( ^ω^)ブーンは装術士のようです 4−2
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- 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 23:03:13.35 ID:utcga90vO
- 突然、アヒャが鼻血を噴き出して倒れた。
だが、何故か装術は解けていない。
それどころか赤い光は少しづつアヒャの身体全体を侵食しつつある。
(;^ω^)「な、何が起こったんだお!?」
川;゚ -゚)「まさか……!暴走か!?」
(;^ω^)「暴走!?」
聞くからにまずそうな単語に驚き聞き返すブーン。
だが、クーは焦りながら、
川;゚ -゚)「説明は後だ!ブーン君、一刻も早くギルドに行ってこの事を知らせてきてくれ!」
と言い放つ。
(;^ω^)「く、クーさんは大丈夫なんですかお?」
クーも相当のダメージを受けている。
そんな彼女をこの場に置き去りにして大丈夫なのかと思ったが、
川#゚ -゚)「私は大丈夫だ!だが奴は放っておけば死んでしまう!君だけの方が早い!」
(;^ω^)「わ、わかりましたお!」
その言葉を聞きギルドに向かい全力で駆け出す。
- 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 23:08:14.08 ID:utcga90vO
- (;゚ω゚)「すみませんお!暴走ですお!」
受付にそう言って駆け込むが、これでは全く状況が伝わらない。
受付嬢「あの、ちょっと落ち着いて話して下さい」
(;゚ω゚)「いや、だからその、暴走なんですお!」
受付嬢「確かにあなたは暴走していますが……はい、深呼吸しましょうか」
(;^ω^)「ひっひっふー!ひっひっふー!」
受付嬢「いい加減にしてください」
ふざけているのかと思ったが、ようやく落ち着いたようだ。
少し要領を得ない所もあったが、大体の事情は伝わる。
受付嬢「それは……!すぐに医師と技師を連れてきます!」
言葉通りすぐに医師と技師が出てくる。
それほどまでに暴走というのは大事だということだろう。
医師「私は後から行きます。技師さんを先に……!」
技師「おう、そうしてくれ。坊主、暴走してる奴はどこだ?」
( ^ω^)「案内しますお!」
- 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 23:12:03.20 ID:utcga90vO
- アヒャの身体に灯った光は衰えるどころか、むしろまわりの全てを飲み込まんとする勢いで輝いていた。
それに伴い、アヒャのまわりの空間がだんだんと熱を帯びていっている。
川;゚ -゚)(あまり時間がない…………!)
早く来てくれと願いながらその様子を見守るクー。
川; - )(私には、どうすることもできない……!)
「連れてきましたおおおおおおぉっ!」
大声で叫びながら走ってくるブーンと、後ろに引き連れられたへろへろの技師。
技師「ちょ、おま、はや、は、速すぎるって、少しは、俺のことも、気遣え」
どうやら無理矢理引っ張ってきたようだ。
息を整えながら持参した鞄を探る。
技師「あれ、おい、ちょっと待て、ねえぞ」
それを聞いて二人の顔から血の気が引く。
(;^ω^)「じょ、冗談ですおね?」
技師「いや、マジで。あれ?ねえぞ?どうしよう……なんちゃって!ジャーン!!」
川#゚ -゚)「そういうのはいいですから早く!」
- 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 23:15:34.77 ID:utcga90vO
- クーに思い切り叱られてしまった技師はぶつぶつ言いながら機械を配置する。
技師「よし、これでいい」
( ^ω^)「それは?」
技師「魔力を使う暖房器具だ。こんだけ魔力が垂れ流しになってりゃ熱々になるぜ」
喋りながら機械を起動させる。
すると赤い光がアヒャの体から暖房器具に引き寄せられる。
熱も同じく機械の方に移ったようだ。
技師「これで安心だな……おい、なんかまだ光ってねえか?」
彼の言葉通り、アヒャの胸のあたりが点滅している。
技師「どう考えてもありゃ装術の光じゃねえぞ……おい、小僧行ってこい」
(;^ω^)「ええ!?」
技師に背中を押され、渋々ながらアヒャの胸のあたりを探るブーン。
どうやら光源はアヒャがつけていたペンダントのようだ。
ふと、ペンダントの点滅の間隔が次第に短くなっていることに気づく。
すると技師の表情が険しくなり、突然大声で叫ぶ。
技師「おい!そいつはやばい!どこか遠くに捨てろ!」
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 23:19:50.46 ID:utcga90vO
- (;^ω^)「い、いきなりそんなこと言われても!」
技師「どこでもいい!そこの森でも草むらでも!」
( ^ω^)「わかりましたお!」
そう言ったブーンは何を考えたのか上空に向かって思い切りペンダントを放り投げた。
技師「えええええ何やってんのお前!ちょ、みんな伏せろ!」
三人ともその場に伏せる。
しばらくして轟音と共にペンダントが爆散した。
恐る恐るブーンが顔を上げてみると、目の前で技師が拳骨を振りかぶっていた。
( ×ω×)「あいて!」
技師「お前は馬鹿か!今回のは爆発するだけだったからよかったようなものの、
変なもんがばら蒔かれる仕掛けだったらどうするつもりだったんだ!」
(;´ω`)「す、すみませんでしたお……」
川 ゚ -゚)「その辺にしてやってください。彼も悪気があった訳じゃない」
技師「悪気がねえ方が問題なんだがな……まあいいや」
- 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 23:23:29.25 ID:utcga90vO
- 技師「しかしまあとんでもねえなこいつは」
地面に転がってペンダントの欠片を拾いあげ、見つめながらそう言う。
技師「俺でもどんな技術を使った物なのか検討もつかん。……それに、この爆発」
かなりの威力だった。
もしあのままアヒャの首にかけられた状態で爆発していたらアヒャはおろか、
近くにいたブーンすら無事ではすまなかったであろう。
川#゚ -゚)「…………」
黙り込んで渋い表情を浮かべるクー。
そんなクーを心配してブーンが声をかける。
(;^ω^)「大丈夫ですかお?傷が痛むんじゃ……」
川 ゚ -゚)「……いや、違う。……こいつは、アヒャは、フォックスに捨て駒にされたって事だ。
それがやりきれなくてな」
クーの言う通り、アヒャは間違いなくフォックスもしくはその関係者にクー達を倒せるかどうかの当て馬にされたと思われる。
倒せなくてもペンダントが口封じをしてくれる。
よしんば倒せたとしても恐らく無事ではいなかっただろう。
技師「まあみんな無事だったんだ、結果オーライって奴よ。しかし医師の奴遅いな」
- 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 23:28:58.02 ID:utcga90vO
- 噂をすれば、医師がこちらに歩いてくるのが見える。
医師「やれやれ、ようやく着きましたよ。とりあえずは応急処置をしましょうか」
そう言っててきぱきとアヒャとクーの治療にとりかかる。
クーの方はなんとかなったが、アヒャの方は予想以上に酷い状態だったため町に戻り処置をする事になった。
医師「クールさんの方はこれでいいでしょう。
アヒャさんは……いったい何をしたんですか?ここまで全身がボロボロになるなんて」
流石に「殺しあいをしていました」とは言えず、決闘の際に異変が起きてそうなった事を伝えた。
技師「あれだ、なんかペンダントに魔法機械が仕込んであったんだ。多分それも関係あんだろ」
技師がフォローを入れる。自分達だけでは説明しきれないと思っていたので助かった、そうクーは思った。
技師「バラバラになっちまってよくわからんが話を聞くとどうも魔力を底上げする類いのもんらしいぜ」
医師「なるほど、装術による肉体強化に彼の身体がついてこれなかったというところでしょうか」
技師「そういう事になるだろうな。とんでもねえ代物だ」
医師「そうですね、肉体の限界を超えるような魔力を与えるなど……」
- 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 23:32:33.38 ID:utcga90vO
- 医師「あと、あなた方には一応伝えておいた方がよろしいでしょうか」
川 ゚ -゚)「なんですか?」
医師「アヒャさんは奇跡的に障害は残らなかったようですが、もう傭兵を続けるのは無理です」
川 ゚ -゚)「……そうですか」
予想はしていたがやはりそういう結果になってしまった。
以前戦った時クーが言った言葉が現実のものとなったのは皮肉と言えるか。
幾ら直接的な原因ではないとはいえ結果的に一人の傭兵の未来を閉ざすことになった事実はクーの心をちくりと刺した。
川 - )「…………」
(;^ω^)「大丈夫ですかお?」
川 ゚ -゚)「いや、問題ない。大丈夫だよ」
医師「ご本人にもこちらから伝えておきます」
- 47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 23:36:04.38 ID:utcga90vO
- 医師の話を聞き終わった二人は再びアヒャの様子を見に行く事にした。
そこには技師の姿もあり、軽く話をする。
川 ゚ -゚)「彼の様子はどうですか?」
技師「どうもこうも、しばらくは意識が戻りそうにねえな」
川 - )「そうですか……」
技師「まあそう気に病むんじゃねえよ。こいつがこうなっちまったのは自業自得さ」
川; - )「しかし……」
技師「お前さんは適切な処置をした。それ以上できることはねえよ」
技師「どうしても何かしたいってんならこいつにこんなもんを与えた犯人を探してぶちのめせ」
川 ゚ -゚)「え?」
技師「俺もよ、正直むかついてんのさ。すげえ技術を持ちながらこんなことに使う奴に」
技師「俺には機械は直せても患者は診れねえ。逆だってそうさ」
技師「お前さんにはお前さんにしか出来ねえことがあるはずだ。」
川 ゚ -゚)「……はい!」
- 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 23:47:12.36 ID:utcga90vO
- 技師「フォックスとかいったか、そいつの情報は集めておいてやるよ」
技師「まあこいつに聞くのが早いような気もするがな」
川 ゚ -゚)「お願いします」
思わぬ所で協力者を得る事が出来た。
このままアヒャが起きるまで待つのも手だが、もうこんな事が起きないように先を急ぐ事にする。
受付嬢「では、アヒャさんはこちらにおまかせください」
川 ゚ -゚)「はい」
受付嬢「今回の利用料金は今後の報酬から引いておきますのでご了承下さい」
_,
川 ゚ -゚)「…………はい」
ギルドを後にして、次の町へ向かう。
( ^ω^)「クーさん、体の方は大丈夫なんですかお?」
川 ゚ー゚)「なんとかな。……少し休ませて貰うよ」
そういって目を閉じる。
( ^ω^)「はいですお」
- 49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 23:50:45.77 ID:utcga90vO
-
『あーあ、やっぱり駄目だったか』
『ま、いいや。いい実験になったし』
- 52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 23:53:58.40 ID:utcga90vO
- 二人が町をたって数日後、アヒャがようやく目を覚ました。
( ゚∀゚ )「俺は……いったい?」
医師「お目覚めですか。事情を説明した方がよろしいでしょうね」
クー達との決闘、その時起こった異変について聞いた限りの事を話す。
するとアヒャは頭を押さえ、
(; ゚∀゚ )「あ、あああああ……お、思い出した……!」
険しい表情でそう呟いた為に少し身構える。だが、
(; ∀ )「俺は、なんという事を……」
自らのクーやブーンに対する仕打ちを思い出し、罪悪感にさいなまれる。
そのアヒャの様子を見て、聞いた話と随分違う、と思う。
医師(彼に関する情報を集めてみたが、もっと粗暴な人間だった筈だ……)
彼の聞いた話通り、アヒャはお世辞にもいい傭兵とは言えない人間であった。
だが、今目の前にいる彼はそのアヒャと同じとはとても思えない。
演技でもしているのか疑ってみるが、恐らくそうではない。
彼は「何者か」によって利用された挙げ句捨て駒にされたのだ。
恨む事はあっても荷担する事はもうない筈だ。
- 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 23:55:13.59 ID:utcga90vO
- ( ゚∀゚ )「そうか、俺はあいつに利用されたのか……」
大体の事情を把握したアヒャはぽつりぽつり話し始めた。
( ゚∀゚ )「……俺に力をくれた奴は酒場にいたんだ」
( ゚∀゚ )「男か女かもよくわからなかった。顔は隠れていたし、声も変な感じだった」
技師「声を魔法機械で変えていたのかも知れんな」
医師「いつの間に出てきたんですか……」
( ゚∀゚ )「『クールを倒す方法がある』と言ってペンダントを俺に渡した」
( ゚∀゚ )「その後少し話したが行き先についてはわからなかった」
医師「そうですか……」
( ゚∀゚ )「だが俺の他にもあんなものを渡した奴がいたような口ぶりだった。あと他にも仲間がいるらしい」
技師「そんだけ聞けりゃ十分だ。ありがとよ」
- 55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 23:56:40.71 ID:utcga90vO
- ( ゚∀゚ )「あいつらはそのフォックスとか言う奴を追っているのか?」
技師「どうもそうらしいな。俺達も協力する事にした」
( ゚∀゚ )「俺にも協力させてくれ。こんな事をされて黙っていられねえ」
都合がいい話かもしれねえが、と付け足してそう言った。
医師「その前に言っておきたい事があるのですがよろしいですか?」
( ゚∀゚ )「……ああ」
医師「気づいておられるかもしれませんが、あなたはもう傭兵としては戦えません」
それを聞いたアヒャは驚いているとも予想していたともつかない微妙な表情をした。
( ∀ )「…………少し、一人にしてくれ」
医師「はい」
医師はそう答えて技師を引っ張り部屋から出ていく。
- 56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/12(日) 23:59:14.73 ID:utcga90vO
- わかっては、いた。
わけのわからない力に頼って、振り回されて、
挙げ句にこうなってしまった。
完全に自業自得だと、
悪いのは自分なんだと、
わかっていた。
だが、
それでもアヒャは流れ出る涙を止める事ができなかった。
( ;∀; )「アヒャ、アヒャヒャ……アハハハハ…………」
初めは夢に溢れていた。
傭兵という仕事に憧れ、理想に燃えていた。
いつからこうなったのだろう。
傭兵という仕事は理想だけではやってはいけない。
いつしか手段として振るっていた筈の力が誇示する為のものに変わっていた。
ランクだの、報酬だの、そんな事ばかりにとらわれていた。
( ∀ )「アハハ、ハハ、ハハハ……うあああああああ!」
今、暗く冷たい現実が彼の目の前に横たわっていた。
第四話終わり
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