( ^ω^)ブーンは装術士のようです 8−2
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78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 21:27:58.28 ID:ItszZccq0
川 ゚ -゚)「しかし、随分と遅くまで起きていたようだが大丈夫なのか?」
( ^ω^)「大丈夫ですお。ほら、この通り」
そう言って立ち上がり元気だと示そうとしたブーンだが、その拍子に大きなあくびが出る。
川 ゚ -゚)「あまり無理は良くないぞ。……具象化についての練習をしていたんだろ?」
本来であればヒートに依頼するつもりであったが、結果的によかったのかもしれない。
クーの装術の知識は素人同然と言えるものであったし、ヒートにしても他人に教える事が上手い訳ではない。
川 ゚ -゚)「しかし、ショボンが君に装術を教えるなんて思わなかった」
( ^ω^)「え?」
川 ゚ -゚)「あの人は自分と他人の間に明確に線を引くんだ」
良くも悪くも他人に深入りはしない。それがどれだけ長い付き合いでも変わらない。
ショボンはそのような人間であるとクーは言う。
( ^ω^)「そんな人には見えなかったですお」
川 ゚ -゚)「ふーむ。何がしか心境の変化があったのかも知れないな」
80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 21:30:57.86 ID:ItszZccq0
( ^ω^)「でも、クーさんもショボンさんに色々教わったんだお?」
川 ゚ -゚)「色々、ねえ……」
――――――――――
(´・ω・`)『僕は装術士だから君に教えてあげられる事は少ないけどかわりにこれをあげるよ』
川*゚ -゚)『あ、ありがとうございます!……あれ?』
川 ゚ -゚)『あの、この紙なんですか?……請求書に見えるんですが』
(´・ω・`)『うん。出世払いでいいからね』
川 ゚ -゚)『えっ』
(´・ω・`)『えっ』
――――――――――
今思えば魔術書をタダで譲ると言うのは無理な願いであったし、
値段も相場よりは安かった。
何より他人に甘えるばかりではこの先生きてはいけないというショボンなりの教えだったのかもしれない。
川 ゚ -゚)「うん……まあ、確かに色々教わったよ」
82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 21:34:05.73 ID:ItszZccq0
( ^ω^)「やっぱり」
納得したような顔でうなずくブーン。
クーはなんとなく釈然としなかったが気にしない事にした。
川 ゚ -゚)「今日にでもここを出てガイドラインへ向かうつもりだったけど」
川 ゚ -゚)「どうする?……その様子じゃ上手くいった訳じゃないんだろう?」
(;^ω^)「うぐっ」
どうしてわかったんだ、と言いたげな視線を向けてくる。
川 ゚ー゚)「前にも言ったろう?君はわかりやすすぎるんだ」
微笑みながらそう言い、話がそれたな。と軽く咳払いをして表情を正す。
川 ゚ -゚)「人命にかかわる事だから動くのは早い方がいいとは思うが、どうする?今日中に立つか?」
そう聞かれたブーンはうーん、とひとしきり唸ったあと、
( ^ω^)「まだここに居ますお。……足手まといにはなりたくないお」
そう答えた。
どちらにせよブーンの選択に委ねるつもりだったので、そうか、とだけ言う。
84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 21:36:08.04 ID:ItszZccq0
川 ゚ -゚)「私はヒートともう一度これからの事について話し合いをしたり、
ここを出る時の手続きをしておくから君は夜まで休んでいるといい」
そう言い残して部屋を出ていくクー。
その言葉に甘えて寝転がる。
( ^ω^)「……どうやったら使えるようになるんだお」
自分の手に語りかけるように呟いた。
当然答えは返ってこない。
考えを巡らせている内に眠気が襲ってきて、いつしか瞼を閉じていた。
――――――――――
(;−ω−)「うーん、う゛ーん」
?「大丈夫かい、お客さん」
( ^ω^)「お……どちらさまですかお?」
主人「そういえば君は寝ててわたしの顔をみてませんでしたね。……ここの宿の主人です」
よろしく、と言って握手をしてきた。
なにかまずいことでもあったのかと考えているとそれを察したかのように口を開く主人。
主人「お連れのお姉さんが夕飯まで降りて来なければ起こしに行ってくださいとお申し付けになられたので」
( ^ω^)「クーさんが」
88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 21:42:46.38 ID:ItszZccq0
主人「さあ、既に夕飯の準備は終わっておりますのでお早めにどうぞ」
促される通り食堂に向かい席につくと、既に何人かが食事を始めていた。
すぐに恰幅のいい女性によって食事が運ばれてくるが、その際にその女性がこちらに文句をいってきた。
女性「あんたが最後だよまったく。昼も食わずにグースカ眠りこけやがって」
主人「おいおい、お客様にそんな……」
女性「あんたは黙ってな。わたしゃお客様には出来る限りここのサービスを味わってもらいたいんだよ」
ここでいったん言葉を切り、わかるかい?とブーンに問いかける。
女性「だから食事もしっかりとって欲しいわけ。……この人と二人で考えて、作った食事をね」
そこまで言った所で主人が目頭を押さえながら「おまえ……」と呟いた。
女性「あんた……」
女性と主人との間に流れる甘い雰囲気を尻目に、食事に手をつけ始める。
(;^ω^)「……いただきまーす」
パン、じゃがいもとベーコンのスープ、サラダ、鶏肉のソテーとボリュームのある献立になっている。
( ^ω^)(まずはスープから……)
( ^ω^)「おいしいお……」
89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 21:48:30.70 ID:ItszZccq0
そう呟いたのを聞いていたのか、女性(どうやら宿のおかみさんのようだ)が嬉しそうにブーンを見ながらうなずく。
おかみ「この辺りは水も土も良くてね、出来た野菜がすぐに食べられるんだよ」
そういえば、と何かを思い出したように言って、
おかみ「もう少し東に行くとでっかい自然公園があって、色んな動物とふれ合えるんだよ」
彼女の言う通り、首都に続く道なりには広大な自然公園がある。
動物とふれ合うことも出来るがマナも豊富であるために怪物が現れることも多く、数十人の傭兵が交代で目を光らせている。
おかみ「お客さんは観光かい?」
( ^ω^)「あ、いや、違いますお」
おかみ「仕事かい……大変だね。ま、観光でまた来ることがあったらウチをよろしくね」
はいと返事をしてまた食事に戻る。スープだけでなく他も満足のいく味だった。
部屋に戻り、外出する為の届けを書いているとクーが戻ってくる。
川 ゚ -゚)「すまない、遅くなった」
( ^ω^)〜「おかえりなさいだお。あ。あと、ありがとうございましたお」
クーはそう言われ最初は何に対してのお礼かわからなかったが、すぐに夕飯の事だと思い至る。
川 ゚ -゚)「ああ、流石に何も食べずに具象化の練習は骨が折れると思ってな」
90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 21:56:05.94 ID:ItszZccq0
川 ゚ -゚)「そういえば君宛ての手紙をギルドに寄ったときに受け取ったんだ。……『ミスターπ』とやらに心当たりはあるか?」
おかしな名前に一瞬戸惑うがすぐに思い当たる。
(*^ω^)「ジョルジュだお!ジョルジュが手紙書いてくれたんだお!」
川 ゚ -゚)(ジョルジュ?どこかで聞いたような……)「知り合いか?」
( ^ω^)「ウチに昔いた人でよく遊んでもらったりしたんだお!」
川 ゚ -゚)「昔いた……ということはその人も孤児なのか?」
( ^ω^)「うーん。違う気がするお。ショボンさんよりもたぶん年上だし」
川 ゚ -゚)(あれだけの子供たちをブーン君とドクオ君だけの稼ぎで養えていたのか疑問だったが、
なるほど。スポンサーがいたのか)
『ジョルジュ』とやらにある程度お金を苦心してもらっていたのだろうと納得した。
川 ゚ -゚)「ところで……『ミスターπ』とはいったいなんだ?偽名か?」
(;^ω^)∂「あー……いや」
91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 22:04:25.30 ID:ItszZccq0
川 ゚ー゚)「……くくく、なるほどね」
ブーンが言うには、子供の頃にやっていた『ごっこ遊び』のジョルジュの悪役名が『ミスターπ』だったということだ。
( ´ω`)「あんまり笑われると恥ずかしいですお……」
川 ゚ー゚)「ふふっ。いや、すまない。笑うつもりはなかったんだけど」
茶目っ気のあるいい人じゃないか。そう言ってなおも笑いが止まらない様子のクーを見て怒るブーン。
(#^ω^)「まったくもう。……とりあえず読みますお」
ひったくるように手紙を受け取り、読み始める。
なんのへんてつもない近況報告がつらつらと書かれているが、なんとなく違和感がある。
( ^ω^)「…………?」
川 ゚ー゚)「くく……どうした、変な事でも書いてあったか?」
そう言って手紙を覗き込むも、大したことは書いてないように見える。
だが、
川 ゚ -゚)「文節がおかしいな。変な所で改行してある」
(;゚ω゚)「……あーーーっ!!」
92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 22:10:30.02 ID:ItszZccq0
川;゚ -゚)「ど、どうした!?何があった?」
突然大声を出され驚いたクーは戸惑いながらブーンに質問する。
( ^ω^)「思い出したんですお!それの読み方を!」
川 ゚ -゚)「読み方……?」
( ^ω^)「それ、ジョルジュが考えた暗号なんですお」
( ^ω^)「子供にもわかるような単純な解き方なんだけど」
そう言いながらブーンは各行の最初の文字に丸をつけていく。
出来上がった文章を見てあることに気づくクー。
川 ゚ -゚)「これ、シベリア語……?」
( ^ω^)「そうですお。普通に読んだらVIP語で縦に読んだらシベリア語。……音符とかは無理矢理読めるように読めって」
川 ゚ -゚)「これも『ごっこ遊び』の?」
( ^ω^)「スパイごっこやってた時にジョルジュが考えて教えてくれたんですお」
クーは驚いたような関心したような表情で「君たちのスポンサーはすごいな」と呟いた。
93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 22:18:30.94 ID:ItszZccq0
いったい何が書いてあるのだろうと読み上げる。
( ^ω^)「『おまえたちはそのまますすめこっちはだいじょうぶ』」
川;゚ -゚)「なっ!?」
こちらの事情を把握しているとしか思えない文章に驚きを隠せないクー。
滞在している場所こそ定期報告でカーチャン達には明らかになっているとはいえ、これはどう考えてもおかしい。
川 ゚ -゚)「……この手紙がフォックス達の捏造したものという可能性は?」
( ^ω^)「それはないですお。『ごっこ遊び』の内容を知ってるのは僕とドクオとジョルジュしかいない」
川 ゚ -゚)「……失礼を承知で聞くが、『彼』がフォックスにくみしていることはあり得るか?」
( ^ω^)「それこそあり得ないですお。ジョルジュは人に迷惑をかけることはやらない」
( ^ω^)「……ってドクオが言ってましたお」
川 ゚ -゚)「そして君もそれを信じている、と」
無言でうなずくブーン。
川 ゚ -゚)「ならば私も信じないわけにはいかないか」
(*^ω^)「ありがとうございますお!」
川 ゚ -゚)「しかし……実力の程はどうなんだ?」
94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 22:27:38.66 ID:ItszZccq0
( ^ω^)「?」
川 ゚ -゚)「フォックスが仕掛けて来た時に君の家族を守れるぐらいに強いのか?」
( ^ω^)「あー……なんか昔トレジャーハンターでブイブイいわせてたとか聞きましたお」
川 ゚ -゚)「……失礼ながら、なんだ、その、胡散臭いな」
(;^ω^)「……ですおねー」
――――――――――
_
( ゚∀゚)「ぶふええええええーーっきしょい!!」
⌒*リ´・-・リ「さっきからくしゃみばっかりしてなに?汚いんだけど」
_
( ゚∀゚)「ふふ、きっと俺のファンのおっぱいちゃん達が噂をs⌒*リ´・-・リ「それはない」」
_
( ゚∀゚)
_
( ゚∀゚)「大丈夫だぜリリちゃん。俺の一番好きなのは君n⌒*リ´・-・リ「だまれ乳魔人」」
(´゚∀゚)ショボーン
――――――――――
95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 22:34:39.58 ID:ItszZccq0
しかし、それを無しとしてもこちらの動きを把握しているジョルジュはただ者ではないというのはわかる。
実力もそれに相応しいものなのかもしれない。
川 ゚ -゚)(それに)
今のクー自身も人の事をとやかく言える程の力を持っている訳ではない。
何せ、一度フォックスと相対して敗れているのだ。
川 ゚ -゚)「ふーむ……………………」
とはいえ少しでも戦力は多い方がいいのでは、と決めかねているとブーンが言う。
( ^ω^)「大丈夫。ジョルジュがこう言ってるってことは、僕らを信用して任せてくれてるってことですお」
川 ゚ -゚)「私達に……?」
( ^ω^)「フォックスに利用されたり、襲われたりした人とか、まだたくさんいるお」
それを聞いてはっとした。
生命の危機にさらされているのはブーンの家族だけではない。
今までもたくさんいたであろうし、フォックスを止められなければこれからいくらでも出てくる。
だからフォックスを追う事は間違っていない。間違ってはいないのだが……、
川 ゚ -゚)「君は、それでいいのか?皆が心配ではないのか?」
96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 22:43:54.16 ID:ItszZccq0
( ^ω^)「……心配じゃないって言ったらそりゃ嘘になりますお」
( ^ω^)「でも、ジョルジュは、ドクオは、みんなは、フォックスなんかに負けるわけない」
(*^ω^)「って、信じてるっていうか、信じたいというか……そんな感じですお」
川 ゚ -゚)(信頼には信頼で応える、か……)
はにかみながらそう話すブーンを見て、クーは決心を固める。
川 ゚ -゚)「わかった。私達は私達で出来る事をしよう。
……フォックスに追いつき、奴の野望を止める」
( ^ω^)「はい!」
川 ゚ -゚)「ここからが私達の『本当の旅立ち』だ」
川 ゚ー゚)「……予定がコロコロと変わったのは申し訳ないがな」
そうと決まれば、早いことブーンの修行を完了させなければならないだろう。
ブーンは気合いを入れてショボンの店に向かった。
98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 22:54:07.24 ID:ItszZccq0
(´・ω・`)「あー、いらっしゃい。どしたのそんなに気合入れちゃって」
ブーンを迎えたショボンはいつも通り適当な感じだった。
少し拍子抜けしたが、大体の事情を説明する。
(´・ω・`)「ふーん。まあ、がんばってね」
(;^ω^)「ええー……」
返事も適当なショボンに少しがっかりするブーン。
(´・ω・`)「急いでるってことはわかってたしそんなに驚くことじゃないからね」
(´・ω・`)「あとあんまり肩に力入れても具象化は出来るようにはならないし」
むしろ疲れると余計時間かかるよ。そんな事を言われてしまったブーンはなんとなくしょんぼりしてしまう。
(´・ω・`)「おいおいしょんぼりは僕の専売特許なんだから取らないでくれよ」
(;^ω^)「誰のせいだと思ってんですかお」
(´・ω・`)「事実は事実だからねえ」
(;^ω^)「ぐぬぬ……」
100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 22:58:58.75 ID:ItszZccq0
(´・ω・`)「とにかく一回でも発動できればその後は好きなだけ使えるからさ」
がんばってね。と言われなんとか気をとりなおす。
( ^ω^)(そうだお、何言われたって使えるようになるしかねーんだお)
(#^ω^)「うおおおおおおおおお……!」
(;´・ω・`)「だから力んでも無理だって……」
――――――――――
(;゚ω゚)「ぜはー、ぜはー……」
ショボンは案の定ばてたブーンに冷ややかな視線を送る。
(´・ω・`)「まったく……いいかい、魔法を使うにはイメージが大切なんだよ。前にも言った筈だけど」
(;´ω`)「……そんなこと、言ったって、イメージなんて、よくわからない、お」
(´・ω・`)「こればっかりは人それぞれで教えるのも難しいからなあ。
『じゃがいも』じゃ駄目なのかい」
( ´ω`)「駄目ですおー、数を増やしても大きくしてもいつもの奴が発動するだけで……」
(´・ω・`)(そうそう美味い話はないか)
101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 23:01:57.99 ID:ItszZccq0
(´・ω・`)「土属性だから大地に関するイメージだね……なんかないの?」
(;^ω^)「今さっきないって言ったばっかりですお」
(´・ω・`)「何でもいいんだよ地面に関する事なら。色でも味でもにおいでも感触でも」
( ´ω`)「土は食べたことないお……」
寝転がりながらそう答える。
(´・ω・`)「この際食べてみたらどうかな、食べるのが好きなんだろ?」
(;^ω^)「他人事だと思って……」
( ^ω^)「……あー、感触と言えばなんか今日夢をみましたお。空を飛ぶ夢」
(´・ω・`)「真逆じゃないか」
( ^ω^)「でもなんかふわふわしてて気持ち悪かったんですお。普通は気持ちいい夢のはずなのに」
(´・ω・`)「……地面に足がついていなかったから気持ち悪かった?」
(´・ω・`)(彼がそう感じたのだとしたら『もう少し』なのかもしれない)
ショボンはその夢をブーンが何かをつかみかけている兆候であると考えてみる。
102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 23:06:50.58 ID:ItszZccq0
八種類存在するマナの内、最も状態が安定しやすいのが土のマナであり、
ゆえに使用者にも心の安定を求める傾向がある。
(´・ω・`)(だから大抵の事には動じない“鈍い”人間であるほど土のマナに好かれる)
ショボンから見たブーンはあまり安定した精神状態とは思えない人間であったが、
それは彼本来の性格ではなく、無理をしていただけなのかもしれないと思い直す。
(´・ω・`)(人の店の軒先で躊躇なく寝転がる図太さといい、なかなかのもんだね)
ブーンは未だに寝転がっている、というよりはうとうとし出して本当に眠りかけている。
ゆすって目を覚まさせ、ついでにアドバイスをする。
(´・ω・`)「その空を飛んだっていう夢の感覚を思い出してみてくれないか」
( ^ω^)「え?」
(´・ω・`)「夢で空を飛んで気持ち悪くなったのであればその逆、
つまり地面に足がついている事をより確かな感覚として受け取ることができると思うんだ。
それが君の壁を越える為の鍵になるかもしれない」
( ^ω^)「おお!」
それを聞くと早速ブーンは夢の感覚を思いだそうとイメージする。
103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 23:12:36.13 ID:ItszZccq0
(; ω )「……………………」
(´・ω・`)「大丈夫かい、なんかすごく顔色が悪いけど」
(; ω )「…………思い出したらなんかすごくふわふわして本当に気持ち悪くなってきましたお」
(´・ω・`)「もう少しだからがんばってね。ほら、ちゃんと地面に足ついてるから意識して」
足に意識を集中させるブーン。するといつもにまして足元に地面があることがしっかりと感じられた。
その感覚はじわじわと体をのぼっていき、まるで地面も自らの一部であるかのような錯覚を覚える。
( ^ω^)(なんだお、これ……あったかくなるような……)
(´・ω・`)「今だ!」
その言葉で地面にナイフをつきたてて装術を発動させる。
(;>ω<)「うわ!……え!?」
普段の数倍の光がナイフを中心に放たれたと思った次の瞬間、地面に小さな穴があいた。
(´・ω・`)「おめでとう。それが『具象化』だよ」
104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 23:21:12.41 ID:ItszZccq0
具象化がほどこされたナイフは前と同じく全体が黄色く光り、刀身には土がくっついていた。
( ^ω^)「…………」
(´・ω・`)「感動で声もでない、って訳じゃないよね」
( ^ω^)「……案外地味だなあ、って」
(´・ω・`)「ハッハッハ、だよね。僕も初めて成功したときはショボく見えたもんさ」
でもね、と言葉を一旦区切り、
(´・ω・`)「見た目じゃないんだよ」
ブーンの足元を差し示しながらそう言う。ナイフを地面に突き立てろという意味だろうか。
半信半疑でやってみる。
(;゚ω゚)「うわ!」
突き刺したナイフから地面に衝撃波が走り、土煙を撒き散らす。
まともに顔に砂や土をくらったブーンは尻餅をついてしまう。
衝撃波はショボンの店の壁にぶつかって止まった。
(´・ω・`)「どうだい、これが装術の本当の力さ」
106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 23:27:55.57 ID:ItszZccq0
目や口に土が入ってしまったブーンは不満をもらす。
(;^ω^)「こんなことになるなら前もって教えてくれればよかったのに」
(´・ω・`)「教えちゃったら僕も君も楽しくないじゃないか」
その言い草になおも納得いかない様子のブーン。
それを無視して説明を続ける。
(´・ω・`)「あとは強度も上がってるからね。この間みたく無様に押し負けるようなことはまずなくなる」
“無様に”という言葉を聞いた瞬間なんとなくブーンの表情が曇ったようだがそれも無視。
(´・ω・`)「ま、安い授業料だよ。死んだわけじゃないし」
(´・ω・`)「因みに具象化を解除するとちゃんと土に戻るよ。エコロジーだね」
( ^ω^)「……けっこういい性格してますおね」
(´・ω・`)「ははは。褒めても何も出ないよ」
もちろん皮肉に決まっているのだがこれも軽く流されてしまった。
( ^ω^)「とにかく、ありがとうございましたお。僕一人じゃ絶対に出来るようにはならなかったお」
(´・ω・`)「――うーん、それはどうかな」
108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 23:30:08.97 ID:ItszZccq0
( ^ω^)「?」
(´・ω・`)「ま、僕じゃなくても他にいい先生がいれば出来るようになったってことさ」
( ^ω^)「でも、僕が教えてもらったのはショボンさんだお」
ブーンがそう言うとショボンは一瞬だけ驚いたような顔を見せたがすぐにいつもの表情に戻り、
(´・ω・`)「……そりゃそうか」
と呟いた。
その後再びショボンにお礼を言って別れ、宿に戻るなりまた眠りに落ちる。
――――――――――
川 ゚ー゚)「そうか、やったな!」
ブーンが結果を報告すると、クーは微笑みを浮かべて喜んでくれた。
その後しばらくは噛みしめるように喜んでいたのを見て、ブーンもようやく自分が具象化を覚えた実感を得ることができた。
一通りの話が終わったあと、出発の日取りの話題に切り替わる。
川 ゚ -゚)「どうする?今日は休んで明日からにするか?」
( ^ω^)「いや、今日中に出発した方がいいと思いますお」
110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 23:32:45.28 ID:ItszZccq0
川 ゚ -゚)「……無理はしていないな?」
クーが問うと頷き、
( ^ω^)「僕が大丈夫だと思って言ってる事ですお」
川 ゚ -゚)「なら、いい。すぐにでも出よう」
――――――――――
川 ゚ -゚)「――と言うわけだ。ヒートにも同行して貰いたいが……」
ノパ听)「いえ、私はまだまだ未熟です。あの程度の事で我を忘れるなど……」
ノパ听)「私は別のルートでフォックス達について調査を継続したいと思います」
川 ゚ -゚)「だが、」
ノパ听)「そいつにお姉さまの事をまかせるのは少々しゃくですが、少しはマシになったようですしね」
ヒートは見ただけでブーンの成長を感じとったらしく、素直に引き下がる事にしたようだ。
ノパ听)「またピンチの時は私を呼んでください。地の果てまでもかけつけます」
川 ゚ -゚)「ああ、よろしく頼む」
111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 23:35:00.49 ID:ItszZccq0
ヒートと別れたクー達も町を出るため、街道沿いにある馬車乗り場に向かう。
宿で聞いていた自然公園までしばらくは馬車旅になるだろう。
川 ゚ -゚)「短い間だったが、この町ともお別れだな」
( ^ω^)「案外いろいろありましたおね」
軽くこの町であったことを振り返る。
来たときには思いもよらなかった事もたくさんあった。
川 ゚ -゚)「だが、まだまだこの先は長い。これからも大変な事がいっぱいある。一筋縄ではいかないぞ」
( ^ω^)「でも、なんかなんとかなる気がするんですお」
みんながいるから。
そんな理由で「なんとかなる」なんて楽観視するブーンに、
川 ゚ -゚)「やれやれ、君は気楽と言うかなんというか……」
呆れてそう言うも、
( ^ω^)「クーさんは心配性なんだから僕はこれくらいでいいんだお」
こう返されてしまった。
川 ゚ー゚)「……はあ。もう少し危機感を持って欲しい所だが」
そうぼやくクーの顔が微笑みをたたえていたのはブーンの気のせいではないであろう。
112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 23:37:28.52 ID:ItszZccq0
馬車に乗った二人は、景色を見ながら談笑していた。
( ^ω^)「――そういえば、ショボンさんからこんなもの貰いましたお」
そう言って手紙らしきものをクーに渡す。
クーに宛てたものであるようだが、彼女の脳裏に嫌な予感がよぎる。
川 ゚ -゚)「……やっぱりか」
( ^ω^)「え?どうしたんですかお?」
額に手を当ててうなだれるクーにブーンは疑問をぶつける。
クーは黙って手紙をブーンに差し出す。
それを見たブーンは、口の端をひくつかせて黙るしかなかった。
『(´・ω・`)「未成年であるブーン君に直接請求するのは気が引けるので
身元引受人の君に請求します。」』
それはブーンの飲食代と『授業料』の請求書であった。
二人は先日の『ショボンは変わった』と言う前言を撤回せざるを得なかった。
八話終わり
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