('A`)ドクオと飛竜と時々オトモのようです 6−7 前のページへ] 戻る [6−8へ
288 :6―7:2011/12/22(木) 03:41:00 ID:tS9kwa0AO


お前のその優しさが、いつかお前を殺すよ


―――砦のマスター 竜人でぃ―――




.


289 :名も無きAAのようです:2011/12/22(木) 03:42:12 ID:tS9kwa0AO

雷雲漂うユクモ山。南側は緩やかな傾斜となっており、身体を鍛えていない一般人でも登りやすい様になっている。
普段ならば、薬草やキノコを摘む人の姿があるのだが、今は影すらない。

一方北側は、急斜面。崖と言っても良いくらいの傾斜がある。崖下には非常に流れの速い川が流れており、もし落ちてしまえば、為す術なく自然に呑み込まれてしまう。


290 :名も無きAAのようです:2011/12/22(木) 03:42:51 ID:tS9kwa0AO

何故ユクモ山の形が、こんなに歪な物になってしまったのか。


これには諸説あるが、一番主流な物は、崖下に流れる川が山肌を削り取ったという説である。
だが中には気圧を司る【古龍】によって作られたという学者もいる。

その存在ですら定かではない架空の龍。

古龍が竜巻を巻き起こし、ユクモ山の北側を削ったのだと言う。
そして、その龍が通った後、急激な気圧の変化により局地的な大雨が降り、川となったのだと。


川の名前は“龍川”龍の川と書いて“りゅうせん”と読む。


291 :名も無きAAのようです:2011/12/22(木) 03:43:34 ID:tS9kwa0AO

―――

――




('A`)「………」

『………』

ユクモ山、その山頂の程近くの開けた場所。そこに佇むは、一人の人間と一匹の神。

彼等を隔てる距離は5m。静かだった。先程までの戦いが嘘の様に押し黙ったまま、ただ睨み合っていた。


292 :名も無きAAのようです:2011/12/22(木) 03:44:21 ID:tS9kwa0AO

ここにきてジンオウガは、驚きを隠せない。今まで何百、何千の人間を殺してきた。充分に武装した者もいれば、鍬や棒しか持っていない、なんとも貧相な人間もいた。
だがそれぞれ共通して言える事は、彼らの目だった。

恐れ、怒り、憎しみ、必ず彼らの視線からは、この三つの感情が見られた。


('A`)「………」


だが、目の前に居る人間は違う。一瞬だけ自身の感情を爆発的に表に出すと、それからは至って平淡。自然だ。

今まで自分が見たことないタイプの生き物だと思った。

面白い。


293 :名も無きAAのようです:2011/12/22(木) 03:45:20 ID:tS9kwa0AO

『Waohoooooooo!!!!!!』


ならば自分が見定めよう。神と呼ばれる自分が、この男の本質を。


響き渡る咆哮、余りの声量にユクモの木々達が騒めいた。


ジンオウガは、先手を取ろうと姿勢を低くした。咆哮からの追撃、古典的ではあるが、全ての大型種が持つ最も信頼のおける組合せだ。


―――だが


('A`)「いい加減、お前の声は飽きた」


目の前に現れた顔。前転からの跳躍。小さな身体で、ドクオは5mもの距離を一瞬で埋めた。


294 :名も無きAAのようです:2011/12/22(木) 03:45:53 ID:tS9kwa0AO

『……!?』


ドクオの手に握られた双剣は、真っ直ぐジンオウガの首下へと伸びる。

慌てて、前脚で弾くようにそれを防いだ。

('A`)「チッ」

ドクオは軽く舌打ちすると、 そのまま両手を全力で振り回す。

ジンオウガの前脚を撫でる様に【鋼龍双】ラファール=ダオラが振るわれる。

先程から執拗に狙われる前脚に、ジンオウガは苦悶の表情を浮かべた。確かにドクオの双剣では、効果的なダメージは与えづらい。一撃でジンオウガの動きを止めたり、尻尾を両断するなんて事は出来ない。


だが双剣の強みは、その圧倒的な手数。狩人の使う全武器種の中で最も刀身の短い双剣。加えてそれは、最も軽いという事を意味する。




その斬撃は瞬きすら許さない。


295 :名も無きAAのようです:2011/12/22(木) 03:46:55 ID:tS9kwa0AO

一撃一撃が、着実にジンオウガの前脚を傷付けていく。

その存在が強大である程、痛みに疎いモンスターだが、流石に堪えた。


('A`)「ふん、前脚が思うように動かなくなったか」

ジンオウガを目の前にして、ニヤリと笑う男。

『………』

やってくれる。ここまで自分を傷付けたのは、目の前の男が初めてだ。

ジンオウガは喜びに震える。

('A`)「……」

間違いなく、今まで戦った存在の中で圧倒的力を、この男は持っている。

しかも、コイツは本気で自分を倒すつもりらしい。


ならば、とジンオウガは身体を捻った。得意の跳躍からの体当たりに回転を加える。ギコが苦しめられた動きだ。


296 :名も無きAAのようです:2011/12/22(木) 03:47:25 ID:tS9kwa0AO

('A`)「なるほど、それか」


ドクオも、その意図を察して下がる。


ジンオウガは跳んだ。間違いなく全力の跳躍。


―――ここで殺る


叩きつけた右前腕。

だが捕えた感触は無かった。
すぐに反転し、敵を探す。狩人はすぐに見つかった。自分の前方に居たのだ。

('A`)「ふん、そんな予備動作丸出しの攻撃で俺を捕えられると思うなよ」


どうやって、あの狩人は自分の攻撃を躱したのか。

その答えが判った時、ジンオウガの背に冷たい物が走った。


297 :名も無きAAのようです:2011/12/22(木) 03:47:51 ID:tS9kwa0AO










―――向っていく自分の下を潜ったというのか








.


298 :名も無きAAのようです:2011/12/22(木) 03:48:26 ID:tS9kwa0AO

恐怖を感じた。怖くないのか、一歩間違えれば、巻き込まれて即死だろう。
理性と知性を持ったジンオウガだからこそ、恐怖した。

今まで決死の覚悟というのは見た事があるが、自分の命を擲つ様な戦い方をする人間なんていなかった。

気圧されている。神と崇め恐れられていた自分が、たった一人の人間に。

『Waohoooooooo!!!!!!』

ジンオウガは、背を向け駆け出した。

このままではいけない、と悟ったのだ。

('A`)「………」

流石のドクオも、ジンオウガの全速力に追い付けるはずがない。

木々を薙ぎ倒す様にして、真っ直ぐユクモ山の頂へとジンオウガは駆ける。


('A`)「……ふん。頂上で待っていろ」


ドクオ達が狩りに出て十時間。戦いは、遂に佳境へと入った。

夕闇が照らすユクモ山の頂上。そこが最後の決戦場となる。


299 :幕間:2011/12/22(木) 03:49:23 ID:tS9kwa0AO

場面は、ドクオとジンオウガのタイマン勝負から数時間遡る。

デレ、ツン、ブーンはユクモ山を登っていた。

ζ(゚、゚*ζ「……」

ξ゚听)ξ「……」

( ^ω^)「……」

三人の顔からは緊張が見て取れた。ユクモ山に入ってからというもの、一歩登る度に重い重圧がのしかかってくる。

もう向こうでは、戦いが始まっているんだな、と三人は口にしないが感じていた。

ζ(゚、゚*ζ(ドクオさん、ギコさん、無事でいて下さい)


300 :名も無きAAのようです:2011/12/22(木) 03:49:54 ID:tS9kwa0AO

やっと一合目が見えてきた。


(;^ω^)「おっ?」

だが、そこには先客が居た。ここからでは、まだ遠くて見えないが、背に武器を背負っている事から狩人か騎士だろう。

(   )「……」

(;^ω^)「……」

ブーンの鼓動が早くなる。

何故立ち入り禁止を命じられているユクモ山に、自分達とドクオ達以外の人がいるのか。

段々と大きくなっていく影。ヒラリ、とマントがはためいた。


(;^ω^)「二人ともッ!止まるおッ!!」


あれは狩人ではない、騎士だ。恐らく自分達を拘束しに来たのだろう。それ以外考えられない。


301 :名も無きAAのようです:2011/12/22(木) 03:50:33 ID:tS9kwa0AO

(;^ω^)「おっ!?」


―――しかし


ξ゚听)ξ「……」

ζ(゚、゚*ζ「……」

ツンとデレは歩くのを止めない。まるで、あの人影が見えない様にスタスタと進んでいく。

不思議そうにするブーンに対して、ツンは言った。


ξ゚听)ξ「アンタに見えて、私達に見えない訳ないでしょうが」

ζ(゚、゚*ζ「大丈夫ですよ。危険人物ですけど、敵ではないと思います。……多分」


確かにガンナーであるツンやデレが、見落とすはずがない。

それに、デレの微妙な言い回し。ブーンには心当たりがあった。それも最悪の。


302 :名も無きAAのようです:2011/12/22(木) 03:51:01 ID:tS9kwa0AO



( ・∀・)!!


( ・∀・ )彡


( ^ω^)「こっちみんな」



.


303 :名も無きAAのようです:2011/12/22(木) 03:52:18 ID:tS9kwa0AO

待っていたのはモララーだった。
いつも飄々とした彼だが、何を考えているのか分からないという怖さがある。

( ^ω^)「モララーさん、こんな場所で奇遇ですお」

( ・∀・)「やぁ、そこへ行くのはブーン君と我が麗しのツンデレ嬢ではないか!!」

ξ゚听)ξ「……」

ζ(゚、゚*ζ「……こんにちは」

ツンとデレからは剣呑な雰囲気を感じる。

天敵モララー、ここに見参である。

その雰囲気を察してか、ブーンは努めて明るい雰囲気で言った。

(;^ω^)「もっ、モララーさん!ブーン達は少し急いでるんでっ!!」

急いで背を向けて去ろうとする。

だが

( ・∀・)「まぁ、待ち給えよ」

ブーンの腕は、モララーによって捕まれた。


304 :名も無きAAのようです:2011/12/22(木) 03:52:53 ID:tS9kwa0AO

( ・∀・)「君達に追い付いて格好良く登場するためにどれだけ走ったと思っているんだね。もう少し、私の話に付き合ってくれても良いだろう?」

空気が更に尖った。
ブーンは必死にモララーを引き剥がそうとするが、ピクリとも動かない。

(;^ω^)「離して下さいおっ!ブーン達には行かなきゃならない所があるんですおっ!!」

そんなブーンの言葉に、モララーは「はははっ」と軽快に笑い、言う。





( ・∀・)「それは無理だよ。私は君達を連れ戻しに来たのだからね」






.


305 :名も無きAAのようです:2011/12/22(木) 03:53:36 ID:tS9kwa0AO

ブーンの手が強張った。
ツンは背のジャギットファイアを取出し弾まで装填する。デレも即座に弓を構え矢を番えた。

ζ(゚、゚*ζ「騎士が、ギルドのやり方に介入するんですか?」

( ・∀・)「ふふん、君達が構えると威嚇無しで撃ってきそうだから怖いね」

デレの真剣な問いにも、モララーは冗談を言うだけで答えようとしない。


ζ(゚、゚*#ζ「答えてよっ!“お兄ちゃん”!!」

ξ゚听)ξ「……」


ふむ、とモララーはブーンを掴んでいた手を離し、考える様に顎にやる。

ブーンは、急いで後ろに下がった。


( ・∀・)「どちらかと言えば、ギルドのやり方に“私”が介入するのだよ。デレ嬢」


306 :名も無きAAのようです:2011/12/22(木) 03:54:23 ID:tS9kwa0AO

( ^ω^)「どういう事ですかお?」

( ・∀・)「今はまだ知らなくて良いことだよ」


ブーンの当然の疑問を、モララーは即座に拒否した。どうやら話す気は無いらしい。

( ・∀・)「今は黙ってユクモへ引き返し給えよ。ギルドマスターも今回はお咎め無しという事で納得してくれたようだったしね」

ξ゚ ー゚)ξ「誰がアンタの言う事なんて聞くもんですか。裏切り者のクセに」

ツンは、セーフティーを外し真っ直ぐにモララーへと向ける。

裏切り者、そう呼ばれた時に僅かにモララーの表情が変化したが、すぐに改められた。


( ・∀・)「ほぉ、ツン嬢。君に人が撃てるのかい?それなら良く狙って撃つと良い」

モララーは、態度を変えない。

ζ(゚ー゚*ζ「悪いですけど、モララーさんの言う事は聞けません。私達は、ドクオさん達のお手伝いがしたいんです」

デレも弓をモララーへと向ける。

ブーンは、ハンマーを構えずに地面に置いた。もしハンマーを使ってしまえば、モララーは確実に重症を負ってしまうからだ。

ツンやデレの様に上手く外す事が出来ない、素手で戦う以外に無かった。


307 :名も無きAAのようです:2011/12/22(木) 03:54:44 ID:tS9kwa0AO





ξ )ξ「変わっちゃったね……お兄ちゃん……」




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308 :名も無きAAのようです:2011/12/22(木) 03:55:15 ID:tS9kwa0AO

そのツンの呟きが引き金。ツンのジャギットファイアとデレのフロギィリボルバーが火を噴いた。


―――だが


「―――本当に、ごめんよ」

ζ( ー *ζ「あっ……うっ……」

倒れたのはデレだった。

( ・∀・)「ふむ。やはり嫌われ者の私と言えども、人間を撃つのには抵抗があったのかな」

ブーンにもツンにも見えなかった。モララーがデレの背後に移動したと思ったらデレが倒れたのだ。


309 :名も無きAAのようです:2011/12/22(木) 03:56:16 ID:tS9kwa0AO

ξ;゚听)ξ「デレッ!?」

( ・∀・)「おっと、どんな状況でも気を抜いてはいけないな。ドクオ君に教わらなかったかい?」

ビクッと、揺れるツン。背後にモララーが居た。


「―――お前達が成長してくれて、嬉しいよ」


ツンの視界は暗転する。最後に聞こえた小さく消え入りそうな呟きは、決して胸の成長を指した物ではなかっただろう。


( ^ω^)「……モララーさん」

( ・∀・)「なんだね、ブーン君」

今立っているのは、ブーンとモララーだけだ。


310 :名も無きAAのようです:2011/12/22(木) 03:57:32 ID:tS9kwa0AO

( ^ω^)「どうして、ボク達を止めるんですかお?ボク達が、全然強くないからですかお?足を引っ張っちゃうからですかお?」

ブーンの言葉にモララーは首を振る。


( ・∀・)「違うよ。私が言いたいのは、ドクオ君とギコ君の気持ちを考えろという事だよ。
彼らは、君達を信頼して山に登ったんだ。君達にならユクモを任せられると信じてね。それを右往左往して、結局ビビりながら山に入るという決心をした君達に腹が立ったのさ」

( ^ω^)「確かにボク達は恐がってたお。歩くのも遅かったし、物音がしたら飛び上がって驚いてたお」

( ・∀・)「ふむ」




―――でも




( ^ω^)「それは悪い事かお?確かにユクモ村を守るのも大切な事だって分かってるお。でも、ボクは、ボク達は、ドクオから色んな事を教えてもらったお。言葉じゃなくて、あの人の背中から」


311 :名も無きAAのようです:2011/12/22(木) 03:58:09 ID:tS9kwa0AO

( ・∀・)「……何を学んだのか、聞いても良いかい?」


( ^ω^)「狩人の心得だったりとか、数えきれない程、多くの事だお。
―――でも、それよりなにより」


ブーンは、大きく息を吐いた。


( ^ω^)「仲間の大切さだおっ!あの人は常に仲間を気に掛けて戦っているおっ!!その背中に追い付きたくて、ボクはここに居るんだおっ!!!!」


ドクオの教えは、確かにブーンの心に刻まれていた。

ブーンの想いは、重かった。


312 :名も無きAAのようです:2011/12/22(木) 03:58:50 ID:tS9kwa0AO

だがモララーは、それを軽く押し退ける。


( ・∀・)「確かに君の想いは受け取ったよ。だが私にも譲れぬ物があるんだ。ここは引いてくれ給えよ」

(  ω )「……」


ブーンは震えている。自分の無力さに。ここを押し通すだけの力は、今のブーンには無い。だが「はい、そうですか」と割り切れる程、ブーンは賢くない。


313 :名も無きAAのようです:2011/12/22(木) 03:59:19 ID:tS9kwa0AO







ξ*゚ー゚)ξ『でも、そんなバカなブーンの事が、私は好きなんだから』







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314 :名も無きAAのようです:2011/12/22(木) 04:01:20 ID:tS9kwa0AO

(  ω )「……分かりましたお。ボク達は、村へ帰りますお」

ちゃんと話せているだろうか。出来るだけ平坦に、モララーの油断を誘えているだろうか。
震える足は無視する。今は、自分が怯えているだとか、そんな事はどうでも良い。


( ・∀・)「そうかい!分かってくれた(  ω )『でもッ!!』……なんだい?」

ブーンはバカだ。毎回のクエスト報酬の管理も全てツンに任せているし、ドクオが話す経験談だって完璧には理解できない。


―――だがッ


.


315 :名も無きAAのようです:2011/12/22(木) 04:01:45 ID:tS9kwa0AO







(#`ω´)「好きな女を殴られてッ!黙ってられる程、バカじゃねーんだおおぉぉぉおおお!!!!!!!!!」






.


316 :名も無きAAのようです:2011/12/22(木) 04:02:34 ID:tS9kwa0AO

ブーンの拳がモララーの頬を捉えた。

( ・∀(メ)「……」

それでも、モララーは倒れなかった。先程のブーンの想いに負けぬ、譲れない物が彼にもあったからだ。

( ・∀・)「ふむ。今のはなかなか効いたよ。心に刺さる、良い拳だった」


―――だが


(#・∀・)「俺だって、この二人が大切なんだ!!この大バカ野郎がァ!!!!」

今度は、モララーの拳がブーンを捉えた。ブーンはそのまま後ろへとブッ飛ばされる。


(  ω(メ)「……クソ、がお」


それでも尚、立ち上がろうとする。意地があるのだ、男の子には。


317 :名も無きAAのようです:2011/12/22(木) 04:04:01 ID:tS9kwa0AO

「……俺は、少し野暮用がある、お前は二人を連れて山を降りろ」


( ・∀・)「男なら。大切な女の一人や二人、抱えてやれねーとな」


モララーは、背を向け脇道へと入っていった。

ブーンは、泣きそうになるのを必死に堪え、ツンとデレをしっかりと抱えた。


318 :名も無きAAのようです:2011/12/22(木) 04:06:03 ID:tS9kwa0AO

「ふんっ、随分と甘いなぁ。モララー」

脇道に入ったモララー、野暮用とは先程からずっと此方を窺っていた奴らの事だ。

( ・∀・)「ふむ、その馬鹿面、どこかで見覚えがあるなぁ」

(#^Д^)「あぁん?なんだと、お前!!」

プギャーだった。

( ・∀・)「あぁ、その下品な声はプギャー君ではないか!いやいや、うっかりしていたよ!
あっ、君達は確か山に入った三人を保護しに来たんだったねぇー」

プギャーは、内心ドキッとした。あの命令は、自分にだけ伝えられたはずなのに。

( ・∀・)「いやー、ギルドの近くにいたらなにやら君の声が聞こえてきてね。そしたら“騎士として狩人の救出”に行くと言うじゃないか!
これはもう!仕事熱心な私としては手伝うしかないと思ってねっ!」

やられた、とプギャーは思った。これでは、山を登る口実が無くなってしまった。


319 :名も無きAAのようです:2011/12/22(木) 04:06:46 ID:tS9kwa0AO

( ^Д^)(……いっその事、あの三人だけでも)

そう考えた時だった。




―――止め給えよ




( ・∀・)「もしあの三人に何かあれば俺がお前を殺す。如何に完璧に取り繕っても俺はお前達を絶対に殺す」

モララーには、本当だと思わせるだけの迫力があった。


320 :名も無きAAのようです:2011/12/22(木) 04:07:25 ID:tS9kwa0AO

(;^Д^)「……んなこと、しねぇよwwww人殺しは、狩人も騎士も関係なくご法度って事くらい知ってるしwwww」

( ・∀・)「そうかい、それなら構わないんだよ。じゃあ早く帰り給え。あっ、そっちの道を通っても殺すよ。今来た道を、負け犬の様に惨めに帰るように」


プギャーの心を、筆舌し難い敗北感が襲う。

(#^Д^)(クソッ、ギコもアイツも。絶対いつか殺してやる……)

大人しく引き返していくプギャー達を見て、モララーは最後に一言付け加えた。



( ・∀・)「あぁ!あと馬鹿笑いも止めておいた方が良いよ!【馬鹿面】と【馬鹿笑い】は君の数少ない特長だが、内緒話をする時は控えないといけない!」

プギャー達が見えなくなるのを見送って、モララーは漸く一息ついた。


321 :名も無きAAのようです:2011/12/22(木) 04:08:48 ID:tS9kwa0AO

( ・∀・)「ふむ、やはり時は着実に進んでいるのだな」

愛する妹分達も、一人前に成長している。

( ・∀・)「……お兄ちゃん、か。久しぶりに呼んで貰えたな」

木々が不自然に騒めいた。何かが、モララーに向かって接近している。

( ・∀・)「全く、これでは私が過労死してしまうよ。働き過ぎは良くないね」

背後のスラッシュアックスを抜いた。折り畳んだ状態のまま、まだ変型させていない。


322 :名も無きAAのようです:2011/12/22(木) 04:09:20 ID:tS9kwa0AO

( ・∀・)「!?」


近付いてきたモノを見た瞬間、モララーは走りだした。あれはアイルーの担架だ。

頭を過る最悪の予感。


(;*゚ -゚)「はぁ……はぁ……、ご主人様!後少しですにゃっ!!」

(,, Д )「……大丈夫、だ。足をやられた、だけだぞ」

運ばれていたのは、ギコだった。


323 :名も無きAAのようです:2011/12/22(木) 04:10:07 ID:tS9kwa0AO

( ・∀・)「ギコっ!」

(;*゚ -゚)「モララー!どうしてここに……そんな事より大変なのにゃ!ご主人様がジンオウガにっ!!」

モララーは、ギコの様子を見る。足が折れている。だがそれより出血が酷い。


( ・∀・)「……時間との勝負だな」


モララーは背に収めていたスラッシュアックスをしぃに預けると、ギコを抱えた。

( ・∀・)「持ってろ、俺が最速で運んでやる」

その言葉に、しぃは頷いた。

だがモララーの視界に、もう一匹のオトモが目に入る。

(* ∀ )「……」

生気を失ったツーだ。


324 :名も無きAAのようです:2011/12/22(木) 04:10:57 ID:tS9kwa0AO

( ・∀・)「ツーもどこかやられたのか?」

その言葉に、しぃは何と言えば良いか言い淀んだ。

(* ∀ )「ドクオに……お前は俺のオトモじゃないと言われたのニャ。オトモとしての契約もしてないし、オレっちが勝手に懐いていただけだったのニャ」

(*゚ -゚)「ツー……」

( ・∀・)「……それで?」

ツーは小さな声で語る。


325 :名も無きAAのようです:2011/12/22(木) 04:11:34 ID:tS9kwa0AO

(* ∀ )「ギコを連れて村に帰れって……ギルドオトモの本懐を果たせって言われたのニャ……」

( ・∀・)「それで?」

(* ∀ )「……それだけニャ」

( ・∀・)「え、それだけ?」


326 :名も無きAAのようです:2011/12/22(木) 04:12:27 ID:tS9kwa0AO

これを聞いたのがブーンやデレなら、絶句していた事だろう。どれほどツーがドクオに懐いていたのか、知っているからだ。

( ・∀・)「……」

しかし、この男はそんな事知らない。知ったこっちゃない。

( ・∀・)「いやいや、別にドクオは何もおかしな事を言ってないだろう」

(* ∀ )「……ニャ?」

( ・∀・)「ギコの怪我は一刻を争う。しぃだけじゃ荷が重かっただろう。それにアイルーなら人命が最優先、オトモじゃないアイルーでも分かる事だろう。


(* ∀ )「ニャ……」

( ・∀・)「それに彼はドンドルマ出身だよ。オトモの契約云々を“知っているとは思えない”のだが」


ドクオの出身地ドンドルマにアイルーを従えて狩りに出るという習慣は無い。

確かにアイルーとの契約を知っているとは考えづらい。


327 :名も無きAAのようです:2011/12/22(木) 04:13:19 ID:tS9kwa0AO

それに

('A`)『あぁ、よろしく頼むよ』

思い出されるのは、差し出された手。

初めて対等だと、オトモと主人の関係ではない、別の関係を与えてくれた人。


(*;∀;)「……」

ドクオはツーと確かに主従関係を結んではいなかった。

だが、別の関係を結んでいたのではなかったか。


328 :名も無きAAのようです:2011/12/22(木) 04:14:43 ID:tS9kwa0AO

( ・∀・)「それに、ギコは私が引き継ぐよ。お前は今ギルドアイルーとしての役割を果たした」





『ここから先は、お前の意志次第だ』






(*;∀;)「ツーは、ドクオと“友達”ニャ」

( ・∀・)「そうだろうとも」


330 :名も無きAAのようです:2011/12/22(木) 04:15:53 ID:tS9kwa0AO










――――ならば、行き給えよ








.


331 :名も無きAAのようです:2011/12/22(木) 04:16:21 ID:tS9kwa0AO



ツーは、駆け出した。己の主人の下へではない。己の“友”の下へ、ツーは走ったのだ。


( ・∀・)「世話の焼けるアイルーだね。さて、しぃ。我々も行くよ」

(*゚ー゚)「はいですにゃ!!」






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