( ^ω^)ブーンは装術士のようです 八話 前のページへ] 戻る [次のページへ


     八話「授業料と本当の旅立ち」


5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 19:47:43.54 ID:ItszZccq0
( ^ω^)「すみませんでしたお。ご飯まで食べさせてもらって」

(´・ω・`)「あのまま放っておくのもあれだからね。しかし随分と警戒してたみたいだけど」

(;^ω^)「フォックスの仲間がそんな感じでアヒャさんを勧誘したって聞いたんで……」

(´・ω・`)「なるほど。でも一応知り合いなんだからもう少し信用してくれると嬉しいかな」

(;^ω^)「す、すみませんお」

(´・ω・`)「まあ、いいや。クーにも任されたしね。それで例の件なんだが」

( ^ω^)「『ヒートさんに勝てる術を与えてあげる』でしたかお」

(´・ω・`)「そうだ。だけどその前に――――」

ブーンを指差しながらショボンが言う。

(´・ω・`)「君の方の問題を解決しないとね」


7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 19:49:46.99 ID:ItszZccq0
(;^ω^)「……僕の、ほうの?」

(´・ω・`)「そう。……以前にマナが意思を持っている、かもしれない事は話したよね」

頷くブーン。

(´・ω・`)「そのせい、かどうかは知らないが魔法は使うものの精神状態に大きく左右される」

(´・ω・`)「それで、だ。今の君の精神状態はまともに戦えるものではない。迷っている、そうだね?」

(  ω )「……はい」

(´・ω・`)「ま、ゆっくり考えてみてよ」

(´・ω・`)「自分がどうしたいのかを、さ」


9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 19:54:17.25 ID:ItszZccq0
ブーンはそれを聞いて滞在期間の方は大丈夫なんだろうかと思ったが、

(´・ω・`)「気にする事はないよ。クーの方もまだ準備があるみたいだしね」

(´・ω・`)「……それに君が身の振り方を決めない限り、彼女は待ち続けるだろうさ」

そういう娘だからね、と付け足す。
実際はフォックスを追わなくてはいけない為に時間の余裕がある訳ではないが、それでも彼女はブーンを待ち続けるであろう。
ショボン程で無いにせよ彼女を知っているブーンもそれには納得する。

(´・ω・`)「だから置いていかれる事だけはない。心配しなくていいよ」

(  ω )「……明日の朝までには、必ずどうするか決めますお」

ゆっくり考えればいいと言っているのに真逆をいくブーンに若干呆れながら口を開く。

(´・ω・`)「……やれやれ、まあ焦って後悔するような選択はしないようにね」

(´・ω・`)「あ、そうそう。一つだけ僕からのアドバイス。これは魔法の心得でもあるんだけどね」

(´・ω・`)「『ありのままを信じろ』」

( ^ω^)「…………」

(´・ω・`)「どうしたらいいかわからない時は我が侭に振る舞ってみるのもありなんじゃないかな?」


10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 19:56:51.01 ID:ItszZccq0
ショボンが店の準備に行ったので一人になったブーンは、彼に言われた事を考えていた。

(  ω )(僕が、どうしたいか)

(  ω )(僕に、何が出来るのか)

そもそも自分が旅に出たきっかけとはなんだったのか。
盗賊をやめるためだったか?
こんな自分が役に立てるのだと証明するためだったか?

( ^ω^)(いや……)

違う、と思う。
根本の所にはもっと身勝手な理由があった筈だ。
しばらく考えて幼い頃の記憶につき当たる。

――――――――――

(・A・)「これをきいてばかにしなかったのおまえでふたりめだよ!おまえのゆめはなんなんだ?」

( ^ω^)「ぼくは――」


11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 19:58:12.15 ID:ItszZccq0





(*^ω^)「ぼくは、いろんなところにいっていろんなひととなかよくなりたいんだお!」







13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 20:01:23.86 ID:ItszZccq0
――――――――――

(*^ω^)「ぷっ、はははっ」

今からしてみれば笑ってしまうようなきっかけだった。
子供ならではの夢。

( ^ω^)(だけど―――――)

これがありのままの自分なんだ、と思えた。
実際、この旅を通して短い期間ではあるが色んな出会いがあった。
いい出会いばかりではなかったが、それでも仲良くなれた、仲良くなれる人の方が多かった。

しかしフォックスとそれに賛同する者達との衝突は避けられないだろう。
エクストのような輩もいる。

( ^ω^)(でも、それでも)

この旅で得た出会いを大切にしたい。
今までに会った色んな人の顔が脳裏に浮かび、最後に彼女の顔を思い浮かべた。
一番最初に出会い、きっかけをくれた彼女の顔を。


14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 20:03:10.82 ID:ItszZccq0
川 ゚ -゚)『傭兵にならないか?』

――――――――――

川 ゚ -゚)(今思えば魔法で傷つけた相手にこんな勧誘など普通はしないよな)

川 ゚ -゚)(馬鹿だな、私は)

奇しくも同じ頃、クーはブーンとの出会いの事を思い返していた。
ブーンとは違い、後ろ向きな思考ではあったが。

川 ゚ -゚)(彼が旅をやめたいと言い出した時は、責任を持って家まで送り届けよう)

そもそも無関係であるブーンを巻き込んだ事が間違いだったのだろう。
そう思い、覚悟だけは決めておく事にした。

川 ゚ー゚)(また過保護だと言われてしまうだろうが仕方ないな)

ショボンに言われた事を思い返し、自嘲的な笑みを溢す。


15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 20:05:07.51 ID:ItszZccq0
すみませんちょっと所用で20分ほど外します
落ちてたらまた後日投下しなおします


21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 20:21:38.88 ID:ItszZccq0
すみませんありがとうございました
再開します

ノパ听)「お姉様、少しお時間よろしいですか?」

川 ゚ -゚)「ああ、大丈夫だが。どうした?」

ノパ听)「フォックスの事についてこちらで掴んだ情報を」

川 ゚ -゚)「わかった。今後の事についても話しておきたいしな」

そう言えばヒートを呼んだ理由の中にそれもあったな。
そんな間抜けな事を頭のどこかで考えながらヒートの話に耳を傾ける。

川;゚ -゚)「――もうそんな事になっているのか。予測していなかった訳ではないが……」

川 ゚ -゚)(いや、“もう”ではなく事をおこす前に準備は終わっていたと言った方が正しいのか)

ヒートの掴んだ情報によると、フォックスの協力者はギルド内部にも居るらしい。
となると、こちらの動きや人員は既に把握されているとみて間違いないだろう。

川 ゚ -゚)(特に危険なのは……)

ギルド内の協力者であるアヒャに技師と医師の三人。
そしてブーンとその関係者――


24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 20:24:48.30 ID:ItszZccq0
川 - )「やはり……」

関わらせるべきでは無かった。そう続けようとする言葉を飲み込む。
彼は既に関わってしまったのだから。

川 - )「ふうーっ……」

川 - )(私は、未熟だ。どうしようもなく)

ノパ听)「お姉様、大丈夫ですか?」

言葉のかわりに深いため息をつき、ヒートに心配されてしまった。
気をとりなおして再び考える。

川 ゚ -゚)(最早過ぎた事はどうしようもない。この際だ、一度ガイドラインに引き返すか)

ヒートが聞けば怒りだしそうだが、半ば決定事項として考える事にする。
そうと決まれば早い方がいい、
明日中には出られる用意をしておこうと結論を出すクーであった。


26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 20:28:41.63 ID:ItszZccq0
ショボンが店で準備をしているとき、扉が開き誰かが入ってくる。

(´・ω・`)「まだ準備中ですよ、ってなんだ君か」

( ^ω^)「いきなりすみませんお。話したい事があって……」

入ってきたブーンの顔付きをみて、ショボンは何かが変わった事を感じとった。

(´・ω・`)「……ここじゃ他の従業員もいるから裏に行こうか」

(´・ω・`)「――腹は決まったみたいだね」

ブーンは力強く頷き話し出す。

( ^ω^)「僕は、これからもクーさんと旅をしたい。そのために、強くなりたいんですお」

( ^ω^)「お願いします!僕に、強くなれる方法を教えて下さいお!」

ショボンはしばらくブーンの目を見返していたがおもむろに目をつむり、

(´−ω−`)「……いいだろう。教えてあげるよ」

(;^ω^)「お、あ、ありがとうございますお」

(´・ω・`)「何だい、リアクション薄いなあ」

(;^ω^)「いやあ、こんな理由でいいのかなあって……」


28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 20:31:44.95 ID:ItszZccq0
(´・ω・`)「別にいいんだよ。むしろ『フォックスを止める為』とか『困っている人の為』とか言ったら駄目だったね」

( ^ω^)「えっ」

(´・ω・`)「そりゃあ、そんな理由だったら立派だとは思うよ。
ただ、君はそうじゃないだろ?」

(´・ω・`)「最初に君を見たときね、悪いけどそんな大それた人間には思えなかったなあ」

改めて人から言われると微妙な気分ではあるが、確かに自分はそんなに立派ではない、と思う。

(´・ω・`)「崇高な御題目を掲げるような奴より君みたいな素直な人間の方が僕は好きだね」

(´・ω・`)「まあ素のままで『私は人の役に立ちたいんだ』とか言っちゃう娘もいるけどね」

(;^ω^)「あはは……」

恐らくはクーの事であろう人物像を聞いてブーンは苦笑いした。

(´・ω・`)「ま、そんなわけだから教えてあげるよ。ただもうお客さんのくる時間だから、終わってからにしようか」

( ^ω^)「はいですお」


31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 20:36:36.96 ID:ItszZccq0
ブーンが店の裏側の部屋でうつらうつらとしていた頃、ようやくショボンが仕事を終えてくる。
ブーンが時計を見てみると深夜を一時間程まわった位であった。

(´・ω・`)「やれやれようやく一段落ついたよ」

(;^ω^)「だ、大丈夫ですかお?」

(´・ω・`)「まあいつもはもう少し遅いんだけど、昨日今日はあんまり寝てないしね」

(;^ω^)「すみませんお、僕のせいで」

(´・ω・`)「え?何が?」

(;^ω^)「いや、だって、僕が色々迷惑を」

そう言うブーンにショボンは呆れたように首を振りながら、

(´・ω・`)「何を言っているんだ君は。僕は面白そうだと思ったからやってるんだよ」

(´・ω・`)「僕の好きでやっている事に心配される筋合いはないね」

(;^ω^)「は、はあ……」


33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 20:40:24.49 ID:ItszZccq0
(´・ω・`)「さて、さっさと始めよう」

(;゚ω゚)「今からですかお!?」

(´・ω・`)「当然。君もそのつもりで待ってたんだろ?」

(;^ω^)「そりゃあまあ」

(´・ω・`)「じゃあいいじゃないか」

言って、席を立つショボン。
慌ててブーンもその後を追う。

(´・ω・`)「――まずは、『具象化』をモノにしないことにはお話にならない」

(;^ω^)「あの……ヒートさんも言ってたけど『具象化』ってなんなんですかお?」

当然の知識のように『具象化』について話すので、ついていけなくなり質問をする。
するとショボンが少し驚いた表情になり「そこからか。まあ仕方ないね」と呟く。

(´・ω・`)「さわりだけさっさと説明するけどいいかな」


35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 20:43:23.01 ID:ItszZccq0
ブーンは軽く頷きショボンの話に耳を傾ける。

(´・ω・`)「『具象化』っていうのはね、装術士の基本にして一番始めにぶち当たる壁だよ」

( ^ω^)「基本……?なのに壁なんですかお?」

(´・ω・`)「この壁を越えられない人は装術士とは呼べない。それくらいに大事な技術さ」

(´−ω−`)「残念な事に越えられない人もある程度いるけどさ」

そう言いながらため息をつくショボン。

(´・ω・`)「独学でやろうとしたり才能がない奴はここでつまづいて悲惨な事になる。傭兵としては、だけれど」

戦う為の才能なんてない方がいいんだよ本当は。
そう呟くショボンはどことなく寂しげであった。

(´・ω・`)「続けようか。今君が使える装術はマナを直接武器に纏うものだったね」

(´・ω・`)「しかし、それだと実際は効率が悪すぎるんだよ」

マナそのものをコントロールするのには微細な調整が必要であるため、
普通の人間はどうしても大雑把にしか扱えない。
するとエネルギーが垂れ流しになるばかりで維持をすることすら難しい。


38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 20:46:46.56 ID:ItszZccq0
(´・ω・`)「で、それをカバーするのが『具象化』って訳さ」

( ^ω^)「とりあえず覚えた方がお得ってことはわかりましたお」

理屈についてはまったく理解できなかったらしいブーン。
知らなければ使えないという訳ではないのでそのまま話を続ける。

(´・ω・`)「要するに『具象化』ってのはマナ以外の物を装術で扱う技術だ」

氷や炎、水などを武器や己の肉体に「装備する」、これこそが装術が装術たるゆえんである。
これを扱えない者は「装術士」とは呼べないという言葉はその通りと言える。

(´・ω・`)「それにより形のないマナというエネルギーが形を成したように見える。だから『具象化』」

(;^ω^)「な、なるほど……」

まだ訳がわからない部分もあるが、具象化がどういうものかという事はなんとなく理解したブーン。
そうするとどうやったら使えるのか早く聞きたくなる。

(´・ω・`)「まあそう慌てなさんな。『ゲーテは事を仕損じる』ってアクアリウムのことわざがあってね」

(´・ω・`)「あんまり急ぐとよく失敗するってことさ。……ところでゲーテってなんだろうね?人の名前みたいだけれど」

ここにクーがいればすぐに訂正されただろうが居ないので間違ったままにその話は終わる。


40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 20:48:56.02 ID:ItszZccq0
(´・ω・`)「まあ、いいか。本題に戻そう」

(´・ω・`)「使い方はさほど難しいものじゃないんだ。ただ感覚を掴むまでが大変でさ」

ショボンによると、マナだけを集めるのとあまり違いはないが、集中力が必要とされるそうだ。

(´・ω・`)「例えばヒートの使ってる氷の装術なんかを例にあげてみるとだね」

氷の装術を具象化する場合、大気中の水分をマナと混合させて氷を形成する。
しかし確固たるイメージが無ければまともな形を為す事は出来ず、装術としての力も発揮されない。

(´・ω・`)「こればっかりは習うより馴れるしかないね」

装術は魔術と違い、使用する上では感覚的な部分がより重要であるとされる。
その感覚を覚えるまでひたすら反復練習を重ねる必要があり、それは才能に大きく左右されてしまう。

(´・ω・`)「酷い場合は数年間かかってもまだ出来ないって事もあるみたいだね」

(;゚ω゚)「いっ!?す、数年って、それじゃあ困りますお!」

(´・ω・`)「そうならない為に僕がいるのさ。幸い僕は教える方はうまい……はずだ」


43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 20:51:57.62 ID:ItszZccq0
その言葉を聞いてブーンは抱えていた疑問をぶつけてみた。

( ^ω^)「あの、ショボンさんって、昔……」

(´・ω・`)「そうだよ。僕は昔装術士をやっていた」

言いづらい事を聞いたと思っていたのであまりにあっさりとした反応に少し驚いた。

(´・ω・`)「聞かれるのはわかって喋ってるからね。聞かれて困る事でもないし」

(´・ω・`)「むしろ、昔装術士だったけど何か質問ある?ってノリだから気にする事はないよ」

( ^ω^)「じゃあ、クーさんは」

(´・ω・`)「弟子みたいなもんだね。簡単に越えられていったけど」

彼女は天才だ。と降参のポーズを取りながらショボンが言う。

( ^ω^)「やっぱり、物凄い魔術が使えるんですかお?」

(´・ω・`)「いや。普通の魔術師が覚えられる程度の魔術しかないよ。
魔力は凄いけどそれもとんでもなく飛び抜けている訳じゃない」

それにしたってあの若さなら凄いけど、と前置きをした上で語る。

(´・ω・`)「あの娘が天才と言われる理由は魔術や魔力の凄さとは別にある。……いずれわかるよ」

(;^ω^)「はあ……」


47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 20:54:38.98 ID:ItszZccq0
(´・ω・`)「散々脇にそれたけどそんなに時間もないしちゃっちゃとやろうか」

ショボンに言われ、マナだけの装術を発動させるブーン。

(´・ω・`)「その状態で地面に突き刺したりすると土煙が上がるとか地面に影響をおよぼす訳だけど、
今回はそれが起こらないぐらいにパワーを落としてくれないか」

(;^ω^)「あの、どうやってやるんですかお?」

(´・ω・`)「……そうだね、手に穴があいていてそこから水が出てるとしよう。
その穴を小さくして水を少なくする感じで」

(;^ω^)「よーし……あっ!」

ブーンがそのイメージをした途端、ナイフに宿っていた光が消えてしまう。

(´・ω・`)「それじゃやり過ぎだよ。もう少し抑えて」

(;^ω^)「は、はい」

その後何度かやってみたが、どうしても装術が解除されてしまう。

(´・ω・`)「うーん……じゃ、別の方法で行こうか」

(;^ω^)「はあ……えっ!?」


50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 20:58:08.84 ID:ItszZccq0
早くも練習法を変えると言い出したショボンに不安を抱くブーン。
だが彼の次の言葉でその不安は晴らされる。

(´・ω・`)「こういうので一番まずいのはね、苦手な方法をいつまでも引きずる事だよ。
向いてないとわかったら早めに切り替えた方がいい」

(;^ω^)「な、なるほど」

(´・ω・`)「君はパワーのコントロールが不得手なようだから、こざかしい事はやめよう」

(´・ω・`)「普通の状態のナイフに一気に具象化を施す。本来なら慣れない内はやらないんだけど」

そう言われ地面にナイフを突き立てるブーン。

(´・ω・`)「これもイメージが大切だからしっかりやろうね。
……磁石に砂や石が引き付けられる、というのはイメージしづらいかい?」

(;^ω^)「じ、磁石ってなんすかお?」

(´・ω・`)「あ、知らなかったのか。文字が書けるから学校に行ってるのかと……じゃあ仕方ないね」

しばらく唸っていたショボンが出した問いは、最初に装術を使った時にどんな事を考えていたかというものであった。

(;^ω^)「あ、えっと、じゃがいもが養分を吸って大きくなるっていう……
クーさんに好きなものの方がイメージしやすいって言われて」


55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 21:01:06.78 ID:ItszZccq0
それを聞いてショボンは関心したような表情でこう言った。

(´・ω・`)「ふーむ。なるほどね。もう少し教える方は下手かと思ったよ」

(´・ω・`)「そういうイメージが出来ているなら案外早く修得出来るかもしれない」

そう言った上で更に言葉を続ける。

(´・ω・`)「そうだね……そのじゃがいもが根をはり増えていく感じのイメージをしてくれ」

言われたとおりやってみたが、やはり通常の装術しか出せなかった。

(;゚ω゚)「はあっ……!はあっ……!」

(´・ω・`)「うーん、休憩だね」

(; ω )「まだっ……やれますお!」

(´・ω・`)「だめだめ。無理したって出来るようにはならないよ」

魔法の威力は使用者の精神状態に大きく左右されるため、疲労したまま使用を重ねるのはあまり良くない。
それを危惧してのショボンの言葉だった。


56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 21:02:54.77 ID:ItszZccq0
(´・ω・`)「下手したら暴走の引き金になるからさ。
それに装術のイメージをする為には落ち着いた状態の方がいいんだ」

言いながらコーヒーを淹れる。
ふと、彼はコーヒーを飲めるかな、と思い聞いてみる。

(´・ω・`)「君はコーヒー飲めたかな?砂糖は何杯?」

( ^ω^)「……砂糖は四杯でミルクはたっぷりお願いしますお」

(;´・ω・`)(……甘党だね)「わかった」

コーヒーを何杯か飲んで心と体を落ち着かせる。

( ^ω^)「もう大丈夫ですお。よろしくお願いします」

(´−ω−`)(やれやれ。若いっていいなあ)

自分がブーン位の年齢だった頃を思い出し心の中で呟いた。


60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 21:06:07.79 ID:ItszZccq0
(´・ω・`)「反復練習をしている内に何か“引っかかる”ような感じがする時がくるはずだ。
それを感じたらしばらく休まずに続けよう」

(;−ω−)「おkですお……むむむむむ」

その後休憩を挟みながらやってみるもとうとう朝まで成功させる事はできなかった。

(;´ω`)「も……もう限界だお」

(´−ω−`)「奇遇だね……僕ももう眠くて仕方ないんだ」

(´・ω・`)「また今日の夜に来たまえ。まあ自分で練習してもいいけど」

( ´ω`)「わかりましたおー……」

よほど眠いのかふらふらと店を出ていくブーン。
ショボンはブーンがどこに帰るのだろうかと考えたが、

(´−ω−`)「ま、いいか。……どのみちクーの所に帰るしかなさそうだし」

ブーンの保護者である女性の顔を思い浮かべそれ以上考えるのはやめた。


63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 21:09:05.45 ID:ItszZccq0
川 ゚ - )「くっ……うーん」

少し前に目を覚ましたクーは、眠気を取り払おうと軽い体操をしていた。
そんな彼女の耳にドアのノック音が届く。
こんな早くから誰だろうか、と考えを巡らせながらドアを開けると宿の主人がそこにいた。

川 ゚ -゚)「何かあったんですか?」

まさか怪物が、と表情を引き締めて主人の言葉を待つ。

主人「あの……この人に見覚えはありますか?……いやね、貴女の名前らしき事を寝言で言ってたもので」

床に転がっている人物を示してそう質問する主人。

川;゚ -゚)「ブーン君!?」

驚いて大きな声を出したにもかかわらず、ぐっすりと眠りこけているブーン。
よほど疲れが溜まっているのか。

主人「どうやら正解のようですね。いやあ、よかったよかった」

川 ゚ -゚)「すみません。ありがとうございました」

主人「では、私はこれで」

自分からブーンを探しに行こうと考えていたのでびっくりはしたが、手間が省けたと思うべきか。
まずはブーンをベッドに寝かせ、これからどうするか考える。

川 ゚ -゚)(とりあえず朝食は二人分要るな)


65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 21:12:37.94 ID:ItszZccq0
朝食についてくるコーヒーをすすっていると、ブーンが目を覚ます。

( ´ω`)「うーん、う?」

川 ゚ -゚)「おはよう。ブーン君」

( つω`)「…………クーさん。おはようございますお」

気まずそうにしてはいたが、挨拶を返したということはそれほど溝は出来ていないということだろう。
そう確信して内心ほっと胸をなでおろす。

( ^ω^)「あの……クーさん」

川 ゚ -゚)「話は朝食を食べながらでもいいだろう?早くしないと冷めるぞ」

それを聞き急いで顔を洗いに行くブーンを見ていつものやり取りが戻ってきた事に少し感動する。

川 ゚ -゚)( ^ω^)『いただきます』

みずみずしいサラダから手をつけようとしていると、既にバタートーストを半分ほど食べているブーンが話し出す。

(;^ω^)「クーさん!」

川 ゚ -゚)「む、どうした?」

(  ω )「すみませんでしたお!!」


69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 21:16:23.81 ID:ItszZccq0
それを聞き、軽くため息をつく。

川 ゚ -゚)「ふー、このあいだも言った筈だぞ。『気にするな』と」

( ^ω^)「聞きましたお。でも、僕が謝らないと気がすまないんですお」

川 ゚ -゚)「……なるほど。君もなかなか頑固だな」

( ^ω^)「あともう一つ、お願いしたいことが」

とうとうきたか、と思ったが表情には出さない。

川 ゚ -゚)「私に出来ることなら」

(  ω )「これからも一緒に旅を続けてください!お願いします!」

川;゚ -゚)「えっ!?」

まさかそう言われるとは全く想定していなかったクーは、驚きのあまり椅子から立ち上がってしまった。

(;^ω^)「ど、どうしたんですかお?」

クーの突然の行動に面食らったブーンが疑問を投げかける。


73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 21:22:19.26 ID:ItszZccq0
川;゚ -゚)「わ、私はてっきり君はもう旅をやめてしまうのかと……」

震える声で話すクー。
まだ少し動揺しているようだ。
するとブーンが首を振って答える。

( ^ω^)「違いますお。……たぶん僕はまだ、旅に出てなかったんだお」

川 ゚ -゚)「それはどういう……」

( ^ω^)「僕はただクーさんについていってただけなんだお。自分自身の覚悟がなかった」

( ^ω^)「でも、わかったんだお。旅に出たいと思った理由が」

( ^ω^)「だからお願いしますお!僕と一緒に旅をしてくださいお!」

再度頭を下げるブーン。クーは嬉しく思う反面、ギルドの件について罪悪感を抱かざるを得なかった。

川 ゚ -゚)「そう言ってくれるのはとてもありがたいんだが……」

川 ゚ -゚)「すまないブーン君。実はこちらもお願いしなければならない事があるんだ」


76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 21:25:41.64 ID:ItszZccq0
ヒートから聞いた話と合わせ、もう既に自分達の情報が向こうに漏れている可能性が大きい事を告げる。

(;^ω^)「……そんな事が」

川 - )「本当に申し訳ない。……私が君を巻き込んだりしなければ」

クーが頭を下げる。

(;^ω^)「あ、頭を上げてくださいお。僕がついて行きたいって言ったんだから……」

ブーンがそう言うと、クーは頭を上げてブーンの目を正面から見据えながら、話す。

川 ゚ -゚)「一緒にガイドラインに引き返し、フォックス達と戦ってもらいたい。
これが私のお願いだ。勝手だという事はわかっているが……」

ブーンは再び首を振る。

( ^ω^)「自分の家なんだから自分で守るのは当たり前ですお。むしろこっちがお願いする方なんだお」

川 ゚ -゚)「そう、か……じゃあ、ついてきてくれとは言わない」

川 ゚ー゚)「一緒に行こう。ガイドラインに」


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