( ^ω^)ブーンは装術士のようです 二話 前のページへ] 戻る [3話へ


  第二話「傭兵と装術」

4 名前: ◆mQ1YeC6SbE :2010/11/21(日) 19:55:43.98 ID:edLaZVmJO
受付嬢「はい、じゃあこれに名前と住所、年齢を書いて提出してくださいね」

ギルドに到着した二人はブーンの登録に必要な書類を作成していた。

(;´ω`)「うへー、文字がいっぱいで頭が痛くなるお」

川 ゚ -゚)「がんばれ、基本的には書類の内容をよく読んでそれに同意のサインをするだけだ」

( ^ω^)「傭兵ってそんなに簡単になれるものなのかお?」

川 ゚ -゚)「ああ、通常はその分厚い本に書いてあるルールに従えるものであれば誰でもなれる」

( ^ω^)「へー……」

川 ゚ -゚)「実力はどうでもいいんだ。実力がなければ仕事もないし、最悪死ぬからな」

恐ろしい事をさらっと言うクー。
ふと思い出したように付け加える。

川 ゚ -゚)「ああ、最後に面接があるぞ。
せっかく雇った奴が自分の所の評判を下げるような者では意味がないかr『てめえ!ふざけんな!』……ちょうどいい例がいたようだ」

見れば、若い男が、受付嬢に向かい大声で文句を言っていた。

男「これっぽっちしか報酬が出ねえのか!」

受付嬢「あ、あの、規約にはちゃんと諸経費が報酬から引かれると書いて」

男「てめえ!いちゃもんつけて金を払わねえ気だろ!わかってんだよ!」

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/21(日) 19:57:53.45 ID:edLaZVmJO
叫びながら机を殴り付ける。

受付嬢「ひっ!」

川 ゚ -゚)「やれやれ……いちゃもんをつけているのはどっちだ」

男に聞こえるようにわざと挑発するクー。

男「なんだぁ?てめえも文句つける気かぁ?」

川 ゚ -゚)「文句?規約書すら読んでない貴様に?文句以前の常識の問題だ」

(;^ω^)「ちょ、クーさん、やばいお」

川 ゚ー゚)「大丈夫だ、丁重にお帰りいただくから」

男「てんめえ―――っ!」

その言葉を聞いて激昂する男。
背負っている剣に手を伸ばそうとして――

川 ゚ -゚)「それをどうするつもりだ?刃情沙汰にするならばこちらも容赦はせんぞ」

腕を捻りあげられる。

男「いててててて!いてえ!離しやがれ!」

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/21(日) 20:00:05.36 ID:edLaZVmJO
川 ゚ -゚)「貴様の頭が冷えるまでは離さん。それとも『決闘』でもするか?やるなら表にでろ」

男の腕を掴んだまま、建物から出るクー。ブーンはとりあえず追いかけることにした。

男「俺をここまでコケにした奴はてめえが初めてだぜ……二度とそんな口聞けねえようにしてやる!」

川 ゚ー゚)「ほう。今までよっぽど人とのふれあいがなかったらしいな」

男「ぶっ殺す!」

クーの挑発に切れた男は剣を引き抜き、目を閉じる。すると剣が赤い光を帯びた。

川 ゚ -゚)「ふむ、火の装術士か」

淡々と状況を見ているクーに不安になったブーンは心配そうな視線をクーに送る。
それに気づいたクーはブーンの方をみてうなずく。大丈夫だということだろうか。

男「よそ見してんじゃねえええ!」

言葉とともに斬りかかる男。あんな剣をくらったら女性でなくともひとたまりもない。

川 ゚ -゚)「確かに威力は高そうだが――――当たらなければどうということはない」

男の方を見もせずにかわす。外れた剣は地面に突き刺さり衝撃を撒き散らした。

川 ゚ -゚)「奇遇だな。私も火属性の魔術師なんだ」

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/21(日) 20:02:09.30 ID:edLaZVmJO
世間話でもしているかのような調子で話しながら、背中の細長い包みから金属の棒を取り出す。
再びクーに斬りかかろうとしている男から距離をとったクーは、その先端を男に向けて牽制する。

男「っは!そんなもんで俺が怯むかよ!魔術師なら魔術にさえ気をつければ棒立ちの雑魚だ!」

男は言葉の通りまったく棒を気にせずに突進する。

(;^ω^)「クーさん!」

川 ゚ -゚)「戦っている最中にべらべら喋るな。舌を噛むぞ」

ブーンの心配をよそに、更に男を挑発するクー。男の顔面に向かい突きをくりだす。
が、剣で払われてしまう。

男(終わりだ!)

川 ゚ -゚)「貴様がな」

そうクーが呟いた時には既に男の背中に「火の玉」が叩き込まれていた。

男「なん……で……」

川 ゚ -゚)「知らなかったのか?魔術は大袈裟な呪文など必要ないんだ」

川 ゚ -゚)「これにこりたらもう傭兵という仕事に関わるのはやめにするんだな」

男「クソが……」

その台詞を最後に男は意識を失う。

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/21(日) 20:07:38.46 ID:edLaZVmJO
(;´ω`)「おー……クーさんが無事で良かったおー」

川 ゚ -゚)「なんだ、君の方が疲れているみたいだな」

(;´ω`)「だって、あんな強そうな奴に喧嘩売るなんて気が気じゃなかったお……」

川 ゚ー゚)「ふふ、大丈夫。私だってそれなりに強いさ」

その言葉を聞いてようやく安心するブーン。
ふと、戦いを見ていた最中に違和感があったことを思い出した。

( ^ω^)「そういえばクーさん、呪文が必要ないってどういうことだお?」

川 ゚ -゚)「ああ、あれか。そのままの意味だよ。『イメージ』を浮かべて集中すれば魔術に呪文は必要ないのさ」

( ^ω^)「でも僕を捕まえた時にはなんかぶつぶつ言ってたような気が」

自分のお尻に火がついた時の事を思い出して思わず尻をおさえながら話すブーン。
クーはその言葉を聞き、よく気づいたな、と感心した。

川 ゚ -゚)「あれはね、威力と速度を調整するために唱えたんだ。いつものあれはあんなに小さくも速くもない」

川 ゚ -゚)「まあ、慣れてない内は呪文が必要になるがな。奴もそれで勘違いしたんだろう」

そこまで話した所で、先ほどの受付嬢が二人に向かって歩いてきた。

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/21(日) 20:12:46.67 ID:edLaZVmJO
受付嬢「さっきはほんとにありがとうございました!」

川 ゚ -゚)「どういたしまして。まあ、こちらからつっかかっていったのだからお礼を言われる筋合いはないがな」

受付嬢「いえっ!とっても助かりました!」

川 ゚ -゚)「そういえば書類が途中だったな。さあ、ブーン頑張れ」

( ´ω`)「へーい……」

受付嬢「あ、あの、この人は?」

倒れている男を指差し、受付嬢が言う。

川;゚ -゚)「あー……医務室にでも連れて行くか」

男はブーンが背負って医務室まで連れて行き、その後また書類に取り組むことになった。

受付嬢「お疲れ様です、これでブーンさんの仮登録は終了しました。
最後に面接がありますので、ここに書いてある住所まで行ってくださいね」

( ^ω^)「面接ってどんなこと聞かれるんだお?」

川 ゚ -゚)「基本的には規約に関する事を聞かれる筈だが……場所によって違うしな」

川 ゚ -゚)「あと人柄も見るぞ。これは最重要だからな」

魔法という危険な物を扱う仕事ということで、
傭兵はルールを破り一般人に危害を加えるような者であってはならない。

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/21(日) 20:16:56.41 ID:edLaZVmJO
川 ゚ -゚)「通常であればあのような男は真っ先に面接で落とされるはずなんだが……
登録場所がずさんなところだったのかな」

( ^ω^)「そういえばギルドにいる人は傭兵ばっかりじゃないんだおね。初めて知ったお」

川 ゚ -゚)「むしろ傭兵以外の一般人の方が多いぞ。要するに労働者の組合だからな」

クーが言うように、労働者が自分達の権利を最大限行使するために作られた組合をギルドという。
上層部を除き基本的にはバラバラな個人の集まりなので、地域差が大きい。

川 ゚ -゚)「『傭兵ばっかり』だと思われているのは、中でも傭兵が一番目立つ職業だからだろう」

( ^ω^)「なるほど。ところで、傭兵ってどんな仕事をするんだお?」

川 ゚ -゚)「どんな、と言われると困るが……『依頼されればなんでもやる』といったところかな」

金を積まれればなんでもやる。それが傭兵という仕事である。
卑しい職業だ、という人間もいるが、その便利さから民間ではなくてはならない仕事になっていた。
そうこう言っている内に面接会場につく。

(;^ω^)「すごく怪しいお……」

面接会場を見ると、占い師がいるような怪しげなテントであった。
こんなところでほんとに面接をするのかと思ったが、クーが躊躇わずに入っていったのでついていく。

川 ゚ -゚)「貞子さん、こんにちは」

テントの奥には、顔がほとんど隠れる程長い髪の女性がいる。少しだけ除く素肌は病的なまでに白かった。

川д川「あらぁ、クーさん。こんにちは。今日はなんのご用?」

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/21(日) 20:20:17.39 ID:edLaZVmJO
川 ゚ -゚)「この子の面接に」

(;^ω^)「よ、よろしくお願いしますお」

川゚д川「ふーん……」

貞子は目を見開き、ブーンをじろじろと睨み付ける。全てを見透かすようなその目力に怯んでしまう。

川д川「……じゃあ、始めましょうか」

クーの言うとおり面接の内容は規約についての簡単な質問と性格診断のテストだった。
一通りの質問が終わったので結果をドキドキしながら待つ。

川д川「……合格ね」

( ^ω^)「お!やったお!」

川 ゚ー゚)「おめでとう。ブーン」

川д川「まあ大抵の人は受かるんだけどね。さて、本題に入りましょうか」

( ^ω^)「本題?」

川д川「そう……実はこの面接はどちらかというと『どんな魔法が使えるか』を調べるためにやるの……」

(;^ω^)「どういうことだってばお……」

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/21(日) 20:24:28.59 ID:edLaZVmJO
川д川「魔法には大きく分けて三種類あって、ここでは二種類のどちらに適正があるか見るの」

( ^ω^)「二種類?三種類じゃないのかお?」

川д川「使う人間の適正が関係あるのは魔術と装術っていう二種類だけなの」

川д川「それであなたの適正は『土の装術士』ってことになるわ……」

( ^ω^)「つち?土ってあの地面にある土かお?」

あまり強そうな感じはしないなあ、と思うブーン。

川 ゚ -゚)「土といってもあまり甘くみない方がいいぞ」

クーの話によると、土属性というのは地面などの力を操れるらしい。
地面というのはどこにでもあるから汎用性が一番高いという。

(*^ω^)「お!わかったお!ところで装術ってなんだお?」

川д川「装術というのはその名の通り『装備する』魔法ねぇ。
自分の肉体や持っているものなんかに魔法の力を付加できるの」

( ^ω^)(そういえばあの傭兵さんもなんか剣から赤い光が出てたお)

あんな感じの術か、ということを見ていたお陰で理解したブーン。

川 ゚ -゚)「ふむ、どうやら私が奴に喧嘩を売った甲斐があったらしいな」

ブーンはその言葉を聞いて仰天する。

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/21(日) 20:27:05.45 ID:edLaZVmJO
(;^ω^)「まさかあれわざとやったんですかお!?」

川 ゚ -゚)「もちろんあの男があそこにいたのは偶然だが、戦いに持ち込んだのはわざとだ」

川д川「あらぁ、クーさん。『決闘』したの?」

川 ゚ -゚)「お恥ずかしながら。一応同意の上で、事後処理ですが書類も出しましたけどね」

( ^ω^)「決闘ってなんだお?」

川д川「傭兵同士の戦いのことで、実際なら両者の合意の上で手続きしてからなんだけどぉ、
まあ話聞くと合意もあったし非は相手側にあるみたいだし大丈夫よねぇ」

川 ゚ -゚)「すまんな、君に魔法というものを身近で見てもらいたかったんだ」

川д川「それにしてもやり方が過激よねぇ、流石火の魔術師ね……」

( ^ω^)「?」

川 ゚ -゚)「魔法の性質はそれを使う人間の性格に深く関わっているらしいんだ」

例えば火属性なら直情型の人間に発現する。
この場合表面上の性格は関係なく本性、つまり根本的な部分に近い属性になる。

( ^ω^)「ってことはクーさんは……」

川д川「じつは激しい情熱を胸に秘めた女の子ってことね……」

川;゚ -゚)「そ、そんな事を言われると正直恥ずかしいんだが……」

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/21(日) 20:29:59.01 ID:edLaZVmJO
( ^ω^)「じゃあ、土属性はどういう性格なんだお?」

川д川「あなた自身を見ていればわかる通り、のんきでマイペースな人間が土属性になるわ……」

( ´ω`)「僕はのんきだったのかお……」

ブーンはそう言うが、そんな言葉が出てくる時点でマイペースであることの証明になっているのではなかろうか。

川д川「こんなところね……さあ、出ていって頂戴」

一通りの診断が終わり、二人をテントから追い出そうとする貞子。
ブーンを先に外に出した後クーは貞子に言う。

川 ゚ -゚)「そんなに人間を『見る』力があるのに、相変わらず人が苦手なんですね」

川д川「……『見える』ことと『理解する』ことはまったく別のことよ……もういいでしょ」

しかし貞子は最後に一つだけ、と前置きして、

川д川「あの子はマイペース、裏返すと自分勝手ってことよぉ、
だからあなたがちゃんと見ていてあげてね」

川 ゚ -゚)「似たような事を彼の家族にも言われました。……確約は出来ないですが精一杯やります」

川д川「そう……じゃあ、またね」

川 ゚ -゚)「ええ、また」

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/21(日) 20:32:02.81 ID:edLaZVmJO
( ^ω^)「貞子さんと何を話してたんですかお?」

川 ゚ -゚)「君が未熟だから目を離すな、だとさ」

(;^ω^)「ひ、ひどいお!」

川 ゚ー゚)「ふふ、冗談だ。さて、面接も終わった事だし道具を揃えに行こうか」

( ^ω^)「道具って、なんか魔法を使うのに必要なんですかお?」

川 ゚ -゚)「いや、これからの旅ではいろいろと危険な相手と戦うことになる。
そいつらと渡り合うための装備を揃えるんだ」

( ^ω^)「いろいろ……って例えばどんな相手なんですかお?」

川 ゚ -゚)「基本的には怪物と戦うことになるだろうな。あと犯罪者と……傭兵も友好的な者ばかりではないし」

クーの言うとおり、傭兵には今日戦った男のような乱暴な輩も多い。
また犯罪者の中にも傭兵や軍人だった者がいる。

川 ゚ -゚)「力を持っている者だからこそ、弱い立場の者を守ってやらなければならないのにな……」

そういう彼女の表情は普段通りに見えるが怒りを秘めている事が伝わってくる。
そこに彼女の秘めた『情熱』を垣間見た気がするブーンであった。

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/21(日) 20:34:08.08 ID:edLaZVmJO
川 ゚ -゚)「こんなところかな」

一通り買った耐火、防刃装備、予備のナイフなどをブーンに渡す。

(;^ω^)「お、けっこう重いお……」

川 ゚ -゚)「すまないな。もう少し減らしたかったんだが結局こんな数になってしまった」

( ^ω^)「大丈夫ですお。数が多いってことはそれだけ重要なんだお?
だから、謝る必要はないですお」

川 ゚ -゚)「ありがとう。……さて、国境を越える為の申請をしに行かなければならないんだが……」

思いの外いろいろな事があったせいで、空は既に暗くなりはじめていた。
今から行った所で役所は閉まっているだろう。

川 ゚ -゚)「今晩の宿を探して今日買った備品の確認でもするか……」

さすがに孤児院に戻って泊めてもらう訳にもいかないので、クーが元々泊まる予定だった宿に行ってみることになった。

宿主人「いらっしゃいませ。……おや、あんたは」

川 ゚ -゚)「この前は突然キャンセルしてしまってすみません。
かわりといってはなんですが、今日泊めていただけませんか」

宿主人「あー、いーよいーよ。どうせ大して客もいないしな。泊まってくれるなら歓迎するぜ」

川 ゚ -゚)「ありがとうございます。二人分一部屋で」

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/21(日) 20:36:15.87 ID:edLaZVmJO
宿主人「おやおや、やるねえ兄ちゃん。こんな美人な姉ちゃんと同じ部屋かい!」

とニヤニヤしながらブーンに話しかける主人。そこで初めてクーと相部屋だと気づくブーン。

(;^ω^)「お!?大丈夫なんですかお!?」

川 ゚ -゚)「何がだ?金の事ならとりあえずは心配いらないが」

そう聞かれて返答に詰まるブーン。

(;^ω^)「いや、その、クーさんと僕が同じ部屋で大丈夫なのかなあって」

クーは、質問の意味を理解して笑いだす。

川 ゚ー゚)「ふっ、くくっ。君は私を無理矢理襲えるくらい腕に自信があるのか。
やはり君を傭兵にスカウトしたのは正しかったようだ」

(;^ω^)「いや、そういう訳じゃ……」

川 ゚ -゚)「わかってるさ。君がそんな人間ならまずそんな事を聞かない」

更に、信用しているから大丈夫だ、と付け加えた。

宿主人「ハッハッハ、見せつけてくれるじゃねえか。
ほれ、鍵だ。強盗は入らねえから安心してくれ。飯は二食でいいな」

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/21(日) 20:38:51.54 ID:edLaZVmJO
部屋に行き、買った物を確認する。

( ^ω^)「こうして見てみると身につけるものが多いお」

川 ゚ -゚)「まず身を守る事が大切だからな。私も似たような装備をしている」

そう言われてクーの身につけている物をざっと眺めてみる。良くわからないが、耐火製品が多いようだ。

川 ゚ -゚)「まあ、火を操る傭兵が火にやられると言うのは洒落にならないからね。特に魔術はコントロールが難しい」

( ^ω^)「クーさんでも苦労するくらい魔法ってのは難しいのかお……」

川 ゚ -゚)「そうだな。ただ誰でも資質はあるのだからあまり危惧することもないが……
ふむ、今から少し練習でもするか?」

(;^ω^)「え?部屋で練習したら危なくないかお?」

川 ゚ -゚)「装術を少し扱うくらいなら問題ないが念のため外に出るか」

宿の外に出る。あたりは既に真っ暗になっていた。

川 ゚ -゚)「早速始めよう。まず、そうだな……イメージがしやすい様に、目を閉じてくれ」

( -ω-)「こうですかお?」

川 ゚ -゚)「そうだ。……土属性なら、地面から力をもらう感じか」

川 ゚ -゚)「足の先から手まで体の中を通った線があると考えて、そこから力を絞り出すイメージをしてくれ」

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/21(日) 20:41:20.16 ID:edLaZVmJO
( -ω-)「お……」

ブーンは言われた通りにイメージをしてみたが、なんの変化も起きない。

川 ゚ -゚)「そのまましばらく続けて、疲れたら休んでもいい」

(;-ω-)「むむむむ……」

その後も何度か休憩しつつ、同様にやってみたのだが、やはり変化がなかった。

川 ゚ -゚)(さすがに初めてですぐに出来る訳がないか)

川 ゚ -゚)「さあ、今日はこれくらいにしよう」

(;^ω^)「お、でも……」

川 ゚ -゚)「すまんな。私はお腹がぺこぺこなんだ」

クーはそういうが、彼女がブーンの事を気遣っての言葉であることは明白であった。

( ´ω`)「すみませんお……」

川 ゚ -゚)「気にするな。すぐに出来るようになるさ。さあ、ご飯ご飯」

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/21(日) 20:43:50.88 ID:edLaZVmJO
宿主人「おうあんたら、遅かったじゃねえか。……なんだ、兄ちゃんの方は元気ねえな」

川 ゚ -゚)「疲れてるんですきっと。ご飯を食べて寝れば元気になります」

宿主人「おう、そうかい!じゃあウチのうめえ飯を食わせてやんな!」

川 ゚ -゚)「そうさせていただきます」

(*^ω^)「ハムッ、ハフ、ハフ!」

夕飯を食べ、たちどころに元気になるブーン。クーもさすがにここまで早く立ち直るとは思っていなかっただろう。

川 ゚ -゚)「君は、食べるのが大好きなんだな」

(*^ω^)「お!大好きですお!」

ブーン曰く、子供の頃から三度の食事が一番の楽しみで、好き嫌いもほとんどないとのことらしい。

川 ゚ -゚)「そうか。それはよかった」

旅先でいつも好きなものばかり食べられる訳ではないので、好き嫌いがないと言うのはいい事だ。と思う。
ふと、クーの脳裏に一つのアイデアが浮かぶ。

川 ゚ -゚)「所で、君の好きな野菜って何かあるか?」

(*^ω^)「野菜ですかお?えーと、じゃがいもが好きだお!」

川 ゚ー゚)「じゃがいもか、なるほど。明日は朝ごはんの前に練習をしよう」

( ^ω^)「お、わかりましたお」

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/21(日) 20:47:06.08 ID:edLaZVmJO
その後何事もなく夜は明けて翌日、再び二人は装術を使う為の練習を始めた。

( ^ω^)「昨日と同じようにやればいいんですかお?」

川 ゚ -゚)「それもいいが、君はじゃがいもが好きだったな?」

( ^ω^)「?……はい、好きですお」

川 ゚ -゚)「なら、土の中で養分をもらい大きくなるじゃがいもをイメージしてみてくれないか」

( ^ω^)「?」

わけがわからない、といった表情でとりあえず言われた通りイメージをしてみる。
すると、ブーンの両手に暖かな黄色い光が宿る。

(;^ω^)「おおっ!?」

川 ゚ -゚)「おお。まさかとは思ったが本当に成功したな。
……そのまま手に持ったナイフに光を押し出す感じにイメージしてくれ」

やってみると、ナイフ全体がほのかに黄色い光を帯びる。

川 ゚ -゚)「よし、やったぞ。それが装術を使った状態だ」

(*^ω^)「ほ、ほんとですかお?やったー!」

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/21(日) 20:49:41.81 ID:edLaZVmJO
川 ゚ -゚)「よし、同じ感覚で何度かやってみよう」

( ^ω^)「はいですお!」

その後同じ要領で何度かやってみた。ほとんど失敗することなく装術を使う事ができた。

川 ゚ -゚)「これでもう発動に問題はないな。あとは」グゥ―――

突然聞こえて来た音に言葉を遮られる。よく聞くとそれはブーンの腹から聞こえていた。

(;^ω^)「す、すみませんお!」

川 ゚ー゚)「くくっ、いや、いいんだ。装術を使うと体力を消耗するからな。お腹がすくのは当たり前だ」

成功した事だし朝ごはんを食べよう、そう言って宿に戻っていく。

川 ゚ー゚)「早く来ないと私が全て頂いてしまうぞ!」

(;^ω^)「ちょっ、おま、それは駄目ですお、クーさーん!」

傭兵としてようやくはじめの一歩を踏み出した。そんな風に考えるブーンであった。

第二話終わり


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