( ^ω^)ブーンは装術士のようです 5−2  前のページへ] 戻る [おまけへ
45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/01(土) 23:13:19.92 ID:1/8UBb6HO
計算が狂う。
女魔術師の方はさっきからずいぶんと無理をしているように見えたのだが、
涼しい顔で四つもの火の玉を一度に作り上げた事はエクストを少なからず驚嘆させた。

<_プー゚)フ(あの女の方はまともに相手するのは難しいな)

物量作戦で魔力切れを狙おうとした作戦が通用しなさそうだと考えたエクストは、

<_プー゚)フ「お前ら!逃げるぞ!」

山道を引き返し逃げる事にした。

川;゚ -゚)「なに……?」

――――――――――

川 ゚ -゚)「ふう……」

圧倒的優位の状況からあっさり退いたエクストに若干の違和感を抱くが、とりあえずは一息つく。
相性で勝るブーンを狙えばこちらが不利だという事はエクストもわかっている筈だが……

川 ゚ -゚)(やはり地の利を活かし確実にいくということなのか)

(;^ω^)「あ、あの」


47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/01(土) 23:19:24.92 ID:1/8UBb6HO
川 ゚ -゚)「む、どうした?」

(;´ω`)「すみませんでしたお、足を引っ張ってしまって」

川 ゚ -゚)「なに、気にする事はない。相性の悪い相手だったんだ」

( ^ω^)「相性、って?」

川 ゚ -゚)「あまり時間もなさそうなので手短に話すぞ。マナの属性には相性があるんだ」

光と闇属性以外の属性には有利な属性と不利な属性を持っている。
光と闇属性は互いが互いを打ち消し合う相殺の関係である。

川 ゚ -゚)「相性の悪い属性と対等に渡り合う為にはマナの量が三倍必要になる」

(;^ω^)「さ、三倍ですかお……じゃあ」

ブーンの脳裏に浮かぶのは先ほどのエクストの笑顔。
もしあのまま打ち合っていたら……

川 ゚ -゚)「そういう事だ。だからくれぐれも単独で奴と戦おうとするのは止めてくれ」

川 ゚ -゚)「さて、ここから先は今よりも慎重に行かなくてはいけないぞ」


49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/01(土) 23:24:11.82 ID:1/8UBb6HO
罠や不意討ちを警戒しながら少しづつ進んで行く。
しばらく不意討ちはおろか罠が仕掛けられている様子もなく過ぎていく。

<_プー゚)フ「ようお二人さん」

川 ゚ -゚)「……リーダー自らお出ましか」

突然山道に現れたエクスト。
他に誰も連れていない所を見るに、明らかに罠であろう。

<_プー゚)フ「おらよっ!!」

叫び剣を振るエクスト。
突風が発生して二人に向かってくる。
飛び退きかわすが、山道が狭い上に片側が崖になっているので、思うように動けない。

<_プー゚)フ「今だ!やれ!」

その声に反応して斜面側から現れた男達。
瞬く間に滑り降りてクーを囲んでしまう。

(;゚ω゚)「クーさん!」

川;゚ -゚)「問題ない!君は自分を守る事を考えろ!」

<_プー゚)フ「本当に問題ないのかな?」


50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/01(土) 23:32:28.45 ID:1/8UBb6HO
そう問いかけるエクストは先ほども使った突風をまったく見当違いの方向に放つ。
だが―――――

川;゚ -゚)「なにっ!?」

クーの頭上に大量の土砂が降りかかる。
どうやらあの攻撃は何らかのトラップの起動を促したようだ。

川;゚ -゚)「しまっ――――」

伏せて頭を守る事で精一杯だった。
逃げる事も出来ずにクーは男達もろとも土砂に飲み込まれる。

(;゚ω゚)「く、クーさん!クーさん!」

クー達が埋まった土砂に駆け寄ろうとするブーンにエクストが立ちはだかる。

<_プー゚)フ「よう、ようやくタイマンだなぁ」

(;゚ω゚)「ど、どけお!」

<_プー゚)フ「俺が埋めたのに助けさせる訳ねえだろ」

<_プー゚)フ「それにあの女は言ったろ?『問題ない』って。“仲間”を信じろよ、なぁ?」

(#゚ω゚)「おまえぇぇぇえええええ!!」


51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/01(土) 23:37:42.97 ID:1/8UBb6HO
激昂したブーンは装術を発動させてエクストに打ちかかる。
それを軽くいなし、反撃するエクスト。

(;゚ω゚)「うあぁ!」

<_プー゚)フ「どうした?頑張れよ」

エクストの一撃で倒れ込む。
装術も解けてしまった。

(#゚ω゚)「くっそおおおおおおおお!」

再び装術を発動させ、今度は地面にナイフを叩きつける。
エクストの足元の地面が隆起して、エクストが体勢を崩した。

<_プー゚)フ「……ふーん」

エクストはすぐに立ち上がり、三たび突風の技を使う。

<_プー゚)フ(場所を変えるか)

少年の能力なら土砂を簡単にどかされてしまうだろう。
手負いとは言え女魔術師と一度に相手をするのは骨が折れる。


53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/01(土) 23:42:14.62 ID:1/8UBb6HO
(;゚ω゚)「うわっ!」

突風をなんとか避けるブーンだが、エクストはそれを盾にするようにして追撃してくる。
どちらの攻撃もかわすのがやっとで、ブーンはだんだんとクーのいる土砂から遠ざかってしまっていた。

(;゚ω゚)(ど、どうすれば……)

カウンターで一撃を浴びせようにも剣を交えただけで装術が解けてしまう状況では思うようにいかない。
なによりナイフの自分と剣のエクストではリーチの違いが歴然としている。
遠距離の攻撃も相手には突風がある。

突風そのものに攻撃能力はほとんどないが体勢を崩されるだけでも厳しい。
もはやブーンに残された選択肢はほぼないに等しかった。

<_フー )フ「逃げろよ。でないと死ぬぜ?」

エクストの放った『死』という言葉がブーンの耳にまとわりつく。
既に先ほどの怒りは消えてしまっていて、ブーンの心を支配していたのは死の恐怖のみであった。

(;゚ω゚)「う……うわああああああぁぁぁあ!!」

ブーンはエクストに背を向け逃げ出した。


55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/01(土) 23:44:25.75 ID:1/8UBb6HO
(;゚ω゚)「はあ……はあ……」

全力で走った。
クーの事も、山賊に対する怒りも、エクストに対する怒りも、
何もかも放り投げて走った。

少し冷静になり、情けなさが込み上げてきた。
クーの警告を聞いていれば、
自分がもっと強ければ。

そんな思考が更にブーンを追い詰める。





<_プー゚)フ「よう坊主、元気してたか?」







56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/01(土) 23:46:16.03 ID:1/8UBb6HO
<_プー゚)フ「お前足速いねぇ。ちっと驚いたぜ」

なぜエクストがここに居るのか。
自分は全力で走った筈だ。
なぜ。

(;゚ω゚)「な、なんで」

<_プー゚)フ「あれ?知らなかったか?風属性の装術は脚力を上げるんだぜ?」

知らなかった訳ではなかった。
クーにも教えてもらっていた筈だ。
だが、完全に失念していた。

<_プー゚)フ「一所懸命逃げてたからあんまり追い付いちゃうの可哀想だなと思ってたんだけどさ」

<_プー゚)フ「もう十分離れたからいいかなと思って」

(;゚ω゚)「…………!」

最初からそれが目的だったのだ。
『厄介なクーをブーンから引き離す』ことが。
ブーンは完全に、エクストの手の平の上で転がされていた。

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/02(日) 00:36:00.34 ID:l0uVpgexO
「くっ……そっ……!」

川;#゚ -゚)「ぷあっ!」

土砂の下敷きになったクーは、なんとか脱出する事に成功していた。

川;゚ -゚)「はあ……はあ……」

思ったよりも量が少なかったのが幸いした。
元々時間稼ぎ程度の物だったのであろう。
だが、周りの男達も条件は同じ。

既に何人かは脱出して、気付いた者はこちらに刃を向けていた。

川;゚ -゚)「まだあんな奴に従うというのか……」

それとも、自分達の意思でクーを襲おうということか。

川 ゚ -゚)「容赦はせんぞ」

かなり疲労は溜まっていたが、周辺に見当たらないブーンに追いつかなくてはいけない。
火の玉を出現させながら男達にそう言い放つ。

61 名前:すみませんちょっと寝てしまってました:2011/01/02(日) 00:40:18.85 ID:l0uVpgexO
エクストの猛攻に防戦一方のブーン。
攻撃を受けることすらままならない。

(;゚ω゚)「…………!」

<_プー゚)フ「ひゃはははははははは!」

緑色の光を纏った剣をひたすら振り回してくる。
至近距離ではあの突風は使用してこないが、そんな事を気にしている余裕はない。

(; ω )「うっ!?」

突然、ブーンの目に何かが入る。
いつの間にか自分の額が切れて血が目に入ったらしい。
慌てて飛び退いて血を拭き取るも、また滲み出して来る。

いつの間に斬られたのか。
なんとか全ての攻撃はかわしていた筈だ。

<_プー゚)フ「何がなんだか分からねえって顔だな。……ならそのまま死ね」

(; ω )「う、うあああああああああ!!」

めちゃくちゃにナイフを振り回す。
だがエクストにはまったく通じず、簡単に防がれてしまう。
挙げ句の果てに体勢を崩し、尻餅をつく。

63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/02(日) 00:47:15.27 ID:l0uVpgexO
( ^ω^)(僕は、こんなところで死ぬのかお)

絶体絶命の状況だった。
しかし不思議と思考は冷静になっていく。

( ^ω^)(クーさんにも謝ってないお)



嫌だ。



死にたくない。



(;゚ω゚)(嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ)

(; ω )(死にたくない!)

<_;プー゚)フ「な……に……!?」

エクストの一撃は、分厚い土の壁によって阻まれた。

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/02(日) 00:49:47.07 ID:l0uVpgexO
<_;プー゚)フ「何をした……?」

先ほどとは逆に、エクストの方が得体の知れない恐怖を感じていた。
少年が今まで力を隠していたとでもいうのか。そこまで考えて自らそれを否定する。

<_プー゚)フ(演技な訳がねえ。だったらあそこまで追い詰められない)

<_プー゚)フ(それに、いきなり雰囲気が変わった……)

思い当たる節があった。
エクストにも、エクストは知らないであろうがブーン本人にも。

<_;プー゚)フ(……暴走してやがるのか!)

ブーンが動く。
今までのブーンがそうしていたように黄色い光を纏ったナイフを地面に突き刺す。

<_プー゚)フ(地面の隆起―――違う!)

エクストの足元の地面が盛り上がったと思った次の瞬間には、大きな土の槍がエクストのいた場所を貫いていた。

<_;プー゚)フ「糞ったれ……!」

65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/02(日) 00:53:27.16 ID:l0uVpgexO
川;゚ -゚)「…………」

肩で息をしているクー。
その周りに倒れふす男達。

川 ゚ -゚)「急所は外してある。死にはしない筈だ……聞いていないか」

川 ゚ -゚)(少し無茶をし過ぎたようだな)

疲労困憊の体に鞭を打って、ブーンの元に向かおうとしているその頭上に雨粒が振りかかる。

川 ゚ -゚)(雨、か)

川 ゚ -゚)「急がなければ……」

雨のせいで悪くなる足元に気をつけながら走り出す。

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/02(日) 04:04:47.45 ID:l0uVpgexO
<_#プー゚)フ「だらっしゃああああああああああ!」

ブーンの飛ばす石礫を風で吹き飛ばすエクスト。
だが間髪入れずに更なる石礫が飛来する。

<_;プー゚)フ「ぐっ!?」

相性で勝るにも関わらず、完全に力負けしている。

<_;プー゚)フ(暴走ってやつは厄介だな、おい!)

( ゚ω゚)「ッ!」

再び石礫がエクストへ飛来する。
先ほどの結果を考慮してかわす事を選んだが、
動いた先の地面から無数の岩のトゲが地面から飛び出す。

<_フД )フ「うあっ!!」

エクストは槍に足を突き刺され地面に縫い止められる。
ブーンは既にエクストの目の前まで迫っていた。

72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/02(日) 04:07:26.92 ID:l0uVpgexO
倒さなきゃ。


倒さなきゃ。


倒さなきゃ、殺される。


みんなの顔も、クーさんの顔も、見られなくなる。


だから、目の前にいるこいつを。


山賊のリーダーを倒すんだ。


ブーンはそれだけを考えて動けないエクストにナイフを振り降そうとする。


だが、そんな思考を中断するがごとくエクストとブーンの目の前に壁が現れる。


炎の、壁が。

73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/02(日) 04:11:38.38 ID:l0uVpgexO
(;゚ω゚)(新手か!?)

そこまで考えて気付く。この技を使える人を、自分は知っている。
そして彼女は、目の前に立っていた。

既にボロボロであったが、それでも力強く、美しかった。

川;゚ー゚)「大丈夫か、ブーン君」

川; ー )「君を守れて、良かった」

微笑みをこちらに向けながらそう告げると、クーはその場に倒れ伏した。

どういうことだ。
もう少しで自分は勝っていたのに。
倒せて、いたのに。

倒す?

自分は、何をしようとしていた?

動けない相手を、ナイフで殺そうとしていたのか?

やがて、炎の壁が消失した。
その後ろにあった光景は、更にブーンに衝撃を与える。

74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/02(日) 04:14:37.25 ID:l0uVpgexO
(;゚ω゚)「!!」

エクストは、体力を使い果たして倒れていたが、その足元には切り裂いたような跡が幾つもついていた。
炎の壁の所で途切れている。
あのまま進んでいれば恐らく、この見えない刃の餌食になっていただろう。

よくて相討ち、最悪の場合、一方的に殺されていた。
クーはそれに気付いていたのだ。
自分は力に溺れ、まったく気付かなかったというのに。

手の震えが止まらないのは寒さによるものか、恐怖によるものか。
その時のブーンにはわからなかった。


第五話終わり


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