ジンオウガにシビレ罠は効かなかった。冷静に考えれば可能性として浮かんだはずだ。ドンドルマにもシビレ罠が効かないモンスターは何種類もいる。
だが普通そういうモンスターは、シビレ罠を通り抜けるのだ。
しかしジンオウガは、確かに拘束されていた。


その違いが、ドクオの読みに誤りを呼んだ。


('A`)(……なにが今までの知識を捨てて柔軟に対応、だ)


強く唇を噛む。ツーっと血が垂れる。今は少しでも痛みを感じていたかった。


216 :名も無きAAのようです:2011/12/20(火) 00:14:52 ID:3OkAeC82O

(*;―;)「ご主人様……足が……」


ギコの足が普通では有り得ない方向に曲がっていた。医療知識のないアイルーにも、明らかに折れていると分かった。ジンオウガの強靭な前脚は、ギコの下半身を捉えていた。


ギコの実力を以てすれば、充分避ける事が出来た一撃だった。だが、目を瞑っていたのが悪かった。


狩人から信頼され、長年愛用されてきたジビレ罠だったからこそ、その安心感がこの状況を招いてしまった。

(,, Д )「ちくしょ……油断しちまった……」

ジンオウガによって折られた左足。骨が肉からはみ出している。傷口は、真っ白な脂肪が見られるほど深く、直ぐに赤く染まっていく。夥しい量の出血。


(*; -;)「ご主人様ッ!!!!」


響き渡る、しぃの悲鳴。彼女は未だ、この光景を受け入れられずいた。
彼女は震えながら、己の主人の名を呼ぶばかり。
その悲鳴は、ツーの心を強く締め付けた。


217 :名も無きAAのようです:2011/12/20(火) 00:15:43 ID:3OkAeC82O

蘇る記憶、脇腹に大きな風穴を作ったロマネスクの姿が浮かんできた。
今のしぃが、あの時の自分に重なる。


―――そして


('A`)「ツー、下がれ。しぃと一緒にユクモへと帰るんだ」

ピクリ、とツーの猫耳が揺れた。聞きたくなかった、その言葉。


218 :名も無きAAのようです:2011/12/20(火) 00:16:41 ID:3OkAeC82O

(;*゚∀゚)「なっ!?なんでニャ!?」

('A`)「しぃだけじゃ、ギコをユクモまで連れ帰れないだろう。それにギコの出血、時間が勝負だ」


ドクオの言葉は至極当然。寧ろ、アイルーが怪我人を搬送するのは当たり前の事だ。それを分からないツーではなかった。


―――だが、これでは


まるであの時の焼き増しではないか。
ツーの胸に様々な感情が入り混じる。


219 :名も無きAAのようです:2011/12/20(火) 00:17:54 ID:3OkAeC82O

('A`)「しぃ!担架に乗せてギコをユクモまで連れていけ」

(*;ー;)「……わっ、わかったのにゃ」


(* ∀ )


沈黙するツーを尻目に、ドクオとしぃは準備を始める。ドクオは、ジンオウガを引き付ける為に、今までの待ちを止め、かなり攻撃に割合を割いた戦い方をしている。
しぃも出来るだけ慎重にギコの傷口を包帯で圧迫し、極力動かさないよう担架に乗せる。

(*゚ -゚)「ツー!早く手伝って欲しいのにゃ!」

如何な、ドンドルマより優れたオトモと言えど大人一人を運ぶのは簡単ではない。ツーの協力は必要不可欠だった。


220 :名も無きAAのようです:2011/12/20(火) 00:18:55 ID:3OkAeC82O












しかし、ツーは未だ動けないでいた。












_


221 :名も無きAAのようです:2011/12/20(火) 00:19:59 ID:3OkAeC82O

(* ∀ )「またツーは置いていかれるのかニャー……そんなのは、ツーは……」

そんな呟きが零れた。


(*;∀;)「ツーは嫌なのニャッ!!!!最後まで“ご主人様”と戦いたいのニャッ!!!!」


あの時、最後まで言わせて貰えなかった言葉。ツーは、変えたかった。過去を。だからこそ、今までドクオに対して一度も使わなかった“ご主人様”という言葉を使った。


―――だが、それを


('A`)


―――ドクオは


『俺はお前の主人になった覚えはない』


(* ∀ )「!!」


222 :名も無きAAのようです:2011/12/20(火) 00:20:50 ID:3OkAeC82O

最も残酷な言葉で否定した。
確かに主従の誓いはしていない。ツーがドクオに一方的に懐いていただけで、ドクオからツーに『狩りに付いてこい』と言った事も無かった。


ツーが付いてくる事に、何も言わなかっただけだった。







('A`)「ギルドに仕えるアイルーなら、その本懐を果たせ」


223 :名も無きAAのようです:2011/12/20(火) 00:21:38 ID:3OkAeC82O

ツーは、弾ける様に駆け出した。しぃも慌てて準備を終える。何も口にせずとも、二匹の息は完璧にあっていた。ギコを乗せた担架が、一切揺れる事なく持ち上がった。

(* ∀ )「………」

(;*゚ -゚)「ツー……」

しぃも、先程の一連のやり取りを見ていただけあり、ツーを心配そうに見つめていた。


先程のドクオの一言。どれほどツーを傷付けただろう。想像だに出来ない。
ツーからドクオの話を辟易する程聞かされていた彼女には、なんと声を掛ければ良いのか、全く分からなかった。


しかし、今ツーの心配をする余裕は彼女に無い。


(,, Д )「………」


彼女にも守らねばならないモノがあるのだから。


(*゚ -゚)(必ず助けます、ご主人様……)


224 :名も無きAAのようです:2011/12/20(火) 00:22:39 ID:3OkAeC82O


―――

――




(-A-)「ふぅ、行ったか」

溜め息を吐くドクオ。目の前にはジンオウガ。膠着状態は、まだ続いていた。
ツーが抜けた穴も、ドクオは完全に埋めていた。


【雷狼竜】ジンオウガ、神と謳われるモンスター相手にたった一人で、だ。


225 :名も無きAAのようです:2011/12/20(火) 00:23:30 ID:3OkAeC82O

('A`)「ふんっ」


今まで、ギコ達の方にジンオウガが向かわない様に、かなりのインファイトを挑んでいたドクオだったが、ここで再び距離を取った。
先程から執拗に狙い続けた前脚、ジンオウガも望むところとばかりにドクオを睨み付ける。


ジンオウガは飛竜種を含めた全固体の中でも、脅威の寿命を誇る。生まれた年も分からない伝説にまで残っているのだから。
そして、その寿命はジンオウガに知能を与えた。


極めて人間と同レベルの、高い知能だ。


この何百年間、ジンオウガは様々な物を見てきた。飛竜達の生存競争、人間の共生。
それは、人間の言葉をある程度理解出来るようになるには、充分過ぎる程の時間だった。


226 :名も無きAAのようです:2011/12/20(火) 00:24:31 ID:3OkAeC82O


('A`)「なぁ、ジンオウガ」

ジンオウガは驚く。自分を見て雄叫びや悲鳴を放つヒトと出会った事はあったが、こんなに淡々と、語り掛けてくる者は初めてだ。


('A`)「ジンオウガ、俺はな―――」


227 :名も無きAAのようです:2011/12/20(火) 00:25:49 ID:3OkAeC82O











―――絶望的なまでに“モテない”のさ






空気が凍った。


228 :名も無きAAのようです:2011/12/20(火) 00:26:22 ID:3OkAeC82O

何を言っているのか理解出来ないジンオウガは、ただ唸るだけで応えた。


ドクオの独白は尚も続く。


('A`)「ドンドルマに居た頃にはさ、もう目も当てられない位、モテなかった。顔を見て泣き出すような子も居たよ。笑えるだろ?」


目の前の男から、戦意が失せていくのを感じた。もうこのまま消えてなくなりそうな気配だった。


229 :名も無きAAのようです:2011/12/20(火) 00:27:24 ID:3OkAeC82O

('A`)「そんな俺だから、友と呼べるような人間は少なかった。二十年以上ドンドルマに住んで、両手で足りる程の友人しか出来なかったよ。
それでも良かった。俺みたいな暗い奴と友達になってくれる酔狂な奴。そいつらを誰よりも大切にしようと決めてた」


230 :名も無きAAのようです:2011/12/20(火) 00:28:00 ID:3OkAeC82O
('A`)「ジンオウガ、お前のいるユクモは本当に良い所だよ。お前が何百年も居座りたくなる理由が分かる。ここは何よりも暖かいな。
人も。
気候も。
温泉だってさ」


231 :名も無きAAのようです:2011/12/20(火) 00:28:58 ID:3OkAeC82O

('A`)「こんな俺に、たった数ヶ月で片手に収まらない程の友人が出来たんだぜ」


232 :名も無きAAのようです:2011/12/20(火) 00:30:26 ID:3OkAeC82O

『―――ジンオウガ、お前は俺の何よりも貴重で、何にも代え難い仲間を傷付けた』






(#'A`)「俺はッ!俺の大切な仲間をッ!!傷付けた奴を許さないッ!!!一度足りとも許した事が無いッ!!!!」


【雷狼竜】ジンオウガが、震えた。緩和したと思われた空気が一気に張り詰めた。


233 :名も無きAAのようです:2011/12/20(火) 00:31:20 ID:3OkAeC82O




―――来いよ、ユクモ神





('A`)「教えてやるよ、格の違いって奴をさ」





前のページへ] 戻る [幕間へ